大学生に「自走式エンジン」を搭載させ、変態させる! 旅武者代表取締役 山口和也氏

 

自らが主宰する「海外ビジネス武者修行プログラム」を通して日本の学生に『自走式エンジン』を搭載させ、世界中で活躍する日本人をできるだけ多く輩出したいと語る山口氏。そのように考えるようになったのは、自らの厳しい実体験があるからだ。プログラム最終日で参加者達の緊張感が張り詰める中、山口氏にインタビューした。

 

《プロフィール|山口 和也氏》
1973年生まれ。早稲田大学大学院商学部専門職学位課程ビジネス専攻卒(MBA)。2000年に米系医薬品&医療機器メーカー社長室入社。2004年日本人として初めてInternational Product Managerとして米国本社に勤務し、世界各国のマーケティング担当者とグローバルプロジェクトに携わる。2006年帰国後、Business Development Senior Managerとして、主にAsia Pacific & Japan地域において事業アライアンス等を担当。2011年Asia Pacific & Japan地域でMVP獲得。2013年、実弟の山口揚平とシェアーズを創業。その後、これまで培ったグローバル経験を活かして「海外ビジネス武者修行プログラム」を立ち上げ累計221名実施、大学生向けアジア新興国インターン事業において実績No.1となる。(同プログラムは2015年シェアーズから旅武者へと事業移管)

 

新興国ベトナムのダイナミズムを感じながらビジネスを!

―武者修行プログラムとは何かを教えてください。

ベトナムの世界遺産都市ホイアンにある4実店舗(お土産屋、レストラン、ベトナム人向け語学学校、ツアーデスク)を舞台に、『参加者が自分で考えた企画を自分で実施する』超実践的プログラムです。

実店舗があるため、新商品開発、マーケティング、外国人へのアンケート調査、個人・企業への直接販売、投資額に対する損益分岐点計算といったビジネスの一連の流れを実際に現場体験でき、「売れた」「売れなかった」「効果があった」「効果がなかった」という「結果が顕著にわかる」ことが特徴です。

2(実際に足を運んで英語で聞き込み調査中!)

参加者達は2~3人のチームに分かれ、最終的に各チームのビジネスプランが損益分岐点を何日で超えるかを公開されている店舗の実売上データを基に発表してもらいます。そして、最終プレゼンでそれらのプランを今後も採用するかどうかを判断します。

プログラム期間中は、各ターム2人のプロファシリテイターが付きます。コンサル出身者や現役の経営者がビジネス面でのアドバイスを、企業研修等を行っているコーチング等のスキルをもったプロ研修指導員がチームビルディング・リーダーシップ面でのアドバイスを、それぞれ行います。(2015年夏は6ターム101名実施)

それぞれの分野のプロによる徹底的なフィードバックにより、学生だけでは解決に時間がかかる、あるいは解決が難しい困難な課題を乗りきるためのサポートをします。この「答えを与えないが自分で壁を乗り越えさせる適切なアドバイス」により、一生もののスキルが身に着くのです。

6(参加者をプロのビジネスパーソンとして扱う徹底的なフィードバック)

―武者修行プログラムの目的は何ですか?

「自分が定めた将来的なゴールに向けて何が必要かを考え、それを自ら達成すること」ができる能力『自走式エンジン』を搭載すること、これが目的です。そうすることで大学生に「圧倒的な選択肢」を与えることができるからですね。

 

―なぜ舞台はベトナム、ホイアンなのでしょう?

1つ目の理由は、急成長中の新興国の中でも特に親日的な国であり、ビジネスがしやすい環境が整っているためです。

日本は既に経済成長が著しい新興国と共にビジネスをしていかないと、経済成長が期待できないステージに入っているのは周知の事実です。そのため、新興国で地元の人々と絡んでビジネスを経験した経験は必ず将来の糧となると考えています。また、そのような人材は企業にも高く評価されます。新卒一年目にして海外で働くチャンスを貰えている修了生もいます。

なお、経済成長は「人口」「平均年齢」「1人当たりGDP」によって決まります。ベトナムの人口は9,000万人超で平均年齢は29歳と若く、1人当たりGDPもまだ1,900ドル程度でまだまだ伸び代があります。シンガポールやタイはもう既に成熟ステージ、インドやラオスはまだインフラが十分に整っていない、そのような状況下でベトナムはちょうどいい状態にあると言えます。

2つ目の理由は世界遺産都市であるため、英語が通じる点。

ホイアンは外国人観光客がメインターゲットである観光都市であるためベトナム語ではなく英語でのコミュニケーションが主となります。そのため、「実践的な英語力」がリアルな現場で鍛えられます。

3つ目の理由は安全なためです。

新興国では治安を心配する人がいますが、ホイアンは世界遺産都市なのでとても治安が良いことで知られています。治安が悪いと観光客は来ませんからね。さらに、ホイアンは移動もバイクでなく自転車でできるため、事故のリスクもほとんどありません。よく「ベトナムに行く」という子供を心配する両親がいらっしゃいますが、世界遺産観光都市で外国人観光客に人気スポットである点を強調して納得して頂いております。

9(ベトナム人に英語学校のプロモーション)

5(見事契約獲得!)

ブラック企業とアメリカで自らが武者修行

―武者修行プログラムを始めるに至った背景を教えてください。

それは2つの理由があります。

1つ目は新卒でブラック企業に入ってしまったためです。実は私は企業の新卒研修等もやっているので、その際の公式プロフィールには書いていないのですが・・・。

ブラック企業とは言っても、労働時間が長いとか、サービス残業が多いといっただけでなく、普通に暴力が横行しているような企業でした。その会社は1,000人以上の従業員がいて、「これから新規事業を始めるからその部署に配属する」「今、上場を目指しており、株も従業員に買わせている」といったやる気に満ちた当時の私にとっては「自分の実力を試してやろう」とやる気を喚起させられるようなことを入社前に言っていました。

しかし、実情は金を稼げればなんでもあり、挨拶は全部「押忍!」、営業所長が売れない営業マンを硬く丸めた新聞紙の棒で日々ケツバットするような会社・・・その時、つくづく思ったんです。「自分って本当にビジネスのことを何もわかっていなかったなあ」と。

文科省のデータによると、新卒社員は3年で3割が辞めてしまう。それは大学生が本当の意味でビジネスを知らないことが主因の一つです。うまくマッチングできていない。それは学生がビジネスをイメージでとらえているから。営業はしんどそう、企画やマーケティングはかっこいい等。

でも、ビジネスってそんな単純なものではないわけです。それぞれの業種・職種にそれぞれの本質的要素と喜びがある。だから「自分で企画を考えて」「それを実際にやってみて」「改良を重ねて損益分岐点を超える」というビジネスを一回転させることによって、ビジネスとは何か?という本質を掴むための場づくりをしたいと考えました。

2つ目はAsia Pacific & Japan地域で働いている時にアジアで日本の地位が急速に落ちてきているなと感じたことです。率直に言って日本人は最弱なんじゃないかと・・・。日本人として悔しく感じたんです。

これは「多様性の理解及びその活用力が弱いこと」からくるものだと思われます。日本人は「○○人」という枠でくくってしまいがちであり、異なる価値観からより強固な第三案をチームとして作り出すという点において、バリューを発揮できていない状況が多いように思います。

そこで、海外へある程度まとまった時間が取れる学生の内から、多様な価値観に対する理解を得ることができる機会を学生に与える場を作りたいと思いました。このような問題意識から早稲田大学ビジネススクール在学中に「海外新興国ベトナムにおける実店舗を用いた研修ビジネスの成功要因に関する研究」という修論を書き、2013年夏に4人からスタートさせました。これが武者修行プログラムの始まりです。

 

参加者に自走式エンジンを搭載させる!

―武者修行プログラムの参加者にはどのような変化がありましたか?

15日間という短期間で急成長をした子も多いですが、それよりも大切だと思っているのは参加後の“持続性”です。このようなインターンや研修に参加した場合、一過性で帰国したら元の生活に忙殺されて学んだことを忘れてしまうことが多いのですが、武者修行プログラムに参加した学生は、皆、思い思いの自分のゴールを設定し、それに向かって歩み続けることが圧倒的に多いです。

そのためか、武者修行修了生は休学率が高いことで知られています。自分のやりたいことを見つけてそれを掴みに行ってしまうためでしょうね。

武者修行プログラムのゴールは、 “自走式エンジンを搭載させること”としているように、一過性で終わらない「一生ものの本質的な仕組み」がこのプログラムの特徴といえるかもしれません。

木村さん

(参照):「日本人へオーダーメイドの服を届けたい!在学中にタイへ飛び出した女子大生に迫る」

―その持続性を生み出すための秘訣はでしょう?

「ビジネスの本質」及び「チームにおける人間関係の本質」を伝え続けることにあります。本質は未来永劫変化しません。つまり一生使えます。

小手先のテクニックではなく「顧客のニーズがあり、かつ独自性のある『価値』を誰にどのように提供するのか?」「どうやってチームの仲間と本音で話をして、より顧客にとって最適な案を生みだせばいいのか?」といったビジネスの本質的要素のコツをつかむと、自らの一部として取り込まれて揺るぎのないものになっていきます。

同時に、それに至るための様々なビジネスにおける葛藤、チームでの葛藤を抜本的に解決していくために「自分が今抱えている課題を乗り越えるために必要な力を得たい。そのためには自分は何をすべきか?」を自らに問い、それに対して全力で向き合うようになります。

このようなプロセスの元、自らを成長させ続ける動力である「自走式エンジン」を搭載することができるのです。これが持続性を生み出す秘訣だと言えますね。

一度自走式エンジンを搭載するとその参加者は一生成長し続けます。そして、その成長がある程度の段階に達すると、コップの水が溢れるように「変態」します。変態するのは武者修行中の人もいれば、帰国後の人もいます。でも、自走式エンジンを搭載してしまえば遅かれ早かれ必ずいつか変態します。

変態すると他人からみて「明らかに変わった」とわかるんですよね。武者修行中は20名を超えるタームの参加者全員が本気で自分を変えようとする環境が整っているため、通常の状態より変態し易いので複数回変態を経験する人もいます。

なお、私達はこの「変態」という言葉を「海外で働きたい、現状を打破したい、自分を成長させたい・・・。将来に繋がるたくさんの得難い体験により、新しい自分になること。」と定義しています。

また、Mushashugyo After Projectという武者修行修了生によるコミュニティ(221名)があり、そこでは皆が学生団体を作ったり、海外にいったりしているのですが、何らかの壁にぶち当たった時、仲間と会うことで武者修行での経験をリフレッシュさせ、それを乗り越えようとするエネルギーを与える場としても活用されており、これも持続性に貢献していると考えています。

このコミュニティは年々急速に強化され、学生だけではなく就職した卒業生も所属し続けているので、近い将来、このコミュニティだけでビジネスができたり、起業する人が現れたりするようになるかもしれませんね。このコミュニティは自走式エンジンを積んだ人のみで構成されているので、10年後、20年後に修了生の相乗効果により本当の価値がでてくると思っています。今から先が楽しみです。

7(個性豊かで強力なファシリテイター&現地コーディネーター陣)

武者修行の卒業生で日本を変える!

―今後の展望を聞かせてください。
今は年に150人のペースですが、来年までに1,000人のペースにまで拡大していきたいと考えています。年に1,000人、自走式エンジンを搭載させ“変態”させれば、日本も変わるかなと。近い将来、有名な起業家や大企業で活躍している人が実は皆、武者修行修了生という状態になれば嬉しいですね。その体制を後1年半以内に作るのが今の私のコミットメントです。

8(15日間の厳しいプログラムを終えた仲間達と記念撮影)

海外ビジネス武者修行プログラム】とは

学生向け新興国ビジネス研修プログラム参加人数実績No.1!

新興国ベトナム・ホイアンにある4つの店舗(お土産屋、レストラン、ツアーデスク、ベトナム人向け語学学校)を舞台に、事業構想から、企画実行、効果検証まで『参加者が自分で考えた企画を自分で実施する』

それが超実践的「海外ビジネス武者修行プログラム」です。

【武者修行プログラムHP】
http://mushashugyo.jp/
【海外ビジネス武者修行プログラム_2015年夏ver】