2017.05.15
淡路島と同じくらいの極小都市国家シンガポールには、1,000を超える日本食レストランが互いにしのぎを削っており、絶好調のお店もあれば、撤退を余儀なくされたお店も多いようです。その中でも2016年7月のオープン以来ずっと行列を保ち続けている天丼屋さん「琥珀」の人気がすごいと聞きつけ、アセナビ取材班突撃しました。後半にはシンガポールでの立ち上げを任された荒川さんへのインタビューも!
平日のオフィス街のランチタイムでも行列が!
早速お店に行ってみると、一際目立つ行列がありました。「もしやこれか!?」と思ったら、その通り。
短い平日のランチタイムなのに並ぶとは、皆さん琥珀の天丼が食べたくて仕方ないようですね。しかも驚くべきことに、その日は日本人のお客さんは見あたりませんでした。きっとうまくローカルの人達の心を奪っているのでしょう!
待つこと20分・・・やっとお店に入ることができました。それではいただきます!
まず驚くのはこの見た目!派手に天ぷらが盛り付けられています。天ぷらとご飯の相性が最高です。どの天ぷらも味が染みています。
出店までの裏話と工夫点
—まずはシンガポールでのオープンまでの経緯を教えてください。
弊社Kings Knowsは、東京では居酒屋・イタリアンも含めて20店舗ほど展開しており、そこでのノウハウを活かして、2015年に台湾にジャパニーズイタリアンレストランJAPOLIをオープンしました。
その後東京と台湾でのノウハウ活かして、2016月7月にアジアのハブであるシンガポールにも、シンガポールと日本のお客様どちらが食べてもおいしい天丼を提供しようというコンセプトで出店させていただきました。
—東京・台湾・シンガポールで共通していることや違っている点はありましたか?
共通しているのは女性のお客さんの心をつかむことの重要性ですね。実際に主なお客さんの層は30代前半のローカル女性です。その女性たちが、口コミで評判を広げてくださったり、お友達や家族を連れてきたりしてくれます。日本人のお客様は5%程のご来店となっております。
違う点となると、やはり味覚ですね。日本人の感覚と比べると、台湾の方々は塩味が弱いものを好むようでしたが、シンガポールの方々は比較的日本人の感覚に近いようです。
台湾とシンガポールに共通しているのは、辛味で味の輪郭をはっきりさせたいという点ですね。特にマレー系シンガポール人のお客様は辛味を好む傾向がありますのでスパイシーフレーバー天丼も用意しています。
(天丼は15SGD≒1200JPYと良心的な価格設定。)
—シンガポールならではの工夫した点は何ですか?
まず衣を改良しました。シンガポールのお客様はサクサクでクランキーな食感を求める為、たれをかけてもその触感を保てるように改良しました。あえて日本人が好む薄衣からローカルのお客様にも受けのいい軽い触感の衣にはしました。
(秘伝の天ぷらを一つずつ丁寧に挙げていく。)
それと日本の天丼にはない「かにかま」を入れました。シンガポールのお客様はフィッシュボールといった練り物が好きな点を考慮したからです。「かにかま」の中でもとりわけ蟹のフレーバーが強く繊維感があるものを選びました。
野菜はなるべくローカルのものを使っています。現地の人が好む親しみやすい食材を使うことで、親近感があると同時に日本の天丼も楽しんでいただければなと思っています。
椎茸を入れたのも、バンミアンといううどんに似たローカルフードに椎茸を刻んで食べる習慣があるからです。鶏胸肉は事前にマリネで下味を付けてから揚げています。
—細かいところまで配慮しているのですね。しかしお米は日本から取り寄せているのでしょうか?
はい、北海道産の「ななつぼし」と16穀米を選んでいただけます。北海道の契約農家さんに脱穀せずにシンガポールに送ってもらい、オーダーしてから納品してもらう直前に脱穀して各店舗に送ってもらっているので新鮮です。
「ななつぼし」を選んだ理由は、他のお米よりもでんぷん質が少ない品種だからです。他の「こしひかり」などの品種は甘みが強い、つまりデンプン質が多いのでどうしても粘り気を強く感じてしまう傾向があります。ですので天ぷらのサクサク感を維持するために「ななつぼし」にしました。16穀米も厳選したブレンド割合で日本から取り寄せています。
—うどんにも何かこだわりがあるのでしょうか?
天丼とのセットにうどんを選んだ理由は、台湾とシンガポールといった中華文化圏の人達にとって、食べ物はドリンクかスープをセットにして食べる習慣が根強いからです。うどんは喉を潤すためのスープ感覚で両方を最後までおいしく食べていただけるように工夫しました。
うどんの中でも、シンガポールでは讃岐うどんがメジャーではありますが、天丼との相性を考慮し、麺が細い稲庭うどんを選びました。これも日本から取り寄せています。
(シンガポールの美食家たちからの品質保証として表彰される実績!)
家族を養うためには料理だけでなくマネジメントも
—では次に荒川さんご自身の、シンガポールにくるまでの経緯を教えてください。
調理師学校卒業後は4年ほど東京のホテルで調理師として働いていたのですが、現在の会社に引き抜きという形で転職しました。
—シェフからなぜ急に転職して台湾やシンガポールでの立ち上げをするようになったのでしょうか?
将来を見据えたうえで、生きていくためには料理だけではなく飲食店を俯瞰的にマネジメントできるスキルを身に着けたいと思ったからです。キッチンだけ、サービスだけ、経営だけではなくそれらを横断的に経験したいなと。
—そのきっかけは何だったのでしょうか?
23歳の時に結婚し、妻と子供が3人を養っていくためには、料理しかできないというのは体を壊したりしてしまった時のリスクが大きいと感じたからです。
—マネジメントとなると、ASEANのみならず海外でビジネスをするうえで避けては通れない関門があると思います。ローカルスタッフのマネジメントはどうしているのでしょうか?
充実したトレーニングカリキュラムを準備しており、「天丼とは何か?」といった座学から店舗でのOJTまで含めて1ヶ月ほどで店舗で活躍できるようになってもらいます。
さらに回転率を上げるために日本人のみならずローカルスタッフ全員で改善案を日々話し合っています。そのおかげで回転率が改善されただけでなく、チームでお店を創っていく感覚が生まれたのか離職率はかなり低く抑えることができています。
料理自体も重要ですが、やはりスタッフが笑顔であるかが一番重要だと思います。料理は足し算ですが、サービスは掛け算だと考えます。せっかくおいしい料理があってもサービスにどこか悪い点があるとマイナスになってしまうものですから、そこへはかなりこだわっています。それは日本も海外も関係のない当たり前なことではありますが、とても重要かつ難しい点ですね。
(休憩時間もスタッフ全員で仲良く談笑。)
—マーケティングはどうしているのですか?
特に大々的にしているわけではありませんが、開店当初はブロガーの方々を招いて拡散してもらいました。天丼となるとどうしてもヘルシなイメージではないので、女性受けを狙うためにビジュアルでのインパクト、天ぷらの種類を増やしてお得感も強調しました。お客さんが自分で食べて満足するだけでなく、SNSや口コミで拡散しやすいように工夫しています。
—今後の意気込みとメッセージをどうぞ!
まずは食べてもらいたいですね。スタッフも楽しく働いてくれている様子も見ていただきたいです。店舗自体は作り込んだわけではありませんが、気軽においしいご飯を食べに行こうとなった時に日本食である天丼を選んでもらえるような存在を確立したいです。
琥珀へのアクセス
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No3,Temasaek Boulevard, #03-310/311, Eat At Seven, Suntec City Mall (Tower One), Singapore 038983
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64 Circular Road #01-01, Singapore 049418