「"ムスリムファッション"...
そういえば、イスラム教徒の女性はスカーフのようなものを被って、頭髪を隠しているな。確かに見たことはあるけれど、そもそもなんで被っているの?」
そのように思っている人はたくさんいらっしゃると思います。
そこで、今回は前編・後編にわたり、そもそも"ムスリムファッションとはなにか"ということから、具体的な現代の東南アジアのムスリマ(イスラム教徒の女性)たちのファッション事情、世界と日本のムスリムファッション業界の動きまで、その全貌にせまります!
「イスラムビジネス特集」第3弾。前編では「ムスリムファッションとはなにか」「現代の東南アジアのムスリマたちのファッション事情」について追っていきます。
そもそもムスリムファッションって?
ムスリムファッションとはイスラム女性のファッションスタイルのことで、肌を露出しないことが大きな特徴。東南アジアでは特に頭髪を覆うヴェール=ヒジャブがそのシンボルといえます。
ムスリムファッションの最先端国・インドネシアでは、ムスリム女性の衣服が"ムスリムファッション”と呼ばれるようになったのも、2000年代前半以降、ヴェール着用者が飛躍的に増加し、そのスタイルも多様化し、カラフルなものや花柄のものなど、一段と華やかになったことが背景にあります。
それでは、彼女たちがこのような服装をする意義はなんでしょうか?決まりがあるのでしょうか?
最初にイスラム教の根本聖典であるコーランをみてみると...
実はムスリム女性の服装に関して、コーランに明確な規定はありません。長衣をまとうなどして、アウラ(=隠すべき部分、美しい部分)を隠すことが命じられているのは明らかですが、その部分も不明確であるので、解釈には国や地域間の差異が生まれると同時に、無数の解釈が存在するのです。(参考:多和田 2015 p.207)
ちなみにインドネシアでは、「①顔と手のひら以外の箇所を覆う②生地が透けない③身体のラインを隠すゆったりとした服装である、ことが3つの条件として広く受け入れられている」と野中葉氏は解説しています。(参考:野中 2015 p.7-14)
つぎに、ヒジャブがムスリマたちにとってどのような存在なのか聞いてみると...
「ムスリムとしてのアイデンティティー」
「アッラーの命令によってアウラを隠すもの」
という声が多くありました。
中には、「日焼け対策にもなるから最高!」という声や「毎日かぶるものだから、私の一部なの」、「イスラム教徒の女性としての義務であり、尊厳」といった声もありました。
(アンケート調査対象:インドネシア人ムスリム女性35人)
つまり、現代のムスリム女性は、"自分の解釈"を衣服において表現することで自らのアイデンティティを構築しているのですね!
東南アジアのオシャレすぎるヒジャバーズ
・まずは、ファッションデザイナーでもあり、起業家でもあるインドネシア人ムスリマDian Pelangiさん! 出典 彼女のインスタグラムより
出典 彼女のインスタグラムより
出典 彼女のインスタグラムより
上品で洗練されていますね!
500万人のソーシャルメディアフォロワーがいると言われる彼女。実は彼女こそがヒジャブのファッション化に拍車をかけたデザイナーなのです!まだ10代だった2008年から活動を始め、現在はパリをはじめ、欧米でも活躍しています。
彼女が自身の名を冠したブランドDian Pelangiは、インドネシア語で虹を意味するPelangiのイメージ通り、色とプリントをふんだんに使っています。バティック(インドネシアの伝統的なろうけつ染めの布)を素材に使い、カラフルでエレガントな色・素材使いが人気を集めています!
公式サイト:http://dianpelangi.com
・おつぎは、マレーシア人の女優・タレントのNoor NeelofaMohd Noorさん
出典:彼女のインスタグラムより
出典:彼女のインスタグラムより
出典:彼女のインスタグラムより
女優・タレントでありながら、ヒジャブを販売する「Naelofar Hijab」、アバヤ(ムスリマの着用する黒く長いドレス)を販売する「Naelofar Abaya」、ファッションコンタクトレンズの「Lofalens」を創設し、3つのレーベルをまとめる「NH Prima International Sdn Bhd」にてディレクターを務めています。
・東京生まれ、東京育ちのインドネシア人ムスリマAufa Yazidさん
出典:彼女のインスタグラムより
次回、インタビュー記事で紹介させていただきます。
・Tokyo Girls RUNWAYなど、数々のファッションショーやテレビ、雑誌で活躍中のマレーシア人ムスリマAunee Azrina Zulkifliさん
出典:彼女のインスタグラムより
出典:彼女のインスタグラムより
東京の大学院に通っていたため、日本語をはじめとした多言語話者でもあります!
・ムスリムファッションビジネスを家族で営む、ドイツ在住のインドネシア人ムスリマShinta Kweeさん
出典:彼女のインスタグラムより
出典:彼女のインスタグラムより
季節によってコーディネートを変えている彼女のファッションは、ノンムスリムにとっても参考になります。
私ライター・松本の友人で、内面から美しさがにじみ出るとっても素敵な女性です!
ヒジャバーズのコーディネート、オシャレすぎませんか?
東南アジアにおいては、カラフルなヒジャブや重ね着などのスタイルが人気なようです!
ヒジーブの巻き方やアレンジの仕方を紹介している動画がたくさん YouTube や Instagram にアップされています。
hijab tutorialで検索、または#muslimfashionとハッシュタグを打ち込んでみてください!
ハイセンスすぎるムスリムファッションの虜になるかもしれません。
後編では、世界と日本のムスリムファッション業界の動きを紹介します!
参考文献
・多和田裕司. 2015.「マレーシアのムスリム女性に見るイスラーム的装い:消費社会におけるイスラームについての一考察」『人文研究』第66巻,pp.195-210.
・野中葉. 2015.『インドネシアのムスリムファッション ―― なぜイスラームの女性たちのヴェールはカラフルになったのか』福村出版.