2017.01.17
社会起業家 from Indonesia 特集、第3弾です!
この特集は学生に社会問題への気づきを与える機会を提供しているAlternative ProjectとGakuvoと提携して、インドネシアが抱える社会問題の解決に向けて、現地の社会起業家がどのような取り組みを行っているのかを発信していきます!
私、西山は2016年の3月から約2週間、Alternative Leadership Program 社会起業家編 in Indonesiaに参加し、現地で社会問題の解決に取り組む社会的企業に取材をしました。アセナビメンバーの井上とはこのプログラムで出会いました。
今回の記事では私がインドネシアで取材をしたGreenerationというインドネシアで最も深刻な問題の一つであるごみ問題の解決に取り組んでいる社会的企業を設立したMohamad Bijaksana Junerosano氏の取り組みを紹介したいと思います!
≪プロフィール|Mohamad Bijaksana Junerosano氏≫
バンドン工科大学で環境工学を学び、2006年に卒業。在学中の2005年にGreenerationを設立。 British Council主催の社会起業家フォーラムのファシリテーターを2010年から2011年の間に務める。2013年バンドンで開かれた世界経済フォーラムにおいて次世代リーダーに選出される。その他数々の環境に関するイベントの開催や事業の立ち上げを行い、今では社会起業家を牽引する一人となっている。ニックネームはSano。
目次
Greenerationが誕生するきっかけとなったインドネシアが抱えるごみ問題とは
Photo From おおむね日刊+★狐のブログ
この写真はインドネシアのごみ問題の深刻さを表す衝撃的な一枚です。
川に浮かぶ一隻の小舟と少年、そしてそのあたり一面を覆いつくすほどの大量のごみ。
この川に人々の生活排水、工場の産業排水、そして人々が投棄した大量のごみが流れこみ、このような衝撃的な状況が生み出されました。
インドネシアは世界4位の人口を持ち、ASEAN諸国の中でも経済成長が著しい一方、この輝かしい経済成長の裏側には、写真が示したような深刻なごみ問題が隠されていたのです。
ジャカルタでは、人々が大量にものを消費し、毎日約6,270トンのごみが生み出されています (鯨25頭、もしくはサッカーコート4面分に相当する量) 。
大量のごみは埋め立て地に運ばれますが、まだまだごみを埋めたり焼却したりする場所や施設が少ないです。そのせいもあるのでしょうか、路上や川、海など、あちこちでごみが見られます。
*過去に、アセナビではインドネシアのごみ問題に関しての記事を発信しています。
インドネシアのゴミ問題を通して人々の意識を改革し、より良い社会を築こうとするジャカルタお掃除クラブ代表、芦田洸氏
今回紹介するGreeneration は、深刻なごみ問題に危機感を持ち、自分たちでこの問題を解決しようと2005 年にインドネシアの都市バンドンで設立されました。
彼らは人々のごみ問題に対する意識を変え、人間と環境が共存できる持続可能な社会を目指し、日々活動を行っています。
それでは、Greenerationが行っている具体的な取り組みについて見ていきましょう!
Greenerationが行っている取り組みとは
Greeneration は主に3つの事業に取り組んでいます。
①Petualangan Banyu
②Diet Kantong Plastik
③Waste4Change
それぞれの事業がどのようなことに取り組んでいるのか、説明します。
① Petualangan Banyu (Banyuくんの冒険)
Yuk simak Petualangan Banyu di Negeri sampah. Biar paham dan gak nyampah lagi dan lagi!:D https://t.co/TvhDrYqMJc pic.twitter.com/6I3B0eitMY
— GREENERATION (@greenerationid) May 6, 2016
小学生向けにごみ問題をテーマにしたアニメーションを制作し、ごみ問題を考えるための機会を提供しています。
アニメーションは子供たちがごみ問題を学ぶためのハードルを下げてくれるため、大変有効です。実際に、一部の小学校では教材として使用されています。
音声はインドネシア語のみで内容の理解は難しかったのですが、映像を見て流れはイメージできるかもしれません。インドネシア語が出来る方はぜひ、見てみてください。
②Diet Kantong Plastic (レジ袋削減運動)
インドネシアのごみ問題のうち、特に深刻なのはビニール袋の投棄です。
ビニール袋が自然分解されるには100年以上の年月がかかり、燃やすと有害なガスが排出されるため環境に大きく悪影響を及ぼします。
インドネシアでは国民一人当たり年間で、約700枚のビニール袋を使用しているという現状がありました。
Greenerationはこの現状を変え、人々にビニール袋の使用を控えさせるために Diet Kantong Plastic という事業を立ち上げ、大きく二つのことに取り組んでいます。
一つ目は baGoesというエコバックのブランドを立ち上げ、人々にエコバックを浸透させる中で、ビニール袋の使用を減らす取り組みを行っています。
ちなみに私は下の写真の青と緑のエコバックを買い、約一年愛用していますが、壊れることなく今でも使い続けています。カラフルでおしゃれなのに加えて、1,000回以上もの回数、このバッグを使うことができるほどの丈夫さも備えているのです。
Photo From baGoes HP
もう一つの取り組みは、イベントの開催です。
環境問題に興味・関心がある若者を中心に彼らがエコバックをかぶり、ビニール袋の使用を控えるよう訴えかけるイベント”Head Bag Mob”を2008 年以来、定期的にインドネシアの主要都市で開催しています。
Photo From Greeneration
こちらがHead Bag Mobの様子。人々がエコバッグを頭にかぶり、エコバッグの使用を呼びかけている。
③Waste4Change
Photo From : Waste4Change HP
Waste4Change はインドネシアでの廃棄物をゼロにするという目的のもと設立されました。この事業では、主に二つの活動に取り組んでいます。
一つ目はリサイクルです。毎日職員が家庭や企業などからごみを回収します。
回収されたごみは Waste4Change が所有するごみ分別場で細かく分別された後、プラスチックはペットボトルなどに再利用され、有機物は農業用の肥料に再利用されます。
この事業はインドネシアの全体の廃棄物の 5%以下しかリサイクルの過程に入らないという現状を補う機能を果たしています。
二つ目はコンサルティングです。例えば、多くの企業や学校は廃棄物管理の知識が乏しいため、その管理を適切に行うことができていません。そこで廃棄物管理に関する知識を豊富に持つWaste4Changeは、それぞれの依頼人が抱える課題に対して解決策を提示します。
この事業を通じて社会全体として廃棄物処理に関する費用が削減されるだけではなく、廃棄物が減少し、公衆衛生の改善にも役立てることができます。
このようにWaste4Change は直接廃棄物に関わることでインドネシアが抱えるごみ問題の解決の糸口を探っているのです。
Greenerationのごみ問題の解決に取り組む想い
Greenerationの代表であるMohamad Bijaksana Junerosanoさん(ニックネームはSano、以下Sanoと記載)は世界経済フォーラムで次世代リーダー(Global Shaper)にも選出されているインドネシアのソーシャルセクターをけん引する社会起業家です。
私たちは予定の都合がつかず、Sanoさんに直接取材することはできませんでしたが、社員の方とお話しをすることで、SanoさんのGreenerationを立ち上げるに至った想いを聞くことができました。
Sanoさんは学生時代からずっとごみ問題に関心を持っており、人々がごみを平気で道端に捨て、自分たちの住む国を汚していることに違和感を持っていました。そしてその原因が、人々のごみ問題に対する関心の欠如だと気付いたのです。
そこでSanoさんは自分たちが当事者としてこの問題を解決しなけれならないという強い想いから、この想いに共感して集まってくれた仲間とともにGreenerationを設立しました。
ごみ問題を解決するためには人々がごみ問題を他人事ではなく、自分事として捉える必要があります。
そのためにGreenerationは人々がごみ問題への関心を持ってもらえるように努力しています。このことは紹介した事業からも見てとることができます。
アニメーションを通じた子供たちへのごみ問題に対する教育は、若い時からごみ問題への関心を高めてもらうために立ち上げられています。
エコバックの普及運動は政府にごみ処理の打開案や、ごみ処理場の建設を訴えかけるのではなく、まずは人々が身近なことから取り組むことで、自分たちの環境を変えることができるということを伝えています。
Waste4Changeではごみを適切に管理し、処理を行うことで、多くのごみを減らせることを企業に伝えています。
こうした事業を通して、Greenerationは、インドネシアにおけるごみ問題解決に向けて取り組んでいるのです。
取材後記
近年ではGreenerationの地道な取り組みのおかげで、人々のごみ問題への危機意識が高まった結果、インドネシア政府はこの問題の解決に向けて動きだしています。
具体的には政府は2016年から商品購入後、商品を持ちかえる際に使うビニール袋を有料にすることで、人々のビニール袋の使用を減らそうと努力しています(2016年以前はビニール袋は無料でした)。
このようにインドネシアは少しずつ良い方向に変わっていますがGreenerationの取り組みだけではこのような深刻なごみ問題を解決することはできません。
インドネシア人一人一人、特にこれからのインドネシアの将来を担う若い世代が中心となって深刻なごみ問題にまずは関心を持ち、そして解決するための行動を起こすことが重要なのではないでしょうか。
そのきっかけづくりとして Greeneration の果たす社会的役割は非常に大きいと今回の取材を通じて感じました。
取材メンバー:鳥海花菜、西山恭平、Johanes Kris
執筆・編集:西山恭平
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