2016.10.13
インドネシアの大きな社会問題、“ごみ”
インドネシアに旅行したことのある人ならわかると思いますが、観光地でも、街中でも、大量のごみが捨てられています。どこに行ってもごみ、ごみ、ごみ…。
ごみ問題は景観面だけでなく、ごみで水路が詰まることによる洪水、ごみから発生した有害物質による汚染・汚濁など環境にも様々な悪影響を与えており、政府も頭を抱えています。
これに突破口を開いたのが、“ごみ銀行”。
持ち込まれたごみを種類別に収集し、記帳・売却・換金し、現金として年に一度顧客に返還する「銀行」です。今やインドネシア中に設立され、その活動を拡大しつつあります。
それではその実態はどうなのでしょうか?
今回はジャカルタ郊外のデポックにあるごみ銀行を訪問してきました!
デポックにあるごみ銀行”Komunitas TaPe uLi”
ごみ銀行の目的とは
お話を伺ったのは、代表のMadyaharmeka (マドヤハルムカ) さん。周辺のいくつかのごみ銀行を統括しています。
Madyaharmekaさん (右)
このごみ銀行は100%地域コミュニティの有志によって運営されており、政府の補助金などはないそうです。2016年)3月に設立されたばかりですが、すでに周辺の住民の35%以上(90世帯中35世帯)がメンバーとなっており、なかなか好調だそう。
毎月第一、三週月曜日の午前8-11時に“営業”していて、主に地域コミュニティの女性がボランティアで仕事をしています。
代表のMadyaharmekaさんは、「ごみ投棄を減らすため、またごみという無価値なものから経済的価値を生み出すため、この銀行を設立しました」と語ってくれました。
ごみの不法投棄を減らすことで、利用可能な土地を増やすだけでなく、住環境の向上、さらにはお金まで生み出すとは。これを思いついた人はすごいですね!
実際の作業はいかに?
個人によって持ち込まれたごみは、スタッフによって種類別に(なんと約60種類に分別!)天井から吊るしてある秤で測られ、換金表をもとに換算されます。
一家庭に一冊、“通帳”が配られており、換算した結果を日付、重量とキロ当たりの売価、合計、累積残高として記載します。貯まったお金は年末にまとめて支払われます。
ごみの重さを図る様子
ごみについて記載する通帳
その他にも…。
さらに、この銀行ではごみを分別収集するだけでなく、商品として加工して販売もしています。建物の中にはティッシュケース、かばん、かご、アクセサリーなどなど、ごみをリサイクルした手作り雑貨が並べられていました。オンライン上でも販売しているそうです。
メンバーのJoeさんは「このペットボトルも、ごみの状態ではキロ当たり数百~千ルピア(日本円にして数円)にしかならないが、加工することで、一つ2万5千ルピア(約190円)で売ることができます。価値が生まれるのです」と話してくれました。
商品の説明をするJoeさん
手作りのリサイクル商品
またあるメンバーの中には、小学校で環境教育を行っている人もいます。
ごみをリサイクルしたおもちゃを作り、子どもたちに楽しんでもらいながら環境のことを知ってもらうことがねらいです。
リサイクルおもちゃについて説明するスタッフ
デメリットから生まれるメリット
ごみ銀行のデメリットは何か、という質問に対しては「すべてが手作業なため膨大な時間がかかること」だそうです。しかし、それをカバーするため皆で協力する仕組みができあがっています。これにより、同じ時間を共有して作業を行うことで結束力が強まり、コミュニティの安全性強化にもつながっています。
今後の方向は、さらに加入者を増やし、活動を拡大していきたいとのことでした。
まとめ
インドネシアのごみ問題を根本的に解決するためには、政府による取り組みだけでなく、個々人の行動が不可欠です。
「ごみ銀行」は、まさしく個々人の行動からなる取り組みだと言えます。社会的にも経済的にもプラスの効果を生み出す、地域に根差した活動として、インドネシア社会に普及しつつあります。そしてごみの分別、削減に寄与するだけでなく、人々の意識の根底に影響を与えています。
私の意見としては、非効率的な部分もまだまだ多く、改善が必要だと思います。また、各地のごみ銀行をさらに強くまとめるネットワークが必要でしょう。
しかし新しい形のビジネスとして、ごみ銀行は非常に面白いと思いました。
これからの発展に期待です!
Facebookページ Komunitas TaPe uLi
写真提供元 Komunitas Tangan Peduli Lingkungan (TaPe uLi)