いまだ存在するインドネシアの魔術

 

Selamat siang. Apa kabar?
この頃、だいぶ肌寒くなってきましたね。

突然ですがみなさん、「魔術」と聞いて、どんなことを想像するでしょうか?

『何か相手を悪いことへ陥らせるための魔力』!?

インドネシアには古くから良いこと・悪いこと、様々な時にこの魔術が使われています。

まずインドネシアには、「白魔術」「黒魔術」という2種類の魔術があります。どちらが良い魔術で、どちらが悪い魔術かは、分かりますよね。そう、「白魔術」が良い魔術、「黒魔術」が悪い魔術です。

『え、良い魔術なんてあるの?!』と思われた方、あるんです!

 

雨を晴れに変える「白魔術」

びっくりですよね!魔術を使って、天気まで変えてしまうんです!この魔術は公式行事、特に結婚式の始まる前に使われます。

結婚式当日…
(主催者が)
A:今日はせっかくの結婚式なのに雨だな~。Dukung(魔術師)を読んで、晴れにしてもらおう!
B:そうだな!呼ぼう呼ぼう!

(魔術師がやってきて)
魔術師:blablablablablablaaa…..
呪文を唱えて、天に向かってエネルギーを放出して、雨雲を遠くへ押しやります。

主催者:晴れた晴れた!それでは結婚式を行ないましょう。

という調子です。
実際に、私の大学のインドネシア人の先生のご親戚の結婚式でもこのような場面があったらしいです。本当に晴れるのか、この目で見てみたいですね!とても興味深い「白魔術」です。

 

人を金のカタツムリに変えてしまう「黒魔術」?!

インドネシアの伝説には、いくつかこの「黒魔術」が登場してくるものがあります。
例えば、
・Keong Mas 「金のカタツムリ」
https://www.youtube.com/watch?v=LVNJ8yNtFv0
・Danau Toba 「トバ湖」
https://www.youtube.com/watch?v=8TDTMo1YUjg
・Bawang Merah Bawang Putih 「紫タマネギとニンニク」
https://www.youtube.com/watch?v=3hO2aYqae1s

などです。すべての物語の中で、相手への憎しみから黒魔術を使って、金のカタツムリに変身させてしまったり、その人が住んでいる地域に洪水を起こさせて湖ができたり、”Bawang Merah Bawang Putih”では相手の髪の毛1本を使って殺そうとしたりします。

“Keong Mas”という物語を例に分かりやすく説明しますね。

継母とその娘(Galuh Ajeng)、父とその娘(Dewi Chandra) という対立が家族内であります。継母は結婚相手の娘が大嫌いで、お手伝いさん扱いしたり、生母からの形見であるネックレスなどを奪ったりして、いじめていました。彼らはDewi Chandraを不幸に陥らせるために、魔術師が住むと言われている山奥にある家へ行きます(youtubeで約40分頃から)。そして、願いを受け入れた魔術師は、娘Dewi Chandraをカタツムリに変身させるための魔力を娘Galuh Ajengに与え、後日、彼女はその魔術を成功させるのです(約55分頃)。

あと、この場面ではもう一つ大きな「黒魔術」が使われていることが分かります。それは、継母が、人を恋に落とさせる「黒魔術」を使って結婚しているということです。これは45分頃の魔術師の語りの中で話されています。恋愛系だと「白魔術」のような気がしますが、相手に自分の髪の毛や洋服などを取られて、知らず知らずの内に魔術をかけられる危険があるために、「黒魔術」に含まれるようです。

ちなみに、現在でもインドネシアでは、朝起きたらベッドをほうきで叩いてホコリや髪の毛などを取り除く慣習がありますが、それは、この「黒魔術」にかけられないようにするためだという説もあります。

魔術にかけられて変身したKeong Masの物語は、現在、ジャカルタ南部にあるTaman Mini Indah Indonesiaというテーマパーク内でも楽しむことができます。
いまだ存在するインドネシアの魔術02

Photo by Luqman Marzuki
 

写真左側にある建物が、Keong Mas「金のカタツムリ」が再現されているものです。建物の中には、壁に物語が描かれています。

このような「黒魔術」の物語はフィクションだと思いますが、子供たちへの教訓を含んだ物語として、親から子へ受け継がれています。「白魔術」も含め、古くからのインドネシアの文化・慣習が今でも信じられている証拠ですね。

Youtubeのリンクをあげたものは、特に有名な物語です。インドネシア語が使われていますが、映像を見ていても話の流れが分かると思うので、是非時間がある時に見てみてください!

以上、日本人の私たちにとっては驚きが隠せない「白魔術」「黒魔術」についてでした。

 

Terima kasih!
Sampai juma lagi.

 

《参考》
白魔術と黒魔術
http://kuukai.miyachan.cc/e53032.html
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12103731022

Eye catch photo by Rumaysho.com

 




ABOUTこの記事をかいた人

角銅ふみ

東京外国語大学大学博士課程前期1年。インドネシアの首都・ジャカルタの北部を中心に貧困層の子供たちへの道徳教育について研究しています!さまざまな面からインドネシアについてお話していきます♪