アメリカの大学を卒業後、日本に戻ってきてAcroquest Technology社に入社し、会社として初海外進出先をミャンマーに選んだ際には自ら立候補してBranch Managerとなった寺田氏。公共インフラ向けソフトウェア開発が強みである同社がなぜインフラが整っていないミャンマーを選んだのだろうか。その理由と寺田氏のミャンマーの発展に対する想いを伺った。
《プロフィール|寺田 大典氏》
1974年10月生まれ。学習院高校を卒業後、日本でテンプル大学に進学後、本校である米国Temple Universityに編入後、卒業。卒業と共にAcroquest Technology社に入社してエンジニアからコンサルタントへとキャリアを積み、2012年5月よりミャンマーのAcroquest Myanmar Technology社にてBranch Managerとして設立から全業務のマネジメントを行っている。
目次
Javaのことなら任せてください。
ー日本とミャンマーでの事業内容を教えてください。
まず、日本のAcroquest Technologyの事業内容としては主に3つあります。 まず1つ目は公共インフラ向けソフトウェア開発、2つ目はJavaシステムのトラブルシューティングサービス、そして3つ目はシステム開発のコンサルティングです。 これら3つは密接に関連しているのですが、その中でも弊社の特徴はJavaに特化しているということです。
今ではプログラム言語としてJavaは有名ですが、弊社はJavaが出たばかりで使えないと言われていた頃からJavaでフレームワークを開発するなど、真摯に取り組んできましたので、その歴史から培われたJavaに対する技術力の高さが弊社の特徴です。
ミャンマーで事業を進めているAcroquest Myanmar Technologyとしては、ミャンマーのインフラ産業はまだ未成熟なので、日本のような公共インフラ向けソフトウェア開発ではなく、アンドロイド向けアプリケーションや各種システム開発を行っています。
ミャンマーの将来を見越して進出を決意
―初めての海外進出先がミャンマーだということですが、あえてまだインフラが整備されていないミャンマーに進出された理由は何でしょう?
弊社の強みは、公共インフラで求められる高い品質のソフトウェア開発なのですが、ミャンマーのインフラは未成熟で、今まさに国を挙げてインフラを整備している最中です。今後、インフラが整備されていく中で、管理するためのソフトウェアが必ず必要になってくることを見越して、早い段階から進出しています。
次に、弊社の社長である新免が、ミャンマーを訪れた際にミャンマーの将来性やミャンマー人の気質に魅力を感じたということです。私は、やはり来たからにはミャンマーの発展に貢献したいと思っています。
Acroquest Technologyは、働く上での「バリュー」を掲げており、その中に「誠実・信頼・一体感」という言葉があるのですが、それをミャンマーでも実現しようと日々励んでいるところです。正直な所、ミャンマーでは実現するのが難しい面もあります。しかし、今まで私達が日本で仕事をしていて、大切にしてきたことは万国共通で大事なことだと考えていますので、伝えていきたいと思っています。
オフィスの様子。社内公用語には英語が用いられている。
やりたいか、やりたくないか、直感が自分の道を拓く
―ミャンマー支店長には自ら立候補されたそうですね。ミャンマーに行かれたことはなかったのに、不安ではなかったのですか?
成功するか失敗するかではなく、やりたいかやりたくないかで判断しました。ミャンマー進出の話が出た時、直感でやりがいがありそうだなと感じ、手を挙げました。もちろんリスクはあります。でも、実際にやってみないとわからないじゃないですか。
私は入社してから最初の5,6年はエンジニアとして働いていたのですが、途中から社内でのソフトウェア開発プロセスを改善する部署に入り、マネージャーやコンサルタント的な仕事を経験させてもらいました。そうした会社全体をマネジメントする経験を日本で積ませて貰ったので、ミャンマーに来ても何とか業務を進められています。もし、エンジニアしか経験していなかったらミャンマーで今の仕事はできなかったでしょうね。
退社時にはミャンマー人社員の「お先に失礼します。お疲れ様でした。」という元気な声が響く。
日本では経験できない苦労と喜びをミャンマーで
―ミャンマーに来て一番苦労したことは何ですか?
正直な話、ミャンマーの人達は、まだ働くということに対しての意識や成熟度が低く、日本人の視点だとアルバイトのような感覚で働いているような所があります。ここは日本ではなくミャンマーなので、最初はしょうがないと思います。 しかし、そこで「仕事というのは常に成果を意識するべきで、成果に対する報酬が給料である。」という事を、業務を通じて繰り返し伝えています。最近は、少しずつ社員の意識も変わってきたように感じます。
―逆に一番うれしかった瞬間はどんな感じでしたか?
入社したばかりのミャンマー人社員の結婚式に招待された時ですね。それをきっかけに、その社員との信頼関係がより密接になったと思います。ミャンマー人は概して人の間違いを指摘したりするのを避けるようなのですが、その社員は私の間違いをしっかりと指摘してくれます。そのような信頼関係に基づいて仕事ができているということを実感できたのが嬉しかったです。
仕事終わりの社員との会話が信頼関係構築には必須。
ミャンマーは まさに"今"成長している。
―ミャンマーのここ2,3年の変化はすごいそうですね。
そうですね、とりわけヤンゴンの変化はすごいですよ。 2011年の民主化前にはGmailもFacebookも使えなかったのですが、民主化後は人々が世界中の情報を知れるようになりました。
私がミャンマーに来た2012年には渋滞なんてなかったのですが、最近は渋滞が目立っています。他にも、携帯電話のSIMカードが1枚25,000円くらいだったのが、2014年10月頃から150円になりました。データ通信も早くなってきていますしね。 1年ごとにヤンゴンに来る日本人は「来るたびに街がきれいになってきている。」と言っています。
2年前のタクシーなんて、ボロボロすぎて床に穴が空いていました。「床に穴が空いたタクシー」を想像できますか?信じてもらえないかもしれませんが、本当にあったのです。(笑)
オフィスから見たヤンゴン市街。日々車の量が多くなってきている。
ミャンマーで起業するなら、“今”しかない。
―ミャンマーで起業って、正直なところどうでしょう?
ミャンマーはまだまだ未開発ですが、これからうねりのように発展していくのは確かです。だからもし新しいビジネスを始めたい、新しい風を感じたいという方にはおすすめです。 もちろん苦労はするでしょうが、ミャンマーには何もないからこそチャンスがあるのです。
特に若い方には、挑戦して失敗したとしてもその経験が糧となり、日本でも海外でも、次のビジネスに活かせると思うので積極的に挑戦してほしいです。 他の東南アジアの国々と比較して治安も良いので、是非一度ミャンマーという国と人柄をみてチャレンジするのはおもしろいですよ。
別に世界で誰もやっていないことをする必要はなく、日本にあってミャンマーにないことを始めれば良いと思います。ただ、5年後に来ても遅いと思うので“今”である必要はあると思います・・・
【インターン生募集中】
ミャンマー支店では、日本語教育インストラクターや企業実務に2,3ヵ月ほどの期間取り組むインターン生を随時募集しています。詳しくはこちらまでご連絡ください。
連絡先:Acroquest Myanmar Technology株式会社
Email:recruit_mm@acroquest.co.jp (日本語でOKです)。
《インタビュー実施日:2015年2月27日》
追記:2017年8月末に、寺田氏は日本本社へ戻られ、日本からミャンマー支社をマネージされています。(ミャンマー支社は、後任の日本人社員が働いているとの事です)。
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