若い頃からの行動力で進むことをやめない。タイ・バンコクで日本人向け不動産ビジネスを立ち上げるまで - Dear Life Corporation社長 安藤功一郎氏【前編】

タイ・バンコクで日本人の駐在員向けに賃貸物件の仲介を行うディアライフ。今年で設立6年目になりバンコクで勢いのある会社の一つだ。生き物であるビジネスに対し、サッカースクール事業の開始、インドネシアへの進出など、急成長を遂げるASEANでのビジネスを最高に楽しむディアライフ社長・安藤氏が目指すものとは。前編、後編の2記事にわたり、熱意あふれる安藤氏の思いを伺いました。

 

《プロフィール|安藤功一郎氏》

ガリバーインターナショナル(現社名:IDOM)に新卒で入社し、社内トップセールスの成績を記録。新規事業開発室では、九州エリア統括責任者等のマネジメント経験を積む。当時の東証一部上場企業では最年少部長昇進記録を達成。

2006年にタイ・バンコクで旅行会社を起業。2012年にはタイの宿泊施設を年間14万室販売し、FITのインバウンド業界では最大手となる「年商20億円規模」までに成長させた後にM&Aにより売却。その後、不動産事業を展開する同社を設立。現在に至る。

 

「将来は起業しよう」とずっと思っていた

― 起業を目指したのはいつ頃だったのでしょうか。

漠然と「社長になる」と思っていたのは小学校の頃からで、その夢はずっと変わらず、学生生活を過ごしてきました。高校生のときは部活のサッカーに明け暮れていたので、その反動もあって、大学生のときは真面目に勉強してたんです。学部は、将来起業するときに役立つかなと思って法学部に入りました。

― 起業に向けて法律を学ばれていたんですね。

法律について勉強するだけでなく、普段から経営について考えるようになっていました。例えばお店やカフェに入ったとき「自分が経営者だったらこうするのにな」とか「こんなお花置いてあったら喜ぶのに」「こういうお菓子あったら売上上がるんじゃないかな」とか自然に考えていました。ゲームのような感覚でしたね。こうやって考えるのが楽しかったんです。

 

「早く起業したい」思いからついに独立へ

― 新卒では日本の企業でお勤めだったのですか。

 はい。3年間働いていました。いつかは起業しようとも思っていたので、「こんな自分でも採用してくれますか」といって内定先からは採用してもらったんです(笑)就活はゲームだと思っていて、説明会では人事の方が質問に対して全て答えてくれるので、こんなにいい機会はないと思っていました。学生時代で一番テンションが高かった時期だと思います(笑)

 結局、面接を進めて多くの内定をいただきました。そのなかで働くことに決めたのは、じつは内定を辞退しようとしていた企業だったんです。僕が内定の辞退を伝えに足を運んだとき、創業者の方がわざわざ出てきて僕と話してくれた。学生の僕のところに出てくれたのが嬉しくて、ここに就職しようと決めました。

― その内定先であるガリバーで、安藤さんは一ヵ月で12台もの自動車を成約させたそうですね。

 はい。当時、大学3年の春には内定もらえていたので、就職するまである程度時間がありますよね。僕は働きだすまで時間がもったいないと思っていました。内定をいただいてからそこでバイトをさせていただいて、最初は洗車とか雑用だったんですが、店長が良い方で商談もやらせていただきました。

 ― すごい行動力ですね。

 そうですね。働くまで我慢ができなくて(笑)。

― 3年間働いたあと、起業しようとその時に思ったきっかけは何ですか。

 起業しようとは常に思ってました。途中でも、「起業したいから辞める」と言いに行ったこともあったんです。しかし、上司から「今はまだもっと修行した方がいいよ」と言われたことが心に残り、もうしばらく留まることにました。最終的にはその上司からも気持ちよく送り出してもらいました。

― やっとこれで独立できるという思いだったのでしょうか。

 そうですね。若い頃は、早く失敗したいという気持ちでした。歳をとると、責任やリスクもあるので、若い頃に失敗しておきたいと。失敗するなら早く失敗したい、例えば、道に穴があるとしたら、早くその穴に落ちたいという気持ちでした。

 

東南アジア・タイで日本人向けのビジネスを開始

― 起業の際に、東南アジア・タイを選んだ理由は何ですか。

東南アジアを選んだのは、初めに何億もお金もってなくても起業できるからです。東南アジアだったら1千万で起業すると、日本で4~5千万のビジネスができる。もってるお金を最大に活用できる。それで東南アジアを選びました。

東南アジアの他の国も回ったのですが、タイにいる人の話を聞いたとき、一番起業しやすいと思ったんです。法律もいいかげんだったというのもありますけど(笑)。そして、在外日本人数が他の国よりも多かったですね。海外でも日本人向けのビジネスできる。そう思ってタイを選びました。

― なぜ「日本人向け」のビジネスなのでしょうか。

 はじめは、どうやってビジネスしていくかというのが課題でした。そこで、僕は日本人だから、日本人に対してのサービス提供がよりいいんじゃないかって。例えば、日本でロシア人向けのビジネスするとしたら、在日ロシア人に勝てないと思います。言葉の問題もありますしね。

 我々も同じように、同じ日本人のほうが言葉やコミュニケーションの摩擦が起きにくいですし、商慣習や文化の部分で共感を得られるのではないかと思いました。お客さん側としても、日本人は日本のサービスを受けたいという思いが強い。その需要に応えたいという考えもありました。

― その日本人向けの事業は、タイに来てすぐに成功に至ったのでしょうか。

 いえ。まず、タイに来てから今の会社は6社目です。それまでは5~6社作ってて、潰したり売ったりして、いろいろ試しました。例えば、飲食店とか携帯電話販売会社とか、マーケットもタイ人向けとか、韓国人向けのサービスとか。タイでタイ人向けのビジネスをやった時は、失敗したと感じましたね。いろいろ試す中で、やはり日本人なら日本人向けのビジネスが成功率高いと感じたんです。それで今のサービスに行きついたところです。

 ビジネスは生き物なので、一つの事業だと長くはできない、ということも視野に入れていて。続けていくかどうかをすぐに判断しないとビジネスをしていくのは難しいと思い、どんどん試してここにたどり着きました。

 

タイで不動産会社として戦う

― 数ある事業のなかで「不動産」を選んだ理由を教えてください。

 不動産の前は旅行会社をやってたんです。その頃うちが紹介していた滞在先は、ホテルよりもサービスアパートが中心でした。サービスアパートは、キッチンやバスがついた1日から1年まで住めるものを指します。

このとき対象としていたのは、日本からタイに「旅行しに来る人」でしたが、それを「住む人」に変えることで、旅行会社から不動産業にシフトしていきました

 当時、旅行に行くときは、日本にある旅行会社や海外にある日系の旅行会社に電話やメールで相談しながら旅行組み立てるように、観光客をケアする旅行会社の存在意義がありましたが、今では情報はインターネットでかなり詳しいところまで調べられるし、ホテルや航空券もオンラインでブッキングできますよね。それだと、旅行会社の必要性が薄れていくのではないかと思ったんです。

 一方で、長期間にわたって住むお部屋を探すときは、実際に足を運んで見に行く必要がありますし、家の周辺や駅がどこにあるかとか、お部屋から外の周りまで全部みたいと思うんです。となると、ご案内する人が必要ですよね。人が必要であれば、存在意義が生まれる、そう考えたのです

 これからのビジネスにおける対立は、「企業対企業」じゃなく「人間対AI」だと思うのです。AIは水も飲まず、24時間営業できる。でも、「現場での臨機応変な対応が求められる仕事ではAIに勝てる。お前らできないだろう(笑)」と。

― タイでも、不動産会社は他にあると思いますが、他の会社と比べて大きくなっているのには理由があるのでしょうか。

 当たり前のことを当たり前にやるだけです。ビジネスの現場においても、タイの緩い雰囲気に飲まれることなくスピード感やレスポンスを保ち、しっかりとお客様に対応できるようにしています。

ディアライフのホームページでは、タイでの生活情報を検索することができる。

日本の不動産との違いをすこし話すと、タイの不動産はどの業者も全ての住まいを案内できるんですよね。日本だと管理物件という縛りがあって、「このアパートはこの不動産会社しか紹介できない」というのがあります。つまり日本の不動産業界のビジネスのポイントは、いかに管理物件を持っているかになります。

 しかし海外の場合は、オーナーからすると貸せれば何でもいいんです。どこの不動産がお客様を連れてきてもいい、貸したい金額で借りてくれるお客様がいればいいというシステムです。だから不動産会社ごとに異なる物件を紹介出来たり、賃料などの条件が変わったりするわけではないので、ほかのところで差別化を図る必要があります。

 例えば、ディアライフではご成約いただいたお客様はお子様がサッカースクールに無料で参加できる特典を用意したり、盗難や退去時の補修費をカバーする住宅保険を全物件に無償で付けています。また、物件のご案内だけでなく、ご入居されてからご退去されるまで、日本人だからこそできる細かな気配りや、アフターサービスに力を注いでいます。

 

<まとめ>

幼い頃から夢を見ていた、起業。日本での社会経験を積み、ビジネスを始めやすいタイで実現させた。様々なビジネスを試し、在タイ日本人向けの不動産にたどり着く。ディアライフは住居提供に留まらず、生活全般のサポートをし続けていた。

Dear Life Corporation社長 安藤功一郎氏【後編】に続く。

 

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