2016.01.07

社会起業家 from Indonesia 特集、第2弾です!今回も、現地の方が現地の社会問題を事業で解決している現場に密着しました!

バリ島は日本人にとってもお馴染みのリゾート地ですよね。青く輝く海を見ながらバカンスを楽しむ観光客に溢れています。しかし、そのバリ島のさらに東、フローレス島では状況が一変するのです。

乾いた土地のフローレス島にある村。そこに住む女性は、キャッサバとお米だけを食べる毎日。

現金収入が得られないために、21.8%の女性が慢性的な栄養失調に苦しみ、80%の妊婦が妊娠期間中もハードな農作業に従事しているのです。収穫も気候に左右されるうえに、バイヤーによって値段がコントロールされるために、農作物はほとんど売り物にならず、鶏肉や魚は1、2週間に一度しか食べることができません。村の多くの男性がマレーシアに出稼ぎに行っており、村に残った女性たちが農作業をせざるを得ないのです。

インドネシア政府が提供する妊婦保護活動に参加するためのお金はたった10円。しかし、その10円さえ出せない妊婦が75%におよぶ地域が、フローレス島なのです。貧しいが故に妊婦の半数が医者の処置なしに、薬を使って自宅で出産し、25%の女性が死産や流産を経験しています。

今回は、そのような状況に置かれた女性を支援するDu’Anyamを設立した社会起業家Hannaさんの取り組みを紹介します。

<プロフィール|Hannaさん>

両親がフローレス島出身ということから、現在の活動地であるフローレス島で働くことに興味を持つ。高校生の頃にジャカルタで最も貧しいスラムの一つである地域で貧しい漁師の子どもへの教育支援、ホームレスへの支援活動をおこなう。
大学は立命館アジア太平洋大学で4年間国際ビジネスについて学ぶ。公文が主催するイングリッシュ・イマージョン・キャンプに参加し、小学4年生から6年生に英語を教えていた。マイクロファイナンスを活用しグラミン銀行を設立したソーシャルビジネスの生みの親と呼ばれるモハマド・ユヌス氏のオープン講義を聴き深く感銘を受ける。
卒業後、インドネシアに戻り、1か月間両親が生まれた故郷、フローレス島を訪れ、女性が経済的に自立し、教育の選択肢を得られるようにしたいと思うようになる。
2012年から、3年半あるNGOで働く。その経験が草の根レベルのコミュニティでの活動や起業家として、自然にある資源を活用しながらビジネスで貧困を解決する鍵を見つける。
2013年に、Du’Anyamの事業アイデアが生まれる。パートナーがDu’Anyamを成長させるためにフルコミットしてくれるようになった2015年にDu’Anyamは社会的企業として事業を開始。そして、2016年に共同設立者として、Hannaさんは、Du’Anyamにフルコミット。

※2017.06.14-08.03の期間、クラウドファンディングに挑戦中!

 

母なる織物

Photo by photohuman – Asian palmyra palm

アフリカ原産、東南アジア〜インド東部にかけて栽培されているパルミラヤシ

フローレス島にある村では、パルミラヤシの葉から作られたハンドクラフト製品が、お祝いなどの伝統行事や日常生活の中で使われていました。しかし、売られている商品は地元で非常に安く売買されているので、村の人々の暮らしを支える収入源とはなりにくかったのです。

そこで、Du’Anyamは、過酷な農作業の代わりとなる別の就業機会として、この地域に元来あった「織る」技術に目をつけたのです!

Duaはこの地方の言葉の「母」、Anyamは「織物」に由来している。Du’Anyamで「母なる織物」

Du’Anyamの支援は3つのSTEPによって構成されています。

STEP1:グループによる共同制作

STEP2:市場への参入(法人向け、個人向け)

STEP3:女性支援(経済支援、母体保護)

それでは、STEPごとにDu’Anyamの取り組みを追っていきたいと思います!

 

STEP1 助け合いの精神が宿るコミュニティ

写真引用元:Du’Anyam HP

冒頭で、村の多くの女性が織る技術を持っていたと紹介しました。

下の左図を見てください。

実は、村には、女性の織る技術だけでなく、約15名で構成される農作業グループという共同活動を行うコミュニティが存在していたのです。


画像引用元:Du’Anyam HP

Du’Anyamはグループごとに空き時間を利用して村の女性に商品を製作してもらいました。グループ内に妊婦がいない場合は、全員で農作業と製作活動の時間を平等にわけていますが、グループメンバーに妊婦がいる場合は、役割に変化が生じるのです。

今度は、右図を見てください。

妊娠後期に入った女性は農作業は行わず、他の女性たちが妊婦に代わって土地を耕し、その代わりに妊婦は身体に負担のかかりにくい製作活動に専念していることがわかります。つまり、複数人で作業を分担することで妊婦の負担を減らすように工夫されているのです。

 

STEP2 女性のモチベーションを高める管理体制

今となっては、Du’Anyamの製品は柄のパターンも豊富に取り揃えていますが、設立当初は「織物なんて商品にならない」と村の女性たちは織物を売って生計を立てることに半信半疑でした。

こうした村の女性たちの不安を解消し信頼を得るために、Du’Anyamは管理体制を徹底し、高品質を実現したのです。

村にスタッフを配置し、一つ一つの商品を検査し、均等なサイズや質を保つ。さらには、商品の出来によって、女性たちに払われる金額も変えることで女性たちの働く意欲をかりたてました。

例えば、余分な繊維を取り除き、カラーリングや織り方を工夫したモダンなバスケット1つの値段は約5ドル。運送費や運営費などの経費を除くと約3ドルです。もし質がAランクと判断されれば、その約3ドルは100%支払われますが、Bランクは70%、Cランクと判断されると50%しか支払われないため、女性たちは常に質の高いものを作ろうとします。結果的に商品として、ふさわしい母なる織物を市場に供給することができるのです。

Du’Anyamは、法人向けと個人向けの両方に商品を提供しています。

法人向けとしては、主にバリ島のリゾートホテルなどで商品が置かれ、ゲストのスリッパとしてDu’Anyamの商品が使われています。スタッフが現地で直接交渉して、レストランやホテルに商品を置いてもらっているそうです。アメリカのフェアトレード商品を扱う店や、他の国からの注文も受けています。

個人向けの顧客に対しては、オンラインストアやSunday Marketなどの市場で、スリッパ、ランチョンマット、コースター、財布、タブレットケースなどを販売しています。

しかしながら、まだ店舗での販売はありません。輸出費が高くなるということ、全て手作りのために大量生産は難しいということからバリ島以外の他のエリアには、あまり販売経路を広げられていない現状があります。

流通経路も複雑です。製品はフローレス島で作っていますが、スリッパの踵を付けたり、ロゴやDu’Anyamの活動を紹介したカードをつけるなどの加工はジャカルタで行っているのです。そこから、消費者のもとへ運ばれるので、効率がいいとはいえません。今は他の荷物と一緒に船で運んでコストを抑えていますが、それでもその運送費は全体の支出の12%を占めています。

生産者側の仕組みはうまく作れているようですが、流通の部分ではまだまだ課題があるようです。

 

STEP3 女性のエンパワーメントを広げる

課題を抱えながらも、Du’Anyamが村の女性と一緒に活動することによって村の女性の生活は大きく変わりました。商品一つ一つに対して製作費が支払われるだけでなく、販売後の利益もシェアされ、特に妊婦がグループにいるときは、重点的に利益が配分されるのです。

現金収入が入ったことで、村の女性たちは栄養不足の改善や気候に左右される自給自足農業の依存からの脱却が可能になりました。さらに、病院での出産にかかる交通費や宿泊費、医療費を支払うことができるようになり、母体の健康の保護、流産や死産の減少に繋がったのです。

2014年に立ち上がったDu’Anyamは、実際に販売し始めたのが2015年。まだ販売し始めて2年目と、まだまだ新しい取り組みです。最初の年は注文納期に間に合わず、キャンセルせざるを得ないこともありましたが、今では技術セミナーも開かれ、技術も向上しています。

Hannaさんは、活動を通じて、不利な状況に置かれた女性たちが経済的に自立し、彼女たちが、自分で人生を選択できる社会を創りたいと強くおっしゃっていました。その社会の実現にDu’Anyamは一歩一歩近づいています。1つの村で活動していたDu’Anyamは今では、17の村、180人の女性たちと活動するようになったのです。Du’Anyamは、今後もますます事業を拡大していき、女性のエンパワーメントをインドネシア全土に広げていくでしょう。

参考URL:Du’Anyam | Empowering Women through Social Enterprise

 

取材後記

Du’Anyamは確かに課題を抱えていますが、インタビューをしていて、創始者Hannaさんの強い思いを感じることができました。この想いが高校からの同級生を再び集め、動かしているのでしょう。そして、私たち消費者までをも巻き込んでいます。

実は、Du’Anyamは日本語のホームページも開設しています。スリッパや籠バッグを日常的に利用する日本でもDu’Anyamの想いとともに製品が活躍する日がくることを期待しています。

※2017.06.14-08.03までクラウドファンディングに挑戦しています!応援よろしくお願いします!

取材メンバー:Angela Upitya、笹島沙也加、名古路怜美

執筆:笹島沙也加 編集:井上良太

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