ASEANのお金持ち・ブルネイが、シンガポールから学べることとは?

2016.10.06

ブルネイからSelamat pagi (こんにちは) .

世界で最も裕福な国であるブルネイの大学に留学を始めてから約2か月が経とうとしています。

日々授業や課題に毎日追われる生活を続けていた私ですが、先日、大学がMid Term Semester Breakという約1週間ほどの休暇であったため、この休暇を利用してタイ、マレーシア、シンガポールに旅行してきました。

ブルネイは他のASEAN諸国から近いため、ちょっとした休みがあれば、それを利用して簡単に旅行することができます。航空券もASEAN域内であるため、日本からと比べると極めて安い! 簡単に他のASEAN諸国へ旅行に行けるという点でもブルネイ含めASEAN留学は大変魅力的です。

今回、タイ、マレーシア、シンガポールというASEAN3ヵ国に旅行したのですが、旅行して改めて感じたことは、他のASEAN諸国では感じることがなかったブルネイ独特の違和感でした。

い、いわかん!? なんとも言い難い表現で申し訳ありません (笑)。

本記事ではブルネイの社会や経済について言及しながら、他のASEAN諸国では感じることがなかったブルネイでの違和感をお伝えします。

教育費医療費、そして消費税までもが無料!

今までブルネイの記事でご紹介があったようにブルネイは非常に豊かな国です。

国民一人当たりのGDPはシンガポールに次いでASEAN諸国の中では2位に位置付けられています。

%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%8d%e3%82%a4%e2%91%a0Photo from KPMG International

その原因としてはブルネイは人口が約41万人でありながら、天然ガス、石油などの地下資源が豊富であるため、その輸出により大変経済が潤っているからです (前回の記事: ブルネイは親日国!?キーパーソンとなった1人の日本人の物語で紹介があったように主要な貿易取引相手国は日本です) 。

それに伴い社会保障も大変充実しており、教育費・医療費は無料、その他消費税や所得税などもかからないとのこと。土地や住居も国から支給されており、これほどうらやましい国は世界を見渡してみてもかなり少ないのではないでしょうか。というわけでブルネイ国民は何不自由なくこの国では暮らしています。

 

ブルネイの天然資源もあと20年!?

次はブルネイの経済について深く見ていきたいと思います。

下の図をご覧ください。

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ブルネイGDP推移

%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%8d%e3%82%a4%e2%91%a2GDP成長率:ブルネイ、ASEAN5ヵ国、世界

Photo from Department of Economic Planning and Development - National Accounts

ここから分かることは他のASEAN諸国が高い経済成長を遂げている中、ブルネイは近年ほとんど経済成長を遂げていません。世界全体と比べてもそれ以下となっています。

原因としては、そもそもブルネイはGDPを占める石油・天然ガスの割合が約6割、輸出総額に占める割合が約9割と極めて石油・天然ガスに偏った産業構造をしており、天然資源の価格変動や採掘量により、経済成長が左右されてしまうからです。

ブルネイは石油・天然ガスをもって国家が成り立っており、2015年のような原油価格の急落があるとブルネイ経済はたちまち落ち込んでしまいます。

またブルネイの雇用は大きく国に依存しており、全体の仕事の約60%が公務員です。

それは他の職より、公務員の方が給与水準が良いためであり、優秀な学生ほど公務員に就くため、産業構造の多様化ができていません。

今後、石油・天然ガスに代表される天然資源が枯渇していく中、それらに大部分を依存するブルネイはどうなっていくのでしょうか?間違いなく現在の産業構造ですとブルネイ社会は崩壊に向かうと思います。ある調査機関の推測によると、あと早くて20年ほどでブルネイが保有する天然資源は枯渇してしまうそうです。

このような危機的状況が今後早くて20年ほどでブルネイに訪れますが、ほとんどのブルネイ人はこの状況を認識してはいても、あまり危機感を抱いていないように私は感じました。

私が他のASEAN諸国ではなく、ブルネイで感じた違和感はここにありました。

他のASEAN諸国に比べてブルネイは現状に満足しすぎている。

ブルネイは穏やかで、のほほ~んとしていて、時間がここだけゆっくり流れているように感じます。歩くスピードも遅いですし、感覚としては1分が100秒に感じてしまうくらいゆっくりしています。

天然資源が豊富にとれ、経済が豊かであり、現状に不満がまったくでないほど社会保障制度が充実しているからでしょう。まったく生活を心配する必要がないのです。

しかし、今後起こるであろう危機は、少しずつではありますがブルネイに歩み寄ってきています。それなのに彼らはあまり危機感を抱いていないように感じます。

 

近隣国シンガポールはどうだったか

一方、他のASEAN諸国はどうでしょうか?ASEANの中でこれまで大きく成長を遂げてきたシンガポールを例にとってみましょう。

1965年にマレーシアから追放されるような形で独立した小国は天然資源が全くない、人口も少ない、国土も小さい、技術もないなどの全く何もないところからのスタートでした。

彼らは自分たちが国として生き残るために危機感しかなかった。ブルネイのように現状に満足することなく、常に他のASEAN諸国より「一歩先へ、一歩先へと」と歩んでいなければ到底、このような小国が生き残ることはできませんでした。

血をにじむような努力を積み重ねった結果、現在のような偉大な発展を遂げることができたのです。

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ブルネイのこれからに期待!

ブルネイで感じた違和感について、シンガポールを比較対象にして述べてきましたが、他のASEAN諸国と比べてもブルネイは豊かであるため、現状に対する危機感がないように感じます。

しかしながら、ブルネイの人々全員が現状に満足し、これから起こるであろう危機に何もしていないわけではありません。政府や一部の人々はこの問題に対処しようとしています。

石油や天然資源に依存した産業構造から脱却し、産業を多様化させるため、私がブルネイで所属する大学では起業家精神を養う授業を行っていたり、政府系の機関はこれからの経済を担うであろう若者に新たなビジネスをつくってもらうべく、スタートアップの支援を行ったりしています。

またブルネイは国土の約70%が熱帯雨林で、その内の約60%が森林保護の観点から未開発です。これらの資源を生かしてエコツーリズムという自然環境や文化・歴史等を観光の対象とし、環境の保全性と持続可能性を考慮した新しい観光を産業の柱として取り入れようとしています。

(参考記事) アジアの秘境・ブルネイで訪れるべき観光スポット5選

%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%8d%e3%82%a4%e2%91%a4Photo from Brunei Tourism Department

このように少しずつではありますがブルネイは変わろうとしています。
これからのブルネイに期待を寄せつつ、見守っていきたいと思います。