2017年にシリーズAで1,450万USD(約13.5億円)を調達/クローズして大注目を浴びるスタートアップ、AnyMind Group(旧AdAsia Holdings)。
同社が今年からサービス提供を開始する新規事業で責任者として選んだのは、取材時まだ21歳の近藤氏で、なんと大学を休学していきなりアジアに飛び込んできたという異例の経歴の持ち主です。
今回は近藤氏に新規事業責任者に抜擢されるまでの道やその裏に潜む熱い想いを伺いました。
<<プロフィール|近藤聖(こんどう しょう)>>
2014年に神戸大学に入学後、企業での営業インターン、同大学の起業家養成ゼミで事業の立ち上げ、東京でも企業のインターンを経て2016年12月から旧AdAsia Holdingsに入社。
2017年8月からは2018年1月にサービスを開始した新規事業『TalentMind』の責任者として事業開発を担当。
目次
打倒アリババ&テンセント!グローバルに名を轟かせる企業に!
ーAnyMind Groupの事業について教えてください。
AnyMind Groupは、人事領域、マーケティング領域などでAIを活用したマッチングソリューションを提供しているテクノロジー会社です。
組織改変前はAdAsiaと言うだけあって、広告代理店の機能はもちろんありますが、広告ソリューションを提供しているだけの企業ではありません。今はAIを活用して広告領域で主に事業を展開していますが、この先新しい領域にもどんどん進出して行く予定です。
AIを活用したソリューションの提供の例として、CastingAsiaという事業があります。
今、SNSが深く浸透している東南アジアでは、インフルエンサーという、ソーシャル上で発言力のある人がいます。彼ら/彼女らがどういったポストをし、どういったフォロワーがいて、どういったコメントがつく、などという個々のデータをAIを使って分析し、その分析データを元にクライアントのニーズに最適のインフルエンサーをマッチさせる、という事業です。
アリババやテンセントのような、グローバルに名を轟かせるテクノロジー企業を目指しています。
最年少で新規事業の責任者に
ー近藤さんの仕事内容はどのような感じでしょうか?
最初はAdAsiaのベトナム支社の立ち上げをベトナム人マネージャーと2人で行っていました。
当時の事業のメインはオンライン広告だったので、その広告営業が主な仕事でしたが、営業の後の提案や実際の運用など、ファンクションごとに担当する人がいなかったので、全部自分でやっていました。全拠点の中で選ばれるMVPを受賞し、またベトナム拠点の売上は在籍期間中常にトップを記録しました。
そして、2017年8月に社長の十河から新規事業の責任者に任命され、タイ支社に拠点を移して事業立ち上げの全てを担当しています。
ーまだ若いのに、新事業責任者!どんな話の流れだったんでしょうか?
社長の十河とよく話すんですけど、自分が経営に興味があったということもあり、細かいタスクの話よりも、AdAsiaのこの先とか、どういう風に事業を伸ばしていくかとか、この先やりたいビジネスの話をしていたんです。それで、8月にいつも通り話していると
十河「お前新規事業やらない?」
近藤「やりたいです!ちなみに何をするんですか?」
十河「話してたあのビジネスしようと思うんだよね」
近藤「そうなんですね、自分は何やったらいいですか」
十河「全部だね。俺時間ないから」
という感じでした。(笑)
戦略は一緒に練るけれど、採用やプロダクト開発などは全部頼む、といった感じで、ドン引きするくらいの裁量権を持って仕事をしています!
既存事業で培ったデータ分析技術を、人事領域へ展開
ーその新規事業、教えてもらってもいいですか?
人材領域における、採用候補者のスクリーニング(ふるい分け)サービス『TalendMind』で、
ソーシャルをはじめ、性格診断や履歴書などの個人のデータをAIが分析して、それを元に企業側に適切な候補者を推薦するという形です。
簡単にいうと、最初にお話ししたインフルエンサー事業でしていることを人材領域に展開するということです。インフルエンサーと広告主の関係を、採用候補者と企業に当てはめるといった感じですね。
冒頭で説明した弊社事業の1つのサービスのCastingAsiaでは、インフルエンサーのソーシャルにおけるデータを分析して顧客のニーズにあったインフルエンサーを紹介する、ということをしていますが、そのコアテクノロジーを、企業の採用活動における候補者のスクリーニングにも活かせるのではないか、という所からこの事業をするに至りました。
今の時代、学歴が良くなくても能力が高い人はたくさんいるのに、まだ企業の採用活動における学歴の比重は重く、学歴が良くないというだけで弾かれてしまう人が多いといったような採用活動の歪みもあります。ますます個々人のパフォーマンスが尊重されていく時代において、その才能や適性を測る最適なリソースはSNSだと考えています。
このサービスがうまく普及すれば企業が求める人材を適切に推薦することができ、大きなインパクトを与えられると考えています。
ー面白そう!近藤さん個人はその中でどういった仕事をしてるんですか?
立ち上げ期なので、給与交渉を含めた採用、プロダクト開発、予算、営業など基本的に全てをやっています。
細かい所ですが、サービスを開始するので、利用規約とかも作っています。
利用規約なんかは特に専門知識が必要なので、そういった分野の専門家の助けを得ながら、本当にみんなと一緒にプロダクトを作っている、という感じですね!
「海外」x「裁量権を持って創業者の近くで働く」という軸で日本を飛び出しAdAsiaへ
ーどうしてAdAsiaという海外に拠点を置くスタートアップで働こうと思ったんでしょうか?
「大きな裁量権を持って創業者の近くで働ける」「海外の企業」というのが自分がAdAsiaを選んだ際に持っていた軸でした。
まずは「なぜ海外なのか」という理由から説明させてください。
2016年度から大学を休学しているのですが、同年7月から3ヶ月ほど、東京のITベンチャー企業でインターンをしていました。
そこの会社には多くのインターン生がいたのですが、みんな東京の大学に通っていて、休学せずに週4日とか5日とかインターンしていたんです。
一方で自分は関西の大学に通っているので、東京でインターンをするためには休学するしかなく、東京の学生との差を感じました。「なんで東京の学生が休学せずにできることを関西の学生は休学しなければできないんだ」と。
せっかく休学するのなら、日本の学生の誰もが休学しないとできないことをしようと思い、海外でインターンすることに決めました。
ーその理由は関東の大学生には無い視点で、おもしろいです!では、「裁量権を持って創業者と距離の近くで働ける」という軸について教えてください。
大学2年生の時の事業立ち上げの経験と、先ほど申し上げた東京でのインターンでの経験が大きな要因です。
大学1年生の時にとある企業で営業のインターンをしていたのですが、まずそこで「自分も起業したい」と思うようになりました。そして、2年生になった際に神戸大学の起業家養成ゼミに入り、メンターの方についてもらって事業の立ち上げをしました。
立ち上げた事業は、自分自身が大学受験時に猛勉強をして大学に合格できたという経験と学歴を活かした、受験生向けのコンサルティング業務です。
この事業を立ち上げる過程で、「自分は起業へのスタートラインに全く立てていない」と強く感じました。起業したいという想いはあるものの、実際に起業をしてみると何をすればいいかわからなかったのです。
ですので、急成長していて、勢いのある企業に入り、優秀な社長の間近で働きたいと思いました。そういう人が事業を立ち上げる時に何を考えてどのように実行するのか、事業アイディアにどう勝算を見出すのか、どういう人を巻き込むのかなどを学びたいなと。
毎日どんなタスクを設定しているのか、また朝出社してまずどんなことをするのか、というところまで知りたかったんです。(笑)
ーなるほど、それで休学して東京のスタートアップでインターンをしたのですね。
そうです。しかし、社長の近くで働くことはできませんでした。というのも、規模が既に大きくなっていて、メンバーが70人くらいいたんです。そうすると、社長 ー 役員 ー 部長 ー 社員 ー インターンのようにレイヤーがはっきり分かれてしまっているので、社長と働くことは厳しいんですよね。
それに、先ほど述べた通り、インターンが多かったので、渡される仕事が「インターン用の仕事」という感じで、自分じゃなくてもできるようなものでした。
もちろん優秀な社員が多く、とてもいい会社だったので自分自身成長することはできたのですが、環境を変えて、もっと社長の近くで裁量権を持って仕事をしたいと思いました。そして、裁量権を持って仕事をするためには、自分をインターンとしてではなく、社員のように扱ってくれる会社がよかったんです。
すなわち、「まだ規模は小さくてインターンを採用するまで手が回らないが、これから急成長する企業」。それに「海外にある」という軸を足したもの、そういった軸でリサーチをしていたらぴったり当てはまるのがAdAsiaでした。
経営陣に直接メッセージを送り、AdAsiaにジョイン
ーということは、AdAsiaは当時、インターンを採用していなかったのですか?
そうですね。
もうひたすらメッセージを送りまくりました。
会社HPの問い合わせはもちろん、CEOとCOOのFacebook、LinkedIn、Twitter全てフォローしてメッセージ攻撃をしました。
そうすると、LinkedInでCEOから返事が返ってきて、面接をしていただき、採用が決定しました。
簡単な話、採用に手が回らない段階で、ただで働いて売り上げ出しますっていう若者がいたら、雇わない理由がないですからね。ですので、メッセージを送る前から採用される自信しかありませんでした。結局給与は東南アジアのインターンの給与の相場をはるかに超えた額をオファーして頂きましたが。
2016年度に休学し始めた時に、もう大学へは戻るつもりはほとんどなく、もしAdAsiaが面白い企業だと感じることができれば、すぐにでも入社したかったんです。しかし、会社からしてみると、知らない大学生がいきなり社員として雇ってくださいと言ってきたらまずは様子を見るものです。
私も、万が一会社に対してバリューを提供できないようなら社員にはならないほうがいいと思っていたので、最初はインターンとして働き始め、自身でも「この会社でちゃんと自分が結果を残せる」と確信できた頃の2016年の12月に、正社員としての登用が決定しました。
今年2018年の3月でちょうど休学してから2年が経つので、そのタイミングで退学する予定です。
ー退学してまで海外のスタートアップで働くことに踏み切れた理由
今後、人材の価値は希少性で決まると思っていて、それはみんなと同じことをしていて価値が高くなるのは難しいものの、みんながやらないことをして価値を上げることはできると思ったからです。
みんながやる道は絶対に選ばず、マスに馴染まず、マイノリティに行きたいですね!
長期的な視点で見ると「挫折」という概念は無い
ーもう1年半くらい働いていらっしゃると思うんですが、何か挫折はありましたか?
自分にはあまり挫折という概念がないんで、挫折が何かあまりよくわからないんです。
もちろん細かいところで大変なこととか辛いこととかはいくらでもありますけど、それを乗り越えることで自分が成長したり幸せになればいいので、全然気にしていないです。
大変なことや辛いことをそれ単体で見るのではなくて、長期的な視点で見れば、トータルでは絶対プラスなはずなので、挫折と思うことは殆どありません。
ー最後に、将来の夢を教えてください!
ぶっちゃけ、将来の夢がないからこの会社に入ったというところがありますね。
幸せになりたいという思いはありますが、幸せって、自分がやりたい時に自分のしたいことをできることだと考えてて、その欲求のほとんどが、お金で実現・解決できると思っています。
そして自分が本当にやりたいことは、お金で解決できる程度の欲求を全て満たした時に見えるのではないでしょうか。
だから、今はとにかく経済的自由を手に入れるためにたくさん稼ぎたいと思っています。
今は、とにかくがむしゃらに頑張ることしか考えていません。
【編集後記】
近藤さんは今まで会った同世代のなかでトップレベルに視座が高く、同い年でこんな経験してる人が日本人でいるのか、と衝撃を受けました。
近藤さんが責任者をしている新規事業も非常に面白く、ぜひ使ってみたいと思いました。
これからが楽しみです!