途上国からワクワク連鎖を起こす! 『途上国×女の子』の可能性を追い続けるラオスアンバサダーガールに迫る


大学時代から事業開発を通して発展途上国の貧困問題解決にアプローチしてきた好岡利香子氏にお話を伺った。教育と雇用の機会を創出し、現地の人々で回せる仕組みを生み出したいと語る好岡氏。ひたむきに挑戦し続ける彼女を突き動かす原動力は何なのか。女の子だからこそ楽しめること、途上国だからこそワクワクする可能性を追求し、実現してきたラオスガールに迫った。

 

<プロフィール|好岡利香子氏>
高校時代に国際協力を志し、ラオスに教育支援を行う学生国際協力団体(SIVIO)に所属する。副代表を務め、引退後は研究をしながら事業開発を通して貧困問題に関わることに興味を持ち、ラオスと関わるアパレル・アプリ開発・カフェ経営等の事業を行う。大学卒業後の2014年、株式会社リラクに新卒入社。1年目の現在、健康デザインスタジオ「Re.Ra.Ku」新橋店の店長に着任。社外では、2014年9月からラオスアンバサダー(観光大使)としても活動する。教育と雇用の機会を創出することで、ラオスをはじめとする東南アジア諸国の貧困問題や可能性格差に寄与することが譲れない目標。

 

「今しかない」と一念発起!ラオスの人々とラオスのモノで、現地の問題を解決する仕組みをつくる

 

ー大学時代にラオスで事業をしていたと伺いました。どんな経緯で事業を始めたのですか?

もともと貧困問題に興味があって、大学3年の前半まで、ラオスに教育支援を行う学生国際協力団体で活動していました。そこでの活動を通して、ボランティアの必要性も実感すると同時に、ボランティアで貧困問題に取り組み続ける持続性に限界を感じました。貧困問題の根本に取り組んでいくには、現地の人々が現地の力で回せる仕組みを作る必要があると思ったんです。ちょうどそのころ参加した、文部科学省からの委託事業である日独共同プログラムを通して、貧困問題にビジネスでアプローチしていくという視点に興味を持ちました。その後、大学での研究テーマを『ビジネスはラオスの貧困問題解決において有効な手段となりえるか』と据えて、ラオスと日本を行き来しながら研究を進めました。

大学から研究費も頂いていました。せっかくこれだけの環境があるのに、さらなる行動をしないともったいないと思い、研究内容に添って、実際にビジネスが貧困問題解決の糸口として一役立てるか試してみることにしました。この環境を活かさないわけにはいかないと思ったので行動にうつしました。

 

ー当時の事業の内容を教えてください。

アパレルやカフェ、アプリ開発などに携わらせて頂きました。アパレルに関しては、ラオスの織物技術、また染色技術に魅せられ、ラオスシルクの可能性を感じました。ラオスシルクの染色ってものすごい魅力があるんですよね。玉ねぎや花など、自然なもので染めるので独特ですごくいい色が出るんです。海外のファストファッションブランドでみられるような色合いが多く、面白いと思い、染色にフォーカスすることに決めました。

カフェに関しては、ラオスで作られたコーヒーを「ラオスコーヒー」として日本で販売し、認知度向上を目指していました。また、アプリ開発に関しては、他大学院のプロジェクトに参加させて頂き、「Story meets Creator:Designing the sustainable system to support them based on gamification」(「ゲーミフィケーションが紡ぐものづくりのものがたり」)というテーマで、現地の人々が現地のものづくりを自ら発信できるシステム開発に関わっていました。

 

現地で染色も勉強。現地の人々の目線に立って見えてきたものとは・・・?

 

実際にラオスの工場に何度も足を運び、染色や織物も学びました。言葉が通じないことも多くありましたが、現地の人々と生活を共にすることで多くのことを学べたんです。特に、現地の人々が何に働くことや生きることのモチベーションやワクワクする気持ちを感じているのか。実際現地の人々と同じ環境で、同じ時間を過ごさないと分からないんですよね。

あくまで私の本来の目的は、現地の人々で自国の問題解決できる仕組み作りのため、雇用と教育の機会を創出することだったので、生産者に寄り添うことや、現地で五感で感じることにこだわりました。

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ラオスを世界に広めたい!「MADE IN LAOS」を世界に

 

現地で過ごすうちに、「MADE IN LAOS」を広めたいという思いが生まれました。ラオスで生産されている原料や製品の材料となるものはいくつもあったのですが、「MADE IN LAOS」として発信されるモノはなかなかありませんでした。材料だけが隣国に渡り、隣国で加工され、ベトナム産、タイ産として世界に出ていっていました。

例えばコーヒー豆。世界的にニーズがあるコーヒー豆は、ラオスでもたくさん生産されています。しかしそれを加工してパッケージ化するのは他国なので、ラオスで作られたことが世界の人々に知って頂く機会はほぼありません。さらに、ラオスは海に面していないがために物流が悪く、人口が約600万人と少なくビジネスチャンスも少ないため、ASEANの経済成長の波になかなか乗れていないように感じました。

その現状に直面して、「もったいない!惜しいな!」と思ったし、同時に「ラオスは可能性に満ち溢れてる!」と確信していました。せっかくラオスにご縁あって関わってきたんだから、この国を盛り上げたいという勝手な使命感を感じましたね。(笑)

 

自分という人間の市場価値を考える

 

ーこれだけ海外での事業経験があって、目的も明確な好岡さんが日本で働くことを決めた理由は何だったんですか?

やっぱりそれはすごく迷いましたね。実際、東南アジアでの協業のお誘いもいくつかあったし、明確な目標があるなら早めに挑戦した方がいいっていうアドバイスを頂いたことも多くて。でも、自分で何かしたり、東南アジアに飛び出すことって、近い未来ならいつでもできるなって思ったんです。

そこで、数年後に何の肩書きもなく、好岡利香子という一人の人間としての市場価値が最も高まっている状態がイメージが出来る環境に飛び込もうと思いました。目先だけじゃなく、長期的なビジョンで考えたときに、「日本で」というよりは、「今の会社で」働きたいと思い、決心することができましたね。

 

ー現在勤めていらっしゃるリラクに入ろうと思った理由はなんですか?

理由はいろいろありますが、大きくあげるとすれば3点ですね。まず1点目に、ラオスの貧困問題を研究していた時、教育・雇用を重要視してきました。弊社であれば、国は違えど、この視点を持って働けると思ったことです。2点目は、リラクの描くビジョンのスピード段階と自分自身の理想とするスピード感がマッチングしたこと。自分がやりたいことにすぐに結びつくわけではないですが、自分がやりたいことをやるために必要な力とチャンスが、自分次第で、どこよりも早く積ませて頂けると思っています。あくまで自分次第でですが。最後は、運命を感じたからですね。(笑)

 

ー女の子が途上国で活動することに周囲からの反対はありませんでしたか?

はじめはよく反対されました。「女の子なのに」って何でだろう?と思うとすごく悔しくて、女の子として生まれたことをコンプレックスに感じたこともありました。でも継続は力なりですね。諦めず、やり続け、伝え続け、本気の姿をみせ続ける。今は、応援して頂いてます。女の子でも、女の子だからこそ、ワクワクできることがいっぱいあると私は確信しています。その力を爆発させたいですね!(笑)

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現地に可能性を 日本にガッツを

 

ーこれからのビジョンを教えてください。

今の環境で目に見える成果を出すことが第一目標です。あとは、ラオスが2020年までに最貧国と呼ばれることからの脱出を掲げているので、それまでにラオスの教育・雇用に関われる経験を積みたいですね。教育と雇用の機会を創出することで、ラオスをはじめとする東南アジア諸国の貧困問題や可能性格差に寄与すること。「途上国からワクワク連鎖を起こす」こと。あくまでこれが私の目標です。

 

ー途上国のおもしろさは何だと思いますか?

私は「途上国=ネガティブ・マイナスなイメージ」では決してないと思います。英語では、途上国=developing country、先進国=developed country と表現されます。圧倒的に、前者の現在進行形の方がワクワクしませんか?!(笑)この可能性の塊に魅了されました。そんな途上国と呼ばれる国からワクワクする連鎖を起こしていきたいです。

途上国の人々は、みんな生きることに貪欲だなと思うんです。生きることに貪欲で、生きてやるっていう強い想いを感じます。そのエネルギッシュさやパワフルさは今の日本にももっとほしいですよね!

日本は何をするにも可能性に溢れていて、最低限の生活は保障されている。努力次第でどこまでも、何でも、目指せる環境が日本にはある。でも、どんなに努力しても生きることさえ精一杯な地域もあります。私は、世界が平等である必要はないと思います。けれど、努力できる可能性はみんなにあってほしいと思うんです。

 

国籍を超えて、一人の人間としてできることを!

 

ー日本人として海外で活動をする、日本を海外に発信することについてどう思いますか?

私自身は、日本人というフレームがあまりありません。日本は大好きですが、日本人としてのアイデンティティとかは、正直あまりないのかもしれません。

以前、日本にも解決しなければいけない問題はいっぱいあるのに、途上国にだけフォーカスしていることに厳しいご意見を頂いたこともありました。もちろん価値観の違いなので、一意見として、理解は出来ます。しかし、その上で、個人的には線引きがいるのかなと思います。日本が震災の被害を受けた時、ラオスの電気もほとんど通っていない村から援助を頂きました。困っている人が目の前にいれば助けるのはごく自然なことで、そこに国籍は関係ないと思うんです。いかに、助けたいとおもい合える関係を相手と築けるかだと思うんです。気付いたときに気付いた人がやればいい。

 

ワクワクすることを選び、選んだ道を正解にする

 

ー日本の若者にメッセージをお願いします。

私もまだ社会人1年生なので、偉そうなことは言えません。(笑)ただ、ワクワク生きろ!ということを、自分自身大切にしたいですね。自分が常にワクワク出来ているかが大切だと思っています。どんな困難や苦しいことに直面しても、その先のワクワクをイメージできれば、怖いものはありません。前向きに、ワクワクし続けることが大事だと思います。

もし何かに迷ったら、ワクワクする方を選ぶことも大切だと思っています。立ち止まってしまった時、行き詰った時に自分が楽しめてないのが一番つらいと思うんです。自分が純粋にワクワクするものを選べばいいと思います。選んだものがあるということは、捨てたものもあるはずです。捨てたものに対して責任を持ち、自分が選んだ道を正解にしてやる!という心意気が前に進むエネルギーになると思っています。

 

ー1つの目標を初志貫徹することは、難しくないですか?

私は目標は変わってもいいと思っています。むしろ目標が変わるって素敵なことです。変わるということは、新たな可能性に出会えたということだと思っています。ここは譲れないという部分さえブラさなければ、目標は変わってもいいと思いますね。

 

Interviewed in Oct 2014
(インタビュアー:長谷川奈生)