2016.02.08
「爆買い」 −−−2015年はこの言葉を見ない日があっただろうか?訪日観光客、とくに中国大陸からの方々が、日本を訪れた際に、たくさんの商品を買って帰る現象として話題になったのは記憶に新しい。
この現象が起きるのは、日本で売られている商品を信頼しているからこそだが、信頼を築くにはその商品について知っている必要がある。しかし、商品には日本語でしか表記されていなかったり、店員さんに聞いたとしても言葉が通じなかったりして、元々知っている商品以外は中々手が出しづらいのが現状だ。
そんな課題を解決するべく、商品に記載されているバーコードを読み込むだけで、商品情報がわかる新アプリが開発されたとのこと。その名も「LOOK」。今回は、新アプリリリースを行うチャプターエイトの高野氏にお話をうかがった。
高野氏の過去インタビュー記事:ジャカルタで3年半トップを務めた高野勇斗氏が、新たな挑戦へ。「若者よ、海外に出よ」と叫び続ける彼が切り拓く新たなチャプターとは?
インバウンド需要を取り込め!商品情報がわかるアプリ「LOOK」とは
日本商品に記載されているバーコードをスキャンすると、その商品情報がその人の母国語で表示される「LOOK」というアプリ。
日本語のわからない訪日観光客向けに開発されており、対応言語は現在7カ国語で、英語・日本語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・タイ語・インドネシア語がある。
今後はベトナム語も追加予定で、ASEAN諸国から訪れる大部分をカバーしていく。
使い方は簡単。アプリを使用して、商品に記載されているバーコードをスキャンするだけである。日本では、全国で規格統一がなされているバーコード(JANコード)が使われているため、美容品や家電、書籍まで、どんな商品でも表示される。
「LOOK」が表示するのは商品情報だけではない。人気の商品や、バーコードでスキャンした商品を買った人が購入した他商品も表示されるとのこと。
また、越境ECサイト「Jselection」とも繋がっており、ECを通してスキャンした商品を買うこともできる。
参照:ASEAN在住者が日本の商品を購入できる越境ECサイト「Jselection」ローンチ。
スキャンした商品のリンクを友人に送ったりソーシャルメディアで共有したりでき、たとえ日本にいなくとも買うことが可能になる。
スキャンすると履歴が残るので、帰国後も同じ商品を購入することができるのだ。
アプリの仕組みと、収益構造
このような画期的なアプリ。一体どのような仕組みになっているのだろうか?
まず、「LOOK」を使用するときに、ユーザーの出身国や生年月日、訪日の目的や日本には何回訪れているかなどの情報を登録。
そして、店舗を訪れた際、「LOOK」内のカメラ機能を使ってバーコードを読み取ると、インターネット上に保存されている商品情報を読み込む。
予め登録しておいた出身国に即し、その人の母国語で商品情報が表示される。現在ではGoogle翻訳を使っているようだが、今後はもっと翻訳の精度を高めていく模様。
試しに、世界的ロングセラーを記録したカーネギーの『人を動かす』を用いて実験してみた。
(*音が出ますので、音量にはご注意ください。)
収益方法について、3点あるとのこと。
1点目は、店舗への情報販売。登録時に記入してもらう訪日観光客の情報が集まるため、どの国の人がどんな商品を買っているのかという情報が分析できるようになる。
2点目はECサイトでの購入。越境ECサイト「Jselection」とスキャンした商品が紐付いているため、一度スキャンした商品をサイト上で購入してもらうことが可能になる。よって、ECサイトからの売上が見込める。
3点目は訪日観光客向けの広告収入。
ここからは、チャプターエイト代表の高野氏へのインタビュー。気になるところを伺った。
参照:「基準をズラして戦っていく」 (株)アドウェイズ インドネシア 代表取締役社長 高野勇斗氏
着想はインドネシアでの経験から。チャプターエイト高野氏のインタビュー
—サービス開発のきっかけを教えてください。
3つの出来事が重なって、着想につながりました。
最初の出来事は、2011年くらいでしょうか。友人がバーコードをスキャンしたら商品の最安値がわかる、というサービスを運営していて、その時に「バーコードすごい!」という認知がありました。まず、それが前提としてありましたね。
2つ目は、2014年にある日系大手食品メーカーが、インドネシアでお菓子を販売していました。その商品には豚のエキスが使われていたみたいなのですが、それを知らずにムスリムの人が食べてしまったといことがあったんです。
なんでそんなことが起きたかというと、日本語でしか情報情報が表記されていなかったようで、現地の人はわからなかったらしくて。
そして3つ目はあるお店で、訪日観光客が商品の写真を撮っているのを目にしたんですよ。それは、日本語がわかる自国の友人に写真を送って、どんな商品なのかを説明してもらっていて。
これを見た時に、規格統一されたバーコードの可能性と商品情報をその人の言葉で表示することの重要性が繋がって、このアプリを開発したいと思いました。
—なるほど。ぼくもamazonのバーコードスキャンの機能には、とてもお世話になっています。このアプリは、どんな人にどのように使ってほしいですか?ペルソナを教えてください。
メインターゲットは、20~30代の女性で、タイ・インドネシア・マレーシアなどASEANの人たちに使ってほしいと思います。
食品のように体内に入れるもの、美容品のように肌につけるものなどは、きちんと商品のことを知っている必要があります。なので、そのような商品を買うときに使ってもらえたらなあと思っていますね。
—素敵なサービスだと思うのですが、難しいのが広め方だと思います。どうやって広めていくのでしょう?
現段階だと、Big-Aというディスカウントストアと提携し、観光客の人たちに知らせていきたいと思っています。
あと、今はインバウンド対策を行っていないんだけど、これから人が集まってきそうなところに可能性があると思っていて、例えば、Airbnbで泊まる人が行くところってコンビニやスーパーが多いですよね。そういったところにビラを置いてもらったり、ポスターを貼ってもらったりできたらと考えています。
—なるほど、これからが楽しみです。さいごに、メッセージをお願いします。
元々インドネシアで働いていて、東南アジアという地域には思い入れがあるので、恩返しをしていきたいという気持ちがあります。
今後は、商品情報だけではなく、レストランのメニューにも活用できたらと思っていて、今まで見えなかったものを見えるようにするメガネのような役割を担っていきたいですね。そして、国と国のあらゆるものの境界線を超えられるよう、がんばっていきたいと思います。
関連記事: ASEAN在住者が日本の商品を購入できる越境ECサイト「Jselection」ローンチ。リクルート「ポンパレモール」との提携も