元サイバーエージェントのエンジニアが、シンガポールのスタートアップに挑戦する理由 Burppleエンジニア平川彰氏

 

「やりたいことに対して、着実に駒を進める」。幼い頃から海外で働きたいと強い意志を持ち、サイバーエージェント退職後は世界を旅しながら就職活動を行う。その後、シンガポールでフード系ソーシャルアプリを展開するBurppleにジョインし、現在はバイスプレジデントエンジニアとして活躍中。常に「アウェイな環境」を楽しむ平川氏を取材した。

《プロフィール|平川彰氏》
明治大学在学中に起業。その後、サイバーエージェントにエンジニアとして中途入社。入社時から26~27歳で海外長期旅行を計画し、25歳で一年間の旅行へ。日本に一時帰国後、シンガポール人と現地で起業。その後、現地のフード系アプリ「Burpple」を開発するスタートアップの共同創業者に誘われ、現在は開発を統括するバイスプレジデントエンジニアとして活躍。

 

コミュニティ運営に強みを持つ、フード系ソーシャルアプリBurpple

 

サービスの内容を教えて下さい。

ローカルの人々がお勧めするレストランや料理の検索サービスBurppleを運営しています。

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                       Burppleイメージ 

WebやAndroid、iOSにアプリを出しており、ユーザーが投稿した料理の写真やレビュー見て飲食店を検索できる機能や、ロケーションを活用しておすすめのレストランを探せる機能がサービスの特徴です。現在ユーザーの80%ほどがシンガポール人ですが、9月からマレーシアのクアラルンプールでサービスを開始し、今後はバンコクや香港などにも進出予定です。今注目されていて、アクセス数が多いのが「あなたが行くべき10のカフェ」などのキュレーションコンテンツですね。僕はこれまでエンジニアとしてバックエンドを中心にやっていましたが、今年の頭から領域を広げてアプリやサービスのグロース、SEO対策などのマーケティングも担当しています。

意識している競合はFoursquareやhungrygowhereのようなサービスで、大きい資本で動いている会社ですね。弊社と同じようにスタートアップでやっているプレイヤーは今のところいません。組織体制は、フルタイムの社員が5人おり、僕以外はみんなシンガポール人です。あとは大学生のインターンが何人か手伝ってくれています。

 

サービスの競合優位性はどのようなところにありますか?

コミュニティの運営に力を入れていることですね。コアユーザーに対して積極的にコミュニケーションを行い、オンライン、オフラインの両サイドからファンを獲得するための施策を行っています。例えば、質の高いレビューを投稿してくれるコアユーザーを「エリートユーザー」として、彼らへの働きかけを頻繁に行っています。エリートユーザーは今シンガポールに50名以上おり、そのような方を各レストランが提供する試食会に招待して、月に一度オフ会を開催することでより、サービスへのコミットを高めてもらっています。フードアプリ系のサービスは各社似たり寄ったりになりがちですが、弊社ではコアユーザーの量と質において競合よりも勝っていると思います。

Burppleではレストランを検索したいユーザー向けのDiscoveryサイドと、レストランのレビューを投稿したいCreationサイドのユーザーに分けてサービスを運営し、両サイドの良い循環を作り出すことに力を入れています。Creationサイドのユーザーには積極的に料理の写真などを投稿していただき、弊社がそれらのコンテンツを編集し、レストラン情報を知りたいDiscoveryサイドのユーザーが検索しやすいようなものに加工しています。そこからレストランを検索したユーザーが実際にレストランに行き、そこの写真を投稿するCreationサイドにもなるという循環をつくっていきたいと思っています。

 

マネタイズはどのように行っていますか?

タイアップ広告などで行っています。例えば、クレジットカードの会社とタイアップして、その会社のカードが使えるレストランを記事で紹介し、クレジットの利用を促進させるといったネイティブ広告を作ったこともあります。

 

サービスのビジョンを教えてください。

中長期的には、シンガポール内のフード系のサービスでナンバーワンになることです。また、今後東南アジアや東アジアに展開をしていく予定なので、アジアを代表するようなフード系のサービスとなっていきたいですね。国によってはまだ需要があまり無い国があるので、クアラルンプールや香港など、市場規模が大きいところをから優先的に展開していこうと思っています。

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               Burppleオフィスの様子

学生起業で失敗サイバーエーシェント入社世界を放浪シンガポールのスタートアップに参画

 

平川さんのこれまでのキャリアを教えてください。

大学ではコンピューターサイエンスを専攻しており、大学3年の末くらいに同じ学部の友人3人とGrouponのようなクーポンサイトを起業しました。結果的にはあまりうまくいかず、年で事業をストップしました。1年間その事業に集中していたので、就職活動は全くせずに大学を卒業してしまいました(笑)その後「一度社会に出よう」と決意し、当時エンジニアの積極採用を行っていた、インターネット広告代理店のサイバーエージェントに入社しました。 

入社のきっかけは藤田社長のブログで紹介されていたエンジニア向けの無料のスクールに申し込み、そこである程度の成績を収めたので、採用のオファーをもらったことですね。入社後はブログサービスの「アメブロ」を運営するアメーバ事業部で、エンジニアとしてアメーバ関連のサービスの開発を行っていました。 

もともと入社する前から、3年以内に会社をやめて海外を旅しようと思っていたので、2年半働いた後同社を退職し、25歳の時にバックパッカーとして世界を周っていました。海外に出る動機として、親戚がアメリカに住んでいたので幼い頃から海外に行く機会があり、よく周りから海外に働くことを勧められていたことが大きいですね。そのような環境の中で、自然と「自分も将来海外で働きたい」と思うようになりました。旅をしながら訪れた国は、東南アジア、中央アジア、中東、西アフリカのような発展途上国で、タイやトルコなどでは就職活動も行っていました。旅行が終わるタイミングでシンガポールの会社からオファーをもらい、シンガポールで働こうと決意しました。

そのオファーをもらった会社には結局いかなかったのですが、その後シンガポールで出会ったシンガポール人の友人とクックパッドのようなレシピ紹介サービスを起業しました。しかし、事業を行う上での方向性、意思決定の違い、さらに事業も軌道に乗っていなかったのもあり、始めてから約1年後にその会社から抜けようと決めました。その時に、Burppleの創業者から声をかけられ、ジョインしてほしいとオファーをもらっていたのですが、一度断りました。その当時は精神的にかなり疲れていたので、リフレッシュも兼ねてインドで一ヶ月ほど旅行をしていました。その後シンガポールに帰国し、以前オファーをもらっていたBurppleのメンバーに再度会い、改めてBurppleに参加することになりました。

 

仕事をする中で苦労した点、またはうまくいっている点はありますか?

最初の1、2年は英語に一番苦労しましたね。ディスカッションなどで言いたいことが言えず、悔しい思いをしましたが、最近は徐々に克服できてきています。プログラミング技術的に関しては全く問題なく、むしろ日本人の特性なのか、細かい仮説検証などはチーム内で自分が一番できていると思っています。プロダクトを細かく作り込んでいくという点においても、自分の強みを発揮できていると感じますね。

 
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       メンバーと話し合う平川氏

80歳の自分が人生を振り返り、「やってよかった」と思えることをする

 

平川さんご自身の今後のビジョンを教えてください。

自分の中では二つの選択肢があります。これからエンジニアとして開発に集中していくか、サービスをつくっていくことを追求するかということです。エンジニアとしての高みを目指すなら、シリコンバレーで勝負していきたいし、サービス、プロダクトを作るのであれば、東南アジアのような伸びている市場で勝負してしたいと思っています。どちらの道に行くかは、これから状況とタイミングを見計らい、意思決定していこうと思っています。

 

平川さんのキャリアは大きな決断の連続で形成されていますが、意思決定を行う際に意識していることはありますか?

大きい決断になればなるほど、あまり人の話は聞かないようにしています。色んな人の話を聞くことは大切ですが、結局「自分は何がしたいか」を一番大切にすべきだと思います。自分はこれまで色んな決断をして行く中で、短期的に良さそうなものではなく、長期的にみて「やってよかったな」と思えるような選択をしてきました。自分が年老いて70、80歳くらいになった時に「あれをやっておけば良かった」と後悔しないような選択をしたいと思っています。 

また、新しい環境にチャレンジするタイミングに関しても自分なりの基準があります。自分の成長曲線が順調に右肩上がりの時はその環境にいますが、その曲線が緩やかになり、これ以上の成長に限界を感じた時には次のフィールドに移りますね。成長が緩やかになってもなおその環境に居続けると、1年で70%の実力を80%にすることはできても、それ以上の成長を望めない。そのような環境を抜け出し、新しいチャレンジをすることで継続的に成長していけると思っています。

僕はもともと人の意見をあまり聞かない性格で、学生時代に起業するときも親を始め「どうせうまくいかないでしょ」と周りにかなり反対されていました。そのような意見にも耳を傾けながら、結局「やりたいんだからやる」と決めて起業しましたね。また、サイバーエージェントという大きな組織に入った時も、「自分はこんな道を歩んでいく」と既に決めていたので、社内の状況にも特に左右されることなく、自分の理想に向けて一歩ずつ駒を進めていきました。やりたいと思ったことをやると決め、期限をある程度決めて、着々と準備をしていくことが僕のスタイルです。

Interviewed in Sep 2014




ABOUTこの記事をかいた人

長屋智揮

同志社大学政策学部卒。在学中に休学し、インド・バンガロールで会社の立ち上げ、事業拡大に関わる。それをきっかけに、今後急成長が見込まれるアジア各国の市場に興味を持ち、現在ASEANを周遊しながらインタビューを行う。現在は渋谷のIT系企業に就職。