トークイベント「Fly Me To Minami ~恋するミナミ~」

加藤氏を取材後、同氏が製作総指揮を努める映画『Fly Me To Minami ~恋するミナミ~』の上演会にご招待いただいた。大阪九条にある劇場「シネ・ヌーヴォ」にて行われた上演後に、映画の内容を題材として行った、加藤氏とアセナビメンバーとのトークイベントをご紹介する。

「恋するミナミ」のあらすじはこちら

 

竹島・尖閣諸島問題が、映画を撮るきっかけとなった

 

加藤:本日は、年の瀬でお忙しい中、「恋するミナミ」をご覧いただきありがとうございました。製作の加藤順彦です。こちらは、「”ASEANで働く”を近くする」というコンセプトでのウェブサイト「アセナビ」から来られた長屋さんです。今回のアンコール上映を、アセナビさんにて記事にしていただきました。

長屋:本日はよろしくお願いします。

加藤:この映画はちょうど一昨年の今頃に撮影しています。3年前の冬に、私はここシネ:ヌーヴォで、マレーシア人であるリム・カーワイ監督の前作「新世界の夜明け」を見ました。そこで、マレーシア人が見た大阪はこういう風に見えるんだということに惹かれ、彼と一緒に大阪を題材にした映画を撮ってみたいと思うようになりました。

 

作品を創るきっかけになったのが、2年前の夏に竹島と尖閣の問題が同時に起き、中国や韓国からの観光客が激減したというニュースでした。そこで私はリムさんに連絡を撮り、人種や言葉を超えた「無国籍な大阪映画」をやりたいと提案しました。大阪、香港、韓国、中国の人が普通に触れ合うようなテーマをやろうという話しになりました。リム監督と話しているうちに、政治的なテーマを扱わず、東南アジアや中国、韓国の人に「大阪に行ってみたいな」と思ってもらえるような映画にしたいという方向になりました。

映画の中では、できるだけキレイなミナミを収めたいと思っていました。映画はオールロケです。最後の大晦日のシーンも、実際に大晦日に撮っています。大阪の人間が見てもこういう風にみえないという、不思議な、異邦人の目から見た大阪となっています。外国の人や他の地域の日本人が見て、大阪の身近さや暖かさが伝わればと思っています。

アセナビさんは、東南アジアに日本人を送り出していこうという趣旨で、東南アジアで活躍されている日本人をサイトの中で紹介されています。今日観客の皆さんと同じ立場でご覧になられていかがでしたか?

長屋:異なる文化を持っていても、一対一で個人単位の深い付き合いをすれば、差別や偏見は生まれにくいんだと感じました。竹島や尖閣問題が起きた時、中国や韓国で日本国旗が燃やされている映像をよく見ていました。その時に、私の仲の良い中国人の友達に意見を聞いたところ「どっちもどっち」という中立的な意見を持っていました。彼は付き合いの深い日本人が多くいたので、人種というレッテルを貼ることなく、冷静に状況を判断していました。この映画を見て、異なる国籍や文化を持っていても、個人単位で深く付き合えば、お互いの国に対する偏った認識は生まれにくいということを再認識しました。

 

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外国人に対する心の壁を取り除いてほしい

 

加藤:近年インターネットやLCCのおかげで、アジアの人たちが気軽に日本に来る機会が増えました。アジアがどんどん豊かになるにつれて、国と国との関係も変わってきました。そんな中で、アジアの方々に大阪を身近に感じてもらうと同時に、日本人の皆さんには外国の方に対して心の壁を取り除いてほしいと思っています。言葉が通じなくても、少し勇気を出すと深い関係が築けるということに気づいてほしいと思います。

映画について、これを聞いてみたいというご質問はありますか?

観客:アジア等で上映会をされたと思いますが、そこでの反応はいかがでしたか?

加藤:先月マカオでやりました。関西空港から来る観光客は、大阪を飛ばして、京都に直接行かれる方が多いです。なので、この映画を通じて、キレイな道頓堀や御堂筋を見てほしかったのですが、実際に観客の方から「こんな大阪を知らなかった」という感想をもらいました。ちなみに、映画のシーンの中では、ラブシーンや暴力はありません。東南アジアでは非常に規制が厳しく、そういった表現をいれると上映できない可能性があるので、当初から入れないということを決めていました。

観客:現時点ではマカオ以外で上映されたことはありますか?

加藤:昨年、香港や台北、今年の夏にはカナダのバンクーバーの独立映画祭で取り上げていただき、上映しました。

観客:映画の各シーンでは、明るい色彩を使用していて、とても幸せな気分になりました。

加藤:ありがとうございます。この映画はとても色味にこだわった作品です。気に入っていただければ、Amazonやitunes等でダウンロードしていただけますので、またご覧いただければ製作者として光栄です。

 

加藤氏とリム監督との出会い

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「恋するミナミ」キャストの皆さん。左から2番目がリム・カーワイ監督。

 

長屋:加藤さんがリム監督と出会われたきっかけを教えていただけますか?

加藤:シンガポールにいる時、リム監督の前作「新世界の夜明け」の予告をYouTubeで見て、この映画を見ようと決めました。そこで、日本に帰国した際、もともと東京に入る予定でしたが、無理やり大阪に入る予定をつくって、このシネ・ヌーヴォの上演会に来ました。リム監督がトークショーをやる日にあわせて上映会に参加し、上演後には一緒に居酒屋に行きました。そこで、次へのつながりができ、映画の撮影に至ったという経緯です。彼もここシネ:ヌーヴォを愛しており、今も新作を撮っていますが、しょっちゅうここにいると思います。

長屋:まさにこの場所で出会われたということですね?

加藤:そうですね。(笑)

リム・カーワイ氏は、この映画の後にもう一本、年末年始の大阪を題材にした映画を撮りたいと言っています。私が関わるかは決まっていませんが、私自身がファンとして応援したいと思います。

本日は誠にありがとうございました。




ABOUTこの記事をかいた人

長屋智揮

同志社大学政策学部卒。在学中に休学し、インド・バンガロールで会社の立ち上げ、事業拡大に関わる。それをきっかけに、今後急成長が見込まれるアジア各国の市場に興味を持ち、現在ASEANを周遊しながらインタビューを行う。現在は渋谷のIT系企業に就職。