2017.06.30
マレーシアの首都クアラルンプールで学生や社会人がビジネスを経験するプログラム『AWAY』を展開するUNLOCK DESIGN INTERNATIONAL SDN BHD代表取締役の山口聖三氏。前回のインタビューでは中学生の時、単身アメリカに留学、経営戦略コンサルタントを経てマレーシアで起業した経緯や日本の若者を変革させていきたいという想いを伺った。今回はさらにパワーアップするAWAYプログラムや、教育事業にとどまらずマレーシア政府系機関と事業を展開し、成長を続けるUNLOCK DESIGNの展望を語っていただいた。
前回のインタビュー記事:中学生から単身渡米 アクセンチュアを経てマレーシアで起業 。「教育」から日本の若者を変える UNLOCK DESIGN INTERNATIONAL 代表山口聖三氏
〈プロフィール|山口聖三氏〉
14歳で単身米国へ渡り、米国東部ボーディングスクールBrewster Academyを経て、米国Indiana University Bloomingtonを卒業。アクセンチュア及び独立系戦略コンサルティングファームにて6年間コンサルティング業務に従事。UNLOCK DESIGN INTERNATIONAL SDN BHDを設立し、代表取締役に就任。
目次
マレーシアと日本、そして新たにアメリカも
ーまず現在の事業について、前回のインタビューから変わったことをお聞かせください。
UNLOCK DESIGNは「世界で闘える強い個をつくる」教育事業を起点に、ヒトを核としたイベント、メディア、マーケティング事業をマレーシアで展開しています。
前回のインタビューから変わった一つ目は、「UNLOCK JAPAN」というマレーシア人向けフリーペーパーを始めたことです。マレーシアに住む日本人(約2万人)向けに日本語のフリーペーパーはたくさんありますが、ローカル(約3千万人)向けに英語で日本のコンテンツを発信する情報誌が存在しませんでした。企業や自治体が日本のいいものもっと発信できるメディア媒体を作ろうとUNLOCK JAPANを立ち上げました。
(現地のマレーシア人に向けたフリーペーパーUNLOCK JAPAN)
2つ目はマレーシアの政府機関や企業からプロジェクトを受注し、ローカル向けにイベントの企画運営しています。
3つ目は前回のインタビュー時と同じく、日本人をマレーシアでグローバルキャリア教育するAWAYプログラムですが、日本人にとどまらず、今後はStanford UniversityやUniversity of California, Los Angeles (UCLA)といったアメリカの名門大学から学生をマレーシアに呼び、さらにAWAYな環境を作る計画をしています。AWAY HOUSEも今以上に大きくすることを考えています。
(インターン生が共同生活を送るAWAY HOUSE。ゲスト宿泊も可能。)
ーアメリカ人も連れてくるのは大きな変化ですね。もっと詳しく教えてください。
アメリカでビジネスを勉強している大学生がアジアのスタートアップ企業でビジネスを経験することで、リアルな現場で自分の実力を試す成長機会を提供します。
スタートアップを支援する政府機関MaGIC (Malaysian Global Innovation & Creative Centre)とパートナーシップを結びマレーシアのスタートアップとアメリカの大学生を繋ぐプロジェクトを進めています。
マレーシア発スタートアップのエコシステムを形成したい
—前回のインタビューではAWAY Collegeを構想しているとのことでしたが、そのことについてお聞かせください。
マレーシア政府と連携してイノベーションを起こし続ける仕掛け、価値を創造し続ける仕組みを整えたエコシステムを形成したいと思っています。
マレーシアの教育機関はCollege, University College, Universityの段階がありますが、80年代はCollegeの教育ライセンス取得しやすくCollegeが乱立しました。経営面で機能していないCollegeが売却先を探していると聞きます。MaGICなどマレーシア政府期間と連携してできるところから形にしていきたいと思います。
直近では、MDEC(Malaysia Digital Economy Corporation )やMCMC(Malaysian Communications and Multimedia Commission)などの政府機関と連携してAIやVRのテックイベントを行っています。
—VRやAIの発展に伴い人間の仕事が機械に取って代わられてしまう懸念がありますが、だからこそ注目すべき産業はありますか?
マレーシアに5年住むなか、ホスピタリティ産業が伸びていると感じます。実際にホスピタリティやホテルマネージメントなどのサービス学部を専攻する学生が増えています。さらに新しい技術を通じてサービスレベルも年々上がってきています。日本が得意とするサービス産業の領域とテクノロジーは今後さらに注目すべきだと思います。
AWAYな環境で考え、行動することが成長に繋がる!
—最近は東南アジアでのインターンがかなりメジャーになってきましたが、AWAYの特徴や魅力は何ですか?
AWAYプログラムは単純作業をひたすら行う通常のインターンとは異なり、主体的に動き結果を出すことが求められるプログラムになっています。大きな枠はありますが、かっちりとしたカリキュラムを用意していません。マレーシアに来てもらってから、じっくりと中長期のゴールを設定し書き出してもらいます。
強化したいスキルやマインドに対して最適なプロジェクトを選び、スケジュール・タスク管理を含め自分で考え動いてもらうスタイルです。もちろん随時サポートやフィードバックはしますが、良い意味で丸投げされた状態からスタートします。
前職時代もそうでしたが、放り込まれれば案外できるもので、その結果自信にもつながります。これがAWAYプログラムの根幹です。上司、先輩、同僚に頼らず自分で行動し悩み結果をだすなかで、グローバルな世界でタフになり、周りの学生に圧倒的な差がつくことがAWAYの魅了です。
参考:世界で戦える強い”個”になるために!休学してマレーシアで1年間の修行を終えたトビタテ!留学JAPAN2期生、常井裕輝氏
まず飛び込む度胸と周りを巻き込むことの重要性
—自ら開拓していくには何が大切だと思いますか?
飛び込む度胸だと思います。今年4月にマレーシアを象徴するペトロナスツインタワーで800人規模のNASAのイベントを開催しました。Google、IBM、アクセンチュアをはじめ30社以上の企業、6機関の政府機関、15校以上の大学をスポンサーやパートナーとして巻き込み盛大に開催しました。
マレーシア1年目はアポも入らず、訪問してもだれにも相手にしてもらえませんでした。
「マレーシアの産業を一緒に盛り上げましょう」「マレーシアでイノベーション・人材を創出するプラットフォームを作りましょう」「マレーシアを東南アジアのハブ国家にしましょう」と諦めずに話し続けました。
その結果、マレーシア政府機関からASEAN地域を対象にしたイベント企画運営のプロジェクトを受託しました。飛び込んでみてないとわかりません。
14歳のときにだれも知り合いがいないアメリカへ単身で飛び込みました。マレーシアで起業したときも何もわからないまま飛び込みました。ずっとこのスタイルです。飛び込めば必ず開けます。
(NASAのイベントにて、司会を務める山口氏)
(マレーシアの国営放送にも取り上げられたほどの注目度)
改めて、「人の話を聞くな!」
—前回のインタビューでは「人の話を聞くな!」ということでしたが、再度アセナビの読者にメッセージをお願いします!
やっぱり人の話(意見)は聞かなくていいと思います。 だれもやったことないこと、ワクワクすることを優先に、まず飛び込んでみればいいと思います。やったこともない人の意見をいちいち聞き、決断を先伸ばしする時間がもったいない。
中学をやめてアメリカに行ったときも、大手企業をやめて起業したときも、未経験のイベント事業やメディア事業を立ち上げたときも、反対反対する人はたくさんいましたが、自分で決めた選択肢に一度も後悔したことはありません。いまが一番楽しいです。誰に何を言われても、自分がやりたいこと、わくわくすることを軸に自分の心の声を聞くべきだと思います。