【新卒海外】「日本人を、もっと外に出したい」 海外インターンを経てそのまま就職へ! ベトナムの人材会社で働く、Jelly Fish HR 吉川真人さん

2016.02.15

中国への留学経験がある吉川さんは、最初、台湾での就職を目指していたのだそう。しかし卒業後、ベトナムへのインターンを機にそのままベトナムに留まることとなる。「日本人を海外に出すことで、日本が外国人を受け入れるための素地を作りたい」と語る吉川さん。その真意とは?新卒海外就職特集

《プロフィール|吉川 真人/Makoto Yoshikawa》
同志社大学文学英文学科卒業。17歳の時に3年間一言も話さなかった父親と死別したことをきっかけに、思ったら即行動を心掛けるようになる。大学3年時に休学し、1年間北京に留学。その結果、早くから海外で経験を積む事を心に決める。現在ベトナムの人材紹介会社Jelly Fish HRで法人営業とウェブマーケティングを担当。働く上での目標は海外に日本人を送り出すこと。

北京留学から、海外への就職を志す。インターンからそのまま正社員へ。

吉川さん インタビュー風景

—なぜ海外就職をしようと思ったのですか?そのきっかけを教えてください。

大学3年生のときに1年休学をして、北京に留学をしていました。そのときから早く海外で働きたいということは思っていましたね。

帰国後はまず日本で就活をしました。商社に入って、若いうちから駐在できればと考えていましたが、ご縁がなくて、道が絶たれてしまって。そもそも自由奔放な自分には大きな会社は合わないし、閉鎖的な日本社会よりも、自分の個性を発揮できる場は海外にあると思いました。運命に導かれているかのごとく自分自身で悟ったわけです。

だったら、小さくて、かつ最初から海外で働けるようなところを探してみようと。また、台湾人の彼女がいたので、台湾で働いてみようかなと。なんだかんだいってこれが最初の大きなきっかけですね。(笑)

—海外でどのようなことをやりたいと思っていたんですか?

③

よく考えた末、海外で人材紹介の仕事をしたいという結論に辿り着きました。そう思った理由には、留学の経験が深く関わっています。

初めての海外が中国だったのですが、現地に着いた時に中国人がかなり助けてくれたんです。こんなに外国人に優しい国はないなと思いました。若いうちに留学を通じて日本人が海外に行く経験というのは良いものだと感じました。

ところが、帰国すると私の通う大学の留学生と日本人の間にかなり高い壁があったんです。留学生としては日本人の中に溶け込みたいと思っているけれど、日本人がそれを受け付けない。その理由は、日本人が海外に行って外国人として同じ経験をしたことがないからだと思いました。

であれば、シンプルに日本にいる人をもっと外に出すことが、壁を壊す近道なのではないか。どのみち外国人の力が必要となってくる日本で、受け入れ態勢の素地を作るためにも、日本人を外に出すことが必要だと思いました。

こうした理由から、海外に日本人を出す役割を果たす人材紹介業に携わりたいと考えました。

 

—台湾での就職活動から、ベトナムで就職することになった経緯を教えてください。

まず、台湾にある企業に知人経由で連絡をとり、その中の1社に入社する運びとなりました。ただ、口約束だったため、卒業する1ヶ月前におじゃんに。また、台湾人の彼女とも別れてしまったんです......。

もう台湾に行く必要がなくなった。では行ったことがない国で、経済成長していく国はどこだろうと考えたときに、パッと思いついたのが、ベトナム、インドネシア、マレーシアでした。卒業間近で後がありません。もう既卒になるのでエリート街道から外れ、晴れて自由の身です。そこで3つの選択肢を考えました。

1つは第二新卒として日本で普通に就職。2つめは、マレーシア留学してから就職。3つめは、アメリカ式に最初から海外でインターンという形で働いてみる。この3つの選択肢を持った状態で、同時進行で道を模索していました。

結果として日本の会社から複数内定をもらい、最初から海外駐在の枠で採用されていたのですが、ほぼ同時に採用されたベトナムの人材紹介会社でのインターンに先に行き、半年後には日本に戻って海外駐在のポジションで働こうと考えました。今思えば欲張りなコースです。

そしてインターン4ヶ月を経たところで、海外駐在かそのままインターン先に残るか、2つ選択肢ができて。

その時考えた軸は、《会社の規模》《ビジョン》《一緒に働く人》の3つでした。

規模はインターン先の方が小さく、これから大きくしていくフェーズに入れる方が自分の能力を発揮できそうだと思いました。正直、ビジョンはどちらもあまり変わらない。一緒に働く人に関しては、インターン先で社長と一緒に住んでいたこともあり、こんな自由な自分を受け入れてくれる会社はなかなかないし、これだけ人が良いなら、入社した後も急に人が変わることはないだろうと。

こうして1週間悩みながらもJellyfishに入社を決め、インターン4ヶ月を経て、2014年の9月に正社員に切り替わりました。

 

日本のやり方は、海外では通用しないことも。必ずしも日本のスタンダードを身につける必要はない。

④

—周囲の反対や葛藤はありましたか?

反対はありましたが、無視しました。(笑)

僕は「後悔しない人生を送る」ということを決めているので、自分のやりたい事があるときには、周りに合わせる必要は一切ないと思っています。

周りで反対してくるのは、新卒で海外就職したことのない人たちであって、日本で働いた経験=正しい生き方と信じている人たち。でも、今後の生き方を考えていくと、それは陳腐化していく考え方なのかなと。

また、逆に新卒から海外で働く人が増えていくと仮定したときに、先行者利益として、今自分が行った方が労働市場の中での希少価値が高くなるだろうと考えました。

自分の中では、日本と比較して給料が低くなるということで葛藤もありましたし、奨学金の返済も悩みの種ではありました。ただ、大学を出たばかりで、金銭感覚は一般の大学生とほぼ同じ。しかも僕は物欲があんまりないので、お金があっても書籍とひとり旅以外にそんなに使わないと思います。

それよりも経験を積むことが何より大事で、お金は後からついてくる。スキルがないのにお金だけ要求するのはただの勘違いボーイだと思っています。

日本の新卒と違って、研修もない中で、揉まれながら経験を積んでいく海外の方が自分には合っていると考えました。

 

—日本で3年ほど働き、基本を身につけてから海外に出るべきという意見もよく聞きます。

反対してくる人の中には日本のビジネスマナーや働き方を知らずに、日本人とのビジネスはできないという人もいます。確かに日系企業とのお付き合いにおいて、マイナスにならないようにするためには必要です。でも、プラスにはならない。

『日本の考え方=世界の常識』だと思っている人がいますが、今後日本のプレゼンスは下がっていくのではないかと心配しています。現に、海外でコネクションを作るのが下手だったり、意思決定のスピードで中国や韓国、台湾に負けている。

例えば、日本は就職活動や転職活動にかなり時間をかけますが、ベトナム人は他にオファーをもらったらすぐそっちに行ってしまう。決定までのプロセスに時間のかかる日本のやり方は通用しません。

このようなことを踏まえて、日本のスタンダードを身につける必要はないと判断しました。

 

具体的な業務内容、そして気になるベトナムでのお金事情とは?

⑤

—現在の具体的な仕事内容を教えてください。

リクルーティングアドバイザーという名のコンサルタントです。新規開拓で数字を稼ぐ一方、企業への採用や教育関連の提案も行います。小さい会社なので自分で全部やらなければなりません。

また、Webマーケティングも主体的に行っています。弊社はベトナムの人材紹介会社の中で一番メディアに力を入れていると思います。記事のライティングや、リスティング広告など、様々な業務をやっており、体が足りません。一緒に手伝ってくれる人を熱望しています。(笑)

 

ーベトナムでの生活について教えて下さい。(暮らし、語学、休日、ビザ)

暮らし

日本円に換算すれば給料は安いですが、こちらの生活費を考えれば不自由はありません。日本の社会人1年目なら、おそらく残って月に2、3万でしょうが、僕の場合、月400ドルくらい残せています。日本にいるといらないものにお金を使ってしまう可能性がありますが、こちらでは物欲がなくなり、散財もしません。

家の相場は、安いところなら300ドルからあります。アパートの一部屋を借りて、キッチンは共用。ベトナム人の大学生が住んでいる部屋だともっと安いですよ。

部屋の探し方はいくつかありますが、僕は不動産会社を介さずにベトナム人が利用しているベトナム語のサイトで探しています。大家さんが英語を話せないのが大半なので悪戦苦闘しますが、こうやって探している日本人他にいないと思います。(笑)

語学

留学経験があるので現地語の重要性は痛感していたので、座学をほとんどしていない中、日常会話レベルのベトナム語は話せるようになりました。ベトナムでは英語が通じにくいこと、そして社内の会話はベトナム語ばかりなので、ネイティブに合わせてがんばって話しているうちに身についてきました。

そして実際、現地の友達はたくさんいます。というのも、現地に日本語クラブがありまして、しばしばそこで友達を作っているからです。日本人よりもベトナム人とつるむことの方が実際多いかもしれません。

休日

海外旅行はよく行っています。って、ベトナムにいる時点で既にどこにいっても海外旅行ですね。こちらに来てからカンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、ミャンマー、インドネシア、ラオスに行きました。ベトナム国内の主要な観光地もだいたい行ったので、国内を次どこに回ろうか考えるのが大変です。

弊社は有給休暇が年12日、年末年始やゴールデンウィークも休みがあるので、しっかり事前に申請すれば長期休暇を楽しめます。決して1年目から使っちゃダメみたいな暗黙の了解はありません。

ビザ

ビザについては、僕が来た時は大卒か5年の経験のどちらかが必要だったのですが、今は両方が必要となり、厳しくはなっています。ただ、色々方法はあるようですよ。(笑)何かしらのコネクションがあればできるみたいです。その代わり、卒業証明書と、無犯罪証明書は必須です。

保険は会社が負担してくれていて、キャッシュフリーで病院に行けます。

 

リスクをチャンスと思えるなら、海外へ!

⑥

ー海外就職して良かったこと、メリットはありますか?

自由でいられることはいいかなと思います。またベトナムでは、日本では感じられないバブルな時代を目の前で見られるので面白いですし、国の成長とともに自分も成長できます。

それから、日本人同士マイノリティになるので、繋がりは深くて、日本では会えないような人にも会いやすいですね。俗に言う、「日本にいては会えないような人と会える」ことはメリットかもしれませんね。

 

ー逆に、苦労したことはありますか?

比較対象がないので、自分が今どの段階にいるのか分からないことですね。同期が100人いる大手企業の方が良いのかなと、一時期悩んだこともありました。ただ、そうすると下の人を見て安心してしまうかもしれないので、逆にいない方が良かったかなと今は思います。

それから男女の出会いは日本の方が明らかに多いなと思いますね。(笑)

また、現地の人とのコミュニケーションでは、okといいつつやらないとか、うまくいかないことも多いです。でもそれをどう動かすのか考えるのも面白い。今でこそ面白いといえますが、留学中の最初の3ヶ月、中国人にキレまくっていたこともありました。(笑)その経験を経たからこそ、海外就職にギャップがなかったのかなと思います。

 

ー描いている今後のキャリアについて教えてください。

まずは、今の会社で新しい拠点を作りたいです。そして3年後は、人材×ITなどの領域で、自分の会社を作りたいと思っています。そして将来はあまり働かず、世界一周するなど、優雅に暮らしたいです。(笑)

実は、学生時代、日中学生会議という学生団体に入っており、そこで自分のチームを作った経験があります。リクルーティング活動をしたり、勉強会のスケジュールを立てたり、色々とやっていてすごく楽しかったんです。その後自分で同志社大学の中でサークルも作ったのですが、自分が中心となって組織を作っていくというのがすごく面白かった。この経験が会社を作りたいという思いに繋がっていますね。もちろんレベルは全然違いますが。

 

ー海外就職に興味があるけれど、迷っている人に向けてメッセージをお願いします。

⑦

あまり、海外での新卒就職はおすすめしません。(笑)

でも、リスクをリスクと思わず、チャンスと思える人だったらいいんじゃないかなと思いますよ。経験ファーストでマネーセカンドの考え方の人なら合っているでしょう。

それに、新卒で海外就職した場合、収入が学生時代アルバイトで稼いでいた感覚とあまり変わらないんです。15万くらいだったら、学生でも稼げますよね。その分、金銭面でのギャップがないので、楽ですよ。日本で3年働いて、年収500万の状態でこっちに来たら、ガクッと下がるのでギャップで辞めてしまう可能性もあります。僕年収500万もらっていたら多分来ないですもん。(笑)学生の金銭感覚であるうちに、早く来るメリットはそこにあります。

本格的に海外就職を考えているのであれば、卒業する前に、日本で普通のオフィスワークを経験することをお勧めします。アルバイトでも、無給インターンでも良いので。そんな風にして日本の働き方を客観的に見る機会を自分で作った方が良いかなと思います。

僕は海外就職を決めていたので、今のうちに日本の働き方を知ってやろうと、オフィスで4ヶ月くらい働いていました。それを踏まえた上で、海外に出るのが良いのではないでしょうか。

何か聞きたいことがある方は、どなたからのメッセージでも返事いたしますので、ぜひ直接ご連絡くだされば幸いです! Facebook:Makoto Yoshikawa

インターンシップも募集しているみたいです。)

【編集後記】
「日本人を外に出すことが、海外と日本の壁を壊すことにつながる」という吉川さんの言葉に、腹落ちするものがあった。私自身、海外に出てみて世界の中での日本の特異性に気づき、一気に見える世界が広がった。異文化の中に飛び込む経験は、多様な価値観への寛容性を高めることに繋がると思う。海外に出る人が増えることで日本社会全体の寛容性が高まれば、外国人だけでなく日本人自身にとっても、生きやすい社会になっていくのではないだろうか。

 

新卒海外就職特集とは?
本当に納得できる道を選び、前に進んでいくために、従来のいわゆる「就職」だけではない様々なキャリアの形があり、その中の一つとして海外就職や起業という形があるということをお伝えできればと思っています。

参照:【新卒海外就職特集】新卒で”ASEANで働く“方々のインタビュー特集、はじめます。




ABOUTこの記事をかいた人

山村 あおい

法政大学国際文化学部4年。2014年に休学、フィリピンのNPOとマレーシアのwebメディア企業にてインターンシップを経験。2015年12月、1ヶ月間でASEAN6カ国を回り、新卒で海外就職・起業をした日本人26名にインタビューを実行。新卒での海外就職を決意し、現在ASEANで絶賛求職中!