シンガポールで美容サロンの事業部長を数年行っていた大野氏。「日本のやり方をそのまま海外に持っていくのではなく、それをローカライズ化することが成功の鍵になる。」ということに気付き、ディスカウント文化のあるシンガポールでクーポンサイト「Japapon」を立ち上げる。「海外で働きたいなら片道切符で行く覚悟じゃないと。」と語る大野氏。そんな覚悟で立ち上げたJapaponとはどのようなものだろうなのか? [Promotion]
〈プロフィール|大野雄一郎氏〉
1979年生まれ 成城大学卒業 アクセンチュア株式会社で、製造・流通向けの業務改革及びシステム導入を中心としたコンサルティング業務に従事。その後、友人の経営する美容サロンの事業部長に就任するとともに、シンガポールでの出店を決意し、シンガポールへ移住。東南アジアで店舗を1年半で10店舗程度キャッシュフロー経営での立ち上げ・運営に成功し、現地のニーズを理解する。現地でのマーケティングを行う上で、クーポンサイトが認知されており、欠かせないことがわかり、シンガポール人向けのメディアをできないかと模索する。グルーポン型のクーポンサイトを立ち上げることを決意し、起業。主に日本の商材を扱うクーポンサイトJapaponの立ち上げ、運営を行う。
シンガポールで、日本の商品を扱うクーポンサイト
—現在展開している事業について教えてください。
シンガポールで、日本のグルメ・美容・旅行・物販に関するクーポン(商材)を扱う「Japapon」というクーポンサイトを運営しています。ユーザーはJapaponからクレジットカード決済で、割引クーポンを購入することができます。つまり、Japaponは加盟店からではなくて、ユーザーからお金をいただいています。
例えば、ホットペッパーであれば、掲載する段階で加盟店側に月次の固定費用がかかりますが、Japaponの場合、加盟店側の掲載料は無料です。商材が売れた時に販売手数料を引いた額を、加盟店にお支払いする仕組みです。GROUPONやLUXA等と同じモデルで運営しています。
温泉や旅行、ヘアサロンなど、さまざま種類を取り扱う。特にラーメンが人気。
—なぜシンガポールで事業をはじめたのでしょう?
シンガポールでは日系のお店がたくさんあり、シンガポール人から親しまれている事が理由です。ショッピングで有名なオーチャード通りの中心部には高島屋があります。シンガポール国内では、ラーメン屋、とんかつ屋など、飲食店も多数進出してきておりますし、飲食以外ですと、日系ヘアサロンも多数進出してきております。また、AFA(アニメ・フェスティバル・アジア)には10万人もの来場者がいました。これらからわかるように、日本の商材・サービスはシンガポールで信頼度が高く、シンガポール人に非常に親しまれております。
しかし、依然としてシンガポールで食べる日本食は、日本のものとは程遠いものも多く、シンガポール人は本当の日本食を経験できていないと思います。
そこで、Japaponでは質の良い、豊富な日本の商材・サービスを中心に扱うことで、シンガポール人に日本の本当の良さを伝えていければと思っています。普段、5$程度の単価の安い、ホーカー(大衆屋台)で食事をしているシンガポール人に、通常10$以上かかる質の高い日本食を割引クーポンで安価で食べてもらえて、日本食が浸透したら、嬉しいですね。
また、元々ローカル向けのメディアをやりたいと考えておりました。
シンガポール人は約560万人いますが、一方で在留邦人は3万人ほどしかいません。この560万人をメインのターゲットにして、サービスを展開しています。
ですが、日本人をターゲットにしていないわけではありません。現地人と比べ、日本人は1人当たりの客単価が高いんです。ある飲食店では、シンガポール人の平均消費額が30シンガポールドルのところ、日本人は70シンガポールドルだという話を聞きました。ほぼ、日本人だけで経営が、成り立っているところもあることから、日本人の顧客をターゲットとしたいといった加盟店もおります。
ですので、シンガポール人だけではなく、日本人も対象にした英語、日本語対応の、 ハイブリッド型の媒体にすることにしました。
ユーザー比率に関して、主にfacebookでの告知を行っていて、今のところユーザーの7割はシンガポール人です。ですが、より多くのシンガポール人に使用してもらいたいと思っていますね。
—なるほど、「ローカル向け」というのがキーのようですね!ではどうしてクーポンサイトにしたのでしょう?
①日本のサービス・商品がシンガポールに認知されている点、
②ディスカウント文化が根強くあり、クーポンサイトを使うことが当たり前の文化となっている点です。
シンガポールでは、ディスカウントの文化が根強くあります。海外有名ブランドが、銀座でディスカウントしているイメージは無いと思いますが、シンガポールではよくあることです。中ではGucci、Ferragamo、ARMANIといった高級ブランドが、半額で販売されているものだってあるんです。GSS(The Great Singapore Sale)というセール期間があって、5月〜7月には大幅に値引きされています。大勢の人がその期間にまとめ買いするので、8月はしーん、となってしまうんですよ。(笑)
構想2ヶ月ほどでサービスをリリース。そのスピード感のわけとは?
―Japaponの構想はいつからあったのでしょうか?
2014年の10月頃からですね。
2ヶ月ほどでプレリリースをすることができました。
―早いですね!どうしてそれほど早く動こうと思ったのでしょう?
やはり、海外では先行者利益があり、早く手を打たないと他社に先を越されてしまうからです。先取りをして、ある程度の需要を作ってしまえば、そこのサイトから離れにくくなります。
日本には既にグルーポンのような仕組みはあるわけですし、それを持っていき、ローカライズすると考えると、そこまで複雑ではありませんでした。
シンガポールは小さな国なので、営業も1ヶ月ほどで回れます。しかも、加盟店は日本人なので、聞いてくれるところが多いですね。初めて会って、即決ってこともありました。というのも、海外事業は、ある程度、経験・実績のある人が赴任するので、決裁権を持っている人が多いからです。
—多くの加盟店のクーポンが掲載されているJapaponですが、加盟店に掲載をし続けてもらうための施策はありますか?
クーポンサイトって、他社製品をあたかも自社のもののように扱い、それを安く売って、一見えげつない商売に見える場合もあります。ですので、一度掲載した加盟店は、ある程度、認知度が高まったらJapaponから卒業していってしまうこともあるかもしれません。
ですが、私はJapaponをありきたりなクーポンサイトにしたくないという気持ちもあって、Japaponを利用することでしか得られない、付加価値を加盟店に与えたいと思ったんです。そこで、アルビレックス新潟シンガポールとスポンサー契約を結ぶことにしました。
例えば、チームのホームゲームで加盟店がスタジアムで、出店できることになります。過去に数回実施したのですが、とんかつ屋さんが用意するカツサンドが、ほぼスタジアムで完売となりました。その出店の際には、我々は出店料や売上ロイヤリティーを一切頂きません。ですが、商品購入の際に、観客に、Japaponに会員登録してもらったり、加盟店のfacebookページをいいね!をしたら10%オフにするなど、オフラインとオンラインを繋げていきたいと思っています。
実際、毎回のサッカーの試合には約1800人が来場し、そのうちの7割程度は現地人ですよ。そこにリーチできるというのは、加盟店としても、Japaponとしても良い施策ではないでしょうか。
http://www.albirex.com.sg/ja/archives/13542/
他には、シンガポールNo1のブロガーのXIAXUEさんとアンバサダー契約を結ぶことにしました。Xiaxueさんは、シンガポール人の人口が約560万人の中で、インスタグラム56万人、フェイスブック34万人のフォロワーがおり、名実共にシンガポールNo1ブロガーです。そして、彼女のインスタグラムとフェイスブックを媒体としてJapaponのプロモーションをしていきます。彼女を広告モデルとして、起用することで、Japapon及び加盟店のシンガポール国内での、認知度及び会員数を向上させることができます。
—Japaponとしての今後の展望はありますか?
より多くのシンガポール人に認知してもらい、まずはシンガポールでの土壌を固めようと思っています。
クーポンサービス(Japapon)を認知してもらい、その後、販促サービスと表裏一体と言われている求人サービス(Japapon Recruit)を2015年5月に展開致します。求人サービスはJapaponの加盟店だけではなく、Japapon加盟店以外の企業にも広く活用してもらいます。並びに、人材紹介会社に利用してもらうつもりです。他にはiPhone、Androidアプリもリリースを致します。シンガポールでの事業が円滑に回った後、他国にもサービス展開したいです。
他には弊社は日系企業のシンガポール進出支援事業も行っておりま
シンガポール法人設立〜
通常、進出支援コンサルの方は、事業立ち上げ・
推測だけで経営アドバイスをすることが殆どと言われていると伺っ
私の場合、東南アジアでの、美容サロンの立ち上げ・
経験則に基づいた経営指導ができる点が強みです。
http://www.robinsgpartners.
そして、進出支援をした企業に、JapaponやJapapon Recruitのサービスを使って頂けると
嬉しいですね。
シンガポール進出をご検討されている方は、是非、
片道切符で行く勇気を。
—海外で働いてみたいという人へ向けて、アドバイスはありますか?
海外赴任してから半年くらいで帰ってしまう日本人がたまにおりますが、片道切符で行く覚悟がないとダメだと思います。
最近、「グローバル人材」だったり「海外に出よう」とかよく言われています。しかし、私は、必ずしも海外で挑戦することが正解とは言い切れません。なぜなら、海外で挑戦することは失敗するリスクが非常に高いからです。
一方で、日本のマーケットはもはや飽和状態で、ビジネスの隙間を見つけるのが難しいように思えます。それは、海外で仕事をしながら日本に目を向けることによって、実感できることでした。
私は今、片道切符の覚悟で来ているので、いつ帰るかはわかりません。シンガポールで挑戦することには非常にやりがいを感じていますし、これからもシンガポールで挑戦していきます。
何が正しいのかはわかりませんが、海外事業に本気で挑戦したいと思って決意をした人は、本当に片道切符で挑戦する気持ちがないと成功はないと思います。
(編集後記)「海外で働きたいなら片道切符で行く覚悟じゃないと。」と語る大野氏。日本に帰らないという覚悟でというのは、ASEANで働くを近くするウェブマガジン「アセナビ」の読者にとってはハッとする言葉かもしれない。けれど、海外での成功は、その勇気を振り絞った者のみが得られるものなのだろう。