「仕事を通じて人をエンパワーしたい」 タイ留学・駐在を経て、現地採用としてバンコクで働く RGF Thailand 伊藤起子氏

2016.03.15

「仕事ってすごい。」そう語るのは、RGF Thailand(リクルート人材斡旋事業 タイ海外現地法人)に勤めている伊藤起子氏である。学生時代からタイ留学をし、社会人2年目でタイ駐在を経験。現在は3度目のタイ長期滞在をされている同氏が大切にする考えは「仕事を通して人をエンパワーすること」。彼女が、「仕事」に見出す価値はどんなことなのだろうか? バンコクにて取材を敢行した!

《伊藤起子氏|プロフィール》
神田外語大学、国際言語文化学科(タイ語専攻)卒業。在学中にタイに1年間留学。大学卒業後、日系介護事業者で海外事業開発、人材育成、外国人採用等に従事し、タイにも1年間駐在。退職後、RGFシンガポール法人に入社し法人営業を行った後、タイ現地法人の事業立ち上げのタイミングで同社タイ法人に転籍。現在は候補者側を担当するコンサルタントチームのマネジメントとプレイヤーとして営業も行う。

RGF Thailand 会社概要》
海外で転職や就職をお考えの方は、日本でNo.1の実績を誇るRECRUITの海外ブランド『RGF』にお任せください。また、アジアでの人材採用をお考えの企業様に、優良な人材紹介サービスを展開しています。

 

タイ留学、駐在、そして現地採用へ。

—自分の大学の先輩にインタビューさせていただけるなんて光栄です!まずお聞きしたいのは、どうして大学入学時にタイ語を選んだかということです。

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高校のときに外国人と話すのが楽しいのと英語が得意だったことが、海外志向のはじまりでした。

この得意分野を活かそうと思い、大学では英語の勉強をしようと思っていたのですが、ある日テレビで発展途上国のことについて紹介している番組を見たんです。

その時に、「途上国のことも知る必要がある。」と感じたのを覚えています。特にどこかの国に思い入れがあるということはなかったのですが、先進国ではなくて、かつ勉強する人数が少なそうなタイ語を学べる大学に入学しました。

タイ語をやっていく!と決めたのはいいですが、親や先生から反対を受けました。ただ、反対意見を言われた時に、常に「でも…!」と反論していた自分がいて。とっさに反論できるということは、心の底から自分がやりたいことなんだと思ったし、次第に周りからも理解を得られるようになりました。

私はタイ語を選んだ以上、中途半端にはせずに絶対に話せるようになると決心していましたね。だから、在学中には1年間の留学も経験しました。

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―なるほど。タイ留学を経験された後、どのようなキャリアを辿ったのでしょうか?

日系の介護事業社で、タイに進出していた会社に入社することに決めました。

新入社員研修を終えて、決まった配属先は社長秘書。海外事業は社長の直轄だったので、海外事業に関連する会議に出席することもできましたし、海外事業開発部の仕事も兼務していました。

そして、2年目で駐在員としてタイに赴任することになります。当時、現地法人は既に登記されていましたが、収益となる特定のビジネスが展開されていなく、とにかくビジネスを立ち上げる、ということが使命でした。タイに行って、ほとんど1人だったので、めちゃくちゃきつかったですね…。

 

—タイの駐在員となってから、具体的にどんな仕事をしていたのでしょう?

タイの介護事業状況もまだ把握していなかったので、まずは調査をしました。どんな介護施設があるのか、運営にはどれだけの費用がかかるのか、また介護士資格状況ってどうなっているのか、などなど…。

それから、大手の病院と提携するために、病院を周り、タイ語で手紙を書き営業したこともありました。結果、一つの大手私立病院と提携することができ、介護施設の運営を始めることができました。

他にもタイの介護士養成学校と提携し日本式介護のカリキュラムを作成したり、ミャンマーに行き介護人材の日本派遣の可能性探る為のリサーチを行ったり、幅広い業務を行いました。

赴任から1年後、後任の方に引き継いで私は帰国しました。

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―帰国後はどんな仕事なさっていたんですか?

タイ事業のサポートをしながら、日本で外国人介護士を採用するプロジェクトを担当していました。このときのエピソードが心に残っていて、今に繋がっています。

介護施設で在日難民を介護士として採用しよう、というプロジェクトを立ち上げました。というのも、難民の方たちは、工場や飲食店で働くことが殆どで、職の選択肢が日本ではまだ非常に少ないです。

一方、介護現場は人材不足が深刻な問題になっています。高齢者を敬う文化のミャンマーの方たちに介護士として働いてもらえないかと考え、関連政府機関と協力し3人のミャンマー人を採用することに成功しました。

その時、仕事を通じて自分に自信を持ち、変化していく彼らの姿を見て思ったのは「仕事ってすごい」ということ。人の為になることができて給与まで貰えるなんて、こんなに嬉しいことはない、と当時彼らが言っていました。

人に適した雇用機会を与えることで、自身の社会的価値を見出すことができる。「仕事」の持つパワーを、身を持って体感しましたね。

 

—それは貴重な体験だったんですね。そして、現在の職に至るまではどうしたのでしょう?

知人のシンガポール人から声がかかり、シンガポールへの転職に関心を持ちました。

現在勤めているRGF(リクルート社の海外現地法人)に入社した理由は、ミャンマー難民採用のエピソードが軸にあったので、雇用に貢献できる人材業界を見ていたのですが、RGFの社員の方たちから学べることが多いと感じた点。

また、タイ拠点をこれから作るフェーズだったので、いずれはタイ拠点立ち上げに関与できる可能性があると考え、入社を決めましたね。

シンガポールでは、日系企業に対しての営業をしていました。シンガポールで働くのは面白かったです。そもそも社長がアメリカ人だったのと、社内もインド人・イギリス人など多国籍で、一緒に仕事をすること自体が刺激的でした。英語も困らないレベルまで話せるようになって。

 

タイで働く大変なこと。それでも、タイで働く理由。

—タイにはRGFのタイ支社立ち上げ段階の2014年4月から赴任されていると思いますが、タイに来てからはどのようなことをしていたのでしょう?

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日系企業向けにタイ人、日本人の人材紹介サービスを提供しています。

私が担当してきたことは、法人営業と候補者へのキャリアコンサルタント業務、総務・採用などなんでもやっていました。何よりも事業の成長が大事なので、数字を追うことがメインとなっていましたが、色々やりすぎてとても忙しい日々でしたね。

ただ、辛いとは思わず、がむしゃらに働いていました。

 

—なるほど。タイで働く中での成功体験や、反対に大変なことはどんなことでしょう?

創業当時からいるタイ人のスタッフがいるのですが、彼が自信をつけたとわかった瞬間、嬉しかったです。彼が「この仕事好き!」って言ってくれて。今ではチームを引っ張るリーダーとして活躍してくれています。

チームで一緒に働いているスタッフが何かしら工夫をし、課題を克服して結果を出す、という姿を見るのが好きですね。

逆に、大変なことはいっぱいありますよ。(笑)

あまり詳細は言えませんが、楽しく仕事をする、と利益を追う、の内前者の比重がタイ人の場合は重要で、うまく双方のバランスを取り業務を進めていくことが本当に難しいです。

未だに正解はわかりません。

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—「タイで日本人が働くことの良さ」ってどんなところでしょうか?

これは東南アジア全体で言えることですが、早い段階から責任のある仕事に就くことができます。20代で10人をマネジメントすることなんて、日本ではなかなか経験できませんよね。

タイに来て自身で考え抜き、アクションを取るという機会が非常に増えました。いくらリクルートとはいえ、タイではスタートアップのようなものなので、「これが正解!」というものはありません。

考えて実行し、よかったら続ける。よくないならやめるというトライ・アンド・エラーの繰り返しですね。

 

仕事を通じて、人をEmpowerしたい。

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―それでは、伊藤さんのこれからを伺っていきたいと思います。直近3年くらいはどのように考えていますか?

今年から弊社は拡大フェーズに入ります。組織を整えて大きくしていくことは、ぜひやりたいと思っていますね。

今いるスタッフがより市場価値を主体的に考えるようになり、昇進していく姿を一番見たいです。日本人なんていらない、くらいになった方がいいと思っています。ここはタイなのだから。

もちろん、タイは好きだし、お世話になっているから恩返ししたいという気持ちはあるのですが、ASEAN全般を見据えて、今後は何かしていきたいと思っています。

その「何か」はまだわからないのですが、1番憧れるのは、雇用機会を創出すること。だから、経営に携わっている方々をリスペクトしているし、自分でもできたら素敵だなあと思います。

 

―ビジョンを教えてください。

今の会社で言うと、日本のリクルートみたいな会社にしたいと思っています。

イメージとしては、スタッフとして関わってくれたタイ人が、必ず何かを得て出ていくという状態。起業するでもなんでもいいし、人材輩出会社にしていきたいですね。

個人で言うと、仕事を通して人をEmpowerすることです。どんな国籍の人も、仕事を通して何かを成し遂げ、自信をつけたり自分の価値を見出したりする機会をどんどん、国は関係なく増やしていきたいです。

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―先ほど話していたミャンマー人の難民の人たちや、タイ人スタッフの話が伊藤さんのビジョンに繋がっているんですね。それではさいごに、ASEANで働きたいと思っているけれど、その一歩が踏み出せないような読者のみなさんへ向けて、メッセージをお願いします!

やってみたらいいんじゃない?って思います。興味があるなら、その国に行ってみたり、英語に自信が無くても働き口は多くあるので、やってみたらいいんじゃないでしょうか!

ただ、1つ言いたいのは、「決めたら、やり切る」ということです。 

“海外で働く”というのは美化されがちですけど、結構大変なので、どうして来たのか?という目的意識を常に持っていないとなかなか続きません。

だから、トライはしてほしいですが、目的をどこに置くかを大事にしてほしい。そして、決めたら、やり切る! そしたら、絶対つながる! そう信じて、ぜひ一歩踏み出してみてください!

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【編集後記】
「仕事って、すごい。」伊藤さんが話したこの言葉は、まだ社会に出て働いたことのないぼくにとっては、正直あまりピンと来ない概念だった。しかし、ご自身が持つ成功体験からやりたいことを見つけ、それをビジョンとして掲げている伊藤さんの姿を見て、働くことにワクワクしたことを今でも覚えている。大学のOGである伊藤さんに、バンコクでインタビューできて本当に良かった。これだけパワフルで物事に対してコミットできるようになりたいと、素直に感じる。