日本語教育経験不要!熱意があれば学生でもASEANの日本語教育の現場に入り込める「日本語パートナーズ」に注目!


「2020年までに3000人以上の“日本語パートナーズ”を派遣する」。既に2014年度に約100名が東南アジアの5カ国に派遣され、それぞれの学校で活躍している。この「“日本語パートナーズ”」とは一体何なのか?今後若者にとっての「当たり前」になる可能性のあるこのプログラムについて、国際交流基金アジアセンターの濱田氏にお話を伺った。[Promotion]

 

ー 一体、「“日本語パートナーズ”」とは何なのでしょうか。日本語教師とは違うのですか?

“日本語パートナーズ”派遣事業は、ASEAN諸国の主に中等教育機関(中学もしくは高校)の教育現場で日本語を教える教師と日本語を学ぶ生徒のパートナーとして一定期間“日本語パートナーズ”を派遣するプログラムです。“日本語パートナーズ”の立場は「教師」や「先生」とは異なります。教師として日本語を教えるのではなく、日本語のネイティブ・スピーカー、いわば「生きた教材」として各国の日本語教育の現場に入ってもらいます。現地の日本語教師と日本語を学習する生徒の間に入って、教室をより魅力的にしていってもらうことを求めています。

“日本語パートナーズ”は教室を引っ張っていく主役ではありません。主役は、あくまでも現地の日本語教師です。“日本語パートナーズ”には、常に主役を立てる名脇役であってほしいと考えています。

国際交流基金が定期的に実施している「日本語教育機関調査」の中に、「日本語教育上の問題点」についてのデータがあります。問題点として一番大きいのは、「教材不足」。次に、聞き慣れない言葉だと思うのですが、「学習者不熱心」という項目があります(参考:2012年度 日本語教育機関調査)。理由のひとつとして、生の日本語や日本文化に触れる機会が少なく、学習意欲の維持が難しいことが挙げられます。また、現地の日本語教師も、日本語による会話の機会が限られているのが現状です。

私たちも英語の授業の時、ネイティブの先生がいるかいないかで授業に臨むモチベーションが変わりますよね。このように、日本語のネイティブ・スピーカーとしての“日本語パートナーズ”が教室に入ることによって、教室が活性化したり、日本語教師の会話スキルが向上したり、生徒のモチベーションが上がることなどを期待しています。そして、“日本語パートナーズ”による日本語や日本文化の紹介といった活動を通して、現地の人々には日本に親しみをもってほしい、日本ファンになってもらいたいと思います。

 

ーとなると、日本語教師に求められる資質とパートナーズに求められる資質は異なるわけですね?

日本語教師として海外で働く場合には、日本語教育に関する資格や、指導の経験を求められることが多いです。しかし、“日本語パートナーズ”に応募する上では、日本語教育の経験がなくても構いません。応募資格は、年齢が20歳から69歳で、日本語のネイティブ・スピーカーであることなど。さらに言えば、日本語教育や文化交流に関して積極的に取り組み、広く発信できる人です。

特別なスキルは求められていない上、資格も要りません。年齢条件を満たし、日常英会話程度の英語ができ、渡航前に約1ヶ月間実施する研修に参加できれば、応募要件はほとんど満たすことができます。学歴も問いませんが、現地ビザ取得の都合上、インドネシアへの派遣は4年制大学在学以上、ベトナムへの派遣は4年制大学卒業の学歴が応募条件です。つまり、インドネシアの場合は大学在学中の学生であれば応募できますが、ベトナムの場合は卒業証明が必要となります。

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ー学生でも参加できるのですね。学生にとって“日本語パートナーズ”に参加するメリットにはどのようなものが挙げられますか?

このプログラムは旅行でもなく、留学でも海外インターンでもない「東南アジアの日本語教育の現場に入りこむ」という、かなりレアな体験ができます。なるべく、パートナーとなる現地の先生と目線を合わせるため、住まいも現地の一般的な水準の生活環境に入ることになります。現地に寄り添った生活をして、その国のリアルを体感する。それにより双方向的な交流を行い、本物の国際交流につなげていただきたいと考えています。

あとは、語学力の向上。派遣前研修の1ヶ月間と、現地に滞在する数ヶ月間は、日常的に現地語と触れることになります。現地で学習を継続するための研修手当もありますので、意識的に学習に取り組めば、帰国する頃には日常会話レベルの現地語を話せるようになるかもしれません。

“日本語パートナーズ”の派遣期間は、今のところ短くて6ヶ月、長くて10ヶ月程度。派遣期間が原則として2年間の青年海外協力隊に比べれば、決して長くはありませんが、短くもありません。派遣前研修では、現地語に限らず現地の文化や風習など、日本と異なる環境で生活する上で必要となる知識や技術を集中的に学んでいただきます。派遣された後は、現地での活動を通してその国に対する理解も深まると思います。

また、外からの視点で日本を考える機会が得られます。外国に身を置いて生活することで、日本にいては気がつかなかった様々なことについて意識したり、考える機会が得られます。日本人としての自分を客観的に見つめることのできる機会は、とても貴重なものではないでしょうか。

現地の日本語教師の中には、日本人に会う機会が少ない人も多くいます。日本語を学習する生徒も、日本に行ったことがなかったり、日本人と出会うチャンスも限られています。こうした状況では、日本文化の伝え方や、日本人としての自分自身の言葉の使い方にも自然と敏感になってきます。“日本語パートナーズ”には、それぞれが「日本とアジアの架け橋」になることが期待されていますし、現地からもそれを求められています。

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ー参加者の年齢層が幅広いことに驚きました。特に若者の“日本語パートナーズ”が期待されている点はありますか?

これまでに派遣された100名の参加者は、20代、あるいは60代の方が多いです。学生であれば、大学を休学して参加される方が多いです。若い“日本語パートナーズ”の中には、アニメ、マンガ、J-POP等のポップカルチャーを上手く授業に取り入れながら日本語を教えている人もいます。

若者・シニアに関係なく、自ら積極的に機会を生み出している人は特に活躍しています。例えば、生徒に書道や茶道、あやとりなどの日本文化を体験する機会を提供したり、生徒達と一緒にコスプレをして、歌いながら踊ってみたり。こうした企画は盛り上がりますし、活動を通して自然と日本語も覚える。そして何よりも日本語学習に臨むモチベーションが上がります。他にも、現地で日本文化祭のイベントが行なわれた際に、「日本語スピーチコンテスト」が開催され、審査員を務めていた人もいましたね。

このように、日本語の授業外でも積極的に“場づくり”をしていただきたい。資格や経験は一切要らないということは、裏を返せばそれぞれの“日本語パートナーズ”に任せられる裁量が大きく、やりたいことがあれば工夫しながらいろいろとチャレンジできるということです。日本語教育の経験がなくても、「何か伝えたい」という想いさえあれば「日本とアジアの架け橋」になれると思います。

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ー文化をきっかけに日本語を学ぶ方は多いですが、一方で「仕事に使える」というスキル目的で学ぶ方も増えていますよね。そんな中、中国語学習者が増え、相対的に日本語のプレゼンスが減っているとよく聞きます。

たとえば工業系の進路を選ぶ生徒が多い学校だと、将来の日系企業への就職を視野に入れてスキル目的で日本語を学ぶ生徒も多いですね。インドネシアでは年々日本語学習者が増えていて、2012年度時点で90万人近くの日本語学習者がいると言われています。日本語学習者数は伸びており、学習環境の拡充が求められています。“日本語パートナーズ”には、そうしたニーズにも応えてほしいと思います。

“日本語パートナーズ”派遣事業では、双方向的な交流を大事にしています。一方的に日本語を教えるだけではなく、「お互いの文化を学び合おう、知り合おう」という関係です。

 

ーその方が本物の日本ファンを生み出せそうですよね。ちなみに、この“日本語パートナーズ”派遣事業では、派遣先をASEAN地域に限定していますね。

世界の日本語学習者の中で、ASEANの割合は約3割を占めます。その割合はさらに増えていくと予想されます。現在募集中の派遣国はインドネシアですが、今後もASEAN諸国への派遣を随時募集していきます。段階的にシンガポールやブルネイなど、まだ派遣実績のないASEAN諸国へも派遣する予定です。

「2020年までに3000人の日本語パートナーズを派遣する」目標のもと、今年度は100名を派遣し、タイ1期29名とフィリピン1期2名が3月中に帰国する予定です。これから、さらに2900人を派遣することになりますが、現在派遣されている方々のような貴重な体験をする“日本語パートナーズ”が増えると思うと楽しみです。

 

ー“日本語パートナーズ”への応募に少しでも興味持った方へのメッセージお願いします。

“日本語パートナーズ”の活動の軸は日本語教育ですが、その教育現場にどっぷり浸かることになるので、うわべだけではない本物の国際交流ができます。こうした活動に興味がある方にとっては、条件面でも至れり尽くせりのプログラムではないかと思います。

日本語教育に興味がなくても、「アジアに興味がある」「若いうちから海外に出てみたい」といった動機でも構いません。仮に日本語教育の道に進まなくても、こうした経験は自分を成長させる良い機会となります。このプログラムを自分のために利用するぐらいの気持ちで応募していただければと思います。

※直近の募集である「インドネシア4期」は、2/25日締切です。詳しくは、下記のサイト、あるいはアセナビに掲載されている「締め切り迫る!“日本語パートナーズ”インドネシア4期(再募集)募集中!」をご覧下さい。

 

《関連URL》
■国際交流基金アジアセンターHP
http://jfac.jp/

■2/25締切 インドネシア4期(再募集)募集要項(条件等も記載されています)
http://jfac.jp/partner/guideline-term06

■“日本語パートナーズ”公式Facebook
https://www.facebook.com/jfnihongopartners

■“日本語パートナーズ”が現地からの情報を発信しているウェブサイト『アジアジーン』
http://jfac.jp/asiazine/




ABOUTこの記事をかいた人

アセナビファウンダー。慶應SFC卒。高校時代にはアメリカ、大学2年の時には中国、それぞれ1年間の交換留学を経て、いまの視点はASEANへ。2013年4月から180日間かけてASEAN10カ国を周りながら現地で働く日本人130名に取材。口癖は、「日本と世界を近づける」