今まさに経済成長を遂げているフィリピン。
しかしその陰で、"貧困"という社会問題が横たわっています。都市部には高いビルが立ち並ぶ一方で、路上で生活せざるを得ない子どもたちもいます。
その現実を"1ミリでも動かそう"と奮闘しているのが、NGO LOOB代表の小林幸恵氏です。彼女は"教育"という切り口からこの問題にアプローチしています。
活動に込められた信念はどんなものなのでしょうか。
《プロフィール|小林幸恵氏》
大学時にYMCAの活動としてフィリピンを訪れる。大学卒業後、マニラの日系企業に就職をしながら、現地のNGOでボランティアを行う。しかし、一方通行の支援に違和感を抱き、YMCA時代の仲間と自分たちのNGOを立ち上げる。2001年より、NGO・LOOBとしての活動を開始。
若者のエンパワーメントで持続可能な世界を創る
― 現在の活動について教えてください
現在は年間300人ほどの日本人、フィリピン人ボランティアを受け入れながら、子ども達への教育支援と、フィリピンのお母さん達に向けた生計支援をしています。
教育支援は、経済的な理由で学業の継続が困難だが、卒業に意欲的な子どもを対象に行っています。経済的な援助と平行して、ノンフォーマル教育にも力を入れていて、子ども達が自分の人生に対して向上心を育めるような活動を導入しています。
生計支援については、LOOBでは2つのコミュニティに関わらせて頂いています。1つは、スモーキーマウンテンというイロイロ市のゴミ処理場に、田舎から集まってきた貧困な方たちです。ゴミをアップサイクルして製品を作り、売ることで彼らを支援しています。フィリピンの固形廃棄物処理法の施行により、今までゴミを拾い、生計立てた人たちの仕事がなくなったからです。もう1つは、先住民のコミュニティーに向けたものです。伝統的なツルを使った籠バックを作っています。
これら教育や生計の支援プロジェクトは、日本人ボランティアやインターンの力で長年、継続することができています。
逆に、日本人もフィリピンの生活から学ぶべきこともたくさんあると考えています。スタディーツアーという形式で、農村ホームステイでの交流や、コミュニティホールの修復などを行いました。現地の若者も参加してもらい、寝食を共にしてボランティアできるプログラムを実現しています。
― モチベーションの源泉はなんでしょうか?
動機となっているのは、「若者のエンパワ―メントで持続可能な世界を創ることができる」という信念です。特にLOOBに来る若い人たちは「世の中のために何かしたい・日本や途上国について学びたい」という想いを抱いています。そういう子達と関わり、学びのファシリテーションを行って、最終的に彼らが自らアクションして社会に変化を起こしていく姿を見るのが私の生きがいですね。
次世代に繋ぐ”原体験”
― なぜLOOBを立ち上げようと思ったのですか
子どもや若者の健全な成長こそが、世界から貧困と戦争を減らす最良の手段ではないかと思い、自分が動くことで世界を1ミリでも良い方向に改善できるなら動こうと考えたからです。そう思うようになったのには原体験があります。
― どんな原体験ですか?
小さい頃からテレビで見る海外の貧しい人達のことが気になっており、学生の時にYMCAのボランティア活動でフィリピンに行きました。その活動の中で、どのような状況でも楽しむことを忘れないフィリピン人の逞しさや大らかな生き方に感銘を受け、狭かった視野が一気に広がりました。
一方で、豊かな日本で生まれた自分にとっては、路上で生活している子どもがいる現状に衝撃を受けました。「生まれた国が違うだけで、この違いはなんなんだ?」と考え始めました。当時は若くて、勉強不足だったので答えが見つからなかったです。ただ、若いからこそ、魂で感じられたことがたくさんあったおかげで今があるように思います。
私はそのような経験をさせていただいたので、次世代の人たちに対し、日本とフィリピンの交流・協力の機会を少しでも提供したいと考えるようになりました。
― その経験が"若者のエンパワーメント"という言葉につながっているのですね
はい。私の人生のミッションは"日本とフィリピンの若い人たちを繋げる"ことにあると思っています。自分もフィリピンのワークキャンプで原体験を得たからこそ、今度は自分がそのような原体験を提供していく側になりたいです。途上国での体験を通して、より良い世界に向けて価値観を広げるお手伝いがしたいです。
異なる価値観をリスペクトする
― 海外で活動するうえで、大変だったことはありますか?
LOOBはフィリピン人の夫と運営しているのですが、日本人とフィリピン人の価値観をすり合わせていくのが大変でした。しかし、もし日本人の感覚だけで活動を進めていたら、現地の人達が本当に欲しているものを把握することができなかったでしょう。自分たちは満足しても、現地の人たちのためにはならなかったと思います。活動を行う上で、フィリピン人・日本人fifty-fiftyでどちらにもメリットを残すことを常に心がけてきました。しかし、認識が合うまでのすり合わせは毎回大変です。
― どうやって乗り越えたのですか?
価値観が違うことをお互いに隠さずぶつけ合いました。価値観自体をすり合わせるのはほぼ不可能に近いと思います。文字通り、価値観が違うのだから。お互いの価値観を押し付けるのではなく、リスペクトし、容認していく事に尽きると思います。そうなると自分の中で判断や評価の基準が2つ、3つに増えていきます。
LOOBのこれから
― 今後の目標について教えてください
もっと多くの大学生にNGOという現場を選んで欲しいです。そのため日本国内のインターン受入れも今年から開始しました。今後も寄付や会費に頼らず、ソーシャルビジネスとして行っている英語研修&ソーシャルアクション・プログラム(ESAP)や、インターン研修を拡大し、その収益から現地の支援事業を支えていきたいです。
― 最後に、読者へメッセージをお願いします
あなたの求めているのは途上国の現状把握ですか?海外の就職体験ですか?異文化に揉まれて成長することですか?LOOBのインターンに参加して頂くと、全てもれなく体験できると思います。
LOOBは設立19年目で、国際協力の実績も多いです。貧困の現場に入り、アクションを起こすのはとてもチャレンジングですし、ソーシャルビジネスで広報や企画戦略といった業務もあります。異文化の現地スタッフと対等に業務を行っていくのも、企業にはないNGOインターンの醍醐味です。ぜひ、将来の就職に役立てたい方、社会起業を目指す方に来て欲しいと思っています。
☆インターン情報はこちら
https://www.loobinc.com/
※本記事は、海外インターンを紹介するWebメディア『Mash Up』様よりご寄稿いただいた記事を基に、アセナビで独自に再編集した記事です。