「子どもに夢を与えるサッカー選手のサポートを」サッカースクール「シリエ」代表 多田大介選手

 

Jリーグ・セレッソ大阪や大宮アルディージャなどで活躍後、現在はタイ・シラチャFCで現役を続けながら、サッカースクール「シリエ」も経営している多田大介選手。「シリエ」では、指導者として現役のサッカー選手だけでなく、プロテスト合格を目指す選手も教えている。これまでのJリーグ、タイでの自身の経験から「サッカー選手として自分が出来ること」を突き詰めた結果が、「シリエ」開校につながった。今回は、そんな彼自身のビジョンや考えを、これまでのサッカー選手としての活動、経験を交えながら紹介していきたい。

《プロフィール|多田大介選手氏》
1982年8月11日生まれ。高校卒業後、セレッソ大阪、大宮アルディージャ、愛媛FC、ガイナーレ鳥取、FC岐阜でプレー。2014年シーズンよりタイのシラチャFCでプレーしながら、サッカースクール「シリエ」を経営。ポジションはGK(ゴールキーパー)。

タイ移籍時に苦労した経験が開校のきっかけ

—サッカースクールを始められたきっかけを教えてください

自分がタイに移籍した時にすごく苦労したっていうことが大きく影響しています。タイのチームでは口約束が通じない世界というか、練習に参加することすらもなかなか難しい状況だった。自分が苦労した経験から、これからチャレンジしてくる選手が練習に集中できる環境を出来るだけ整えたいと思っていました。その為に自分に出来る事を考えた中で、サッカースクールを開くっていうのが良いんじゃないかなっていう考えに至りました。

 

—なるほど。その移籍時の苦労について、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?

2012年の10月くらい(当時・FC岐阜に所属)に、タイのチームから「来シーズン、日本人のキーパーが欲しい」っていう話がありました。そのときは「(10月はまだシーズン中だったから)シーズン終了後に必ずタイに行くから、枠だけ空けといてくれ」って返事をして、向こうからも「いいよ、わかった。そしたらメディカルチェックだけして、契約するね。」という返答をもらった。でも、実際にシーズンが終わって、いつでもタイに行ける状態になったら、そのチームから音沙汰が全くなくなった。実は、僕と話をした後に、韓国人のキーパーを取ることが決まったみたい。それでも、こっちから連絡して、練習だけは参加させてもらえる許可を得たから、「練習に参加すれば契約の可能性は0じゃないかな」と思って、タイに行く事にしました。でも、実際に行ってみたら、練習に参加することすら出来ないという状況でした。

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—「契約をする」と言われてから、練習に参加すら出来ない状況になるという過酷さは想像以上に辛いと思います。その時の経験がサッカースクールを開くきっかけになったんですね。

そうですね。タイで移籍先を探すまで、2~3ヶ月くらいいましたが、その中で練習に参加できた期間は全部合わせて10日〜2週間くらいでした。それも知り合いに頼んで、何とか参加させてもらうっていう状況で。ホテルにずっといて、無駄に時間が流れていく日もしょっちゅうでした。プロになることを夢見たり、まだプロとしてサッカーを続けたいって考えて、タイまでチャンスを求めてくる選手にはそんな経験をさせたくないと思った。だから、せめて食事だったり住むところだったり、練習に集中できる環境を整えてあげるのが僕の役目かなと。もちろんそれにはある程度、収入を得る必要があります。だから、どうすればそれを実現出来るか考えた結果、サッカー選手が出来ることは、「子どもに夢を与えること」じゃないかなという結論に至りました。

子どもたちの憧れとなる選手をサポートしたい

—選手が練習に集中する環境を整えつつ、「こどもに夢を与える」ということも目指したのですか?

プロサッカー選手って「こどもに夢を与えること」が何よりも重要な役目だと思う。こども達にとって、やっぱりサッカー選手は特別な存在だし、憧れなんですよね。僕はJ1にも在籍していた経験もあるし、それは身をもって感じている。だから、「子供達にサッカーを教える」という体験を通して、プロを目指す選手にも、そのことを少しでも感じてもらいたいっていう気持ちが1番にありました。それが、「絶対にプロになろう」という選手自身の意識向上にもつながる。そんな「子供達の憧れ」になれるような選手が1人でも多く出てくることに、少しでも貢献したい。それがサッカースクールを開いた理由です。

 

—「こどもに夢を与える」ということを意識するきっかけはあったのですか?

J1とJ2を両方経験して、環境の違いを味わったことが大きいです。J1の選手は常に人に見られていることを意識しているし。練習後もきちんとシャワーを浴びて、髪を整えてからファンの前に出てきたり、普段外出する時も格好に気を使ったりと「プロサッカー選手=憧れの存在」であるということを常に意識していました。

 

—J2とJ1は、そのような意識から違ったのですか?

やっぱり違いました。仕方の無いことなんだけど、J2は金銭的には厳しいクラブも多い。だから、選手もボロボロのジャージやスウェットで練習に来る。これじゃ「こどもに夢を与える」ことなんて出来ないと思います。プロという名がつく以上、スペシャルな存在でなくてはならないということは、J1とJ2を両方経験したことで、強く意識するようになりました。タイでのプレーも含めた、色んな経験は自分の強みでもあると思ってるし、それを上手く若い選手や子供達に伝えていきたいですね。

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—ご自身の様々な経験が「1人でも多くの選手がサッカーを続けられる環境」と「子ども達に夢を与えること」の両立を実現させたのですね。

「子ども達に夢を与える」選手自身がまず夢を持てる環境が整備されていなくちゃならない。「シラチャに行けばサッカーに集中して取り組める。プロを目指せる環境がある。」って思える環境を作りたかった。その上で、1人でも多くの選手が契約を勝ち取って、ここから羽ばたいていってくれることが理想ですね。「シリエでサッカーを教えてくれた○○選手がプロになった。」っていう経験も子ども達にとって、「僕もああなりたい。頑張ろう。」って夢や憧れを与えることにつながると思っています。

 

多田選手がサッカースクール「シリエ」を開講した背景には「サッカー選手として子ども達に夢を与える」「そんなプロサッカー選手を1人でも多くサポートしたい」という2つの思いがあった。これらは、J1、J2、タイと様々なカテゴリーを経験してきた多田選手だからこそ抱くことの出来た思いなのではないだろうか。多田選手は「夢を持ってタイやシラチャまでやってきた人の力に少しでもなりたい。」と言い切る。プロ契約できるまで、練習に集中できる環境を提供してくれる存在は、希望と同時に、少なからず不安も抱えてタイにやってくるであろう選手にとって限りなく心強いものといえるだろう。

まだ開講して5ヶ月足らずと発展途上にある、サッカースクール「シリエ」。近い将来、ここでサッカーを教えながら、プロ契約を勝ち取る選手が誕生する日も訪れるはずだ。その日を期待しながら見守りたい。

 

サッカースクール・シリエのホームページはこちら

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ABOUTこの記事をかいた人

平井 啓一朗

慶應SFC3年。大学2年の夏休みに1ヶ月間インドネシアのジョグジャカルタに短期留学。初海外がインドネシアということもあり、ASEANへの興味は人一倍。サッカー、特にJリーグ観戦が大好きなので、「JリーグとASEAN」などをテーマに、ASEANの魅力、日本との繋がりをお伝えしていければと思います!