突然ですが、2015年8月8日は、何の日でしょうか?
そう、ASEANの48歳の誕生日です!2015年はとりわけASEANにとって、いや世界にとっても歴史的な年になることでしょう。
なぜかって?それは、12月31日にAECが発足するからです!
「AECって何だったけ?」というあなたへ捧ぐAECとは?のまとめ記事、必見です。
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1. そもそも、ASEANとは?
Association of South East Asian Nationsの略で、1967年8月8日にバンコクで発足しました。初期加盟国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5ヶ国で、1984年にブルネイ、1995年にベトナム、1997年にラオスとミャンマー、1999年にカンボジアが加盟し、合計10ヶ国で構成されています。
現在はASEAN全体で協力しているように見えますが、もともとは冷戦が激化する中、アメリカを中心とする自由主義国である初期加盟国が、旧ソ連を中心とする社会主義国家であるベトナム、ラオスに対する “防波堤”として形成したもので、もともとは対立からできたものだったのです。
ASEAN全体での人口は約6億人で若い世代が非常に多いですよね!これこそが最近ASEANが注目されてきている大きな理由の一つではないでしょうか。
(合わせてこちらもどうぞ!)
【保存版】そもそもASEANとは? 発足のきっかけと日本との関係を簡単に説明します!
(PEACE AND LOVE!!いったい誰が考えたのでしょうか・・・)
2. AECとは?
ASEAN Economic Communityの略で、ひとことで言うと、2015年12月31日までにASEAN域内のヒト、モノ、カネ、サービス、投資の動きを自由化、基準を共通化することで、内需、貿易、投資の拡大などをするための経済統合のことです。
当初は2020年に発足予定でしたが、世界的にTTPやRCEPといったFTAネットワークが急速に拡大していることを受けて、2015年1月1日へと前倒しを行いました。しかし、準備がかなり遅れているということで2015年12月31日へと実質1年先送りにしました。2015年の後半には、TPP、AEC、RCEPといったメガFTAが同時多発的に生まれる歴史的なな年になるでしょう!
3.具体的にはどうなるの?鍵となる4つの戦略目標
(1) 単一市場と単一生産拠点 (Single Market and Production Base)
ASEAN域内での関税撤廃を皮切りに、物品、サービス、投資、熟練労働者の自由な移動を実現し、国境の垣根を取り払うことでASEANを1つのの経済圏へと統合する取り組みです。これによりASEANは相互に緊密な関係を持つ地域経済圏として国際的なプレゼンスを高め、外資の誘致などで中国やインドといった巨大なライバルに抵抗しようとしているのです。
ここでのポイントは、 "関税撤廃"です。
そもそも関税とは、A国からB国に商品を輸出する際、B国は自国の同商品を保護するためにその商品に税金を課します。
例えば、A国が100万円の車を輸出するとして、B国の税率が20%だとすると20万円の税金を払わないといけません。そうなるとその分車の価格に転嫁され、120万円になってしまい、B国での価格が高くなってしまうのです。ただでさえ輸出のために輸送費がかかっているのに、税金なんか課せられては困ったものです。でも関税がなくなれば、安くて質の良い商品の貿易が活発になるのです!
【図表1】ASEAN域内での平均関税率の推移
出典)ASEAN Economic Community Chartbook 2014
CLMVとは、Cambodia、Laos、Myanmar、Vietnamの後発4か国のことで、ASEAN6とはインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイの先発6か国のことを指します。CLMVはASEAN6に比べてまだ経済が未熟なため、国内産業を保護する必要があります。ASEAN全体では0.54%となっており、0%までもう少しとなっています。
【図表2】ASEAN域内貿易における関税撤廃品目数の割合
ASEAN全体では約80%まできており、これももう少しといった現状です。2015年1月1日にベトナムが1,715品目の関税を一気に撤廃したので2015年のデータはもっと増加しています。
(2) 競争力のある経済地域 (Competitive Economic Region)
競争政策、知的財産権保護、電子商取引、消費者保護、税制の分野において共通政策の導入や、法制度の整備を進め、ソフト面でのビジネス環境を向上させるための取り組みです。ハード面に関しては、空・海・陸の輸送分野やエネルギー分野でのインフラ開発にも取り組み、ASEAN域内の連結性を強化することが目的です。
ここでのポイントは、"インフラ開発"です。
ASEAN各国の首都ならまだしも、田舎を訪れたことがある方なら一度はインフラに関して不便だと思ったことはあるのではないでしょうか?ソフト面とハード面、両方のインフラの整備が喫急の課題です。
(実は日本も、ASEANのインフラ開発に貢献しています。)
(3) 公平な経済発展 (Equitable Economic Development)
中小企業の支援育成、CLMV後発国に対する協力を通じて域内の格差を是正し、ASEANの団結力を高めるための取り組みです。
ここでのポイントは、"域内格差"です。
ここまでは、ASEAN1oか国を "ASEAN"と一括りにしてきましたが、もちろん各国の事情は大きく異なります。シンガポールのように、日本よりも一人当たりGDPが高い国から、モータリゼーションが始まれると言われる3000ドルを超えたインドネシアや、まだ1000ドルすら超えていないミャンマーまで。
【図表3】日本の一人当たりGDPの推移とASEAN各国の現在の一人当たりGDP
出典)ASEAN情報マップ
このグラフを上から下に下るように各国を旅してみると、タイムマシンに乗って日本の経済発展の歴史を遡っているような気分になれますよね。
(4) グローバル経済への統合 (Integration into the Global Economy)
ASEAN以外の国々とFTAを引き続き推進し、外に開かれた地域統合目指す取組みです。現在ASEANは日本、中国、韓国、インド、ニュージーランド、オーストラリアとFTAを結んでおり、EUとも交渉中です。
ここでのポイントは、地理的に "アジアの中心がASEAN"であることです。アジア中からヒト・モノ・カネ・情報を集めてアジアのハブを目指しているのです!
4.EUとの違いは??
(1)ユーロのような単一通貨を持たず、ECB(欧州中央銀行)のように金融政策を統括する中央銀行もない。
(2) 関税同盟ではなく、投資やサービス貿易には制限は残り、政府調達※も解放されない。
(3) 非熟練労働者の移動は自由化されていない。
※政府が行政のために物品やサービス、あるいは建設工事などを調達すること。1996年に多国間協定として「政府調達に関する協定」が締結されており、政府調達の額でASEAN域内貿易における関税撤廃品目数の割合がある基準を超える場合には国内企業と国外企業との間で待遇の差を設けないことが規定されている。
★ASEANはEUよりも「経済、政治、歴史、文化、宗教」における違いが多く、 “緩い”統合だと言えます。そんな "違い"が多くても、互いに手を取り合い団結していこうとするのがASEAN流です。このThe Beauty of DiversityこそがASEANの魅力であると言えます。
5.AECがもたらす日本へのチャンスは!?
日本のマーケットが少子高齢化で縮小していく一方で、ASEANは人口、とりわけ若くて消費意欲の強い人口が増え続けています。それに加えて、街の様子も日々目まぐるしく変化しています!
ASEANの成長は、日本にとって大きなチャンスです。実際に日本からASEANへの投資は急激に伸びており、今後ますます "ASEANで働く"チャンスは増えていくでしょう。ASEANの成長を巻き込めるかどうかは日本の未来に大きな影響を与えます。そのためにも、今すぐに "ASEANで働く"、始めませんか?