ミャンマーに移住して4年 同国最古参の弁護士として100社を超える企業を支える SAGA国際法律事務所代表弁護士・TNY国際法律事務所共同代表弁護士 堤 雄史氏

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現在日本の弁護士資格を有し、ミャンマーで根を張られ事業をされている堤氏。
司法試験合格後、大手法律事務所で経験を積み、ミャンマーに進出していた別の法律事務所に転職。その後、自ら法律事務所を立ち上げ独立した。まだまだ定住した日本人弁護士が少ないASEAN地域で、ミャンマーを選んだ理由やそこで感じた事、そして弁護士としての視点から、ASEANビジネスについて同氏に話を伺った。

プロフィール|堤雄史氏
佐賀県佐賀市出身。東京大学法科大学院を卒業し、2010年に弁護士登録(第二東京弁護士会)。アンダーソン・毛利・友常法律事務所等の大手法律事務所勤務を経て、2015年3月SAGA国際法律事務所をミャンマーで設立。2015年独立行政法人中小企業基盤整備機構に平成27年度国際化支援アドバイザー/海外販路開拓支援アドバイザー登録。2016年2月TNY国際法律事務所をタイで設立。

ミャンマーの駐在期間が最も長い日本人弁護士。ミャンマー又はタイへ進出する日本企業を中心として、外国投資法、労働法等のミャンマー法又はタイ法に関する各種アドバイス、契約書の作成等の業務に従事。『ミャンマー・ビジネスの法務・会計・税務』(中央経済社、2013年12月)等、ミャンマーに関連する著作及び講演多数。
お問合せ先:yujit@ sagaasialaw.com

大企業だけでなく、進出する中小企業の法律相談の受け皿になるために

―まずは現在の事業内容について、教えてください。

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法律事務所を2014円3月にヤンゴンで開業しました。現在(2016年2月1日現在)、日本人4名、ミャンマー人10名の14名でやっている形です。

主な事業内容として、3割が会社設立関連。ミャンマーの会社法に基づく現地法人や支店の設立にとどまらず、ミャンマー固有の投資方法、例えば経済特区法とか外国投資法などの投資許認可の手続きなども行っています。

そして5割は契約書の作成。合弁契約書や取引関連の業務委託、売買契約書、リース契約、労務関連の契約などの手続きです。

あと1割がトラブル関連の相談。例えば従業員に不正があって解雇したい、とか合弁しているパートナーとうまくいかないので合弁を解消したいなどですね。

残り1割は翻訳とか、コンサルも行っています。

また、バンコクに2016年2月にTNY国際法律事務所を開業しました。日本人弁護士とタイ人弁護士を常駐させ、上記の業務に加え、知財関連業務に力を入れています。

 

ークライアントとなる企業について教えてください。ミャンマーにも日系の大手法律事務所などありますが、対象とする企業は変わるのでしょうか。

まあ、多少の違いはありますけど、実は自社の半分近くのクライアントは上場企業です。

法曹業界では、もちろん事務所の名前も大切なのですが、結局やるのは各々の弁護士なので、その弁護士に頼みたいということで依頼が来ることも多いです。

私は、ミャンマーにいる日本人弁護士の中で一番常駐期間は長いので、経験豊富な弁護士に頼みたいという大手の方からご相談いただくことが結構ありますね。中小メイン企業をメインとして考えていましたが、嬉しい誤算です。事務所というより私を信頼してくださっている感じです。

 

ー中小企業をメインでやりたいとのことですが、なぜでしょうか。

そもそも事務所独立の狙いとして、中小企業の法律相談の受け皿になるということがあります。

海外展開をしている企業は大企業だけにとどまらず、中小企業ももちろんいます。一方で、法律事務所は日欧米問わず大手事務所が多いんですね。でも大手というのはどうしても人や設備にお金がかかるので、料金も高くなってしまいます。なので、中小企業にとってはどうしても手が届きづらくなってしまいます。

ですから、アジアに進出する中小企業向けにリーズナブルな価格で高品質の法的サービスを提供する法律事務所を作りたいなと思っていました。

トラブル関連の相談もしていると申し上げましたが、そもそもトラブルの原因は弁護士に相談していないから起こったというケースが多く見られます。相談せずに契約書も作らずどんどん進めてしまって後になって言った言わないの繰り返しになって…。

本来契約書で解決できるようなことも、契約書に書いてないから解決できない、むしろ日系企業に不利に書かれているなんてケースもあります。大手企業というのは自社で法務部を持っていたり、海外展開に慣れていることもありますから、本来は中小企業の方が弁護士による法務サービスに対する需要は高いと思っています。

 

ー事業内容の3割が会社設立ということですが、日々それが増えている感覚はありますか?

やはり増えていますね。

例えばミャンマーにもミャンマー日本人商工会議所があります。3年前は60〜70社でしたが、今では286社まで増えました。

数にして4倍以上です。もちろんタイとかと比べると絶対数では劣りますが、スピードは早いと思います。

 

アジアへのバックパックとミャンマーの民政移管がミャンマーでの活動のきっかけに

ー弁護士らしいといいましょうか、幅広い業種と繋がっているからこそのお話を伺うことができました! 続いて、弁護士を希望した経緯も伺いしたいと思います。

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私はもともとバックパッカーをやっていて、大学1年の春休みに初めてカンボジアとベトナムへ行きました。当時は今以上に物乞いの子供たちがあふれ、日本であれば本来学校に通っている子どもたちも、本来学校にいるべき時間に物乞いとかをやっていて。

その時は単純にかわいそうだという気持ちにもなりました。その時に自分が社会的地位をもって声をかけるのと、フリーターとして声をかけるのでは周りの反応が違いますよね。NGOとかを設立しても、寄付に頼ったり、なかなか継続できなかったりも見てきました。

そのため、自ら事業を行うことも考えるようになったんです。自ら事業を行うと考えたとき、ちょうど私が法学部で勉強していたので、社会的地位もある弁護士が一番しっくり来て、弁護士になることを決めました。

 

ーなるほど。では弁護士を志した時からアジアに出ることを決めていたんのですね。現在はミャンマーで事業をされていますが、そこを選んだ理由はなんでしょう。

最初はアジア新興国であれば、選ぶ国へのこだわりはありませんでした。

でもちょうど働き出してから1年ほどで、ミャンマーと関わる機会ができました。それが2011年夏の出来事。ミャンマーが民政移管した直後だったのです。

そこで、その当時国が劇的に変わっていくというのが、ミャンマー人からや、そこに関与されている方からも聞きました。確かに成長するといえばどこのアジアの国もそうですけどやっぱり自分の人生の中でも、体制自体が劇的に変わる国に立ち会えることはないんじゃないかと思ったんです。

 

「ミャンマーからでも進出できるのだという希望を与えたい」

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ー活気があるとやっていて本当に楽しくなりますよね!これから事務所としてミャンマーだけでなく、他の活気あるASEAN地域に行かれることも考えていますか?

実は2016年2月にタイにバンコクオフィスとしてTNY国際法律事務所を開設しました。そこは、司法修習を共にした弁護士の方と共同で代表を務めます。

狙いとしては、タイプラスワンの流れに乗るということがあります。労働者を集めるのが難しいというタイの現状から、周辺国に労働集約型の工場を移す流れがタイプラスワンです。そしてミャンマーも有望な移転先なので、そこでの法務相談の受け皿になることが一つ。

あと、実はタイは常駐日本人弁護士が少ないんです。数だけ見れば10名でミャンマーの2倍ですが、日系の進出企業は1万社近くあるので、ミャンマーの30倍近く、明らかに数が足りないんですね。もちろん弁護士ではないコンサルタント会社はたくさんありますが、契約書などの分野は本来弁護士が専門知識を有しており、簡単にできるものでもありません。

ですから、より高度な法律業務について弁護士のサービスに対する需要もあると思います。したがって、ミャンマーへの受け皿という意味だけでなく、タイそのものにも魅力があるなと感じています。

 

ーなるほど。では堤さんとしては、まずミャンマーに進出、そしてタイプラスワンの流れからタイに進出していったわけですね。

はい。今後は日本人弁護士がいない所に毎年1カ国ずつ進出していければいいかなと。既に具体的に3か国目の進出先も検討しています。

確かに、最初はミャンマーから始めるって少し特殊ではあります。でも逆に、うちのスタッフに対して「ミャンマーからでも進出できるんだ!」という希望も与えられればなと思っています。

また、新たな国に挑戦し、視野を広げることによってより良いサービスを提供できるようになると思っています。

 

先行者として我慢した見返りは必ず来る

ーこれからAEC発足もあり進出が増えていくと思います。日系企業に対するメッセージなどはございますか?

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未整備の部分があるASEANですが、その分今後に伸びていくポテンシャルにおいては非常に魅力のある地域で、これから市場も拡大していくとも思っていますリスクもありますけど、リスクを取らないリターンはありません。

ASEANにはそれだけリスクを取る価値もあると思います。もちろんまだ様々な面で整っていないところがあることは事実です。しかし、先行者メリットがあるのは事実ですから。どの分野にしろ先行者は我慢する期間があると思うんですけど、それに対する見返りも十分にあると思います。

そしていざ進出となっても、やはり現地にいないとわからない情報はたくさんあります。それにも関わらず、規制などの法律についてさえも専門家でない人が色々言っていることがあります。でも法的根拠を聞くとわかっていないことがある。それは現地の人でさえもそうです。

確かに、法律を知っていなくてもできることはあります。ただ法律を知らないままやってしまうと、場合によっては法令違反になっていつ摘発されるかわからなくなるリスクがあるんです。そういう正確なリスクを知ることは非常に重要で、リスクを知っていてやっているのか、知らないでやっているのかでは大きく意味も違ってきます。

ですから、私に限らず、専門家にちゃんと相談して正確な情報や根拠を確認することが大事なことだと思います。

また、ミャンマーというのは法律がわかりにくい国でもあるんです。例えば六法などまとまった情報もなく、私のような専門家でさえ法律が変わるのを確認するのが難しい国なんです。安易に行くのではなく、きちんとした専門家に時間とお金を惜しまずやっていくことが大事です。

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【編集後記】
私は法学部に所属し、司法試験の勉強を頑張っている友人もおり法曹業界には関心があった。そして今回のインタビューも楽しみにしていた。実際にインタビューをしてみると堤さんには、ミャンマーに対する社会貢献意識と同時に、ミャンマーだけに拘らない冷静さがあることがよく伝わった。
そして、ビジネス進出の際はしっかりとした専門家に相談すべきであるともおっしゃっていた。私自身も全く同感であり、ビジネス進出で必要不可欠な要素は、①現地に赴いてその場所をよく知る。⓶信頼できるパートナーを見つける。だと考えている。1時間強のインタビューではあったが、堤さんからは⓶のパートナーたる信頼感をひしひしと感じた。どの企業でも、個別に適したソリューションを提案してくださるに違いないと確信した。