2015.11.18
幼いころから起業を志していたという荒木氏。一度は日本の企業で活躍しながらも、時代の先を見てマレーシアにて起業した。自身の経験から「日本社会の中で人に合わせるのが上手い人、コミュニケーション能力が高い人ほど、逆に外に出た方がいい」と話す。役職が上がっていくにつれて、働く人の幸せが反比例していく日本社会に警鐘を鳴らす、その想いを伺った。
〈プロフィール|荒木理崇氏〉
大学卒業後、株式会社ウェブクルー入社。入社後比較サイトの営業、自ら企画した比較サイトの立ち上げなどを経験し、入社5年目でグループ会社株式会社ウェブクルーエージェンシー取締役就任。
2012年に生活拠点をマレーシアに移し、10月、eeevo malaysia Sdn Bhd設立。 代表取締役就任。翌2013年 3月、株式会社eeevo japan設立。代表取締役就任。
目次
幼い頃から経営者志望!就職活動では、「社長になれる」会社を探した。
—現在はマレーシアと日本で会社経営を行っている荒木さんですが、起業のきっかけはなんだったのでしょうか?
家庭が経営をやっていた環境に影響され、小学生の時から社長になりたいと思っていました。祖父が創った会社を、父親が引き継いで経営していたんです。
大学時代、インターンシップを経験していて、そこで考えついたアイデアで起業しようと思っていたのですが、失敗してしまって。だから、就活を始めたのは4年生の夏が終わってからで、すでに募集が終わっている会社が多かったです。
それでも、社長になりたい思いは変わらなかったので、「社長になれる会社がいいです!」と面接で言っていましたね(笑)。最終的に入社した株式会社ウェブクルーでは、面接時にすでにやりたいことが明確に見えていたので、企画書に落として持っていきました。
web業界に決めたのは理由があります。まだ業界自体ができて10数年で、5年くらい経つとプレイヤーが変わっていきます。だから、可能性が非常にあるわけです。出世しやすく、スピードを持ってできるのがweb業界だと思いました。当時入って半年で、子会社の社長になった人もいました。
—面接時に企画書を持っていったんですね!それでは、ウェブクルーに入社されてからのことを教えてください。
面接で持っていった企画書が通って、入った年の11月末にリリースしました。
2年目は、社内の中枢の人たちが行う、サイトの統合を行うプロジェクトにアサインされてハードに働いていました。3年目はマーケティングや営業、4年目ぐらいからは、新規事業立ち上げにアサインされます。28歳までに代表取締役になると宣言していたのが功を奏したのかもしれません。
そして、4年半の時に、グループ会社のウェブクルーエージェンシーの役員になることができたのです。そこで経営の勉強をさせてもらって、5年半経って退社しました。
マレーシアに飛び込んで起業!現地に入り込むことの大切さ。
—起業まで、計画的に動いていたんですね。
27歳で上場企業グループ会社の役員になれたので、すごく勉強になって、ありがたかったですね。そして28歳の時に、eeevo malaysia Sdn.Bhd. を創業したんです。
起業する時は、マレーシアと決めていたわけでは全くありませんでした。選んだ理由として、日本は全体的にマーケットが伸びていないけれど、東南アジアだったら伸びている。マレーシアも5%ずつ伸びているわけですし、英語圏かつ治安が良くて天災が無いことも魅力でした。
正直、ある程度住んでから決めたと言った方が正しく、今もお世話になっているマレーシア人のパートナーとのご縁が大きいですね。2012年10月にマレーシア法人を立ち上げ、2013年3月には日本法人も立ち上げました。
—マレーシアって起業しやすいのでしょうか?
起業しやすいと思いますよ。
マレーシアは、外資100%で起業ができ、向こうで儲かったお金をこちらに持ってくることもできます。とはいえ、マレーシアは2800万人しかいない国なので、マーケットの規模的には大きくない。IT系なども、人口の多いインドネシアなどに比べると、優先順位が低い。だとすると、僕らみたいなスタートアップにはチャンスがあるのではないかと考えました。
—なるほど。現在行っている事業について教えてください。
メディア運営を行っています。
最初にはじめたのがOTAPARKというメディア。日本のオタク文化が好きな人がマレーシアにはすごく多かったのですが、情報源が少ないことに気づいたんです。だったら、そこに情報を届ければ価値になるのではと考え、始めました。
Go Malaysiaは単純にその逆で、マレーシアに渡航する日本人に向けたサービスです。Ahlan Japanは、マレーシア人社員が日本に来る時に、ムスリムがご飯を食べられるところの情報が少ないので、きちんと体系化するために始めました。
それぞれ情報が少ない、だから始めてみようといった具合ですね。ウェブサイトは比較的スモールスタートできるので、チャレンジしてみて、ダメだったらやめればいいと思います。
(GoMalaysia。グルメやトラベル、ビジネスから留学まで、マレーシアに行く日本人に向けて、幅広い情報を発信中。)
—チャレンジといえば、インターン生に飛び込み営業を任せていますよね。私がeeevoでインターン*をしていた時にやったのを思い出します…。
*編集部注・・・インタビュアーの山村さんは、昨年eeevoでインターンを行っていました。
Go Malaysiaの営業を任せています。山村さんが始めてから、飛び込み営業が恒例化してきていますね。(笑)
日本人向けに情報を載せるので、現地の人ではなく日本人が行くことに意味があるんですよ。また、日本人がいるところに行っても意味がないから、あえてローカル企業に行ってみるっていうのがうちのやり方。現地のホテルや、インターナショナルスクールなどに飛び込み営業を行っています。マレーシア人も英語が母国語じゃないから、つたない英語もちゃんと聞いてくれるんですよね。そこがマレーシアのいいところですね。
インターン生はとりあえず受注を取ろうということを必達目標にしていて、そうしたら、拍子抜けるぐらい簡単に取れたりして。最近は、ターゲットの違う複数の媒体を持って行って、比較してもらうことで受注が取れるようになってきています。受注が取れると、モチベーションも上がりますよね。
稼ぐことの重要さ・大変さを分かってもらいたいと思っています。お金を稼ぐことの大変さを学びながら、異国の地で、違う言語で働いてみるっていうのは、すごくいい経験になると思います!
—今後の展望について教えてください。
今は、マレーシアで土台を固めようと思っています。最初来た時はスケールさせていくモデルを考えていましたが、持てる資金の中で着実にやっていくことに決めました。
既存のサービスを運営しながら、新規の事業にも手を出そうかなと思っているのが、今年のフェーズです。
将来的には、他社と組みながらマレーシアを拠点にして、東南アジアから世界へ発信していきたいですね。業態は決めず、「必要だな」と思うサービスをやっていきたいです。
よく「タイムマシン経営」なんて言うけれど、同じものをそのまま横展開するのはうまくいかないと思っています。ローカライズが必要だし、そのためには、ある程度地場に精通している必要がある。
出張ベースではなく、現地に住み込むことが大切だと思います。現地の人とコミュニケーションを取っていかなければ、次には進めないというのが分かってきたのだって、3年目くらいですし。
何年か先を見ていれば、外に出て行くのは必然。
—海外で起業して、良かったことはありますか?
直近だけで稼ぎたいのであれば、正直、日本でもいいんですよね。人口減少と言われるけれど、まだまだ購買力があるから。
マレーシアは、発展途上中の市場です。5年後はかなり成長していると思います。東南アジアに2020年になってからポンッと入って行って上手くいくわけはなくて、今のうちから徐々に色々なことを経験していかなければ、厳しいんですよ。
マレーシアにいながらも間違うことはあるし、滞在していなければそもそも分からないことがたくさんあります。先を見て、時間をかけてやらなければならないと思います。
それに、海外に出てみて考え方が変わり、こんなこと悩む必要なかったんだっていうことが、たくさんありました。だから、まずは出ることが重要だと思っています。いざ必要になった時は、戻ればいい。外に出て、日本のいい面と悪い面を分かった上で次に進むのと、ずっと国内にいて分からないままでいるのとではだいぶ違うはずです。
—お話を聞いていると、かなり先を見て行動しているように思えるのですが、何かそう思うようになったきっかけがあるのでしょうか?
そもそも実家が紙の商社なんです。小さい頃から両親から言われてきたのは「紙の産業は縮小していって紙はwebに取って代わられるから、紙じゃないところで事業をやれ」と。
だから、東南アジアに関しても、伸びていく方に出て行くのは、必然なことであるという意識がありましたね。
「なにか違う。」そう感じるなら海外という選択肢を持とう!
—なるほど、腑に落ちました。起業したい、インターンに行きたい学生に何かメッセージはありますか?
東南アジアは非常に面白いから、貪欲で、とりあえず経験を積ませてくれっていう人と一緒に働きたいですね。
私は、最初は低賃金でも経験を積めば自分が成長した分だけ、最終的には入ってくる額が増えるから、そっちの方がいいと思っています。
起業は、人によりけりです。なんとなくじゃなくて、腹をくくっているんだったら、どんどんやっていきなよって言っています。本当にケースバイケース。インターンも、どうやりたいか、何をやりたいかによって、一人一人やり方を変えていますね。
ーさいごに、海外で働きたい人に向けて、メッセージをお願いします!
結局は決めるか決めないかという話だと思うけど、私の場合は、自分の人生がプラスになったり豊かになったり、成長できたりする方を選ぶようにしています。
日本は色々な意味で特殊で、ワールドスタンダードとはかけ離れていると思っています。言いたいことを言わずに阿吽の呼吸というものがあったり、独自のルールがありますよね。
だから統制が整っているとも言えるけど、それが今後の日本を作れるかって言ったら、いやそこではないな、と。
日本社会で、人に合わせるのが上手い人、コミュニケーション能力が高い人ほど、海外に出た方がいいんじゃないかと思いますね。日本では評価されても、海外では自己主張が無いという評価になって、成功出来ない気がします。もっとがんがん言ってきますから。いざ何かあった時に、そういう人たちが日本の人口の半分以上を占めていたら、日本は戦力にならないと思います。
まずは日本にいて「何かが違う」と思う人から先に一回出てみて、そこから変わっていけばいいと思っています。
【編集後記】
昨年私自身がインターンシップでお世話になった荒木社長に、日本でお会いすることができた。若い頃から豊富な経験を積まれ、ご自身のインターンの経験から、今のインターン生にも多くのチャンスを与えていらっしゃる荒木社長。お話を伺い、未来を予測し、周りに流されずに自分の意志で行動することの大切さを改めて感じた。
「日本から出てみて、初めて見える景色がある。」目を閉じると、クアラルンプールの街を練り歩いて営業した時のあの熱気が、再び蘇ってくるようであった。