「“クールでスマート”に東南アジアでビジネスを!」 監査法人トーマツ・DeNAを経て、タイで起業 J-CROWN代表取締役 森場忠和氏

 

近年、日本でエリートと言われるようなキャリアを積みながらも、あえて東南アジアで独立をする若手が増えてきている。大手監査法人トーマツ、ソーシャルゲーム大手のDeNAでの経験を元に、タイのバンコクで独立をされたJ-CROWN代表取締役、森場忠和氏にお話を伺った。

《プロフィール|森場忠和氏》
1982年生まれ埼玉県出身。早稲田大学高等学院・早稲田大学商学部卒業。2005年12月監査法人トーマツに入所。トータルサービス部にて株式公開支援、J-SOX導入支援、IFRS導入支援等の各種コンサルティング業務、グローバル展開企業の法定監査業務を実施。2011年4月DeNA経営企画部入社。国内子会社、関連会社の取締役会の運営、JV先との折衝、全社規程管理等に従事。その後EC事業部にて管理会計、新規ビジネススキーム構築、M&A業務に従事。現在は、バンコクにおける日系企業に対して、公認会計士としての監査、会計、会社法務の基礎知識、海外往査経験及び上場会社での組織管理、M&A業務の経験をもとに展開支援業務を実施している。

「日本品質」を海外で提供し、「ブルーオーシャン」に出る

 

サービスの内容を教えてください。

タイで事業を展開している日系企業向けに、会計・税務を中心としたコンサルティングを行い、経営者の方の事業の意思決定をサポートしています。「会計のトレーニング、教育による、業務の内製化支援」や「経営者の数字に対する理解促進支援」「タイ人営業担当者への数字の基礎セミナー」などを提供しています。

 森場さん①

                                                              J-CROWNウェブサイト     

会社の規模が拡大すると、ある程度数字を見て経営をする必要があります。そこで、私の前職の会計事務所での経験、DeNAの経営企画に携わった経験を生かし、数字を基にして、どのように経営上の意思決定をするべきかのアドバイスをしています。

 

タイで独立された経緯を教えてください。

大学を卒業後、監査法人トーマツの公認会計士として、企業の上場(IPO)支援を5年ほど行っていました。その後海外に出てみたいと思い、トーマツを辞め、3ヶ月程バックパックで海外を旅行し、ヨーロッパ、アメリカを中心に12か国25都市を周りました。その中で、海外でビジネスをする日本人に憧れを持つようになりました。その後、ソーシャルゲーム大手のDeNAの経営企画部に3年勤めた後、海外(ASEAN)で会社を立ち上げることを決め、ASEANすべての国を周ってリサーチした結果、タイという意思決定をし、同社を退職し、バンコクで独立しました。

もともと公認会計士になった理由として、会社をいつやめてもいい力を付けておきたかったということがあります。会社に縛られるのが嫌で、何か一つ勝負できるものを持っていたかった。タイで独立したのは、市場が縮小する日本にいることに限界を感じていたことと、海外でなにかをやりたいという気持が強くあったことが理由です。

 海外で起業した方が、日本より圧倒的に競争相手が少ないという考えもありました。異文化、異言語、かつ日本の資格をそのまま使うことができないタイで会計事務所をやる会計士は決して多くはありません。また、日本は世界的にみても真面目で優秀な人が多い国です。その日本人の集団、日本の環境の中で勝負していくのは、不可能ではないものの非常に厳しいと思います。しかし、海外という、距離的、言語的ハードルを飛び越えることで、場所の「アービトラージ」を得ることができ、俗にいう「レッドオーシャン」ではなく、「ブルーオーシャン」に出ることができると思っています。海外では、どの業種でも日本品質、日本レベルのモノ、サービスに対するニーズはあります。大事なのはそれを当たり前に提供できる日本国内ではなく、他の国で提供することができるか、できないか、というシンプルな行動です。

本当に価値があるのか、通用するのかという熟考、マーケティングはもちろん重要ですが、挑戦したいと思っている方が第1歩を踏み出すためには、そのぐらい楽観的に考えてもよいと私は思います。1歩があるかないかが天と地の差です。

森場さん②

「クールでスマート」に東南アジアでビジネスをする日本人を応援したい

 

森場さんはタイにいる日本人起業家を動画等で発信されていますが、その活動をされている理由はなんですか?

タイにもイケている起業家が多くいるということを伝えたいと思っています。タイにいる日本人は遊んでばかりというネガティブな印象を持たれることがありますが、本気でビジネスチャンスを求めてタイに来ている人が多くいます。そんな方をもっと発信し、日本でキャリアを積んだ後にタイなどの海外で勝負するという選択肢を一般的にしていきたいと思います。

また、東南アジアでビジネスをやることが「クールでスマート」だということを世の中に発信していきたいと思っています。東南アジアでチャレンジする人のことを、「日本で成功しなかったから仕方なく海外に行った」と思う人もいるようです。しかし日本で実績を積んだ上で、あえて次のステップとして新興市場に飛び込む。そんな「クールでスマート」に東南アジアで勝負する日本人を応援したいと思います。

 

日本に長くいると海外で働くことのハードルが高く感じてしまいますが、森場さんはどのようにクリアされましたか?

海外で働くハードルを下げる方法はあると思います。私の場合は、クライアントは日系企業に限定するなど、まず言語的な障壁をできるだけ下げてスタートしています。会社のスタッフはタイ人の方々ですが英語を話せます。今では現地語もある程度話せるようになってきましたが、まず海外へスモールステップを踏み出すことから始めるべきだと思います。海外で働くことに対して、いきなり現地人をマーケティングし、異言語の波に揉まれることをイメージする人が多いですが、働き方次第でハードルを下げることができます。なによりも身体を海外に持ってくること、海外に住み、違う国の肌感覚に触れながら働くという経験をすることが何より大切だと思います。実際とても刺激的です!

 

人としての魅力を高め、世界で勝負せよ

 

今後の展望について教えてください

誰よりも動き、誰よりも自由に新しいことをやっていきたいです。これまでのキャリアとして、会計事務所からIT企業に入りました。そこで得られなかったことが、「海外で働く経験」と「独立経験」だったことから、海外で独立をしました。会計、経営企画のバックボーンを基に、現在は日系企業に会計サービスを提供しています。今後はタイでの経験を積みながら新しい業種、サービスに挑戦していきたいと思っています。新たな国への挑戦ももちろん考えています。これまで、経験を一つ一つ積み重ねた上で、それを糧に新しいことに挑戦してきました。これからもそのようなスタンスで生きていきたいと思います。確実に業務を実施しながら、その時感じた直感で誰よりも早く動きたいと考えています。

 森場さん③

                                J-CROWNのスタッフの皆さん

日本の若者に伝えたいことはありますか?

時代の流れを読んで動いていくことが大切だと思います。特にこれからは個人の時代になると思います。大きい会社に入っていても一生安泰ではないし、個人としてどれだけ実力を持っているかが鍵となる。ぼんやりとでもいいので「個人としてどう生きていくか」という意識を持っているか否かが、数年後には大きな差となります。とにかく先を見て行動することが大切で、そのためには、社会人になって仕事をはじめてからこそ、本を読んだり勉強したりする時間を作っていく必要があります。仕事を経験しながら、継続して本を読む、継続して新しいことを学ぶという小さなステップの繰り返しが自信につながり、新しい発想、チャンス、行動力を生むことにつながると私は信じています。

また個人の実力を上げる中で、「人としての魅力を高めること」を軽視してはいけないと思います。個人としてやっていくために、「この人と仕事がしたい」と思ってもらえなければ仕事がもらえない。一緒に仕事がしたいと思う理由として、その人の仕事の能力のみではなく「いいやつだから」「かわいいから」という感情的な部分は人間ですから必ずあると思います。そう思ってもらうためには、仕事ばかりしている場合ではなく、遊びや幅広い教養を学ぶことにお金を投資すべきだと思います。

結局できるやつは気も利くし、成果も上げるし、モテる。そういった個人の魅力を上げるためにお金を使う人が減っています。勉強にも遊びにも投資をするようなバランス感を保っていることが、個人として生きていくために非常に重要なことだと私は思います。

 

 

(文・インタビュアー:長屋智揮 校正:杉江美祥)

 

《森場氏関連情報》

■J-CROWNウェブサイト
http://www.j-crown.asia

■森場氏ブログ
http://tadakazu-moriba.tumblr.com/

Interviewed in Aug 2014




ABOUTこの記事をかいた人

長屋智揮

同志社大学政策学部卒。在学中に休学し、インド・バンガロールで会社の立ち上げ、事業拡大に関わる。それをきっかけに、今後急成長が見込まれるアジア各国の市場に興味を持ち、現在ASEANを周遊しながらインタビューを行う。現在は渋谷のIT系企業に就職。