海外研修を通しての人材育成、ベトナム生活・観光情報ナビ、Samurai Cafe Saigonとベトナムで3つの事業を同時に手掛けながらも、さらに世界中でビジネスをすることを計画中の三宅氏。その溢れる好奇心は学生時代からのものであった。
《プロフィール|三宅 秀晃氏》
1987年東京都生まれ。2009年上智大学理工学部電気・工学科卒業後、みずほ情報総研株式会社でシステムエンジニアとして勤務。通常業務の傍らで大学生の就活支援やベトナム、ダナンでのカフェ経営などに携わり、退職後にホーチミンに移住。ベトナムでは学生と社会人向けの海外研修事業に従事。ベトナム生活・観光情報ナビやSamurai Cafe Saigonの運営も行っている。ベトナムガイドブックの編集に携わるなどベトナムについての知識が豊富。
目次
ベトナムで3つの事業を同時に手掛ける。
―事業内容を教えてください。
主に3つの事業に携わっています。まず本業はSpice Up Vietnamの代表です。これはグローバル人材育成のための社会人向け海外研修や、学生向けの海外インターンシップの企画運営が主になります。2つ目はベトナム生活・観光情報ナビの運営です。生活と観光から日本企業のベトナム進出に関連することまで、ベトナムのリアルな情報を発信しています。それに付随してホーチミンのガイドブックの執筆等にも関わせてもらうこともあります。そして3つ目はSamurai Cafe Saigonです。私はもともとカフェを回ることが好きで、いつかカフェを開いてみたいと思っていたところにチャンスがあったので始めることにしました。
学生時代に培ったベンチャー精神が今の原動力
ーなるほど、それぞれの動機や背景を教えてください。
まず、私は上智大学理工学部に入学したのですが、すぐに学部の勉強に飽きてしまいました。その後は起業やビジネスに関連する学生団体に入ってビジネスプランコンテストや、大学1、2年生向けのインターンシップ運営等をしていました。上智大学は文系と理系のキャンパスが4年間同じなので、良かったですね。学生時代はベンチャー精神に満ちた学生でした。あとは、バイクにテントを積んで日本中を走り回ってましたね(笑)
とはいっても実は当時、海外には絶対行かないと思っていました。英語が苦手だったのと、正直、日本が最高なので海外の何が良いのかわかっていなかったのです。でも大学3年生の時にドイツとイタリアに、卒業旅行でタイ、マレーシアに行ったのをきっかけに海外楽しいなと思い始めました。
卒業後はベンチャー企業と悩んだ末に大企業にシステムエンジニアとして就職。社会人の基本や組織の働き方など様々なことを学びながら楽しく仕事をしていました。そんなある日友人から、ベトナムのダナンでカフェを経営するプロジェクトに参加しないかと誘われ、それからは有給を使ってダナンを訪れるようになり、次第に海外に住むということを考え始めました。結局海外に飛び出すことに決めて、ITベンチャー企業に海外担当として転職してホーチミンに移住しました。その会社は半年後には撤退することになってしまいましたが、まだベトナムで勝負したいという気持ちがあったのでそれからは2年間フリーランスとして働いていました。最初は仕事も少なかったのですが、ありがたいことに海外研修のコーディネーターやベトナムに関する記事の執筆など様々なお仕事をいただくことができました。そのような様々なご縁がつながり、Spice Up Vietnamを2014年12月から立ち上げています。
ベトナム生活・観光情報ナビを始めたのは3つ理由があります。まずはホーチミンに住むようになってから、日本在住の方々にベトナムのリアルな情報を伝え、実際に訪れてみてほしいという想いが強くなってきたからです。2つ目はローカル店やカフェを開拓することが好きで読者に紹介したいと思ったから。3つ目は前職でのインターネットマーケティングやウェブサイト制作の経験を活かしてメディアの運営をやりたいと思ったからです。
ベトナム生活・観光情報ナビのウェブサイト。観光やビジネスの情報から求人まで幅広い情報が得られる。
サムライカフェは、私はウェブ上で宣伝する以外、なにもしないのが目標です (笑) 基本的には日本人インターン生とベトナム人マネージャーに企画から財務まで全て任せています。人材育成の仕事に携わっていることもあり、インターン生とベトナム人に成長の機会を与られる場にしたいと思っているからです。特に、インターン生は1人しか受け入れていません。あえて1人にして、全ての権限と責任を与えた方が大変かもしれませんが成長できると思うからです。
インターン生と(左)とベトナム人マネージャー(右)のカフェでの様子
現在の様な自分になるとは自分自身も全く予想してはいませんでしたが、やりたいと思うことを必死に進めていった結果、3つの事業を行うようになりました。今後は現地のマネージャーを育成してより現地化を進めていくことが課題です。
ベトナムはあくまでも通過点。夢は世界5大陸へと続く。
―なぜベトナムを選ばれたのですか?
正直な話、海外担当として就職したITベンチャー企業にいた際、進出先の有力候補はシンガポールやインドネシアでした。しかし、事業を検討していく中で海外市場に打って出るよりもオフショア開発の方が先だという判断になり、ベトナムになりました。ダナンに知り合いが多くいたことも大きかったです。その会社が撤退した後もベトナムに残ろうと決めて、結果的に今3つの事業をベトナムで行っているわけです。個人的には、当時はどこでもいいからアジアに行きたかったという感じです。
実は最近、将来は5大陸全てに住みたいという夢ができたのでベトナムにずっと住むかどうかはわかりません。数年前に北米在住の方から南米の魅力を聞いて以来、今は南米にすごく興味があります。世界にはまだまだ自分の知らない素晴らしい場所があるということを実感・・・そうなると、もう5大陸全てに住むしかないということになったのです。(笑) 世界各国に仲間や会社があるようになれば最高ですね。
ITで他国と差別化を図るベトナム
―ASEANにおけるベトナムの強みとは何でしょう?
ベトナムは社会主義国ということもありビジネスをするにあたって、障壁が多いのは事実です。しかし、ASEANの中では高いポテンシャルを持っていると感じており、その理由の1つが教育です。南北戦争時に南北に分断されたという歴史があるからこそ現在はベトナム全土で一貫した教育が行われています。ベトナムは他のASEAN諸国同様に工業化による先進国化も志向していますが、それだけではなく質の高いIT教育で他国との差別化をしようとしています。ベトナムではITというと、クールで給料も良いというイメージです。
ホーチミンのハード面のポテンシャルを挙げるなら、空き地です。ジャカルタやシンガポールには土地が余っていませんが、ホーチミンは大都会でありながら少し郊外にいけばまだまだ土地が余っています。さらにホーチミンにはサイゴン川が流れており、外航船がそのまま入ってこれるのでプノンペンやビエンチャンよりも優位性があると思います。さらに、ホーチミンは位置的にASEANの中心にあり主要大都市まではどこへ行くにも3時間圏内です。
趣味がバイクだからこそ見えたASEANの課題
―ASEANの課題を挙げるとしたら何でしょうか?
人材育成や産業構造、政治などの課題はもちろんあるのですが、最近気づいたことを1つ挙げさせてください。私の趣味は学生の頃からバイクで日本や世界を旅することで、最近もバイクでカンボジアを一周してきました。そこでふと気づいたのですが、カンボジアは外国人が車両で国境超えできる一方、中国、ベトナム、タイ、ミャンマーはできないのです。ちなみにインドからヨーロッパまでも、アフリカもバイクで国境超えができます。そういうのができないのはASEAN地域にまだまだ壁があるのだと実感しました。 ASEAN統合後はこの辺りも自由化していってほしいですね。
アジアハイウェイ1号線をご存知ですか?東京からトルコまで続いている道なのですが、今はまだ全ての国境を超えて走ることはできません。アジアが平和になり、いつかバイクで走破できる日を楽しみに待っています。
背後の本棚には日本のビジネス書がぎっしりと並べられている。 (貸出可)
海外で働くのもあり。そうすれば誰もが日本代表に。
―人材育成をされている三宅さんの視点から読者へのメッセージをお願いします。
海外で就活をするという選択肢もあるのに、多くの人が日本で就活をするということを決めつけている。極端な話、世界に195もの国があるのに1つの国に理由もなく絞っているわけです。それってもったいないんじゃないのかなと。例えば大阪の学生が将来東京に出るか、大阪に残るか迷うことがよくあると思います。そこにホーチミンを選択肢の一つとして加えてみてもいいと思うのです。
国境線なんて気にせず、どんどんチャレンジしたらいいと思います。もちろん好きな人、嫌いな人がいるので全員が海外に出るべきだとは思いません。ただ、海外を知らずに選択肢を狭めるは本当にもったいないなと思っています。
私は、海外から日本を見てみることで日本が大好きになりました。でも日本人はそういったことをあまり表に出さないので残念だなと思います。一方多くのベトナム人は、母国への不満を言うことがあるものの、「でもやっぱり私はベトナムが好き」と言っています。街にはベトナム国旗が至る所に飾られています。
ここで伝えたいのは、海外に出るということは、皆が日本代表だということです。良くも悪くも、自分1人の行動が現地人の日本人に対するイメージとなってしまう。私は日本人で、日本とベトナムが好きだから、日本人とベトナム人の人材育成及び交流を通して日本とベトナムに貢献しようと心がけてこれからも事業を行っていこうと考えています。
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