インドネシアのゴミ問題を通して人々の意識を改革し、より良い社会を築く!ジャカルタお掃除クラブ代表 芦田洸氏 【前編】


インドネシアの “三大悪名物”といえば?

渋滞・汚職・ゴミ・・・この3つが挙げられます。インドネシアを訪れたことがある方なら道端に落ちているゴミの多さに幻滅してしまったことがあるのではないでしょうか?日本にもゴミが落ちていることはありますが、正直あそこまでひどいとは・・・今回はASEANの中でも特にインドネシアが大好きな、アセナビ副編集長の長田が、インドネシアのゴミ問題を全力で解決しようとする芦田氏の活動を紹介します。芦田氏がジャカルタお掃除クラブを始めるに至った経緯、インドネシア社会に与えてきた影響・・・インドネシアに特別な想いを持っている方、ハンカチの準備をおすすめします。【後編】はこちら

《プロフィール|芦田洸 氏》

インドネシア人の父と日本人の母の間に生まれる。中学校卒業までは日本で生活し、高校からインドネシアへ。高校卒業後は再び日本へ戻り専修大学に入学。卒業後は商社等でインドネシアと日本を繋ぐポジションとして活躍。2009年以降はジャカルタで会社を経営すると同時にジャカルタお掃除クラブの代表として日々インドネシアのゴミ問題を解決することに人生を捧げている。国籍はインドネシアで、インドネシア名はデワント・バックリー。

 

まずはジャカルタの写真をご覧ください・・・

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(川に捨てられたゴミは雨季に頻発する洪水の原因にもなっている・・・)

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(自分のゴミは自分でゴミ箱に捨てるという習慣が薄い・・・)

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(ゴミが捨てっぱなし・・・)

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(なぜこんなにもゴミが落ちているのか・・・)

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(拾っても拾っても減らないゴミ・・・)

突然ゴミの写真ばかりで驚いた方も多いでしょう。しかし、これがジャカルタの現実なのです・・・問題の深刻さを理解していただけるようにまず実際の様子をお見せしました。それではインタビュー記事の本番です!

 

黙々とゴミを拾い続ける、緑色のTシャツを着た集団・・・ジャカルタお掃除クラブ!


普段は騒がしげなジャカルタ・・・

しかし、日曜日の朝には少し様子を変えます。スナヤン競技場には、多くのジャカルタ市民が運動をしに集まってきます!ジャカルタ市民が運動を楽しんでいる傍ら、黙々とゴミを拾い続ける緑のTシャツを着た集団が目立っていますね。この集団こそが、芦田氏が2012年4月29日に立ち上げたジャカルタお掃除クラブ(Jakarta Osoji Club)です。今回はそのゴミ拾い活動に参加させていただいた後にインタビューをしました。

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(インドネシアの人口の多さを実感できる人の多さ)

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(活動後はいつもの集合場所で記念撮影)

ポイ捨てすることは恥ずかしい!!


芦田氏:お疲れ様! 今日は長田君もゴミ拾いに参加してくれたけど、どうだった?日本でもゴミ拾いは学校とかでしたことがあると思うけど、何か違いとかあったかな?

長田:そうですね、不思議そうにジロジロ見られました。(笑) 僕が目の前でゴミを拾っているのに、平気でポイ捨てされて、正直 “憤り”さえ感じてしまいました・・・

芦田氏:そうだよね、やっぱり日本人がわざわざインドネシアでゴミ拾いしている光景なんて、奇妙でしょうがないのだろうね。実は、その心理を逆手にとって始めたのが「ジャカルタお掃除クラブ」。 

何をしているかと言うとその名の通り、日曜日にスナヤン競技場を拠点に、ジャカルタ市内のゴミを拾いを拾っています。『じゃかるた新聞』という日本人向けの新聞で私が「ジャカルタをきれにしよう!」と呼びかけて、集まってくれた15人の日本人だけでゴミ拾いをしたのが原点です。2012年4月29日のことです。

やはり、インドネシアを訪れたことのある日本人なら一度は道端に落ちているゴミの多さに幻滅してしまったことがあると思います。そのことを同じように問題だと思って私の考えに賛同してくれた人たちが集まってくれたのです。

スローガンは “MALU BUANG SAMPAH SEMBARANGAN”で、日本語にすると「ポイ捨てすることは恥ずかしい」です。

長田:でもなぜ日本人だけでする必要があるのでしょうか?

芦田氏:あえて日本人がゴミ拾いをすることで注目を集めるのが当初の目論見でした。するとインドネシアの人達の中には「自分は恥ずかしい。これはあなた達の仕事でなくて、本来は私達インドネシア人がするべき仕事です。」と言ってくれる人もいて、次第に「私もしていいですか?」とインドネシアの人達がどんどん集まってきました。

長田:でも報酬がないボランティアとなると、来てくれる人がいない時もあったのではないでしょうか?

芦田氏:もう始めて3年以上経ったけど、誰も来なかった日はなかったよ。正直初めは「今日集合場所に行って誰もいなかったらどうしよう・・・」と心配していました。まあ、1人でもやってやろうと決心はしてましたが・・・

今までにインドネシア人と日本人合わせて延べ1000人以上の方々に参加していただきました。1回の活動には平均して30人くらいの人達が集まってきてくれます。特に若いインドネシアの人達が増えてきていることはとても嬉しいです。

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(芦田氏の想いに共感して集まったインドネシアの若者達)

3年間続けて、ジャカルタから少しずつ影響が広がってきた。


長田:どんどん影響力が増してきているようですね!

芦田氏:最近はジャカルタお掃除クラブの活動を聞いて新聞社やテレビ局からの取材もきています。1時間の特番を組んでくれたテレビ局もありましたよ!日本ではゴミ拾いの活動で1時間の特番なんて組まないから、それだけインドネシアでの関心が高いんだと思う。やっぱりテレビの影響は大きくて、ジャカルタお掃除クラブを真似する若者が出てきたそうです。

実際にジャカルタだけでなく、バンドゥン、ジョクジャカルタ、メダン、スラバヤ、マランにもお掃除クラブできたそうで、嬉しい限りです。そしてついにはインドネシアの環境大臣やジャカルタ州知事が活動の様子を視察にきてくれて、2月21日をゴミの日に制定し、2020年までゴミをなくそうという運動を宣言してくれたのです。少しずつインドネシアの人達の意識が変わってきたのかなと・・・

11392926_782489841870460_270475429727296359_n(取材を受ける芦田氏)

インドネシアのゴミがなくならない理由


長田:2020年までってけっこう遅くないですか?

芦田氏:確かにね。ゴミをなくすなんて、本気になれば1年でできると思わない?きっとジャカルタをきれいにしようという流れもしぼんでくると思う。でもそこで諦めたら負けだから、私たちがやり続けないといけない。少しずつだけど変化はあって、私たちの草の根活動が、政治を動かせたかとほくそ笑んでいます(笑)

長田:そもそもなんでインドネシアにはこんなにもゴミが落ちてるんでしょう?

芦田氏:インドネシアって貧富の差が激しいでしょ?いわゆる社会的地位が高い人はプライドが高くてゴミ拾いなんて自分がする仕事じゃないと思っている。ゴミはゴミを拾う人ことを仕事にして生計を立てている人に拾わせたらいいと・・・自分は捨てる側、拾う側ではない。実際に家でもお手伝いさんを雇っていて、掃除洗濯も自分でしない。そういうのは子供にも影響するし、学校でもそうなっちゃうよね。

長田:日本だと逆で、社長とか偉い人が率先してトイレ掃除とかしていますもんね。

芦田氏:日本だと「社長がしているんだから、自分もしないと!」ってなるよね。以前ある環境コンサルタントを名乗る人が活動に参加してくれて、一緒にゴミ拾いをしていたんだ。その人はアメリカで環境の博士課程を修了したいわゆるエリート。で、実際にゴミ拾いしていると皆バラバラになっちゃうでしょ?なのにその人が私を探して呼んで、「私から離れないでください。」って言ったんだ。なんでだと思う?

長田:発起人である芦田さんと一緒にいることで目立つからでしょうか?

芦田氏:いや、要は私と一緒にゴミ拾いをしていると、 “ボランティア活動”をしているんだと周りから見られるけど、1人だとただのゴミ拾いのオヤジだと思われるから嫌なんだって。そこにさっき言った悪い “プライド”が露呈するんだよね。そこの壁を打破するためにも、ひたすら私たちがゴミ拾いをしている背中を見せて、そういった人たちの意識を変えたいと思っています。

もちろんそれが全面的に悪いっていうわけではなくて、良い方向に活かされる時もあります。ただ今やインドネシアも独立後から紆余曲折はあったけど、世界に注目されるほどの経済成長を遂げているのだからそれにふさわしい意識が必要かなと感じます。

教育を受けた人たちは、頭が良い分、何とかしなければという意識は確かにあって、それなりのことはみんな考えている。でも問題は、自分で手をくださない。大統領であれ、誰であれ、問題意識を持った後は、行動だよね。この活動を通して、そこに切り込みたい。そんなに難しいことじゃないんだから、行動することによって意識を深めてもらいたい。

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(高層ビルが立ち並ぶジャカルタ市内の様子)

インドネシアの人達の “寛容さ”


長田:なるほど、そんな一面があるなんて知りませんでした・・・良い方向に活かされるというのは具体的にどんな時でしょうか?

芦田氏:例えば、インドネシアの人たちを語る時によく出てくるキーワードが “寛容さ”だね。さっきの “プライドの高い人”は「これはお前たちの仕事だ。」って言う一方で、「自分がこの人達をなんとかしないといけない。」という意識も持っています。インドネシアの人たちがすごく“家族”を大切にするのは知ってる?

長田:そうですね!仲良くなったインドネシアの友達に “You are my brother.”って言われたり、 “Family is the most important for me.”って言われましたね!日本が失った “なにか”がインドネシアには残っているような気がしました。

芦田氏:そう、昔の日本がそうであったように、インドネシアの家族は大家族。自分とお母さん、お父さんがいて、自分の息子の、お嫁さんの、お姉さんの、旦那の、弟の・・・といった具合にかなり “家族”の範囲が広い。その大家族の中で成功した人はそんな遠い家族のことまで受け入れて、面倒をみないといけないという責任感や義務感を感じるようです。

インドネシアはまだ社会保障が整っていないうえ、給料は安く、子供は多く、一方で物価が上がっているという状況ですのでそういう成功者が家族全体を支えようとする文化があるのです。そういった良い面は伸ばして明らかに悪い面は直していくべきだと思っています。

長田:ではその明らかに悪い面とはどういった面でしょう?

芦田氏:決まりを守らないことですね。(笑)ジャカルタの渋滞なんて最悪だよね。(笑)一応交通ルールはあるんだよ。1人1人がきちっと守って警察がきちんと管理していれば、もうっちょっと緩和されるんじゃないかな?3車線が5車線になって・・・大通りには最大5車線もあるんだよ。それもいつのまにか8車線に・・・そうなるんだったら、1車線つぶして歩道にして歩かせたらいいと思わない?

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( 一向に動く気配のない渋滞の様子。渋滞による年間経済的損失は2000億円だというデータも・・・)

長田:インドネシアの人達は歩きたがらないですよね(笑)。

芦田氏:まず問題はまともに歩ける道がないってこと。暑いから歩かないっていうのは詭弁で、それならハワイはどうなんだ?って(笑)。 そこまで遠くでなくても、近所のシンガポール、クアラルンプール、バンコクでは皆歩いているじゃないですか。理由は単純で、道がきれいだから。お金持ちは歩かず、車に乗るもんだという意識があり、目の前の歩いて5分の所にわざわざ車に乗って、渋滞に巻き込まれて遠回り・・・

これは渋滞のない昔だったら許されたかもしれないけど、今は世界に注目されるインドネシアなわけだからこういう面は直さないとね。多くのインドネシアの人たちは口を揃えて「インドネシアはすごい国だから」って言うんだよ。ここでいう“すごい”は、歩くなんてみすぼらしいことはしない。みんな車に乗っているんだ、どうだすごいだろうと、少し“すごい”の意味を取り違えているような気がする。

長田:たしかに、インドネシアに限らずかもしれませんが、ASEANの人たちってけっこう愛国心を強調しますよね!?日本だと、ちょっと気持ち悪く思われちゃう気がしますけど・・

芦田氏:そうだね、ちょっと非難すると怒るし。プライドが高い。私に言わせれば、上述の “すごい”のような解釈をしているうちは、プライドというよりも見栄だと思う。これも深く考えればオランダや日本に占領されてきた時代の後遺症が、一部エリートの中にはまだあるとも思う。

要は、もう「お前らには馬鹿にされないぞ」とね。まあ日本人でもそういう人はいるけど。

私はちょっと荒いやり方かもしれないけど、テレビでインタビューを受けた時にインドネシア人の愛国心を逆手に取ってその愛国心を刺激するようなことを言いました。インドネシアの汚職問題って知ってる?

長田:出ましたね。(笑)今はマシになってきたそうですけど、昔はひどかったらしいですね・・・

芦田氏:そう、まさに “金の社会”だから汚職問題がひどい。だから私はこう言いました。「見てみろよ、この街を。ゴミだらけじゃないか!こんな所で暮らしているから脳ミソが汚染されていくんだよ!」

長田:かなり強烈ですね・・・

芦田氏:インドネシア語でたまたま、悪知恵が働くヤツのことを “汚い脳ミソのヤツ”って言うんだ。それをうまく文字ってやりました。街のゴミだらけの様子はインドネシア人の頭の中を見ているようだ。街が汚いから脳みそまで汚染される。だから汚職が無くならないんだってね。するとテレビのスタジオが一瞬シーンとしました。(笑) 

これ以上言うとダメだけど、これはインドネシア全体を敵に回しているようなものだよね。でもこれくらいでひるんでいたら、私の目標は達成されない・・・正しいと信じているから、言いたいことは言います。

するとかなり影響があったみたいで、最近はジャカルタ州知事のアホック氏もジャカルタお掃除クラブの活動に共感してくれるようになりました。彼もインドネシアのゴミ問題や汚職問題にすごく問題意識を持っていて、一緒にインドネシアを良くしていこうというお話をしました。

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(ジャカルタ州知事のアホック氏との対談の様子)

まだまだ芦田氏のインタビュー記事は続きます!【後編】では芦田氏がジャカルタお掃除クラブを立ち上げるまでの経緯についてお聞きします!

 

《インタビュー日時:2015年3月9日》

ABOUTこの記事をかいた人

長田壮哉 / Masaya Osada

関西学院大学商学部ファイナンスコース5年目。ASEANデビューは高校1年の時に修学旅行で訪れたシンガポールとジョホールバル。大学1年の時に参加したインドネシアでのインターン中に「熱気」と「可能性」を感じ、その後はタイでのボランティアや、ASEANを周遊しながら現地でのインタビューを経験。さらには、ASEAN発足日である8月8日に生まれたということに運命を感じ、ASEANと日本を繋ぐ"Mr. ASEAN"になるべく、ASEAN10カ国を完全制覇。2016年7月~2017年5月にかけて、トビタテ!留学JAPAN4期生新興国コースとしてシンガポール国立大学での修行を終えたものの、2018年4月から再びシンガポールへ渡り外資系投資銀行に就職予定。将来の夢はアジア最強の名門大学を設立すること。一番好きな国は日本。