無重力で断食!? マレーシアから初の宇宙飛行士 ムスリムが抱えた問題

 

1969年7月20日。これ何の日かわかりますか?

そう、人類が初めて月面着陸に成功した日なんです!

それから50年ほどたった今、子ども向け科学雑誌『子供の科学』の「将来の夢」ランキング(2014年調査)によると、理系の子どもたちの将来の夢第1位が、宇宙関係の仕事でした。そんな子どもたちの憧れの的、宇宙飛行士の油井亀美也さんが今年の7月末からISS(国際宇宙ステーション)に長期滞在します。油井さんは、元航空自衛隊のエリートパイロットで2011年7月にISS搭乗宇宙飛行士に認定されました。

私たちのそばにいつもありながらその存在は謎に包まれ、いつの時代も人を惹きつけて止まない宇宙。

世界各国が宇宙に注目していますが、ASEANも例外ではありません。実はすでに宇宙に進出しています!

 

ASEAN初の宇宙飛行士はマレーシア人!


2007年10月、 ASEAN初の宇宙飛行士を乗せたロシアのソユーズTMA-11宇宙船(15S) が宇宙へ旅立ちました。

歴史に名を刻んだ人物はシェイク・ムザファ・シュコアさん。彼はマレーシア人で整形外科医です。マレーシア国立宇宙局のアンカサワン計画という宇宙飛行士を育成するプロジェクトで最終的に選ばれました。

彼のモットーは”What the mind believes, the body can achieve” 

そして、この功績はなんと映画にもなりました。  

(公式ホームページ⇒SPACEPORT MALAYSIA - Official Spaceport Malaysia Astronaut

(映画の予告トレイラー)

シュコアさんは、ISSでJAXAが開発した個人被ばく線量計Crew PADRESを用いて、飛行中の被ばく線量計測を実行。ISSに長期滞在せずにタクシークルー*で地球に帰還しましたが、立派に宇宙での業務を果たしました!

*タクシークルーとは、ロシアのソユーズ宇宙船でISSに短期間訪れる人のことです。(参照:ファン!ファン!JAXA!

この宇宙飛行の実現にはロシアが大いに協力しています。マレーシア空軍はロシアのスホーイSu-30戦闘機を18機購入し、この取引の一環でマレーシアから宇宙飛行士を輩出することになりました。

 

宇宙では断食もお祈りも一苦労…

イスラム教徒の義務の一つ、断食。これを行う時期はラマダンと呼ばれ、日の出から日の入りまで断食を行います。シュコアさんは、初めて宇宙でラマダンを過ごしたイスラム教徒と言われています。

もちろん、宇宙だって義務の例外ではなく、彼は断食を行っていたそう。

ラマダン明けには、レンダン・ダギン(牛肉の煮込み)、チキン・サテ、ナシ・ビリヤニ(インド風ピラフ)、揚げテンペ(発酵豆)、バナナようかん、干しマンゴー、イモ粉のクッキー、シリアル・バー、しょうが風味ゼリーといったマレーシアが開発した宇宙食を食べたそうです。

宇宙飛行士2画像

また、お祈りについても一苦労です。

ISSの時間はというと、世界標準時つまりイギリスのグリニッジ標準時を採用しています。

ISSは秒速約8kmの速さで地球の周りを飛んでいます。そのため、約90分で地球を1周します。1日で考えると地球を16周もしています。サッカー場と同じくらいの大きさのものが、鉄砲の弾丸の2.5倍以上の速さで動いているなんて本当に驚きです。

そうなると、困るのがお祈りの際のメッカの方向です。高速なISSの動きに合わせてメッカの方向を変えていてはお祈りに集中できません。かといってテキトーな方向に向かってお祈りするわけにもいきませんよね。そこで、有識者を集めた話し合いが催されました。

その結果、祈りの始めさえメッカの方向を向いていればいいということ、食事は宇宙飛行士がイスラム法に基づくと判断した場合空腹時に食べていいということなど、柔軟な対応が認められました。細かいことは、宇宙に滞在するイスラム教徒向けに一冊にまとめられています。

(宇宙でのお祈りの様子)

 

技術はこれから! 宇宙へ行ったという紛れもない事実


初の宇宙飛行士に湧いたマレーシアですが、技術はロシアに頼りきりだったことは否めません。この功績をどう捉えるかについて賛否両論あると思います。

しかし、やはり自分の国から宇宙飛行士が誕生したという衝撃、余波はじわじわと広がっていくのではないでしょうか?

シュコアさんは若者へ次の言葉を残しました。

 

 “ I am just like you … nothing extraordinary but mental strength plays a key role in achieving success . If I can do this you can too . There’s nothing impossible in life. Dreams are possible “

「私は、みなさんと何の変わりもありません。別に偉大なことではなくて、でも強い意思をもって振る舞うことが、成功への重要な役割を担うのです。私ができるんだったら、みなさんでもできます。人生において不可能なことなんてありません。夢は、叶うのです。」

 

宇宙へ行った方の言葉にはやはり説得力がありますね!彼が若い世代に与えた影響がどう表れるのか、これから楽しみです。

ASEANの若者たちが宇宙服を着て誇らしげに飛び立っていく姿を見る日は、そう遠くないのかもしれません。

 

《参考URL》

総説 宇宙食 _ Space Food

JAXA SPACE PHOTO MUSIUM

《画像引用元》

GATAG by *christopher*

GATAG by Brett Jordan




ABOUTこの記事をかいた人

藪 聡子

同志社大学グローバル地域文化学部2年生。アセナビに入ったきっかけは、タイ・マレーシアへの一人旅。現地の食、人、雰囲気にどっぷりはまりました。ASEANに精通している人や行ったことのない人など、様々な人の好奇心をくすぐるような情報を発信していきたいです!