働き方は自分で決める! 日本のエンジニアを辞め、マレーシアで「アジア就職」を選んだワケ

 

最近、よくメディアで目にすることが多くなってきた「アジア就職」。
今回は、アジア4カ国で就職活動を実践して、3月からマレーシアで現地採用として働いてる島村さんにお話を伺った。「自分の意思で海外で働くことを選んだ」と語る島村さん。
その背景にあるマインドと、経験者だからこそわかるアジア就職の実態をお聞きした。

 

日本人一人に払う単価は下がっている。

―今日は、アジア就職を実際に経験したからこそ分かることをお話していただければと思います。もともと『海外で働きたい』という思いを持っていたとのことですが、なにがキッカケでそう思ったんですか? 

初めて海外を意識したのが、最初に入った会社のあるプロジェクトのとき。 僕を含めて 4 人の同期が同じプロジェクトにいて、欧州に出張に行くチャンスが舞い込んできたんだけど、僕だけ行けませんでした。

その後、国内の仕事をずっと続けてきたんだけど、同じプロジェクトに中国の方とかインドの方がいて、外国人とのやり取りする機会が多くなったのです。

仕事をしていく中で実感したのが、国内でこれからも日本人価格で仕事するっていうのは厳しくなってきているということでした。経済状況が悪くなって、日本人1人に払う単価が下がってきています。

「じゃあ次にどうすりゃいいかな?」って思った時に、日本国内で日本人相手に仕事するよりも、海外の人と仕事ができた方が、付加価値としては高くなると思いました。

でも、いきなり海外の人と仕事って言っても、仕事で英語を使ったことなんてありませんでした。だから、日常会話レベルで良いからしっかり話せるようにしようと思い、留学を決意しました。

休職して留学っていう手もあったんだけど、戻って来た時に、その会社で海外と仕事するチャンスがあるかというと、必ずしもあるとは限りません。「じゃあ辞めて行っちゃおう」っていう決断をしましたね。


―日本でエンジニアとして9年間働いていたとのことですが、それだけ働くと部下もできるし、安定もしてきているので、辞めづらい部分もあると思います。周りの反応はどうでしたか? 

辞めづらいとかはなかったし、周りの反応も特になかったかな。親も「自分の人生だから後悔のないように」と。周りを説得する必要がなかったから、その点で自分はラッキーだったと思います。

 

自分の意思で海外で仕事ができる

ー東南アジアでの就職活動はどのくらいの期間でされたのですか?

現地での就職活動は、マレーシア以外の国のシンガポール、ベトナム、タイも合わせて、1ヶ月間。事前に国内でエージェントの人とコンタクト取ったり、skype面接したのを合わせると、実際三ヶ月ぐらいかな。

海外とのやり取りをする仕事をしたいとおっしゃっていましたが、転職する際に、海外とのやり取りをする日本の企業に転職する考えはなかったんですか?

ありました。本格的に現地採用の仕事を探す前に、日本で海外出張とか海外との仕事のできる仕事はないかなって思って、日本のエージェントに登録しました。

でも、転職してすぐそういうチャンスがある企業は日本にありません。やっぱりある程度の年数勤めないと行かせてくれないんですよ。2年先3年先って見えないから、今のうちに行っておいた方がいいのかなって思いました。

現地採用だと、自分の意思で海外で仕事ができます。日本で海外とのやり取りする仕事を探してたけど、いつ行けるかわからないし、行けるかもわからないですからね。

島村さんphoto4(引っ越して間もない島村さんの家でインタビューを行った)

―求人は、日系企業の現地法人もあれば、純粋な現地企業もありましたか?

マレーシア以外の国は、ほとんど日本企業の現地法人でした。マレーシアに関しては、もちろん日本企業の現地法人もあるし、元々駐在で来てた人が辞めて、こっちで起業した会社もあります。だから、社長はみんな日本人でした。

多分それは登録するエージェントによって違って、それぞれに強い職種があるはず。私は IT エンジニアとして、2社登録して、1社から多くの求人が来たんだけど、もう1社からはほとんどきてませんね。

―やっぱり島村さんは専門的なスキルを持っていたから就職活動しやすかったっていう面もありましたよね。

英語がある程度話せて、IT 系エンジニアの現地就職希望者が少ないっていうのは結構聞いたね。営業系の方が多いので。でも、僕も一応 IT 系企業の営業職とか応募してましたね。

一番バランスが取れていたのがマレーシア

転職活動で受ける側として日本と海外の違いってありましたか?

日本だと「なんでこの会社がいいの?」って聞かれるじゃないですか。でも こっちだと、「なんでこの会社がいいの?」だけじゃなくて、「なんでこの国なの?」「なん で日本じゃダメなの?」って3つが絶対聞かれるんです。

あとは「3年後どうしたいの?」とかプランの部分も聞かれることもありましたね。面接の雰囲気は、日本の面接よりざっくばらんかもしれないです。

あとは、「家族はなんて言ってるの?」とか「彼女いるの?」ってプライベートな部分が突っ込まれることがありました。海外に出て仕事するから、自分の意思以外で帰国するリスクは会社も取りたくないですからね。

採用が出るスピードも早いです。面接の次の日とか、その日のうちに出たりして、びっくりました。

―マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムを見て、「なぜマレーシアなの?」と聞かれたときに、どのように答えましたか?

まず仕事面では、マレーシアは IT 関連でASEAN の中でトップクラスなので、ASEAN のヘッドクオーターとして動けると思いました。

製造業は多分ジャカルタとかタイが中心になると思うんだけど、それ以外のサービス、小売り、ITとかはマレーシアに集中してくると予想しています。経済成長率も高いので、今後日本企業が進出してくる機会が格段に多くなるので、そこのサポートの仕事がしたいっていうのはハッキリ言いました。

生活面では、他の国に比べて、英語が通じ、公共交通機関が発展しているし、生活も便利です。家賃とか生活費の話が出てくるのだけれど、その辺で一番バランス取れてたのがマレーシアでしたね。

―バランスが良いっていうのは皆様よく言われますよね。 面接されたときに「3年後どうしたい?」と聞かれたとのことですが、現地採用として入った方のキャリアは一般的にどうなるのですか?

色んな国の現地法人の方と話したけど、ほとんどの方が言われてたのが、最終的に代表者以外はローカルだけでまわしたいっていうのが多かったです。なので、そのままのし上がっていくのを考えています。

僕の中では、最低3年は働かないと仕事わからないから3年は働いて、その先どうしようかなって様子を見ようと思っていますね。 ローカルだからこれ以上は昇進できないっていうのはないはず。

それは、会社はなるべくコストは抑えたいからで、日本から赴任させるよりは、現地で日本人雇った方が安いです。そこで、どんどん昇進してもらって、会社をまわしてくれれば、会社としても良い方向に行きますよね。

日本で働いているときと感覚的には変わらない


―実際1ヶ月働いてみてどうですか?

全然違う分野で働くことになったから、ほとんど勉強ですね。新しいことなんで色々勉強していて楽しいし、生活の面でも特に不自由はしていません。 ぶっちゃけ、日本で働いてるときと感覚的には変わらないです。

僕にとって海外就職する感覚は、東京で働いてたのが、大阪や福岡で働く延長ぐらいの感覚なのでしょう。そこに、国境またがるからビザの問題とか、言葉の問題があるぐらいで、そんなに意識はしませんでした。

仕事に関しても、「日本だから」「マレーシアだから」というのはあまりないけど、 共通的にこうした方が良いっていうのはあります。「なんでこうしたらいいの?」って周りに説明しながら仕事するのは、日本だろうがマレーシアだろうがベトナムだろうがどこでも一緒です。

大事なのは、その国の人の気質とか文化に合わせながらどうやってやればいいかを追求することだと思います。

―それって本質的に一番大事なことなのかもしれませんね。

僕は9年ぐらい働いてたから、なんとなくそういう意識でいけるって自分の中では思っています。でも、まだ日本で働いて3年とかの人はなかなか部下もつかないだろうから、現地採用でやっていくならそういう部分を勉強していく必要があるでしょうね。

島村さんphoto3
―9年間日本で働いて来られましたが、それがもし3年間だったらその壁ってまだ大きいとは思いますか?

大きかったのかもしれないですね。

僕自身、3年間色んなプロジェクトに関わってきて、いろんな会社に常駐という形で働いていました。どこに行こうが仕事は仕事で、やらなきゃいけないことがあって、その中でやりくりしていかなきゃいけません。というのもあって、意識としては変わらないです。

こんなこと言ったら誤解を生むかもしれないけれど、あるプロジェクトでこっちに来ていて、お金がこっちから払われている、というイメージです。

僕はお金はそこまで重視しなかったから、普通に生活できればいいですねってぐらい。選択肢を広げればどこ行っても仕事はあるから、それを精一杯やるってところでしょうか。 

自分でやってみたことしか信じない

―広い選択肢から海外就職を取った一つのロールモデルかなって僕は思います。 その「広い選択肢を常に取れる状態」を持つことは、多くの人達がやりたくてもなかなかできないのかなって思うんですよね。広い視野を持つ根底にあるものがあれば、お聞かせください。

退職後に留学していたときに、色んな国の人と会ったのが一番だと思います。でも、留学って意思がない人だと難しいと思うので、まずは日本国内で色んな人に会うのが一番なのでしょう。

決まった人と深い仲も良いんですけど、とにかく色んな人が色んな考え持っていて、色んな生活しています。日本だって日本人だけ生活してるわけじゃなくて、それこそマレーシア人とか中国人とか色んな国の人が来ていて、色々仕事してたりしますよね。

多分ね、僕は色んなことに興味あるからだと思います。好奇心旺盛。飽きっぽいんだけどちょいちょいつまみ食いして、拾ったりとかして。あとは、自分でやってみたことしか信じません。だから僕は動けてるのでしょうね。

色々頭巡らせて、色々考えても、行動してないと信じなくて、とりあえず行ってみたというのはあります。

興味があるんだったら、試しに来るのがいいのかなって思いますね。 逆に海外に来ることを強制はしたくありません。海外で就職しなきゃいけないとか、これがベストな道だっていうのはないですから。

ただ、日本で「給料安いんだよねー」とか文句言ってキツキツの生活してやってるんだったら、ちょっと視点を広げてみるのも大事かなって思いますね。

 

《編集後記》

自分の意思で“海外で働く”選択肢を取った島村さん。「海外で働きたい」とい う意思があるのに、会社の意思に左右されて、その経験を逃すのは人生がもったいない。どれだけ多くの人が「アジア就職」という選択肢に気づいているかわからないけど、潜在的に活躍の場を広げたいと考えている人は多いと思う。 「日本これからヤバいよね」っていうのは簡単。そこで、どうやって次を考えられるかが重要。「アジア就職」という一つの選択肢も考えてみてはどうだろうか。

(インタビュアー:リョウ 編集:ユーゴ)




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アセナビ編集部

「ASEANで働くを近くする」を理念に掲げ、ASEANで働いている日本人のインタビュー記事を発信しています!他にも、ASEANのカルチャーやトラベル情報も発信し、ASEANに行ってみたいと思ってもらえるように日々奮闘中です。ほぼ学生で運営しています。