2015.12.16
「大学で学べないビジネスを修得できている。」―そう話すのは、ベトナム第三の都市であるダナンにてインターンを経験している若い女性たちだ。今回は、ダナンでインターンをしている20代前半の女性3名の座談会を行い、“若い女性が、ASEANで働くリアル”に迫った。
《高宮佑加子氏|プロフィール》
1991年千葉生まれ。上智大学経済学部経営学科卒。大手コンサル系に就職が決まるも、それを蹴り、ダナンのコンサル・不動産事業にて1年間のインターン中。(写真中央)
《小野明寿香氏|プロフィール》
1993年大阪生まれ。関西大学環境都市工学部建築学科建築環境デザイン研究室4年。3人で唯一の理系。就職が決まった後、「大学で学べないビジネスを知りたい」とダナンへ。電子カタログ作成事業にインターンとして1ヶ月間取り組む。(写真右)
《花田歩美氏|プロフィール》
1993年福岡生まれ。福祉系大学の国際福祉開発学部4年生。大学の研修でマレーシアへ行き、東南アジアの「怖い」「汚い」のイメージがなくなった。就職が決まった後、ダナンの現地日本食レストランにて1ヶ月間のインターンに取組む。(写真左)
どうしてダナンを選んだの?
ーみなさんはなぜベトナムのダナンをインターン先として選んだのでしょう?
花田歩美さん(以下花田):インターン仲介会社に紹介されたからダナンを選びました。以上です(笑)。
最初は、海外に旅行じゃなくて長期間でなるべく安く行きたかったというのが大きな目的だったんです。だから、飲食にもベトナムのダナンに興味があったわけではなく、どこでもよかったんです。もともとダナンのことは全然知らなかったですね。
小野明寿香さん(以下 小野):最初はインドがおもしろそうだと思ったけれど、「治安が悪い」と両親に反対されました。
その後の選択肢がシンガポールかベトナム。シンガポールは建築系で興味があったけど、VISAが取れなくて。最終的にベトナムを選んだのは、就活中にアパレル業界を見ていて日本の企業がたくさんベトナムに進出しているのを知ったからですね。日本とベトナムのつながりの深さを感じたんです。
高宮佑加子さん(以下 高宮):ダナンでのインターン以外に、欧米のホテルインターンにも目をつけていました。けれど、それに行っても事務作業をやるだけで、「バイトやってきました。」で終わっちゃいそうだったんです。それだと次につながるものを得られないかなと思ったし、欧米だと生活費もすごくかかるし。
その後、インターン仲介会社にベトナムを推されて、今の社長と面談してこの人が魅力的だなって思いました。あとは、「治安が良い」というの面も決め手の1つですね。
ーダナンを選んだ理由はそれぞれなんですね!では、みなさんが行っているインターンの事業内容を教えてください。
花田:ダナンの日本食レストランでデリバリーの引き継ぎをやっています。デリバリーの仕組みが何もできていないから、仕組みをつくっているんです。メニューやチラシをつくって、ダナンのホテルに置かせてもらうようにすることが事業内容ですね。
ー飲食業はベトナム人と関わることが特に多そうですが、ベトナム人と働く上で気をつけていることはありますか?
花田:うざいと思われるのを覚悟で、しつこく「やってくれた?」と聞いていましたね。
メニューをつくる作業については、まずメニューのデータをもらう段階から手を焼いていて。ベトナム人の人たちにたらい回しにされていました(笑)。
あまりこちらの仕事が遅いとスタッフのやる気を削いでしまうので、その点も気をつけましたね。ベトナム人スタッフそれぞれの自主性に任せる部分はあったけど、「3日後までね。」というふうに期限を設けるようにしていました。あとは、コミュニケーションでは言語が問題になっていたので、全部絵や字を書きながら説明しています。
ーなるほど。既存のスタッフの方がキャリアが長いから、その意味でもコミュニケーションは難しいですよね。小野さんはいかがでしょう?
小野:私は電子カタログをつくっています。日本の企業のカタログをデジタル化して、その紙面から別のサイトに飛んだり、買い物かごに入れたり出来るようにリンクを貼る仕事ですね。日本語を話せるベトナム人スタッフと一緒にやっています。
私がメインで担当しているのは、日本とベトナムのスタッフをつなげる仕事です。日本の担当者の微妙なニュアンスがベトナム人スタッフに伝わらない際に、日本語のニュアンスを伝えています。カタログが好きだし、パソコンもできるからやろうかなって思ったんです。
他にも、毎日の進捗状況を日本に報告したり、日本の担当者からやってほしいことを伝えてもらってタスクを分担したりしています。日本語のミスがないか、リンクがずれていないかなどのチェックもしていました。
ーベトナム人と働く上で気をつけていることはありますか?
小野:無茶を言わないことですね。切羽詰まらせると嫌になってしまうのではないかと思うので。彼女たちができる範囲で仕事を最大限に回すようにしました。
あとは、女性同士ということもあり、友だちになってワイワイやれればいいかなって(笑)。
高宮:私は社長のアシスタント、コンサルティングと不動産事業です。日本の企業がベトナムに法人を新しく立ち上げる際の書類の手続きを担当しています。不動産事業では、紹介するお客さんのアテンドや手続き、ベトナムの法律を説明しています。
あまりベトナム人と働く機会はないですね。ただ、時々通訳を介して仕事をすることがあるのですが、ニュアンスが伝わらないので大変です。間に人を介すのは手間がかかるなと痛感しました。
ダナンとインターンの魅力!!
ーさてみなさん、突然ですがダナンをどう思っていますか?
小野:すごくコンパクトで、意外となんでもあるので生活に困らないですね!例えば最近、眼鏡と靴を修理したい時にちゃんと出来る場所がありました(笑)。そして、ベトナムの中でも治安がとてもいいです。
観光地として魅力的なのは、空港から観光スポットとホテルがすごく近いことです。他の観光地ではなかなかないですよ。都会化しているところと人が住んでいるところが近くて、ホテルに泊まっている観光客も地元の生活をすぐ見られますしね。ホテルからビーチのアクセスもいい。特に、日本人が2泊3日とかの短期で行くにはとてもいい場所だと思います。
ビジネスの面から言っても、ダナンは日本企業を歓迎していてVISAがおりやすいから注目されています。
高宮:確かに、ダナンには可能性がすごくありますね。不動産の立場から見ても、地価が上がっているということがあります。ダナンの地価はまだ安いけど、一ヶ月の間ですごく上がりますね。
また、2017年にはAPECが開かれるから、そこに向けて外国人もベトナム人も企業もみんな頑張っている。まさに、日本がオリンピックに向けて頑張っているみたいにですね!
花田:あと何よりダナンは夜景がきれい(笑)!ドラゴンブリッジとか。
高宮:イメージしていたベトナムと違うよね。ダナンはシンガポールみたいになっていて。
(ダナンの夕暮れ)
参照:2017年APEC開催地ダナン 観光地として人気なベトナム第3の都市に注目すべきワケ
ーダナンには魅力が詰まっているんですね!では、インターン先事業の魅力を教えてください。
小野:デジタルカタログ作成の認知度はまだまだ日本でも高くないし、今後伸びていく分野です。
日本ではiPadやスマホがかなり広まっているから、紙の本よりもkindleのようなツールでサッサッと読むのが主流になっていくと思います。本を買わずに電子で買うのが当たり前になって、それに合わせてカタログや雑誌も全部電子になりつつある。
将来的には雑誌も全部電子化されて、リンクを貼って別のサイトにとぶようになるんじゃないでしょうか?それをわかっている人は多いけど、やっている会社は少ないから可能性があります!その先駆けとして携われるのが楽しいですね。
花田:私の場合は、現地の人と話せることが魅力ですね。日本人だけの旅行では行けないようなお店に毎日連れて行ってくれるんです。カラオケとか(笑)。でも、スタッフとのコミュニケーションはいつもボディーランゲージですね。
ー高宮さんは就職決まってから、それを蹴ってダナンに来たらしいですね。その理由はなんだったんですか?
高宮:「普通に就職していいのかな?」思いながら就職活動をしていました。ずっと同じ企業にいるつもりはなかったけれど、大学卒業したら就職するのが当たり前みたいになっているそのレールに乗るのはつまらないなって葛藤して。
コンサルティング会社に内定をもらったんだけど「本当にここに入社するの?」ってなった時に「別にいっか」って思いました(笑)。それでインターンに参加することにしたんです。
ーインターン後はどうするのでしょうか?
高宮:日本に戻って就職する選択肢はないです。ダナンで色々なつながりをつくって、1年後に帰るか残るかってなった時にいい方向にいければと思っています。
(バーベキューの様子。)
ー小野さんは理系ですね。理系で海外インターンに参加するのは珍しいのではないですか?
小野:そうですね。私は理系だけど、留学がしたかったんです。でも、周りに留学する人はいないし、理系の建築学科が参加できる大学の留学プログラムはありませんでした。
考えていくうちに、留学すると授業を受けられるけれど、自分から動き回ることがしづらくなる印象があって。一方で海外インターンだと自分から何かをしないとダメだし、与えられたことを上手く回るようにしないといけません。
インターンの方が2, 3倍体力いると思うけど、楽しいです!得られるものもその分あるはずですからね。働きながらの方が語学も身に付くかなって思ったし。留学はお金を払っているから受け身でも許されるけど、海外インターンだとやらざるをえないといけない状況がたくさん出てきて、刺激的です。
周りに海外インターンしている人はいないけど、4年生の今が海外に長期間で行くラストチャンスだと思って、「行っちゃえ!」って(笑)。
ー”リケジョ”が海外インターンすることについてどう思いますか?
小野:有効だと思いますよ。理系は専門的すぎて視野が狭まりますからね。それが嫌で、就職先も理系・文型両方できるところを選びました。
インターンに参加したのは、国内ではなく海外のビジネスを知りたくて。なぜかというと、日本の昔の状況と似ている発展途上国のビジネスと経済を直接見たかったからです。
ー僕がベトナムを選んだ理由は、日本人はベトナム人の中で外見がなじんで、ベトナムは親日国でアウトプットが出しやすそうだと思ったからなのですが、みなさんはインターン先国を選ぶ上で、自分なりの基準はありましたか?
小野:伸びつつあるマーケットってことですね。だから、インド、シンガポール、ベトナムに目をつけました。
花田:危険性が少なくて、行ったことがない国。あと、旅行でなかなか選ばないところです。欧米ではなく、途上国の中で治安がいいところですね。
高宮:完成されていないところに自分が入れると面白いですよね。でも、親世代はベトナムも危ないと思ってますね。両親の反対は感情的に押し切りましたけど(笑)。
ー僕は、おばあちゃんに「ベトナム行くことになっちゃって可愛そうだね。」と言われたけど、反対はされなかったですね(笑)。
小野:親は「海外インターンなんて意味ないじゃん。あなたは建築学科だし。」って言われました。
あと、祖父母にはめちゃくちゃ反対されましたね。「海外インターンって人身売買されるんじゃないの?利用されているだけだよ。」って。
花田:私もそれ言われた(笑)!
ーそれはやはり、海外インターンが認知されていないからですかね?
小野:そうですね。祖父母の世代は全く認知してないです。親の世代はなんとなく分かっているみたいだけど。
高宮:私の親も海外インターンについて知らなかったけれど、説明して理解してもらいました。
(仕事中の高宮さん。スマホが2台もありますね!)
ーでは、ダナンで足りないことはなんですか?
小野:インフラの整備ですね。停電が起こる上に、何か災害があった時の避難経路がありません。劣悪ではないけれど、その一歩手前かも。
人と人のつながりはあるけど、町としてなにかやらないといけない時に機能するかが不安です。ダナンはどんどん都会になっていくから、しっかりした自治体と機能的な役所と住民の関わりが必要だと考えています。
花田:足りないところは、ベトナムの人が約束を守ってくれないことですね。適当な感じがして、日本の感覚では考えられません。
ーベトナム人は日本人と優先順位の付け方が違ったり、ファーストインプレッションの捉え方が違うのかもしれませんね。
小野:うん。ベトナムの人は「場」を大切にするのかな。その場を盛り上げることを重視しているのかもしれませんね。でも、基本的にみんないい人たちですよ。
それぞれのインターン後のこれからと、インターン検討中のあなたへのメッセージ!
ーさて、これからみなさんはインターンの経験をどう活かしていこうと考えていますか?
小野:私は理系だけど、文系的な視点も持ちたいと思っています。
この1ヶ月間で途上国のマーケットを知ることができたし、大学では学べないビジネスを習得できました。日本に帰って就職してもこれが活きると思います。理系として大学で4年間勉強するだけでは視野が偏るから、それをフラットにできていますね。
インターン後は就職をするけれど、そこでも文理両方の仕事をする予定なので、自分が持つ情報量を増やして柔軟な人間になれたらなって思っています!
花田:私はダナンに来てコミュニケーション能力が上がり、初対面でも物怖じしなくなりました。不測の事態でも焦らなくなったのです。スタッフ同士やお客さんと接する時も、不安そうな顔をすると相手も残念そうになるから、自信が大事だと思いました。今後は、自信を持って生きていこうと思います!
ー今後もダナンに関わっていきたいという気持ちはありますか?
小野:めっちゃある!ダナンで働きたいですよ。
でも、私はやっぱり関西が好きだし、自分が行きたい企業に就職できることになったから、まずはそこで基礎的な部分を勉強したいと思っています。私も高宮さんと同じで1つの企業に収まるつもりはないから、ゆくゆくご縁があってダナンに来れたら面白いし、それはベトナムでなくてもいいと思っています。
インターンを通して、"日本に就職"ではなく"世界に就職"という視野が広まりました。日本じゃなくても自分のやりたいことができるところに行ければいいかなって。
ーそれは東南アジアに限らず?
小野:はい。でも、東南アジアだったらやりたいこと全部できるって言われますね。途上国には何もないから、それをつくっていく人も少ないです。日本は完成しきっているから、あるものを変えて代謝をよくしていく感じ。こっちだと新しいものをどんどん作れる感覚が面白いですね。
ーそのモチベーションはアフリカとか南アジアや西アジアの途上国には向かないんですか?
小野:人と人の関わりを見た時に、日本と東南アジアだとコミュニケーションがとりやすいと思うんです。親日だからというのもあるし、ベトナム人は日本人と感性が似ている。それはとても大きいですよ。地理的な距離が近いというのもあるかな。
日本の豊かな環境でホワホワしたいわけではないし、常に刺激が欲しいけれどあまりにも過酷な状況に自分を置こうとは思っていないから(笑)、ベトナムあたりが丁度いいです。刺激を求めて、自分のやりたいことができるのであれば、それは日本じゃなくてもいいかなって思い始めました。でも、最初は関西に強い企業で基礎的な部分を身につけたいです。そこでいっぱい盗んでやる!って感じ(笑)。
花田:私の場合は、1年とか限られた期間なら大丈夫だけど、ダナンに住むのはきついかな…日本が好きですからね。病気になったらどうなるんやろって思っちゃいます。ずっと住みたいとは思わないですね。
(花田さんの帰国時)
ー女性は出産も視野に入れていると思います。もしダナンで働いたとして、現地での出産・子育てに抵抗はありますか?
小野:パートナーが現地の人であればそれでもいいかもしれないけど、日本人と結婚したのであれば、出産する時は絶対日本がいいですね。その方が安全です。子どもが第一ですから。
高宮:ホーチミンやハノイと違ってダナンには日系の病院がないのが不安です。でも、ベトナムと日本はそんなに遠くないからすぐに帰れますね。直行便もありますし。
ーお話ありがとうございました!では、最後に東南アジアやベトナム、ダナンでインターンを検討している女性に一言お願いします!
花田:なんとかなります!言葉とかお腹壊したりが不安だったけど、慣れます(笑)。
小野:ベトナムの女性は働き者だから、女性はすごくやりやすいと思いますよ。ベトナムの女性が一生懸命だから、モチベーションが上がる。日本の女子大生がベトナムに来たらすごく行動しやすいし、ベトナムの女性と同じように活躍できるのではと思います!
海外インターンには行った方がいいと思いますね。視野が広がるし、日本で学べないことがいっぱいあるので。ボランティア・サークル・バイト・留学をしたりと、4年間の過ごし方は色々あるけど、海外インターンは大きなポイントになるはずです!短い間でガラッと自分を変えられる気がします。「こんな価値観あるんだ!?」と肌で感じたり、自分の知識量を増やすこともできます!
高宮:ベトナムにとって日本は今憧れの国だけど、すぐに抜かれるなって実感しました。こっちの人はすごい貪欲だし、学ぼうとする意識がすごい。勢いとガッツがあります。日本にいると平和だから分からないけど、こっちにいると危機感を持てるからいいですね!
【取材後記】
海外インターンとベトナム、ダナンの魅力について存分に語ってくれた3名。海外インターンに取り組む中で、彼女たちは少しずつ、しかし確実に変わっているようです。留学が主流の今、海外インターンを検討していても、様々な理由でその選択をしない人は多いと思います。しかし、海外インターンをすること自体をためらっているのであれば、それはもったいないことではないでしょうか。海外インターンで得られる経験やつながりは、あなたの想像を超えるものかもしれません。