3年で大手旅行会社を退職し、ミャンマーで起業「旅×教育」を通して若者に主体性を【HOME Myanmar mm Co., Ltd代表鈴木俊良氏】

 

ミャンマーのインレー湖にオフィスを構え、ユニークなツアーに強みをもつHOME Myanmar mm Co., Ltd代表鈴木氏。大学時代に「旅×教育」に興味を持ち、大手旅行会社に入社後3年で退職し、ミャンマーで起業。東南アジアでの旅に対する強い想いを伺った。

 

《プロフィール | 鈴木俊良氏》

1990年生まれ。大学在学中に2年間休学し、中国、カナダ留学を経験する中で「旅×教育」に興味を持つ。専修大学卒業後、2014年に大手旅行会社に入社。ミャンマー支社の立ち上げに携わり、3年間勤務。2017年にミャンマー、シャン州にあるインレー湖にHOME Myanmar mm Co., Ltd.を設立。インレー湖周辺のツアーに強みをもち、新たな観光素材の開拓に努めている。

 

ミャンマーとの出会い

ー事業内容について詳しく教えて下さい。

ミャンマーのシャン州、インレー湖という有名な観光地にオフィスを構え、旅行事業をしています。村を訪問するツアーや「奥カックー」という知られざる場所に行くツアー、コーヒー農園ツアー等を主にやっていて、インレー湖周辺の手配などに強みを持っています。またそれだけでなく、ヤンゴン、バガンのミャンマー全土の旅行も手配しています。春と夏には、スタディーツアーも企画するなど、幅広い旅行を取り扱っています。

 

ーなぜミャンマーなのですか。

元々、東南アジアが好きで、そういった国で働いてみたいという想いがずっとありました。就活中に入社したいと思っていた企業がヤンゴン支店を立ち上げるタイミングだったので、面接のときも入社後もずっとミャンマーに行きたいですと伝えていました。立ち上げに携われたら学びも多いだろうし、きっと成長できると思っていたので。

また、まだ観光業が未発達の国ですので、観光業自体の成長や、観光業を通して地域や村などの収入が上がっていくような取り組みをしたいという思いがずっとありました。オーストラリアやシンガポールなどの先進国での配属希望も出せましたが、これからもっと伸びるであろうミャンマーを希望し、赴任させていただきました。

3年間働いて知識や人脈、思い出もたくさんあったので起業する際はミャンマー以外考えていなかったですね。

 

ー以前から東南アジアに興味があったのでしょうか。

大学時代に興味をもちました。最初は大学1年の春に行ったカンボジアのスタディーツアーがきっかけです。ゴミを拾って生活してる人たち向けに衛星教育や識字教育を行っている学校を訪れたり、ハングリーに生きる現地の学生との交流などをした経験が始まりです。

大学入学したばかりの頃は、漠然と“国際協力”に興味があり、幸せってなんだろうとか経済的な豊かさよりも人に愛されるとかのほうが幸せなんじゃないかとか、よく考えていました。

ずっとサッカー一筋だったのですが、大学生になって先輩から途上国好きが集まるサークルを紹介してもらい、そのサークルに入りました。

不思議なことに幼稚園の卒業アルバムにも世界中の国旗を描くぐらい幼少期から海外に何か感じていたのかもしれませんが、このサークルに入ってから周りに感化され、スタディーツアーに参加し、更に途上国に興味を持つようになりました。

〈インレー湖にあるオシャレなオフィスはカフェに間違えられることも〉

 

「旅」を通して主体性ある若者を増やしたい

ー同じ旅行業界でありながら独立をしたのは、何か特別な想いがあったのでしょうか。

旅行業界で働きたいと思った理由が「旅×教育」をやりたかったからなんですよ。修学旅行で東南アジアに学生を連れていきたいという想いが強くありました。なぜなら私自身、旅の影響を強く受けたからです。

学生の頃からスタディーツアーを企画したりしていて、社会人になっても旅行会社で学校に対し修学旅行先として東南アジアを提案し、学生を連れて行くことができたらいいなと思っていました。またそれとは別に、より現地に触れることのできる旅を提供したいという思いもありました。しかし、現実は甘くなく、なかなかそういった旅行に関わる、企画する機会はなく、このままでは自分がやりたいことができないと思い独立することを決意しました。

 

ー「旅×教育」をやりという強い想いを感じたのですが、それを通して若者にどういう姿になってほしいと考えていますか。

旅を通して主体性を育んでほしいです。旅って自分を客観的に見れる機会だと思うんですよね。「旅先で出会う人、物は自分を照らし出す鏡だ」という言葉をよく聞くと思うのですが、自分や日本を客観的に見ることで、こういうのやりたい!という気づきが得られ、主体性を育む機会になると思っています。

なぜ主体的になってほしいかというと、主体的に生きる人のほうが幸せだと思うからです。人から言われたことをやって失敗するのと自分で決断して失敗するのでは後悔の幅が大きく違うと思いませんか。

私自身が大学時代にカンボジアのスタディーツアーに参加し、やりたいことを見つけてから主体的に行動できるようになったように、多くの若者に「旅」を通して主体性を育んでほしいと思っています。

〈インターン生送別会。受け入れ人数は1年でなんと10名近く〉

 

ミャンマー1ユニークな旅行会社を目指して

ー今後の展望を聞かせてください。

現在99%が日系マーケットで7割が観光、3割がビジネス関係のご旅行です。今後は日系マーケットだけでなく欧米系も広げていきたいと思っているので、向こう1年で欧米系を15%にまでしたいとも考えています。

本来はスタディーツアーなどの教育旅行を1番やりたいのですが、学校と組んでやるには厚い信頼関係が必要なので、会社を設立後すぐに行うのは難しいのが現状です。理想とする事業をやるためにも、まずは事業を安定させることが大事だと思うので、それを優先しつつ同時進行でスタディーツアーなどを企画していこうと思っています。

会社設立後からインターン生の受け入れは積極的にしており、9月には「課題発見・解決型」のスタディーツアーを企画しています。旅や留学に行く人はたくさんいますが、そこで何を学んでその先どう活かすのかまで考えている人は少ないと感じており、そこまで考えを深められるようなスタツアにしたいと思っています。

 

ー若者にメッセージをお願いします。

得意じゃないことに主体的に取り組むことは難しいと思うので、まずは得意なことつくることから初められればいいのではと思います。

人は2種類に分かれると思っています。学生時代にやりたいことを見つける人とそうでない人。後者の方が多いと思うんですよ。

私はたまたま学生時代にやりたいことに出会え、それに向かって色んなことに挑戦することができました。けど、やりたいことがあることが素晴らしいとか、ないからダメだとか、そんなことはないと思っています。ないほうが普通です。ただ、あったほうが楽しいと思います。

学生から「やりたいことが見つからない」と相談を受けることも多いですが、頭でっかちになってしまっている気がします。きっと、自分の得意なことを通して人に感謝されるなど、小さな成功体験を積み重ねていくことで、自分が人を幸せにできるものに気付き、それにやりがいを感じ、自然と“やりたいこと”に変わっていくんじゃないかなと思います。

ですので、自分の得意なこと、できることを一つでも増やしていくために、たくさんのことを経験し、与えられた環境の中で一生懸命やりきることが大事だと思います。

 

編集後記

大学時代に自分がやりたいことを見つけ、その目標に向かって何事にもチャレンジしてきた鈴木氏。そのバイタリティーと共に起業し、やりたいことに向かって奮闘している鈴木氏の話を聞き、人は本当にやりたいことに出会ったときにどこまでもチャレンジできるんだということを感じました。

もっと多くの学生が鈴木氏のように色んなことに挑戦すれば、やりたいことや好きなことに出会えるのではないかと思います。

ミャンマーで最もユニークな旅行会社になってほしいことはもちろん、それだけでなく「旅×教育」を通して主体性をもった学生をどんどん増やしていってほしいです。