インドネシア人と働く上で見つけた手法は「アメとニンジン作戦」!?

2017.05.29

あなたは、部下や後輩を持ったらその人たちの成長を応援し、成功を一緒に喜びたいと思いませんか?私はそのように思う一人です。と同時に、上司として後輩の面倒を見る立場にいます。

しかし、私が働いているインドネシアでは、人材育成をするというのは日本のそれよりもずいぶん難しいのです。

私が今働いているお店とは?

私が働いているOnepieceという美容室はジャカルタに3店舗あり、80人ほどのインドネシア人スタッフを雇用しています。内60名ほどはサロンで働くアシスタント・スタイリスト・オフィスボーイ(掃除や雑用をしてくれる子)で、スタッフは中流家庭以下のいわゆる貧困層出身の子たち。高卒や中卒以下の子がほとんどです。

Onepieceのコンセプトは、ローカルスタッフに「働く機会を与え、技術を身につけて豊かに暮らせるように育てていくこと」。ジャカルタに来る前から彼ら(学校にいけない境遇だった子)と共に働くことは知っていたのですが、いざ働き出してみると、たくさんの壁にぶつかりました。今まで育ってきた環境、文化の違いから生まれた“価値観の違い”という壁です。

日本人と大きく違う価値観

どう違うのかというと、主に働くことに対する人生のカロリー配分が違います

「仕事できる=かっこいい」という概念はなく、仕事は仕事、お給料をもらうためなので、暇があったらいつまでもさぼるし、練習にもあまり積極的にはなれないようです。家庭の事情で学校にあまり行ってなかったスタッフもいるので、「上手な勉強の仕方」を知らない子もいます。

例えば、ノートを全部赤ペンで写経のように書いたり、掛け算が苦手だったりするスタッフが想像よりも多くてびっくりしたこともありました。美容室でアシスタントとして働く以上「練習」をしなくてはいけないのですが、別にスタイリストになりたくて美容室に就職してるわけではないので(ただ仕事が必要だったから選んだだけとかなので)、練習にきてくれません。

「なぜ来なかったのか?」と聞くと毎回色々な理由が出てきます。だいたいバイクが朝急に壊れるか、お母さんを病院に連れて行っていたなどですね。

もう一つは、怒られることに慣れていない、怒られることが嫌い、です。インドネシアで働くにあたって1番気をつけなければならないことは「絶対に人前で叱ってはいけない」ということです。日本でも、失敗例をシェアする意味合いで人の前で注意したりすることもあると思うのですが、インドネシアでは気をつけた方がいいです。たとえ人前でなくても、ちょっと厳しめに注意して理解させようとすると結構傷ついて、次の日、ひどい時は2、3日仕事に来ません。

インドネシアは子供を育てる時、日本ほどは叱る文化はないので、怒られることに対しての免疫がないそうです。

よく、「彼らにはアメとムチだよ。たまにアメも与えてあげないと」と、インドネシアで働いている方々からアドバイスを頂くのですが、アメとムチの、愛のムチのつもりで強めに注意したりすると、一発KOしてしまうことがあるみたいで、辞めていってしまうスタッフもいました。

「愛のムチって伝わるの?」という疑問

アメばかり与えていると、締まりがなくなってだらけでしまう。

ちょっと厳しくして刺激を与えたつもりが、モチベーションが下がって仕事に来なくなったりそのまま辞めてしまったりする。

お給料が少ないと言うので「じゃあカリキュラムをパスしてお給料上がるようにしよう!」と前向きにアドバイスをするも、練習してくれない。

遅刻、無断欠勤がいつまでもなくならない。怒る。また仕事に来ない。

店長という仕事に就いてからは毎日頭を抱えました。

私は自分のスタッフをスタイリストにしてあげたいし、美容を少しでも楽しいと思ってもらいたいだけのなに、なぜ分かってくれないんだ!とフラストレーションも溜まりました。

スタッフに共通している特徴で計画を立てるのが苦手というのがあります。大きな夢、目標を持たせることも大事なのですが、結局それに向かって自分で逆算して計画が立てられないので、2週間ごとくらいに計画を立てて、毎週リマインドしてあげなくてはいけません。すぐ忘れちゃうので。

言葉で言うのは簡単なんですが、それを理解するのに私は時間がかかってしまったのです。

つまり、彼らはそんなに先のことをイメージしていないからモチベーションが急に下がったり、目先の楽なことに走っちゃったりするのです。決して、悪気があってやっているわけではないのです。

悩んで悩んで見えてきたこと

インドネシア人スタイリストがアシスタントにカットを教えている様子

「怒る」でなく今回できなかったことは水にながし、次できるように課題を出す。その課題に取り組みたくなるように、アメを与える。取り組んでいるか、結果が出ているかしつこいくらいにまたリマインドする。

いつか、インドネシア人の同僚が言っていました。どうしたら、アシスタントは良くなるのか?と尋ねたら、「言い続けることを諦めちゃいけないんだよ。だって忘れちゃうんだもん」と。

妙に納得しちゃいました。

なので、4年目にして私が実行していることは「アメとニンジン作戦」です。

目の前にひたすらニンジン(2週間以内に出来そうな目標と日々のリマインド)を差し出す。進まなくなったらアメ(言葉だったり、食べ物だったり)をあげる。ムチ(怒りや刑罰)は個人的には与えない。

このサイクルを繰り返すことで働くことの目的を理解してくれますし、時に自分から目標を持ってくれるそうになります。今の目標に到達したらまた前進するように、ひたすらニンジンを置き続ける。私の仕事はそれを諦めないこと!

日本人の求める“完全な自発的行動”を育てる方法は現在模索中ですが、“今ある目標に一緒に向かう方法”はこれが1番しっくりきています。

とはいえ、まだまだ課題の多いインドネシア4年目です。