ジョホールバルの不動産市場から見る、イスカンダル計画に潜むシンガポールの陰謀とは?JJ BRIGHTS代表、木藤敬介氏

2016.03.22

浮浪者同然のどん底生活から一旗揚げるためにジョホールバルへ移住し、2011年に日本人向け不動産会社を起業した木藤氏。それまでには多くに人との"ご縁"に支えられてきたと語る木藤氏に、イスカンダル計画で大変貌を遂げているのジョホールバル不動産事情を伺った。一見はマレーシアとシンガポールが仲良く進めているイスカンダル計画だが、背景にはシンガポールの陰謀があったのだ。

《プロフィール|木藤敬介氏》
愛媛県生まれ。立命館大学理工学部から立命館アジア太平洋大学へ編入し、2007年卒業。コンテナ船シェア世界No.1のデンマークのマークスに入社した後、コンテナ船売買に携わる。独立を目指しジョホールバルの不動産会社に転職した後にJJ BRIGHTSを起業。日本人投資家向けに現地の不動産情報を提供している。

ジョホールバルの不動産ならお任せください。

―最近話題のイスカンダル計画が気になってジョホールバルまで来てしまいました!木藤さんはジョホールバルでJJ BRIGHTSを起業して不動産事業を手掛けているそうですね。具体的な事業内容を教えてください。

ジョホールバルの不動産を日本人投資家に販売し、部屋の内装を整え、誰かに貸すまでのワンストップサービスを提供しています。

ジョホールバルの不動産を購入する日本人はほとんど投資目的で、ほとんどの人がマレーシア人に貸しています。他にも不動産事業に付随して、ビザや銀行口座の取得から法人登記のサポートまで幅広く展開しています。

 

外資系企業で大型案件を手掛ける!

―木藤さんがジョホールバルに来るまでの経緯を教えてください。

立命館大学理工学部に入学したものの、パイロットになろうと思って航空大学校に入ろうとしたのですが、見事に落ちました。パイロットを目指した理由は、単純に仕事で世界中に行けると思ったから、ただそれだけです。(笑)

でも、英語を使って世界で仕事をしたいという想いは捨てられず、外資系企業か商社に入りたいと思っていました。

しかし自分の英語力がまだまだ未熟だったのでなんとかして英語力を伸ばしたいと思っていた矢先、立命館アジア太平洋大学が開校しました。2004年のことですね。

当時は開校したばかりで、卒業生がいない謎の大学でした。ただ面白いなと思った特徴は、世界90か国以上からの来た留学生と一緒に英語で授業を受けられるという点。航空大学校に落ちた後だったのですぐに編入を決めましたね。

編入後はベンチャー企業でのインターンシップを行ったり、日経工業新聞主催のベンチャービジネスコンテストで賞を頂いたりしました。

それからベンチャーという世界があることを知り、将来はベンチャー企業のサポートをするような仕事を自分でやりたいと思っていました。

その後は友人が紹介してくれたデンマークのマークスというコンテナ船業界で世界1の企業に就職しました。たまたま運よく世界で15人の採用枠に入ることができたのですが、そこでは圧倒されるばかり。なぜなら取引単位が100億円超といった話ばかりで、これはベンチャーではできない産業だと痛感しましたからです。

そこには2年間勤めて、たくさんのことを学ばせていただきましたが、やはり独立して自分でやりたいとう気持ちがあり、辞めて外交官になるための予備校に通い始めました。

 

外交官を目指すも、落ちて極貧生活へ

―え、なぜ急に外交官なのですか?

自分でもよくわからないのですが、外交官の友達がいたからですかね。(笑) 1年間勉強したのですが、また落ちてしまいました。

その後は大阪の西成区でプータロー生活です。築88年、風呂無しボットン便所でボロボロのアパートに住んでいました。昼間は梅田でエクセルの勉強をして、夕方からは路上でバイオリンを弾いてお金を稼いでいました。

浮浪者みたいにバイオリンを弾いていると、あるおっちゃんが突然「にーちゃん、そのバイオリンなんや?おもろいやん。なんかあったらいつでも電話してきいや。通天閣の近くにある家にタダで泊めたるで。」と言ってくれたのです。

実家の愛媛に帰っても仕方ないので、半信半疑で電話してみると、本当に家賃ゼロで家に住まわせてくれたのです。

このままではいけない、一旗揚げなあかんと思っていた時、たまたま友人にジョホールバルにある不動産会社を紹介してもらってジョホールバルに来たのが今から5年前です。

まさに片道切符の気分でしたね。

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ジョホールバルにも慣れてきたものの、自分で起業して一旗揚げようと思っていたところ、あるベンチャー企業の社長が突然1,200万円ぽんとくれたのです。

「借用書も書かなくていいから、この資金で自由にやってみろ」と渡してくれたのです。そういう流れで2011年に起業したのが今のJJ BRIGHTSです。

ご縁を授かり、ジョホールバルで不動産会社を起業!

―え、1,200万円ですか?意味わからないです。(笑)

意味わからないですよね。少し前まで西成で浮浪者同然だった人間に突然1,200万円を託してくれたのです。

その社長も汗水垂らして稼いだお金なのに...。なぜ私に託してくれたのか、今でも分かりません。かっこいいなと思って、いつかはそんな人になりたいと思っています。

ここで伝えたいのは、やっぱり人生は「人との出会い」だということ。

マークスに入れたのも、西成で泊めてくれたおっちゃんに出会えたのも、ジョホールバルに来るのを誘ってくれたのも、今のJJ BRIGHTSを起業できたのも、周りの人との"ご縁"のおかげです。

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ジョホールバルの不動産マーケットの影に潜む、シンガポールの策略

―ジョホールバルの不動産マーケットはどうですか?

正直、今は非常に悪いです。バブル崩壊の手前ですね。最近はマレーシアリンギット安になって、物価が上がっているのに給料が上がらないような状況です。

しかし、マレーシアというマクロの視点と、ジョホールバルというミクロの視点はまた別のこと。

ジョホールバルはマレーシア経済圏というよりは、シンガポール経済圏だと考えています。クアラルンプールは遠いですがシンガポールは橋を渡るだけですから。

 

―ジョホールバルとシンガポールの関係は、深圳と香港の補完関係と似ていると聞いたのですが、どう思いますか?

たしかに、シンガポールと香港は小さな島で、人とお金が集まって混雑しています。となるとすぐ隣にあるジョホールバルと深圳に人とお金は流れ、次第にジョホールバルも深圳の様に物価が上がってくるという点では似ています。

しかし決定的に違う点が2つあります。まず深圳のバックには人口13億人の中国大陸がありますが、ジョホールバルのバックには、わずか人口3000万人のマレーシアしかありません。

2点目として、深圳と香港は一国二制度ですが、ジョホールバルとシンガポールは全く別の国で、通貨も法律も全く違います。

さらにシンガポールは1965年にマレーシアから追放されて泣きながら出て行った人々によってできた国なので、両者は補完関係というよりは、ライバル関係です。

 

―なるほど。しかしイスカンダル計画は、マレーシアとシンガポールが手を取り合って進めていると聞いたのですが?

表向きはそう見えますが、シンガポールがマレーシアに善意だけで援助するわけがありません。

シンガポールは “国”ではなく、50人の超エリート官僚が500万人の国民を管理する1つの “株式会社”だと例えられることがあります。人口の3分の1が外国人で、外国人がシンガポールでビジネスをして雇用と利益を生む。そこから税収を得て国民という株主に還元しているのがシンガポールという国です。

シンガポールも日本と同じように急速な高齢化が進んできています。でも外国人はどんどん増えていきます。しかし東京23区ほどの土地しかないシンガポールはどうすると思いますか?

 

―ジョホールバルにまで領土を拡大するのですか?

その通り。今ジョホールバルで注目されているイスカンダル計画は、一見シンガポールとマレーシアが仲良く開発しているように見えます。でも、その裏にはシンガポールの策略が潜んでいます。

シンガポールは金融立国ですよね。ジョホールバルの不動産を安く仕入れて、高く売るために、どんどんジョホールバルを開発させるのです。

でも人口は急には増えませんから、いずれ供給過多になって値下がりが始まります。それが今後2,3年ですね。安くなった時に買い占めておいて、その後ジョホールバルの鉄道や道路を整備してあげる。

日本とシンガポールには「駅近」という概念がありますが、ジョホールバルにはまだありません。でも鉄道が整備されて、一駅でシンガポールに行けるとなると、駅近の不動産価格は急騰するので、売却するなり、貸すなりして儲けることができます。急騰したとしてもシンガポールに比べるとまだまだ安いので、ジョホールバルに移住する人が増えます。

その時に高齢化が進むシンガポールは、年を取って稼げなくなった老人をジョホールバルに安く移住させ、若くて優秀な外国人をシンガポールに呼ぶのです。

そうすればシンガポールには金融、バイオ、宇宙といった高付加価値産業と、優秀でお金を持った外国人だけが集まり、よりシンガポール経済が強くなるのです。

私はジョホールバルを北シンガポールシンガポールを南シンガポールと呼んでいます。お客様には、ジョホールバルに不動産投資するのではなく、北シンガポールに投資してはどうかと伝えています。

2004年から始まったイスカンダル計画は、20年、30年スパンのシンガポール・マレーシアの利害のせめぎ合いなのです。

 

DSC06210(ジョホールバルにはバブルの様な建設現場が乱立する...。)

―これが経済というものですね...。シンガポール政府の策略が恐ろしいです。

シンガポールからジョホールバルへの橋を渡る時、渋滞していましたよね?それもシンガポールの戦略です。普通、橋が渋滞しているならもう一本橋を造るべきです。

しかしシンガポールはあえて橋を造らせず、かつシンガポール人にジョホールバルは危険だから行かないように洗脳しています。

なぜなら、今ジョホールバルで消費されたらライバルの利益になってしまうからです。他にもシンガポールは国民の8割が住むHousing Development Boardという公団住宅をローンで購入させています。

一見、国が国民の住居を提供しているように見えますが、実は借金をさせてジョホールバルに今は移住させないようにするためなのです。

シンガポール経済圏に自由な不動産マーケットは存在しません。外国人を何人入れて、マンションをどれだけ建設するか全て計算してコントロールしています。

 

DSC06399(左手がジョホールバルで、右手がシンガポール)

若い時は自己投資、不動産投資は年を取ってから

―読者へのメッセージをお願いします。

ジョホールバルとシンガポールの話ばかりになりましたが、ジョホールバルの魅力はシンガポールとマレーシアの思惑両方が分かる点です。

そのような地理的好条件を持つのはASEANの中でもジョホールバルだけ。

若い時は、自らの市場価値向上のために自己投資をしておくことをおすすめします。たとえ今はマイナスでも、必ずや将来100倍以上になって返ってきますよ。不動産投資は、年をとってからで十分ですよ。(笑)

 

インターン生募集中!

カンボジアで新規事業立ち上げを計画しています。興味がある方は履歴書を添付して下記のまずメールアドレスまでご連絡ください。

kido@jjbrights.com

【編集後記】

今回木藤さんをインタビューさせていただいて確信したことがあります。それはアセナビでインタビューさせていただく方々に共通する点は、今は華やかに成功しているように見えるものの、過去には一度どん底に落ち、そこから死ぬもの狂いで這い上がっってきた経験があるということです。今後自分もどん底に落ちることがあるかもしれませんが、諦めずに走り続けようと思えました。