高校生の時に立ち上げたNPO団体が今では国を動かす!?【NPO法人アクション 横田宗氏】

高校時代、フィリピンで被災した孤児院を訪れたことがきっかけでNPOを設立。現在まで長年に渡って代表として活動を続け、世界の子供たちの未来を支える横田氏。社会貢献を持続させる秘訣や、行動指針を伺いました。

《プロフィール|横田宗氏》

1976年、東京都八王子市生まれ。亜細亜大学卒。NPO法人アクション代表。
高校生の時にフィリピンの火山噴火により被災した孤児院を訪問。帰国後、特定非営利活動法人アクションを設立する。大学在学時はインドやケニア、ルワンダ、ウガンダでも活動する。現在はフィリピンを拠点に全事業の統括を担う。

子供達が持つ可能性を発揮できる社会を作る

ー 現在の活動について教えてください。

高校生の時に立ち上げたNPO法人アクション(※設立当時は任意団体)という団体で、代表を務めています。アクションではこども達が本来持っている可能性を発揮できる社会の実現を目指し、ミクロとマクロのアプローチをしています。

ミクロの活動としては、フィリピンの孤児院で暮らす子どもやストリートチルドレンの未来への直接的な投資です。具体的には、セラピストや美容師になるための技術を身に付ける職業訓練と、ダンスや空手などを通じた教育活動を行っています。現在は日常的に約300人の子供達が通っています。

これらの活動は、日本の美容室100社に協賛していただいたり、多くの大手マッサージ会社がサポーターになってくださったりしたことで実現できています。

一方、マクロのアプローチとしては、活動する中で出てきた課題を解決するための、国レベルの仕組み作りに取り組んでいます。個人を相手にし続けるのは、資金的にも時間的にも限界が来る。問題を本当に解決するためには、国の制度や仕組み自体を変える必要があると考えるようになりました。

そこで私達は、孤児院で働いている職員の研修プログラムを作りました。職員のほとんどは今まできちんとした教育を受けておらず、子供達に適切なケアを出来ていないケースが多々あったからです。ようやく国からの認可がおり、これからフィリピン全土の職員が私達の作った研修を国のプログラムとして、国の予算で受け始めます。

ー どのようにして研修プログラムを作ったのですか?

私はプロジェクトの構想はできても、研修の細かいところの設計はできません。まずは日本の児童養護施設の研修について調べてみました。すると国として研修が制度化されていて、どこの施設でも効果的な研修が行えていることがわかりました。

そこで、日本の研修制度や使用されている資料をフィリピン版にアレンジすることにしました。フィリピンに適した研修にするため、フィリピン国内でトップランクのソーシャルワーカーを何人も採用。実はフィリピンのNGOで最多の12人雇用しています。さらに、大学の教授にコンサルしていただいたり、もちろん政府にも研修の設計に参加していただいたりしています。

多くの団体と協働してプロジェクトを進める

ー 様々な立場からの協力があったのですね。

はい。ミクロとマクロ双方のアプローチを実現するためにはネットワーク作りが必要です。そのために、私個人としては団体外部とのネットワークを広げる為の努力を意識しています。

ー 企業を巻き込む上で大事なことは何ですか?

お互いに価値を提供することです。結局、社会貢献といっても、会社のお金と時間を使う限りは、会社の業績やブランドイメージ向上などの役に立たなくてはいけません。単にビジョンへの共感から応援してもらうだけではなく、企業側からオファーがあるような企画や物を作り、提案する。そういった形にすれば“支援する側とされる側”ではなく“パートナー”になれます

また、色んな会社がビジネスとしてフィリピンに進出する際に、今まで25年間フィリピンで培った私の経験を評価していただき、顧問や役員への就任を打診されることも。そこで、アクションと共に社会貢献してくださるという条件の下、オファーを受けるケースもあります。

フィリピンでの原体験

ー そもそもNPOを設立しようと思ったきっかけは何だったのですか?

高校3年生の時、フィリピンのピナトゥボ火山の噴火により被災した孤児院の存在を知りました。「海外に行ってみたい!それも、どうせなら観光ではなく何かにチャレンジしてみたい!」と思っていたので、単身でその孤児院を訪問しました。英語もフィリピン語も話せなかったのに、温かく受け入れてもらったこと。それが原体験です。

その後、フィリピンの人々にお世話になった分をお返ししたいと思い、94年に特定非営利活動法人アクションを設立。大学在学時も孤児院支援を続け、インドやルーマニアの孤児院での活動も経験しました。

様々なところで活動していく中で、自分のやりたことができるのは、日本という恵まれた環境に産まれたおかげだと気づきました。好きなことができる環境でできることを最大限に生かし、好きなことができない子供達に還元していきたい、と思うようになりました。

フィリピンの子供達。彼らの可能性を潰したくない。

無理はせず、でも出来ることは全てやる。

ー ご自身の行動指針は何ですか?

自分にできることがあるなら、どんなに小さいことでもする。私の場合は、特にフィリピンの貧困層の子供達にできることがあれば何でもしていきたいです。その時大事にしているのが、無理をしてやるのではなく、自分が余裕を持てる範囲でやることです。自分自身が疲弊してしまえば本末転倒。なので意識的に自分の余裕を持てる範囲を広げようと努めています。

ー モチベーションを維持する秘訣はありますか?

「モチベーションを高めよう」と意識したことはあまりありません。子供達のために行動できるチャンスがあるからしているだけです。まずやってみて、その後に考える。行動するという行為自体には、自分の時間を費やすだけで、お金を使わなくて済みます。私の場合、考えている時間が逆に無駄だと考えており、ダメなら他のことをすればいいだけの話だと思っています。先ほど述べたように、自分のできる無理のない範囲でやっているので、頑張るためのモチベーションなどは必要ないのかなと。

ー これまでで一番大変だったことは?

ありません。客観的に見ると大変だったかもしれないことは、フィリピンに住んでいるのでたくさんあると思いますが、個人的には大変だと感じていません。これは、経営者とサラリーマンの考え方の違いのようなものだと考えています。私たちは人に指示をされている訳ではなく、自分のしたいことをしているだけ。起きることを大変だと思ったら、私はこれ以上活動を続けられないと思います。問題をいかに捉えるかは人それぞれです。1994年から本当に様々なことがありましたが、活動をしていく中で、いつからか大変と思わなくなりました。

やりたいことをやっていれば大変とは感じなくなる。

ー 問題の乗り越え方や秘訣はありますか?

大事にしているのは普通の人の倍のスピードで物事を考え、経験や人的ネットワークなど使えるものを全て使い、判断し行動することです。

好奇心を持って普段から生活し、考える癖をつけることが大切だと思います。気になることがあれば、自分で調べ考える。世の中には、自分達が思い付く真新しい考えはもう存在しないと思っています。だから、大事なのは既存のものをいかに組み合わせるか。より多くの物事に関心や知識を持っていれば、より多くの組み合わせの解を作る事ができます。その結果、問題を早く解決できるようになると思います。

 

ー 今後の目標を教えてください

寄付金をフィリピンでフィリピン人から集める仕組みを作りたいです。私たちもですが、日本の多くのNPO・NGO団体は日本の寄付金に頼って活動しています。「自分の国の問題は自分達自身で解決すべきだ」という思いから、日本の組織としては初めて、フィリピンの財団との事業提携を結んでいる最中です。

 

ー 日本の学生に、メッセージをお願いします

学生の貴重な時間を無駄にしないでほしいです。社会人になると、人に指示をされて行動することがどうしても増えてしまいます。しかし、大学では取る授業からアルバイト選択まで、自分で意思決定をすることが多い。組織の中ではなく、一個人として意思決定をしていく時間は貴重です。この期間をうまく使って、学ぶことや感じることに時間を使ってください。

そしてできれば、ボランティアに挑戦してほしい。「働く」とはどういうことなのか、その意味を考える機会を体験できるからです。ある例を挙げさせてください。

私たちは毎年、日本から30人程の美容師をフィリピンに呼び、無料で子供達のヘアカットをするイベントを行なっています。美容師の方からすると、わざわざ休みを取って、日本での仕事と同じことをします。日本ではお店の売上も考える必要があるので、頭の中のどこかでお金のことを意識しながら髪を切っていると思います。でも、フィリピンでは純粋に「目の前の子供達がどうしたら喜ぶのか」という姿勢で髪を切っています。行為は全く同じですが、目的や意味合いが異なります。この違いはボランティアをしないとわかりません。

「自分がどういう仕事・働き方をしたいのか。」ボランティアはそのきっかけをくれるので、若い時に早く経験してほしいです。

 

※本記事は、海外インターンを紹介するWebメディア「Mash Up」様よりご寄稿いただいた記事を元に、アセナビで独自に再編集した記事です。