「きれいにお化粧してもらってよかったね」
牛に声をかけてみる。
「そうでしょう!とっても気に入っているの」とか
「俺、オスなんだけどな・・・」
なんていわれたりして。
1月中旬にシンガポールへ行くと、このような化粧や装飾を施された牛や子牛に出会うことができます。なぜ、牛にこのようなことをしているのかというと、これは「ポンガル(Pongal)」というインドの祭での光景です。4日間にわたって行われるという祭りとはどのようなものでしょう?
今回も探ってみますよ!
盛大な収穫祭は家畜にも感謝!だけど、主役の牛はのんびりモード
ポンガルは、南インド・タミル人コミュニティが行う祭事で、家畜や農業に従事する人たちの労をねぎらい、その年の豊作をお祝いします。
前編でリポートしたタイプ―サム(記事はコチラ!)のの張りつめた緊張感とは一転して、のんびりとした雰囲気が漂います。リトルインディアエリアのメインストリートには看板が掲げられ、歩行者専用の路地はポンガルの会場に変身です。
牛はインド人の生活と密接に関わっています。畑を耕してくれて、乳を搾ればミルクやチーズが作られます。生活に欠かせない牛への感謝を捧げるために、牛を清めてカラフルな化粧や首飾りなどを装飾して敬意を表するのです。
間近でみる牛たちは、つぶらな瞳をしていてとっても可愛らしい!見物客が大勢いてもマイペースなのです。なんと、子牛はバナナの皮を口で剥きながら器用に食べていました。ずっと見ていても飽きなくて、なんか癒されるなぁ。
今回は、昼間の様子を見学していたのですが、昨年訪れた時には夜になるときれいなインド人の女性の妖艶なダンスがステージで行われていました。男性たちの熱い視線が飛び交っていて、なんかこっちが恥ずかしい。一緒に踊ってみたり、声援を送ったり、会場がひとつになって大盛り上がり!深夜まで人の波は収まることはありませんでした。
タイプ―サムに便乗して、甘いポンガル食べまくり
ポンガルは “沸き立つ”“吹きこぼれる”という意味があり、料理があふれるほどの“豊かさの象徴”とされています。また、米の煮込み料理名(日本でいう“粥”のような存在)でもあるポンガルは、日常でも食べられていますが、祝いや祭りには欠かせない供物となっています。
賑わう会場通路にはポンガルを作る際に使われる鍋が大小た~くさん。中国の旧正月には、身の回りの古いものを捨てて新調する習慣がありますが、ポンガルも同様です。新調した調理道具で新しいスタートに備えます。
(本場インドでは陶器の壺だが、シンガポールではステンレスの鍋が並ぶ)
ヒンドゥー教徒の大切な祭りであるタイプ―サムに同行していた時に、たくさんの炊き出しに遭遇し、所々でポンガルをいただきました。
どこもかしこも長蛇の列。祭りを楽しむ人も通りすがりの人も、みんなポンガルを楽しみにしている様子。たぶん、1000食以上用意されていました。寸胴鍋がいくつもありましたからね。
(見た目はだいぶシンプルだが、芝生に座って食べればピクニック気分)
私も早速いただきます!
右のポンガルには、ラジマ(キドニービーンズ)とムングダール(緑豆)が入っていて、粥とは例えていますが、日本のイメージするものとは違いました。しっかり米粒が残っていて固めです。ターメリックの色合い鮮やかでふんわりとスパイスの香りがたまりません。
一方、中央のポンガルにはムングダールとコーンが入っていて、とにかく甘い!パームシュガーが入っているようです。ミルクの風味はさほどしませんが、甘さにノックアウトされちゃいました。この甘さは日本のおはぎの感覚に似ていますよ。
左は、お米ではなく、ムングダールを潰したもので完全にスイーツの領域です。この甘さには、もう笑うしかない・・・
この味は日本人の味覚からすると賛否両論ありそうですね。インドのスイーツは激甘なのでその感覚で食べれば気にならないと思いますが、スパイスが効いているものでも食べ慣れるには時間がかかりそうです。私ももう少し鍛錬が必要かもしれません。
ポンガルを体感して感じたのは、収穫の恵みと生活が常に密着していて、事細かなことまでも感謝の気持ちを忘れない、ということです。都会で暮らす私ももう一度食べることの感謝を再確認しなくては!!
ポンガルは、日本のインド料理レストランでも提供している店があるので、味が気になる方はぜひ試してみてくださいね。