私は現在、日系旅行会社の駐在員としてミャンマー・ヤンゴンで働きながら、ヤンゴン管区軍の柔道チームと体育学校の学生に柔道を指導しています。
詳しくは、こちらのインタビュー記事をご覧下さい。駐在員の私がなぜ柔道を?という部分について詳しく語ってます。
https://asenavi.com/archives/930
ミャンマーの首都・ネピドーで開催されたSEA GAMES2013の柔道を観戦してきました。
今回はその時に感じたことをシェアしたいと思います。
東南アジア版オリンピック SEA GAMES
そもそもSEA GAMESって何?と思う方が多いと思いますが、東南アジアで働く日本人の間では意外と話題になります。
SEA GAMESとはSouth East Asia Games(東南アジア競技大会)の略称で、またの名を「東南アジア版オリンピック」と呼びます。1959年から続く2年に1度の国際大会であり、去年はミャンマーが44年ぶりに開催地に選ばれました。日系企業(パナソニック、キヤノン、富士ゼロックス)もスポンサーとして参加しました。
種目はおよそ40種類。通常のオリンピックと違うのは、セパタクロー、ムエタイなどの東南アジアならではのスポーツが盛り込まれてるところです。
(JOC競技紹介より引用)
ミャンマーの柔道レベルはASEANの中で、タイ、ベトナムに次いで3位に位置しています。
ナショナルチームの指導を務めるのは、日本人の千原慎太朗氏。国士舘大学卒業後、2年間バングラディッシュで指導した後、2013年より隣国ミャンマーで活躍しています。
私自身もナショナルチームに3回練習に参加してましたが、「パワーはあるが組み合っていても脅威を感じられない」と感じていました。組み手が下手なため、上手く相手を引き寄せられないからです。しかし、大会直前に練習参加した際は、その弱点を克服して、コンディションも好調でした。
そして大会本番。
会場の雰囲気は、日本の大会とさして変わりません。試合前の静けさ、試合中の応援のボリューム、一本技に対する歓声などどこか日本の試合が懐かしくなりました。
私が観戦した日のミャンマー選手の試合結果は、60kgは銀メダル、66kgは初戦敗退、その後3位決定戦に進むも敗戦(ベスト8)でした。
私がナショナルを指導している立場ではないので「なぜ勝てなかったか」といった試合の総括は避けますが、見ていても感じるのは「一度に2つの動作が出来ない」ということです。例えば、大内刈りから内股(足技から大技、押し技から引き技)といった連続技ができない。いつも背負い投げや内股といった大技を一発で狙う習性があります。
私が指導しているヤンゴン軍のチームにはいつも連続技の重要性を指導していますが、浸透するまで時間はかかりそうです。
課題となる経験不足
ミャンマーの柔道関係者は、「試合経験の少なさによるメンタル面の弱さ」を指摘しています。前回大会は7人が決勝に残り、1人だけが金メダルでした。結果論ですが、決勝に弱い、勝負所に弱いというのを指摘されても仕方のないことです。
ミャンマーではスポーツ人口が少ないため、もちろん大会も少ないです。日本では半年に2回以上大会がありますが、ミャンマーでは1年に1回または2年に1回のペースでしか大会がありません。他選手とぶつかり、自分のレベルを確認する機会が少ないのです。今大会を機会に、ミャンマー国内のスポーツ環境改善と技術向上に向けて各種目が動いてくれればと思っています。
会場では、多くの日本人を見かけました。
日本の講道館から観戦に来られた人もいれば、ラオス、インドネシアで指導している人にも会いました。日本を離れ、途上国などで指導をしている日本人の方を見ると本当に嬉しくなります。
ナショナルチームを指導する千原氏から、このような言葉を以前いただきました。
「日本国内で指導者なんて腐るほどいる。でも海外では指導者が足りない。」
実際、私の柔道レベルは高校の団体戦で関東大会に出場した程度です。国内では自慢にもできない成績です。それがミャンマーでは、私のような選手でも指導者として重宝されます。戦績を説明せずとも、“黒帯”がある種のステータスになっているのです。私が指導している選手達は私より年上が多いのですが、私が先生ということで「センセイ、ミンガラーバー!(こんにちは)」と言って敬ってくれます。
視点を日本から世界に向けてみると、その国の為に汗を流す日本人指導者らがいます。そして、多くの日本人指導者が抱いているのは「日本柔道の普及に貢献していきたい」という想いです。
(ASEANで活躍する日本人指導者ら)
日本国内では柔道界に対して厳しい報道やバッシングが多いですが、私も「海外から日本柔道の名誉挽回に貢献したい」と強く思います。
2020年に東京オリンピック開催されることになり日本は盛り上がっているでしょう。
東南アジアのスポーツはまだまだ未発展です。しかし、経済と同じで急成長している熱は感じられます!
スポーツという文脈で、東南アジアに注目してみてはいかがでしょうか?
戸田祐樹