近年、話題になっているフィリピン留学。欧米やオセアニアに比べ学習費用が安く、日本との距離が近いことなどから、英語の話せないアジア人から注目を浴びている。またマンツーマンレッスンが多いというのも人気の理由のひとつのようだ。
今回は、スラムエリア視察や企業訪問などを行う「現地体験」や、プログラミングと英語を同時に学べる「エンジニア留学」など、一味変わったプログラムを提供している語学学校「NexSeed」の代表、高原大輔氏にお話を伺った。
《プロフィール|高原大輔(たかはらだいすけ)氏 》
geechs asia pte.ltd CEO/NexSeed Inc.Goodwill Group、COMSN人事として新卒採用の陣頭指揮を執り、関連子会社の採用マネジメントも担う。株ボンセジュール、マーケティングマネジャーとして再生ファンド大手ジェイウィルパートナーと共に事業再生に参画し、業績回復を遂げベネッセホールデイングへ移る。geechsにて新しいキャリア支援事業を立ち上げた後、死ぬ前に世界中をこの目でみたい!という衝動を抑えきれず、企業スポンサーを付け世界40カ国を巡る。その後、フィリピン・セブ島にNexSeed(ネクシード)を立ち上げる。
ーどういった経緯でフィリピンに語学学校を創られたのですか。
私は元々、人事・採用コンサルタントとしての経験が長いです。年間約45,000人の学生を選考したり、新しいコンセプトのキャリア支援事業を立ち上げたり、「人材」というフィールドに深く関わってきました。
転機となったのは、一度仕事を辞め世界一周の旅に出た時です。旅する中で、国籍問わずグローバルビジネスで活躍する方に沢山お会いしたのですが、「日本人は本来もっと世界でも活躍できる」「日本人にもっと世界で活躍してほしい」と強く感じました。その後「グローバルに活躍する人材を育てる場を、自分で創りたい」と思うようになり、その想いを形にするために、セブ島にNexSeedという学校を立ち上げました。
フィリピン留学が人気な理由
ーフィリピン留学の良さについて詳しく教えてください。
フィリピン留学の良さは、「価格の安さ」と「アウトプット機会の豊富さ」にあります。まず価格面。例えば同じ1ヶ月の留学でも、カナダやアメリカでは航空券や生活費などを含めると60万円以上使うことも珍しくありません。一方、フィリピンでは全て含めて約30万円。ローカルフードを食べると、1食200円もしないことが多いです。
また、その低価格をマンツーマンレッスンで実現できるのはフィリピンならではかなと思います。いきなり欧米圏の語学学校に行って、大人数・非ネイティブだけのグループレッスンばかり受けた結果、思ったほど伸びなかったという話もよく聞きますよね。グループレッスンとマンツーマンレッスンでは、同じ時間でも1人あたりが話す時間は全く異なるので、話すというアウトプットの練習には最適です。
マンツーマンレッスンであれば、一人ひとりのレベルに合わせて学習できるので、「英語に話し慣れたい」というビギナーの方には特にお勧めしたいですね。
—フィリピンにはたくさんの語学学校がありますが、NexSeedならではのポイントは何かありますか?
英語を学ぶだけでなく異文化を学び、実行力を身につけられるカリキュラムがある点です。ネクシードでは毎週水曜日、留学生全員で学校の外へ出て、トヨタの工場やローカルの企業、スラムに行く課外プログラムを提供しています。
海外で活躍している日系企業は、どのようにマネジメントをしているのか、1日1ドル以下で暮らすスラムの人たちはどんな生活を送っているのかなど、実際に足を運んで肌で感じることができます。
現地へ行き、見て・感じて・考える。他の学校にはないポイントです。英語だけ勉強するのであれば日本でも学べます。NexSeedではその土地でしか体験できないことをしてほしいと思っていて、このようなプログラムを提供しています。
—英語の授業はどのように行っているのでしょうか?
先生とのマンツーマンで、話すことにフォーカスをしたカリキュラムを組んでいます。まずは日常会話ができるように練習をし、ある程度話せるようになったらビジネスディスカッションやプレゼンテーションを行います。
TOEICの点数向上を重視はしていません。TOIECの点数が高くても、話し慣れていない人は結局話せないのが現状ですよね。日本の方は教育課程で十分読み書きの勉強はされています。
日本人はおそらく、アジアの中でも英語のボキャブラリーの数は多い。それでも、日本人の英語力は非常に低い。英語を使う機会が少ないからでしょうね。日本人は、良い刀を持っているのにそれが錆びついてしまっています。ここではまず、その刀の使い方を覚えてほしいですね。
日本には世界で通用するエンジニアが少ない。だからこそプログラミング×英語留学
—ネクシードが行っている「エンジニア留学」について教えて下さい。
エンジニア留学ではプログラミングと英語を両方学ぶことができます。始まりには「日本にはグローバル社会で戦えるエンジニアが少ない」という問題意識がありました。アメリカを例に取ると、エンジニアの数が多く、もちろん英語も堪能なので世界中から情報をキャッチアップできて、世界で戦うことができます。
一方で日本はエンジニアの数が少ないし、英語を話す人はもっと少ない。だから集められる情報も日本語だけなので、国際競争力が低い。そこで、世界で戦えるエンジニアを増やさなければ日本の将来は明るくないと思い、このプログラムを始めました。
IT技術最先端の会社様から研修として使っていただけるほど、レベルの高いカリキュラムを提供しています。ネクシードで半年間学べば、新卒で一般企業に入って1年働くよりも、高いレベルのプログラミングスキルを身につけられると思っています。
過去には、プログラミング初心者にも関わらずスクール卒業後、在宅で月10万円稼げるようになった学生の方や、エンジニア職で内定を取った方、営業職からエンジニアへの転身に成功した方もいます。もちろん、このプログラムだけやればいいわけではありませんが、半年こなすことができたら、エンジニアの卵にはなることができるはずです。
—英語でプログラミングを勉強するのでしょうか?
いえ、日本語で勉強します。プログラミング言語は、わからない人にとっては呪文みたいなものなので。それを不得意な英語で教えられても、成長スピードが遅いです。プログラミングは日本語で学び、それとは別に英語の授業を行う、というイメージですね。
エンジニア留学に来ている方のほとんどはプログラミングが目的ですが、卒業する頃には英語の日常会話もできるようになります。両方を学ぶことによって、世界でも通用するような人材になってほしいです。
将来の日本を背負う若者こそ、海外へ。
—最後に、アセナビの読者にメッセージをお願いします!
ぜひ、海外へ一歩踏み出して欲しいです!
これからの日本を背負う若者は、積極的に海外に出たり、外国人と対等に仕事ができたりする能力が必ず必要です。
ぼくらの祖父・祖母の世代は、ゼロから日本を作り上げ、厳しい生活を経て高度経済成長を経験しました。先人たちががんばって、一時は世界で"Japan as No.1"というところまで上り詰めたのに、ぼくらの世代で潰そうとしています。なんとかこの状況を変えたい。
だからこそ、若い世代が外にどんどん出て色々なものを吸収し、日本を良くしていく必要があります。またそれは、世界をより良くしていくキッカケにもなると思っています。今まで50カ国以上行ってきましたが、海外渡航を通して、日本にはたくさんの素晴らしいところがあることに気付きました。
それを、もっと世の中に伝えていく必要があります。けれどそういった人材はまだまだ足りていません。もっと多くの日本人が海外に出て、学んだものを日本に持ち帰ってほしい。すると、日本のことを違った角度から見ることができる。それをまた世界に伝えたら、世界はきっと良くなる。全ては1人ひとりの一歩から始まります。失敗したっていいんです。グローバルな人材になれるように、飛び出していってほしいんです。捨てることを怖がらず、新しい世界へ挑戦してみてください。
世界は、思ったより面白いです。