シンガポールは「多民族国家」。
淡路島程度しかない小さな面積の都市国家には、中国系、マレー系、インド系など、多様な文化や言葉が飛び交います。
これは、シンガポールを紹介する時に良く使われるフレーズです。この3つの文化は人口全体の約96%を占めます。ASEAN加盟国であるシンガポールの街を歩いていると、実は観光客があまり訪れない場所には、ASEANコミュニティー文化が姿を現します。「あれ?いつの間にか国が変わってる~!」と、感じられるようなスポットがたくさん。
ガイドブックや旅番組ではほとんど紹介されることのない「ASEANを近くする」ことができるのです。シンガポールにいればパスポートは要りません。あなたもASEANの旅に出かけましょう。
目次
美しきマレー文化が垣間見える「ゲイラン」エリア
19世紀半ばにマレーシアやインドネシアの民族が、シンガポールで働くために移住した街です。中心部から電車で10分も移動すれば、マレー様式の建物やヒジャブと呼ばれるスカーフを巻いて歩くイスラム教徒の女性を多くみかけます。コミュニティーの場にもなっている「ゲイラン・セライマーケット」は一日中大賑わいです。
(1階は生鮮食品のマーケット。2階は飲食のできるホーカーズや衣料品や薬局がある。)
昼時ともなれば、どのブースも行列が絶えません。マレーシア、インドネシア料理店の前では良い香りが漂っています。イスラム教徒の方たちは戒律によって豚肉を口にしないので、豚肉を使った料理はありません。おすすめは“エコノミーライス(経済飯)”。店頭には20種類ほどの料理がずらりと並んでいて、好きなおかずを2~3種類選んで食べます。濃いめのしっかりした味わいのものが多いです。
お腹がいっぱいになれば、ショッピングです。お手軽な値段の民族衣装やカジュアルな洋服が所狭しと並んでいたり、“ジャムー”という漢方薬や美容品があったりと、みんな楽しそうに品定めしています。
また、ゲイラン・セライマーケットの近くには、インドネシア人が集まる「シティプラザ」という複合施設もあります。インドネシア人は、メイドとして働く人が他の国と比べて最も多く10万人もいるそうです。こちらでも買い物を楽しんだり、情報交換の場として利用されていたり、まさに憩いの場となっています。
以前、買い物をしていた時に、見慣れない紙幣がおつりとして渡されたことがありました。不思議に思って交換してもらったのですが、実は“ブルネイドル”だったのです。シンガポールでは、ブルネイ札も同交換率に固定されていて、シンガポールドルと同様に使用できるので、もしも手にしたとしても慌てないでくださいね。
タイコミュニティーはテンションが高すぎ!
続いては、陸のASEANへ行ってみましょう。
シンガポールの若者が集まるブギスエリアからバスで5分ほどの場所に「ゴールデンマイルコンプレックス」という雑居ビルがあります。ここは、タイ行きのバスの発着場でもあるのでタイ人が多く集まる場所です。中に入ると、ちょっと薄暗いし、タイ食材の独特な香りが漂っていて、ちょっと怪しい雰囲気です。
(スーパーは食品や食器類も豊富。レストランや旅行代理店など400店舗以上もある)
この場所がいかにタイローカルなのかは、週末になるとわかります。タイの国技であるムエタイのテレビ観戦で大騒ぎ。さらに生バンド演奏も楽しめます。極めつきは“ディスコ!”大音響でフィーバーしましょう(笑)
シンガポールのタイ料理はあまり美味しくないと言われる中、館内のレストランはどこもおいしいと評判です。レストランで料理を食べてからスーパーで食材を調達してさらに料理を楽しむ日本人駐在員もいるくらいなんですよ。
買い物天国オーチャード通りにリトルフィリピン
高級ブランド店が数多く煌めくメインストリートに、なにやら古めかしい建物が。「ラッキープラザ」は、7万人以上もいるフィリピン人メイドたちや建築労働者の大切な拠点となっています。
(フィリピンが誇るファストフード店はASEANでは4か国に進出)
休みの週末には、祖国への送金のために代行サービス店は大行列です。さらに2013年にはフィリピンで780店舗以上も展開するファストフード「ジョリビー」がシンガポール1号店をオープン。なんと、開店1週間で約3万5千人が利用したそうです。日本未上陸のファストフードに行くのもおもしろいですね。
イギリス植民地時代の面影が残るエリアにリトルヤンゴン
シンガポールの歴史に欠かせない人物ラッフルズ氏が第一歩を踏み出した中心地「シティホール」にかわいらしいミャンマー文字を発見。「ペニンシュラプラザ」はミャンマー人留学生をはじめ、エンジニアやメイドなど、様々な人たちが集まっていました。
(食材店に群がる男性陣のお目当ては「クーン」。噛みタバコのようなもので覚醒作用があるらしい)
今まで見てきたASEANコミュニティーの中でも若い年齢層率が高いように感じます。新興国であるミャンマーはいまだにネット環境は1%ほどといいますが、ここはシンガポール。ネットカフェもあり、携帯を所有しているミャンマー人も多くいました。
フードコートでは、経済飯を食べる人、ミャンマーの国民食である米粉麺の“モヒンガー”を食べる人など、どれもおいしそう。亜熱帯の暑さにバテぎみの時にはパワーが出ること間違いなしですね。
シンガポールには、“マンダレー”や“プローム”などミャンマーに由来した通り名をみかけるエリアがあります。さらにはビルマ仏教寺院もあり、現地から運ばれた仏像が鎮座しています。19世紀ごろからの労働者移住が、ガイドブックにも載らない小さなコミュニティーの文化を今に継承しているのです。
多民族国家シンガポールを体感するのは、ほんの数十分の移動ですべてが網羅できます。
1日あればASEAN一周も可能なので、思いっきり満喫しちゃいましょう。