海外で働く日本人はこの20年間増え続けており、約125万人(2012年現在)にものぼります。では、日本に居ながら外国人と働く日本人、つまり「海外“と”働く」を実践している日本人はどれほどいるのでしょうか?
ネットが普及したことにより、より世界がシームレスに繋がってきました。「日本人が日本人と仕事をする」から、「日本人と外国人が仕事をする」へ。その現象が急激に加速しているのが、ウェブサービスの開発現場です。
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エンジニア不足の日本企業と海外の豊富なIT人材リソースをつなぐグローバルソーシングサービス「セカイラボ」
あなたは、「セカイラボ」という会社をご存知ですか?今年の2月にローンチされたばかりのサービスですが、ものすごい注目を浴びています。このサービスを一言で表すと、ウェブサービスの開発を海外のエンジニアチームに発注できるプラットフォームです。アジアを中心とした8カ国1200名のエンジニアがセカイラボのプラットフォームに登録しています。発注者側は、数ある選択肢から各開発チームの開発実績や単価、得意な開発スキルを参考にしながら発注先を選ぶことができます。
2010年頃よりスマホが爆発的に普及し始めたことも相まって、ITサービスの需要が高まっています。しかし、国内ではエンジニア不足が深刻化しつつあります。約9割の企業が「エンジニアが足りていない」というデータがあるほど、エンジニアの需要と供給のバランスが崩れています。一方、アジアに目を向けてみるとIT人材リソースは豊富にいます。
IT教育を受けた学生がインドでは200万人、中国では100万人輩出されているそうです。最近オフショア開発先として人気の高いベトナムでは、国を挙げてIT教育に力を入れていて、新たに250近くの大学にIT系の学部を設置する予定です。では、日本ではどうでしょうか?毎年、なんと年間約2万人しか輩出されていない状況なのです。
セカイラボの代表取締役の大熊一慶氏はサービスを立ち上げたきっかけついてこう語ります。
「元々、私はモンスターラボ(セカイラボの親会社)に新卒として入り、中国の子会社と一緒に法人向けにウェブサービスを開発していました。そこで強く感じたのが、日本人のクリエイティビティを活かすにはアジアの人達と協業しながらサービスを開発すべきだということ。企画設計に長けた日本人の強みと海外の豊富な人材リソースをうまく組み合わせられるプラットフォーム化したら世界にとってWin-Winだと思いました。」
しかしながら、外国人に仕事を発注したことがない企業にとっては不安な点もあるでしょう。そこで、うまくいく開発ディレクションのコツを聞いてみました。
「失敗するプロジェクトのほとんどは、コミュニケーションによる問題です。海外の開発チームは基本的に仕様書に書かれたことしかこなしません。日本では“行間”を読め、とよく言いますが、アジアでそれは通用しない。口頭のコミュニケーションだけに頼らず、ドキュメントを使ってディレクションを徹底していくのがポイントです。あとは、そもそもの部分ですが、開発しているウェブサービスが何のために作られているのか伝える必要があります。たまに、そこは開発者が知るべきことでないと思ってる方もいますが、開発側としてはディレクション通りに開発することになると思考停止しやすくなってしまいます。」
これからのグローバル時代を生き抜くために必要な力とは?
「世界はまさにフラット化しています。特にエンジニアの世界では、技術力という共通言語の中で勝負していくので差別化が難しいです。日本で月80万円で働く日本のエンジニア、一方で技術力はほとんど変わらないのに月20万円で働くベトナム人エンジニア。ほぼ同じ技術なので、仕事は途上国に流れていき、日本人の賃金が落ち、ベトナムの賃金が上がっていく。いくらで落ち着くかわかりませんが、例えば月40万円という世界標準の賃金ができる可能性もあります。
では、そのような世界で、どのような力を身につければいいのか。一つは『世界と働ける』人材になることです。つまり、海外の開発チームをリモートでうまくディレクションしながら、仕事を進めるスキルやノウハウ、そして海外にアンテナを張れるマインドを持つことです。
単純な例を挙げると、一般的に日本で外注するときにエンジニア1人当たり月50万円かかります。年間で600万円。10人雇うと6000万円です。それをベトナム人に置き換えたとしたら、1人当たり月20万円に抑えられます。10人を1年間雇うとなると合計で2400万円。つまり、外国人をうまくディレクションできる人材が1人いれば、その人材を年収1500万円で雇っても2100万円もコストカットできます。それだけ付加価値のある人材であれば、雇いたい企業はたくさんあるでしょう。
いま全くウェブの知識のない文系学生でも、努力さえすれば将来的に外国人と働くスキルは身に付きます。もちろん、ウェブ全般の知識を勉強する必要はありますが、専門家になる必要はありません。ウェブサービスをつくる行程を理解できているか、チームメンバーが何をやるべきか、マーケットにサービスをどう繋げるかなどの全体感がわかるジェネラリストであれば、付加価値のある人材になれると思います。」(大熊氏)
セカイラボ発「世界にイノベーションを届ける!」ブログメディアがスタート
そんなセカイラボでは、ブログメディア「SEKAI LAB TIMES」を5/16にリリースしました。立ち上げた経緯を担当者の布井氏はこう語ります。
「オフショア開発という言葉自体は既に広く認知されている言葉ですが、まだ多くの企業にとってメジャーな手段ではありません。そこで、オフショア開発の事例やITサービスを企画する人にとって役立つ情報、海外マーケットの情報などを発信することで、グローバルソーシングのハードルを下げたいです。」
「私はグローバリゼーションに対して否定的な立場でした。社会人になってセカイラボに関わっていく中で、その動きは止められるものではないと気づきました。じゃあこのグローバリゼーションの中で、みんながどうハッピーになれるか。例えば、海外のリソースをどう使うべきか。日本人はどうパフォーマンスを発揮していくべきか。全員が考えるべきだと思ってます。SEKAI LAB TIMESの情報で、読者が世界に対して少しでも興味を持ってくれれば嬉しいです。」(布井氏)
「世界のアウトソーシング先として人気な都市ランキングTOP20」「これだけは知っておきたい!東南アジアモバイル市場の超基本情報」など、かなり読み応えのある記事が既に揃っています。
「世界はフラット化する」。この言葉自体を頻繁に耳にする方は多いのではないでしょうか。大事なのは、世界がフラット化している状況をいかにリアルに捉えて、行動を起こすことだと思います。この流れは止めようがありません。グローバル化をピンチと捉えるか、それともチャンスと捉えるかはあなた次第です。
■セカイラボ
http://www.sekai-lab.com
■SEKAI LAB TIMES
http://www.sekai-lab.com/times
Interviewed in May 2014