海外に飛び出したら人は変わる?そんな憧れからオーストラリアへ語学留学し、その後目的を持ってASEAN全加盟国を訪れ、自分が本気でやりたいことのヒントを得た大学生がいます。
日々の生活における発見からハラールレストランを運営。人の可能性を信じ、人が好きだからこそ、近い将来「日本と東南アジアの橋渡しになる人材ビジネスで日本を元気にしたい!」と熱く語る鈴木さんを取材しました。
<プロフィール|鈴木裕明さん>
立命館大学経済学部4年生。大学1年時オーストラリアへ語学留学後、目的を持ってASEAN加盟国10カ国に渡航。実体験に基づく発見からハラールレストランを運営。卒業後はリクルートキャリアへ。現在ASEANと日本の橋渡しになる人材ビジネスを構想中。
自分が本気でやりたいことは何かー海外に飛び込んで自分が変わった
ー 鈴木さんはASEANを制覇していますが、そもそもどうしてASEANに目を向けることになったのでしょうか?
実は大学入学当初、海外に接点がなく、英語も全く話せなかったんです。しかし、成人式の時、アメリカの大学で留学を経験して帰ってきた幼馴染が自分の夢を熱く語る姿を見て、「海外とは夢を持てるようになる場所」という憧れを持つようになりました。
英語圏で英語を学びたいと思い、1年生の時、オーストラリアで短期留学をしました。色々な国からの留学生、特に他のアジアの留学生と一緒に授業を受け、日本の授業と質が違って面白いと思いました。自分のインプットをアウトプットする機会が日本と比べものにならないくらい多くて(例えばディベートやプレゼンテーション)、常に自分の考えを持つこと、自分の意見を主張することが当たり前の要求だったんですよね!
帰国後、1年生の時期にゼミを選択しなければならなかったので、留学生の多い開発経済のゼミに参加することにしました。そのゼミの半分が東南アジアを中心としたイスラム教徒の学生だったんです。それがきっかけですね。
(開発経済のゼミメンバー)
ー ハラールレストランの運営を始めたのも彼らとの交流がきっかけですか?
はい。彼らは日本のことを学びたいので、京都、大阪等を僕も一緒に旅行するんですよ。食事選びの時、毎回ハラールレストランを探すのが大変で。世界的な観光都市でもハラールレストランが少ないということに気がついたのがきっかけです。
ー これから東京オリンピックを控えているので、ますますハラールレストランの需要が大きくなりますよね!鈴木さんの運営するハラールレストランについて詳しく教えてください。
ムスリムの学生は日常的に食事選びに苦労するので、大学に彼らに対応したレストランがあったら、少しは彼らが楽になるのではないかと思って。それと同時に日本の学生は宗教に疎いですし、こうして宗教の教義面から食を選ばなければならない人がいるという事実を大学内にハラールレストランを置くことで彼らが知るきっかけになれば良いなと思いました。
ラッキーだった点は、ちょうど大学の食堂の一つがもぬけの場所になっていたことです。そこを利用して大学の学生委員会と職員の人と協力して創り出しました。
ー「もっとハラールのことが知りたい」、そんな目的を持ってムスリム人口が世界最大のインドネシアへ留学したと聞きましたが、他のASEANの国へ渡航した経緯を教えてください。
大学2年生の夏に、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマーへフィールドワーク、年末から新年にかけてベトナムで武者修行インターン。3年生の夏からインドネシアのガジャマダ大学に交換留学し、留学時アチェ市にてJICA防災教育研修に参加しました。マレーシアとシンガポールもJICAの職員と共に地域創生の研究で合わせて2週間滞在しました。ブルネイは、ASEANを制覇したいという思いがあって(笑)、鉱山で働いている友達がいたので、鉱山を見に旅行で行きました。
(インドネシア・アチェ市にてJICA防災教育研修)
ー ASEAN大好きですね!ASEAN全加盟国を制覇した経験から自身の変化はありますか?
自分が本気でやりたいことを見つけました。ASEANの学生は本当にハングリー精神に溢れていますし、自分の国が好きで自分の国を良くしたいと思っているんですよね。そしてそのために何をすれば良いか考えている学生が多い印象でした。家族をとても大切にしているのもいいなって。
それに対して、日本の学生は教室で1番前の席に座ることに抵抗がありますし、授業を1番前の席に座って本気で受けると「マジメなやつ、意識高いやつ」とばかにされるシーンもあります。これは、将来についてあまり考えてないからという見方もできるのではないでしょうか。目標がないから、そのためのマイルストーンが置けない。僕は目標・目的を置くことで、そのために何をするべきかが見えてきて、行動している中でさらにその思いへの熱量が高くなってくると思うんです。「もっとバイタリティーに溢れた若者を増やして、日本を元気にしたい!」と強く思ったんですよね。
ー 鈴木さんの軸やビジョンはASEANに渡航して定まったということですね?
そうですね。もともと途上国支援に興味があって、実際にASEANへ渡航してみて思ったのは、「その支援本当にいるのかな?」という思いでした。もちろん一部の貧困層には必要ですが、逆に今の日本はASEANの国から学ぶことが多いと感じたところから自分の軸やビジョンが定まりました。日本で感じる日本の姿(後退)と、他のアジアの人が見ている日本(例えばルックイースト政策)のギャップも面白いと思いました。
ASEANでは中学、高校から起業する人が普通にいたり、将来が保証されていないからこそ、大学の勉強にも身が入るんですかね。友達同士で夢を熱く語るASEANの若者を見て、日本にもこういう若者が欲しいと思い、日本の若者全体に将来の夢を持ってほしい、主体性を持って生きてほしいという夢が生まれました。
圧倒的に人の可能性を信じている会社へ
ー 人材業界に就職、人材ビジネスで起業予定と、“人”にこだわりがあるように感じますが、どうなのでしょうか?
実はプロのサッカー選手を目指していた頃もあったのですが、結局叶わず勉強にシフトして大学に入学したという経緯があって、その時周りの“人”にすごく支えられたんです。人と関わることによって変われた自分がいるので、そういう人を増やしたいと思って。根本的に人が好きですし。AIの台頭もあるからこそ、人の可能性を信じたくて。
ー “人”で恩返しがしたいのですね。将来そのような思いを持って起業したいということですが、どうして一度就職することに決めたのですか?
僕自身、ASEANの若者のハングリー精神に感銘を受けて主体性と夢を持つようになったのもあり、海外の面白い人、外国人と交流するタイミングが日本にはあまりないからこそ増やしていきたいと思って。
しかし、僕の夢で鍵になっている「若者」とは?まだ「若者」が広すぎると思って、どうアプローチすべきか、具体的にどういう活動をすれば良いかまだ正直漠然としているんです。なので、まずは1人1人の若者に向き合ってから視野を広げていこうと思いました。
ー 人材業界の中でもリクルートキャリアを選んだ理由があれば教えてください。
巨大媒体を通じて、若者に主体性を持ってアプローチしている企業だからです。それから、企業風土に共感したのが大きいです。当事者意識にこだわっていますし、リクルートキャリアが大切にしているCareer Development Cycle(CDC)(目標設定、決断、やりきる、振り返るというサイクル)が一回転した時に人は成長するという考えにも共感していて、常に「お前はどうしたい?」と問われ、意志をもって決断していくことを若い頃から経験できるところに惹かれました。
あと、働いている人の経歴が色々面白くて(笑)。世界1周経験、起業経験、無人島生活経験、スポーツで日本代表経験があったり。もう“サファリパーク”ですよね。そういう人と働くってなんかワクワクしませんか?
働く先にあるものー自分が1番力を注げることを世の中に提案する
ー なぜ起業、そしてASEANでビジネスがしたいのですか?
起業をしようと思ったきっかけは、僕の中学、高校時代当時注目をあびていたホリエモンの存在です。彼が自由に意思決定している姿に憧れました。高い当事者意識を持ち、自律した人になりたいですし、その目標達成までのプロセスも大事にしたいからです。
ASEANは、特にお金をあまり持っていない大学生にとっては、経済的にも距離的にもハードルが低いのに加え、親日なので行きやすいと思います。しかも問題が多いからこそ学ぶことがとっても多くて、良いところだらけだと思います。そのため、ASEANに行く日本人が増えてほしいですし、当然日本に来るASEANの人も増やしたいのです。ASEANの人に感化されて「これをやりたい!」と思える人が増えれば良いと願っています。その感化された人が日本を元気にする上で大切な存在だと思うからです。
ー 鈴木さんのお話を聞いていて、鈴木さんは「働く先にあるもの」を見据えているように感じました。その一つが「日本を若者から元気にする夢」だと思いますが、他にはありますか?
はい。若者を元気にすることが自分が一番力を注げることだと気づきました。なぜなら最終的に日本を元気にしたいからです。他の目標は、現在構想中の「ASEANと日本の橋渡しになる人材ビジネス」の目標と重なります。
「外国人にとって日本が働きやすい場所になること」です。
ー 人手不足と言われる今の日本社会でその目標の実現は重要ですよね!
そうですね。しかし、日本は現状で例えば宗教への理解や配慮がまだまだ進んでいないし、地方では特にそれが顕著です。課題がたくさんあります。その他に、外国人への理解や配慮を育むために、国内にいながらも国外のことを知ることが日本でもっと活発になったら良いなと思います。できれば、大学内だけではなく、日本どこでもそれができるようになることが理想です。
ー 鈴木さんのように、自分が1番力を注げることを見つけるには、どうしたら良いと思いますか?
学生時代、色々な人と出会って、国籍を問わず友達をたくさん作ってください。そして、まず海外に飛び出してみること!1か国行くと、「次も行きたい!」ってなると思います。そういった経験が視野を何倍にも広げてくれます。僕のハラールレストランのアイデアのように、人との関わりから気がつくことがたくさんあると思うので。
ーありがとうございました!
「働かないと生きていけない」という現実を目の前にして、働くということの意義や本質が漠然としてしまうからこそ、働くこと、働く先を考えて人生の選択をしている鈴木さんのような学生からインスピレーションを受ける人は多いのではないでしょうか?