2016.03.29
社会人として数年働いた後、大学院で学び直し、シンガポール政府省庁に入省。その後は東日本大震災を機にシンガポールへ渡り、様々な日本企業のシンガポール進出をサポートしている関氏はグローバルに活躍するには"チャーミングさ"が必要だと語る。そんな"チャーミングさ"を持つ関氏にインタビューした。
《プロフィール|関泰二氏》
早稲田大学大学院アジア太平洋研究交際関係学修士課程を修了。文部科学省管轄の公益法人を経て2005年に大学院の中国人クラスメートと起業。その後、シンガポールの政府省庁であるIE Singaporeでシニアマーケットオフィサー、および在東京シンガポール大使館で商務官を務め、現在はクロスコープシンガポールを中心にビジネスコーデネーターなど様々な事業を手掛ける。
目次
コンサルからラーメン屋まで。様々な事業を引っ張っていく
ーシンガポールで手掛けている事業を教えてください。
今、3つ基本的にはあって、1つがジョイントベンチャーでやっているクロスコープというレンタルオフィスの経営。
2つ目がコンサルティングです。いわゆる海外進出したい、シンガポールとか東南アジアに進出したい会社に対して別途契約して、進出支援をしています。ラーメン屋さんやおにぎり屋さんのサポートまでさせていただきました。
3つ目は、Bizlaboシンガポールというメンバーシップ制をとって情報を提供するというサービスを数か月前からやっています。
(進出をサポートしたラーメン屋さんでインタビューを受ける関氏)
大学院からシンガポール政府へ。発展途上国に行って気づいたこと
ー様々な分野で活躍されていますが、これまでの経歴を教えてください。
30歳で大学院に入学しました。大学院に入った理由は、新卒で働き始めた頃、上司について発展途上国ばかりいきました。そこで出会う人たちは自分とほとんど歳が変わらないのに優秀で、この人達と争っていかなければならないなと思ったわけですよ。
争う前にちょっともう1回ちゃんと勉強しようと思って入りました。大学院では勉強って楽しいって、生まれて初めて思いましたね。
(リー・クワンユー公共政策大学院のインテンシブコースも修了して学び続ける)
2007年の秋くらいからは、IE Singapore(シンガポール国際企業庁)というシンガポール政府機関に入りました。そこではシニアマーケットオフィサー、また日本では在京シンガポール大使館商務部の商務官という肩書でシンガポールと日本を行ったり来たりしました。
シンガポール大使館商務部在籍中には、いろんなプロジェクトをしました。
今は日本からシンガポールへ肉の輸出が行われていますが、当時シンガポール政府側に立って、日本とシンガポールの食肉流通の交渉に立ち会った事もありました。
3月11日の東日本大震災がきっかけとなって何か動き出そうと考えている時に、日本の中小企業のいい技術を東南アジアに進出するサポートしれくれませんかという相談をたくさんいただいたんですよね。
僕はあくまでシンガポール企業の日本への進出をサポートする部署だったので、いろんなところにあたってみたんですが、具体的に支援を実行できそうなところがありませんでした。
そこで、以前から話のあがっていたレンタルオフィスをやって、中小企業さんの受け入れ先を作ればビジネスチャンスを広げるお手伝いができるかなと思って自分でビジネスを始めようと思いました。
ークロスコープシンガポールに参画した背景と事業内容を教えてください。
その背景としては、ハンズオン事業家である加藤順彦さんにお声がけいただき、クロスコープシンガポールを統括する庄子さんと組むことになったのです。
クロスコープシンガポールの基本的機能はいわゆるレンタルオフィスですが、オフィスを借りてくれたお客様に対して進出コンサルティング、人脈のご紹介などのご支援もしています。
(プロデュースした大阪のシンガポールレストランでクロスコープ代表の庄子氏と)
関連記事:「アジアで大成功した日本人起業家のロールモデルを生み出す」シンガポールのハンズオン投資家、加藤順彦氏
関連記事:今の常識ではないキャリアでも、若者が海外で働く必要性。ASEANでレンタルオフィスを経営する クロスコープシンガポール 庄子素史氏
シンガポール政府で活躍していたときに見えたシンガポールの多様性
ーシンガポールは "multiculturalism"と言いますがそれをどのようなところで感じましたか?
シンガポールの人はいろんな言葉が話せますし、文化的適用能力に長けていると思います。シンガポールは様々な人種の人がいるため上司がターバン巻こうが、全然気にしません。
僕の子供がシンガポールの幼稚園で最初に教わったのは、"違う"っていうことは普通のことだそうです。尊重しましょうっていうことだった。これはシンガポールのダイバーシティがあっての教育なのではないでしょうか。
またシンガポールは女性の社会進出が盛んですね。女性だからという差別がない。中間管理職は女性のほうが圧倒的に多いし、(男性が徴兵に行くため)同じ歳の人でも女性のほうが早く昇進します。僕が最初に入った上司は僕より年下の女性でしたから。
ーまたシンガポールは「アジアのハブ」とも言いますがそれを実感したときありますか?
まず物理的な面では、東南アジアのほとんどの首都に2時間、3時間以内で行くことができます。シンガポールのチャンギ空港はとてもアクセスが良いです。飛行機を降りてから30分で家に着いた時にはびっくりしました。(笑)
次はメディア媒体などの情報が多様な言語だということ。日本だと日本語で日本の新聞読んで、日本のテレビを見て、日本に住んで。何が真実なのかよく分からない。
でもシンガポールだと、様々な言語の媒体があり、多様な人がいるから、いろんな角度から情報を得ようと思ったら得られる。そうすると、日本で言っていることが実はおかしいということに気づきます。マスメディアの偏った報道だなと気づく時もありますね。
これからの日本とASEANで活躍するには
ーグローバルに活躍されている関さんですが、海外で活躍するために必要なことはありますか?
"チャーミングさ"だね(笑)。いかに自分のやっていることを他の人に楽しそうに語れるかが重要だと思います。そういう人には人もお金も、いろんな情報も集まってきます。
成功する人っていうのは、やっぱりそういった意味で何か人間的魅力があったり、チャーミングだったりしますね。ちょっとおちゃらけたこともやるし、笑顔でいることが大切だと思います。
ーシンガポールからみたASEANは今後どう成長していくと思いますか?
アジアのハブという今までと位置付けは変わらないと思います。小さなマーケットなのに、いろんな機能が集積しているのがシンガポールという国です。
そういった特徴を使いこなせれば、シンガポールは会社の立ち上げが便利な国となってくれます。
ーなるほど、シンガポールから見た日本はどうでしょうか?
日本人はASEANの国の人と比べて何か必死感が違うというか、ハングリーさが違う。
一生懸命さを伝えることが大切。
またこれからの日本の人口は減少していきます。どうせ小さくなっていくんだったら、かっこよく、クールにダウンサイジングしていこうよと思う。
日本はアジアのイタリアみたいになればと思いますね。ファッションや技術もイタリアに似ていると思うので。
また国民がラテン系の生粋になって、幸せに日本が縮んでいくっていうのは、僕はそれでいいと思いますね。まずは日本が縮んでいくという現状を認める勇気が必要だと思います。
ー今後シンガポールはどう成長すると思いますか?
今までと変わらない通りゆっくりと緩やか。直接選挙だし、日本より民意が反映されるじゃないですか。自分たちがいかに小さくて、世界の地図の中の赤いレッドドットとかって1番分かってるんで、まあ変わらないと思いますよ。
想定外の事態を乗り越えていくことが今後大切になる
ー学生、20代のうちにすべきことなにかありますか?
いろんなとこに行ったほうがいいですよ。ストイックに身を任せて、どこまでこの人たちと行ったら大丈夫なのかとか。これ以上は危険だとか。
でも何か人との距離感とかが学べるわけですよ。
あとなんでも食べること。これ嫌い、これ飲めないとか言ったら世界で働けません。あとはもうどうしてもどうにもならないことは諦める。そして次はどうしようかなって考え、リカバリー能力をつけることが必要だと思う。
想定外の事態を乗り越えていく力っていうのをつけるかが大事ですよ。それがやっぱり結果グローバル人材というか、グローバルリーダーの1つの素養かもしれませんね。
ー最後にこれから社会、世界に向けて飛び立つ学生に向けてメッセージをお願いします。
皆さんが競争しなきゃいけないのは隣に座っている日本人の同級生ではなくなってきます。
やっぱり、もっともっといろんなものを見たほうがいいかなって。日本にいる人たちは何かやっぱり得意なものとか見つけて、もっと広い視点でいろんなことを考えたほうがいいよって思うよね。
ちゃんと行ってね、見て自分で自分の尺度を持って、それがどうなのかって自分で判断する。生命力を強く想像して豊かに学生生活を充実させてください!