【新卒海外】「メイドインカンボジアを世界に広めたい」 カンボジア発のファッションブランド「Sui-Joh」アンコール店を経営 額田竜司さん

2016.02.19

もともとは海外に興味がなかったという額田さん。しかし、サッカーをきっかけにカンボジアへ飛びだす。その後日本にてマザーハウスでアルバイトを始め、大学卒業後は新卒に近い形で再びカンボジアへ。現在シェムリアップのナイトマーケットにて、オーダーメイドのファッションブランドの店舗を経営されている。カンボジアへの熱い想いを伺った。

《プロフィール|額田竜司さん》
岡山県出身。順天堂大学スポーツビジネス学科卒業。20歳の時に訪れたカンボジアで何かしたいという思いが消えず、2011年12月に移住。日本では異国でものづくりをするブランドに関わっていたため、カンボジアでも世界発信できるブランドを創りたいと考えていた。現地企業に勤めながら、道を模索していた。そんな時にSui-Joh(カンボジア発のファッションブランド)の代表と出会い、兼ねてより夢見ていたシェムリアップにアパレル店舗をオープンするに至った。

「カンボジアへの思いが使命に変わった」マザーハウスでのアルバイト、震災を経て、カンボジアへ。

②

—カンボジアに興味を持ったきっかけを教えてください。

僕は体育大学のスポーツビジネス学科出身で、サッカーをずっとやってきました。プロになることは難しいので、Jリーグなどの機関で働けたらな、と漠然と思っていました。スポーツってビジネスになると、何億円というお金が動き、金のなる木とも言われる。でも、少し違和感があって。

そんな時たまたま中田英寿さんが世界を飛び回っているのを見て、その姿にすごく惹かれたんです。言語や文化、全てを飛び越える。フットボールはこうあるべきだなと思いました。それが20歳の時。それまで全然海外に興味がありませんでしたが、これを体験してみたい!と思い、早速パスポートを取りました。

どの国に行こうかとガイドブックを見ていて、アンコールワットが目に入りました。カンボジアはいわゆる途上国であり、旅行者でも行きやすい国。ここにしようと決めました。それがカンボジアとの出会いです。

こうしてカンボジアに一週間ぐらいの旅行へ行き、今までの人生観を全部変えるような経験ができました。村の子ども達とサッカーをして、あたたかさを感じたんです。この経験を通し、自分の人生のベクトルが、良い方向に向いた。だから、いつかあの国でなにか恩返しをしたいと思っていました。

大学生なりにNGOなどの活動に参加しようと思ったのですが、バイト代も出ないですし、当時の僕には(お金がなかったので)持続性がない。ちょっともどかしいものを感じ、もっとビジネスに寄り添って、途上国と付き合えないかなと思いました。

ちょうどその時、動画でマザーハウスの特集を見たのです。それを見てピンときてしまって。山口さんの本を読んで、山口さんが店頭に立たれるという時に、店舗まで行って見学をさせてもらって。これだ!と思ってすぐ履歴書を送って、大学4年生の夏から、アルバイトとして銀座店の店舗スタッフを務めることになりました。

(マザーハウスの紹介動画 Motherhouse Co. & Ltd - YouTubeより)

当時のマザーハウスはどんどんと店舗も増えていて、すごく可能性を感じました。また、会社の理念に共感した人が集まるので、おもしろい人ばかりでしたね。組織に感情が生まれるというか。

マザーハウスは、店員のことを「販売員」と言わないで「ストーリーテラー」というんですよすごくおもしろい仕組みで。こういうことをやりたかったんだ、と思いつつも、やっぱりカンボジアが忘れられなくて、いつかこのサイクルをカンボジアで実現できないかな、と思っていたのです。

 

—運命的なものを感じますね!その後、どのようにしてカンボジアで働かれることになったのでしょうか。

③

卒論もあまりできずにずっとシフトに入り、マザーハウスで正社員としてやらせてもらえないかと考えていました。しかし、3月に震災が起こり、改めて進路を決めなければならないと思い始めました。日本自体どうなるかわからない中、考えが変わって、カンボジアへの想いが使命感に変わったんです。

卒業後、そのままアルバイトとして働かせてもらいます。しかしマザーハウスにいる限りバングラデシュが軸になるため、9月に退職。カンボジアとバングラデシュ、両国にそれぞれ1ヶ月滞在してみました。バングラデシュの工場も見たのですが、結局やっぱりカンボジアだ!ということに落ち着き、カンボジアへと渡りました。

その時、シェムリアップのフリーペーパーの編集長と知り合い、お誘いの話をもらって、そこに務めることになったのです。

 

フェアなのは当たり前。カンボジア発のファッションブランドへ。

④

—就職された後、今のお店を経営することになるまでの経緯を教えてください。

フリーペーパーの会社では、カンボジア全土に取材に行かせていただいたり人脈ができたり、色々学ばせてもらいました。1年半勤めたのちに、サッカー関連の仕事に1年半ほど携わりました。

そしてその仕事を辞めた後、2015年の7月、Sui-Johというブランドのシャムリアップの店舗を任されることになり、アンコールナイトマーケットにお店を開きました。もともとSui-Johの代表、浅野とは何度も会っていて、会う度に「シェムリアップにお店だしたいですねー」と話していたんです。

⑤SuiJoh

Sui-Johはシャツブランドから始まり、カンボジア伝統的万能布のクロマーを取り入れ、ハンドメイドインカンボジアにこだわったブランドで、日本人のデザイナーが経営しています。いわゆるオーダーメイドベースで、それまで店舗を持たずにやっていました。

もともとSui-Johの製品を使っていて、カンボジアらしさを世界に発信していきたいというSui-Johのコンセプトと自分の考えがマッチしました。また、ぼくの奥さんがシェムリアップが地元のカンボジア人なんですね。だから、いつかシェムリアップで何かやりたいと思っていました。

シェムリアップは日本人在住者も少ないですし、旅行者にどれだけ受けるのか不安はありました。でも、Sui-Johのブランディングを担えるというのは、自分が本当にやりたかったことだと思いました。

 

—会社のことを詳しく教えてください。

プノンペンに本店があり、そこにはカンボジア人スタッフが4人働いています。また、提携している工場とやりとりしています。

ひとつひとつ手作りで、シャツに関しては、オーダーメイドも受け付けているので、世界でひとつだけのシャツですね。大きな工場ではなくて小さな工房で、人の顔が見えるようにやっているので、作れる数には限りがあります。

縫製の工場で働いている人は、まだまだ社会的に地位が低い。大きな箱にいれられ、密室で暑い中、ショックで気絶する人もいます。いわゆるファストファッションの闇ですね。そうではないスタイルを作りたいというのが、Sui-Johではあるかもしれないですね。

 

—フェアトレードにあたるのでしょうか?

⑥

今、「フェアトレード」っていうキーワードが商品の価値になっていますが、フェアなのは当たり前という価値観を作っていきたいと思っています。逆にぼくらはフェアトレードを謳わず、ファッションブランドと考えています。カンボジア発の、世界的なファッションブランドを作れたらと思いますね。

これから、違う国での販売をスタートしようと思っています。日本でスタートするよりも、世界に繋いでいきたい。台湾や香港の方が、デザインを好いてくれているんです。その方々って、ひとつひとつのストーリーを知っていて、デザインを好んでくれるんですね。

Sui-Johのロゴはボートをモチーフにしているのですが、ボートのように、プカプカとゆっくりでいいので、世界に広まって欲しいな、と。広告を大々的に打つのではなく、人づてに伝わって欲しいと思っています。

 

—生活について(家、お金)教えてください。

家は、カンボジアに来た当初は会社が用意してくれたところに住んでいました。今は奥さんの親戚の家の一室に住んでいます。

お金の面では、カンボジアはまだまだ入ってくるお金と出て行くお金は合わないです。我慢はしなければいけないことはたくさんありました。

同年代の日本の友達がお金を持つようになり、遊び方を学んでいく中、自分は違うとは感じました。でも、それ以上にここにいる価値があると思っています。

 

好きなことをやる。大切なのは、動いて感じて、心の中の熱いものを見つけること。

⑦jpg

—カンボジアで働かれて、良かったと思うことはありますか?

自分の場合は単純に目指す方向が、メイドインカンボジアを世界に広めたいというものでした。だから、自分の目標を達成するためにここに来る必然性があったんですよね。この国じゃないと自分はだめなんです。

カンボジアの人は、素直に生きていて、人間臭いです。日本にいると、こうでなきゃいけない、ということがあるじゃないですか。でも、カンボジアには自分がやりたいように生きることができて、それを受け入れてくれる人と、環境があるんです。

 

—逆に苦労したことはありますか?

お金絡みのことですね。過去に横領もありました。大きな被害は今のところありませんが、信用できなくなってしまうのはもったいないなと思いますね。プノンペンなんかは、自分の知人の半分は盗難スリにあっています。

 

—描いている今後のキャリアを教えてください。

世界にメイドインカンボジアを伝えたいので、世界の色々な国でSui-Johの商品を買えるようにしていきたいです。そしていつか、日本で直営店を開きたいです。

 

—海外就職に興味があるけれど、迷っている人に向けてメッセージをお願いします。

額田さん 写真

好きなことをやってください。それに尽きます。

やらないとわからないのは絶対だと思うんですよ。何かアツいものが心の中にないと、行動には移らない。もやもやしているんだったら、動いて、感じて、そして何かアツいものが芽生えたのなら、それを好きなことだと思ってやってください。

ただ、カンボジアはおすすめしないです。(笑)ここにこだわりがある人じゃないと、長期的にカンボジアに根を張って残っている人は多くありません。

僕は、正直「海外就職」ってなんだろう?と疑問に思う人で。自分にとって思いがある会社があって、それが日本にあるなら、日本でも良い。何かこだわりをもつことですかね。

 

【編集後記】
運命的なものに出会う。額田さんの場合、それがカンボジアだった。額田さんの熱い想いを伺っていると、人生を懸けられるほど強烈に熱くなれる「好きなこと」とは私にとって何なのか、考え込んでしまう。額田さんのおっしゃるように、とにかく興味のある方向に動いて、感じて、芽生えるものを大切にしていきたいと思った。

 




ABOUTこの記事をかいた人

山村 あおい

法政大学国際文化学部4年。2014年に休学、フィリピンのNPOとマレーシアのwebメディア企業にてインターンシップを経験。2015年12月、1ヶ月間でASEAN6カ国を回り、新卒で海外就職・起業をした日本人26名にインタビューを実行。新卒での海外就職を決意し、現在ASEANで絶賛求職中!