2015.11.30
前編に引き続き、和僑会世界大会のイベントレポート後編です。
ホーチミンに和僑が集い、グローバルベンチャー創出を目指す。和僑会世界大会 (ASIA VENTURES SUMMIT) in HCM イベントレポート〈前編〉
この記事では、 「ベトナムパネルディスカッション ベトナムビジネスの難しさと成功の秘訣」、そしてクラウドワークスの吉田浩一郎氏・エンジェル投資家加藤順彦氏の講演内容をお伝えします!
個人的に、とてもグッとくるお話を聞くことができました。
ベトナム市場 出るなら、今!
登壇者は以下の通りです。
(便宜上、二度目以降は敬称略させていただきます。)
関 泰二氏(NIHON ASSIST SINGAPORE Pte Ltd Managing Director):
コンビニエンスストアのマーケットについて教えてください。
木暮 剛彦氏(FamilyMart Vietnam Co., Ltd General Directoe):
市場(いちば)などの伝統的な小売市場と、スーパー、ドラッグストア、モールなどの近代的な小売市場があります。ベトナムでは、後者はまだまだ低い割合にあり、例えばコンビニに入る前に靴を脱ぐお客さんがいたなど、コンビニの認知が進んでいませんでした。けれど、今後短期間で、近代的小売市場は増えていき、コンビニも業界において成長していくだろうという状況ですね。
関:ベトナム即席麺市場において50%以上の高いシェアを誇るまで、エースコックさんはどのようなことを工夫してきたのでしょうか?
梶原 潤一氏(エースコックベトナム株式会社 社長):
消費者の購買を促進するには、ベネフィットがあることを知らせることが有効です。例えば値引きだったり、ケースの中におまけを入れると売り上げが伸びます。他にも、工夫している点で言うと、ハノイとホーチミンで食に対する嗜好が違うので、味を変えていますね。
関:たくさんの人材を抱える味の素さんは、人材採用やマネジメントについて苦労する点もあるのではないかと思います。
本橋 弘治氏(Ajinomoto Vietnam Co., Ltd. General Director):
大切なのは、ベトナム人の行動をどうやってマネジメントするかというところ。思考力高いし自分たちで工夫しながらやるというのが、ベトナムの特徴だと思っていますが、まだまだ外資系企業で働くという概念は国に浸透していません。だから、時間を守りましょう、会社の中を裸足で歩かないようにしましょうなど、とても基本的なことから教えていく必要があるのです。 頭で考えるよりも体得していく、マネジメント By Habit(習慣)を心がけていますね。そうすれば、日本人がいなくなったとしても、現地主導にできるからです。
地方の営業所を周って、お酒を飲み交わしながら会社のビジョンを語って、人材の定着に努めています。生産部門のひとたちは、ある一定数で辞めていくのは前提としてやっていますが、販売員のひとたちで辞めていく人は少ないですね。
関:ありがとうございます。これからベトナム進出を考えている方に向けて、「来たほうがいいよ」とか「来ないほうがいいよ」とか、メッセージをお願いします!
木暮:最大のポイントは、自社の事業の競争優位が高いかどうか、ここを間違えるケースが多いです。「日本品質ならわかってもらえる」「日本でいけるならベトナムでいける」と思うのは大間違い。製造業で黒字化するのには時間かかりますし、非製造業だと、競争関係が見えにくいです。並大抵ではありませんが、市場の魅力度は高いですね。
梶原:製麺技術や品質管理は日本から持ち込みましたが、味に関しては現地の方の考えを尊重しました。ベトナム人が安心できるように、日本とベトナムのいいところをミックスさせることが大切ですね。
人口が伸びていきますが、2020年以降はピークアウトしていくと言われているので、出るなら今です!早くご決断してみてください。
細野 恭平氏(株式会社ドリームインキュベータベトナム 代表):
ITはまだ早いかもしれないですが、それ以外の業種は出るなら今だと思います。エースコックさんは、ベトナム人から日系企業とは思われていないほど現地に溶け込んでいますし、味の素さんは、よく屋台で見かけるフォーにたくさん入れられているので、かなり消費されています。また、ファミリーマートさんが来る前までにもコンビニってあったんですけど、ヘルメットと水とコンドームくらいしか売っていなかったので(会場笑)、ファミリーマートさんのようなコンビニはこれからどんどん広がっていくと思います。
このように、業界を変えていっていますし、たとえ我々のようなベンチャーであっても、間を見つけてビジネスを行っていくチャンスはたくさんあるので、ぜひここにいる皆様もベトナム進出を考えてみてください!
関:驚くことに、誰一人「来るな」とは仰りませんでしたね。(会場笑)ありがとうございました!
ベトナムは、若いひとが多く、人口が伸びていく、これからがますます期待される国のようですね。ぼく自身、ホーチミンは初めてだったのですが、街のサイズや物価、ごはんのおいしさなど、暮らしという点でも過ごしやすいです。
これを機に、ベトナムで働くことを考えてみてはいかがでしょう?
午前のコンテンツが終了後は、ランチビュッフェのお時間です。参加者の方々の交流で賑わっていました。
そして、午後からは会場が3つに分かれ、同時並行で講演が行われます。
「名誉やお金では無く、新しい価値をもたらして人に感謝されたい。」
午後のプログラムは以下の通り。
テラモーターズの徳重氏や、SPACE MARKETの重松氏、ネオキャリアの西澤氏など、日本でも有名なベンチャー企業の社長の方々が講演を行っていました。
また、ホーチミンで大人気のピザ屋 ”Pizza 4P’s”を経営している益子氏、サイバーエージェント・ベンチャーズのDungさんも登壇していました。
残念ながらぼくの体はひとつしかないので、すべての講演を聞くことができませんでしたが、参加できた講演枠の方についてピックアップしてお伝えします!
1人目は、株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 兼CEOである吉田浩一郎氏。
まずはご自身の経歴を語ります。マレーシアのある土地に国を創ろうとしていたお話や、メンズスカートを売り出していたお話など、過去の失敗談を、ユーモアを交えながら赤裸々に話されていました。
数々の失敗から多くの学びを得て、ご自身の本当の望みにたどり着きます。
いままでたくさんのことに手を出していましたが、ひとつのことだけに集中しました。そのときには、所有していた車を売り、自己資本をすべて投げ打ち、一日1000円で暮らす日もあったようです。
吉田氏が目をつけたのは「クラウドソーシング」。それは、21世紀のいま、まさに変化している3つのことに注目したためでした。
1つは、ホワイトカラーの働き方革命。台湾の鴻海では、いままで門外不出だった製造ラインが一緒になっているため、技術はシェアされています。そのホワイトカラー版が21世紀は起きていくとのこと。
2つ目は、信用のインフラが多層化していくこと。いままでは銀行口座の情報で個人にお金を貸すか否かが決まっていましたが、現在ではFacebookやTwitterの情報だけ見て、意思決定を行うサービスもあります。このように、ひとの信用に関わるものが、これまでのものだけではなくなっていくのです。
そして3つ目は共感とお金の境目が無くなっていくこと。クラウドファンディングはかなり主流になっています。今までは、制作における原価から金額が決まっていましたが、これからはどれだけ共感が生まれたかに対価が支払われていくのです。
以上の3つを、仕組みとしてサービス化したものが、クラウドワークスでした。2011年に創業してからわずか3年で、東京証券取引所マザーズ市場へ上場。
たくさんの学びがあり、かつユーモアもある、刺激的な講演でした。
「アジアのウミガメを創る。」
そして2人目は、エンジェル投資家の加藤順彦氏。アセナビでもインタビューさせていただいています!
(参照:「アジアで大成功した日本人起業家のロールモデルを生み出す」シンガポールのハンズオン投資家、加藤順彦氏)
長年、インターネット広告の会社を経営してきた加藤さんは、ライブドアショック後の風潮に対して、危機感を覚えたといいます。既得権益に切り込もうとする新しいベンチャーがバッシングを喰らう状況。また、広告の役割は「ブランドスイッチを促すこと」なのですが、超高齢化が進んでいく日本ではブランドスイッチは起きにくくなる。それは、高齢者はどんどん保守的になっていくからです。
すると、椅子取りゲームの椅子(=人口)自体が減っていく日本では、一つの業界で一番シェアを取っている会社だけが勝つように固定化されていきます。
新しい提案であるベンチャーがバッシングされ、さらに人口が減っていく日本とは相反し、加藤氏が出張先の中国で見たものは、アメリカで学んだジャック・マーが中国に凱旋し、英雄視されていたこと。そうやって、海外に出てから自国に還元していくことが「ウミガメ」と呼ばれていたことから、同じように日本人のウミガメを増やしていこうと考えました。
そこで、発展しているASEAN、その中でもシンガポールに注目し、自らが現地に移住して、現地で一旗揚げる日本人、つまりウミガメとなり得るひとのサポートをはじめたのです。
さいごに、投資家としてサポートされている企業のご紹介。YOYO Holdingsやソーシャルワイヤー、HUGSなど、さまざまな企業があります。
(参照:「世界の貧困問題を解決するビジネスを作る」 YOYOホールディングス 代表深田洋輔氏)
(参照:今の常識ではないキャリアでも、若者が海外で働く必要性。ASEANでレンタルオフィスを経営する クロスコープシンガポール 庄子素史氏)
加藤さん、吉田さんに共通していたメッセージがありました。
それは「突き抜けるには、辞めること・捨てること」です。うまくいくか不安なひとほど、同時にいくつもの事業に手を出してしまいます。スタート時点では、やりたいこと一つに絞って、それ以外は考えないくらい腹をくくることが大事なのですね。
これにて、すべての講演は終了。
アジア中から駆けつけた和僑のみなさんのご紹介や、バンドの演奏が行われながら、参加者のみなさんはお酒を酌み交わして交流をされていました。
たくさんの和僑たちがつながり、無事に和僑会世界大会 in Ho Chi Minhは閉幕です。
和僑は、世界を変えるかもしれない。
いかがでしたでしょうか?
参加できなかった方々にとって、「来年は行きたい!」と思ってもらえるレポートになっていたら幸いです。
このイベントを通して思ったことは、基調講演で堀会長が話されていたように、「和僑は、今後の日本のビジネスの未来、ひいては世界を背負っていくのではないか」ということです。
アジア通貨危機を経て、自国のマーケットに危機を感じた韓国は、国をあげて海外進出を目指しました。ベトナムにいるとよくわかるのですが、韓国資本の製品が多く、サムスン、LG、Hyundaiなど、世界的に受け入れられるグローバル企業になっています。
そこには「内需だけではやっていけない!」という危機感がありました。そして、日本人も自国のマーケットに危機を感じ、今こそ海外に打って出るべきフェーズなのではないでしょうか?一人だけではだめです。韓国のときのように、国をあげて和僑として海外に出ていくことが、今後の未来を作っていくのでしょう。
このイベントのためにホーチミンに来た甲斐がありました。
登壇者のみなさま、参加者のみなさま、そしてこの世界大会を成功させてホーチミン和僑会実行委員会のみなさま、本当にお疲れ様でした!
(和僑会HCM事務局さん、ボランティアスタッフのみなさん、一部登壇者で集合写真。みなさん素敵な笑顔です!)
来年は北海道での開催ということで、ぜひとも参加してみてください!