世界遺産に登録されない…世界三大仏教遺跡ミャンマーのバガンの悲劇

 

2014年6月、日本では群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺跡群」が世界遺産に登録されましたね!以前から、登録の可能性が高いという報道があったので、印象に残っていると思います。

富岡01

その他に「シルクロード」など、世界中で25件が新規登録されましたが、その中の一つに「ピュー族の古代都市群」があります。これは、ミャンマー初の世界遺産です。

ピュー族というのは、現在のミャンマーがある地域で、ビルマ族により征服された9世紀ごろまで栄えた民族です。ピュー王国を建国し、その時代に建てられた寺院が今回世界遺産になりました。「古代都市群」なので、寺院などが広い範囲に散らばっています。1300年以上も前に建てられた仏塔「パヤーヂー・パゴダ」など、見どころがたくさんある遺跡だと言えるでしょう。

バガン02Photo from パステル☆

しかし「ピュー族の古代都市群」ってなんだか聞き慣れないですよね?少なくとも僕は知りませんでした。ミャンマーに行ったことがないのですが、僕がミャンマーの観光地としてまず思い浮かべるのは、「ゴールデンロック」や「バガン」です。特に「バガン」は写真を見てとてもきれいだと感じたなので、最初の世界遺産はここかなと思っていました。

バガン03(ゴールデンロック)
Photo fromエイビーロード

 

バガン04(バガン)


しかし、バガンは世界遺産ではありません。というのも、明確な理由があるのです。そこで、今回は「バガンが世界遺産になれない理由」をご紹介します。

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そもそもバガンってそんなにすごいの?


バガンとはマンダレー管区(ミャンマーの行政区画の一つ)にある地名で、そこには大小さまざまな「パゴダ」と呼ばれる仏塔が3,000棟以上も点在しています。

バガンは世界三大仏教遺跡として、インドネシアにある世界遺産のボロブドゥールと、カンボジアにある同じく世界遺産のアンコールワットとともに知られています。建造されたのは11〜13世紀ほどと言われています。

仏塔の大きさの違いもさることながら、形や色などもさまざまあり、神秘的な雰囲気を醸し出しています。これだけの絶景と、歴史的価値がありそうな遺跡なのに、どうして世界遺産に登録されないのでしょうか?

 

原型を無視した修復の問題がある

 

これが大きな問題です。世界遺産の登録には、少しでも元の状態が保たれており、それを維持する姿勢があることなどが求められます。しかし、バガンではそれを「無視」した修復が横行しているのです。例えば以下のことが挙げられます。

・床に現代的なタイルが敷かれている
・見栄えを重視して古い壁画を石灰で塗り固めてしまった部分がある(=原型をとどめない)
・仏像の周りには、本来あるはずのない電飾が輝いている

 

バガン05Photo from NHK 海外ネットワーク

 

我々日本人からしたら、元ある状態が保たれているものに価値を感じるのではないかと思います。反対に、手が加えられ過ぎているものってなんだか味気なく感じませんか?

例えば、僕にはこんな思い出があります。小学校の頃に名古屋城を訪れたときのこと。城の外観は荘厳な趣きがあるのに、中に入ると鉄筋コンクリート製でエレベーターがあるというという事実に少しがっかりした経験があります。歴史的な価値のあるものに、あまりに近代的な技術が使われているというミスマッチに違和感を感じる、という経験、みなさんにもあるんじゃないでしょうか。

 

無計画な周辺開発の問題


問題は修復だけではありません。バガンは、多くの仏塔を眺める光景で有名だと思うのですが、昔の軍事政権はその景色を壊してしまうようなことをしてしまいました。

それは 

・バガン地区内にゴルフコースを造った
・舗装された高速道路を造った(下の画像の真ん中あたり)
・高さが61メートルほどもある展望台を建てた

バガン06Photo from 写真はいいね!

建物そのものだけではなく、周りの景観にさえ変化を加えてしまっています。それにより、元来あった景色とは変わってしまい、世界遺産への登録は見送られているということです。

しかし、これらのことが必ずしも「悪」ではないと思います。なぜなら、僕らとミャンマー人の考え方は違うのですから。世界遺産に登録されるということは、国際的に権威のある機関から価値が認定されることを意味し、多くの観光客が訪れる契機となることが多くあります。しかし、この認定は必ずしも現地の人に大きな価値のあるものではないのかもしれません。

保護のために、建物内で線香を焚くことが禁止されるなど、いままでのように自由に参拝ができなくなることもあるのです。ミャンマー人からしたら、近代的なものを使って修復したとしても、「バガン」という遺跡自体は変わりないと思っているかもしれませんね。

世界遺産に登録されようとされまいと、バガンの素晴らしさはやはり一見の価値があります。バガンが今後どうなっていくのか、なんてことを考えながらぜひ一度訪れてみて下さいね!

 

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