日越大学特集5回目の今回は古田元夫学長から貴重なお時間を頂きインタビューを行い、研究者としてご活躍された学長にご自身のベトナム研究についてと日本人学生に期待することを伺いました。
《プロフィール|古田元夫氏》
日越大学初代学長。従来の漢文やフランス語の文献に頼った研究を超えベトナム語の文献も駆使して研究活動をすすめたベトナム研究の先駆者。これまでベトナム現代史の研究に40年以上関わる。2015年3月、37年間勤めた東京大学を退職し(現在は名誉教授)、ベトナム国家大学初の外国人学長となる。
ベトナム研究者としてのご活躍
ーまず始めに古田学長がベトナム研究を始めた経緯を教えて下さい。
研究を始めた動機は割と単純で、私の学生時代がベトナム戦争のピークだったからです。私はベトナム戦争最中の1968年に東京大学に入学したのですが、その当時世界はベトナムを中心に回っているように見えました。
そのため世界の中心であるベトナムのことが分かれば他の国のことは容易に理解できるだろうと思って研究を始めた訳です。
研究対象は最初ベトナム戦争から入ったので戦争と平和や植民地支配と民族解放、資本主義と社会主義などベトナムに限らず人類に普遍的な話を扱っていました。
ベトナム研究なので開発経済の様な学問分野とは異なり「ベトナム」とは何なのかという問い・軸を常に置いて研究していました。
ー40年にもわたる研究の原動力は何だったのでしょうか。
端的にお答えすればベトナムが好きだからですね。なので惚れた相手に忠誠を誓っていることになります(笑)。
私は1977年の時と1980年に1年ずつ日本語の先生としてハノイに滞在する機会がありました。その時にリアルなベトナム社会を見てそれ以前の自分の思っていたベトナムが観念的であり実際の社会の在り方を理解していなかったのだと感じました。
ベトナム戦争に勝った国なのだから社会の統制がよく取れているだろうと思っていました。しかしそれは大間違いでした。
当時は自転車が主な交通手段でしたが交通の基本的な仕組みは今と変わらず自分が行きたいという方向に勝手に移動するという社会でした。
徐々に私はその一見無秩序に見えるような下から巻き上がるエネルギーの方が、むしろベトナム社会の基本的な在り方なのだと思うようになっていきました。
最初に思い描いていた恋人の実相に迫ったら思い描いていた姿とは違ったのですが幸いなことにこの人と付き合ってみると面白いのではないかと思い私にとっては余計に興味が湧いていったんです(笑)。
ベトナムは急速に変化をしている真最中ですので変化のスピードが非常にはやく世界の趨勢に合わせて社会を変えていると言えます。
ーご専門の歴史研究にはどのような社会的役割があるのでしょうか。
ベトナムに即して言うと、今の多くの日本人の関心はドイモイ開始以降に限定されていると思います。
それは決して悪いことではないのですが、ベトナム社会がそれ以前の歴史の蓄積の上に成り立っているということが見えなくなるといけません。
「ベトナム戦争」から入る研究者は多いのですが前近代まで遡ったという人も実は多いです。一番極端な人は考古学者になった人もいるくらいです。
まだ私は歩留まりが良かった方ですが(笑)、今起きていることは昔に起源があり「現在」を理解するために歴史は必要なんです。
日越大学は日本人学生にも選択可能な進路
ー続いて日越大学に関する質問をさせて頂きます。現在日本人学生はいませんが今後どのような日本人に入学して欲しいですか?
特に日本人学生に限定して考えますと、我々が一番期待しているのはベトナムに関心があって将来ベトナムで働いても良いと思っている人がおられましたら是非入学してほしいですね。
今のところ日越大学は修士課程だけですが、学部もできますので学位を取ってベトナムでの職探しという選択肢も考えられます。それでしたら卒業後はどの分野でも考えられますね。
他にも、もっと深くベトナムのことを研究したいという方がおられましたら地域研究課程にベトナム研究のコースがあります。
ベトナム研究をやるからにはベトナム語の知識も当然必要にはなるのですが日越大学のプログラムは英語で授業が行われていますので、ベトナムのことを突っ込んで勉強したいという日本人には適していると思います。
国家大学の人文社会科学大学にも修士課程にベトナム学はありますがベトナム語が基礎になっている大学院ですので、日越大学よりも語学に対するハードルは高いと言えるでしょう。
ー日本人が日越大学に入った時のメリットは何でしょうか?
実は正規のプログラム、つまりベトナムで学位が取れるものは殆どないんですね。ある期間だけ集中してベトナムで勉強するという感じで。そう簡単にベトナムの学位は取れません。
しかし、日越大学は2年間で修士を取ることができますので、キャリアパスという面から考えますと有利だと言えるでしょう。
また、日本人の先生がたくさんいるため、日本人学生にとって違和感は少ないですし生活する上での安心感もあると言えるでしょう。授業も日本のカリキュラムに準拠していますので日本の大学との繋がりも取りやすいです。
世界水準の研究大学へ
ー最後に今後の日越大学のビジョンを教えて下さい。
日越大学は今後ベトナムにおけるCenter of Excellence(最先端の教育・研究拠点)の拠点になって、グローバルな舞台で活躍できる人材育成を目指していきます。
また皆さんの様な大学生のインターンシップの受け入れやサマープログラムという形であればもっとベトナムに行ってみようと思う人は多いだろうと思います。
日越大学は今後そのような学生の研究や学習、そして創造の受け皿としても機能していくことになるでしょう。
ーそのような受け皿という役割としても日越大学は今後「日本とベトナムの懸け橋」としての機能を担っていくと言えそうですね。古田学長インタビューありがとうございました。
編集後記
皆さん、今までの5回にわたる日越大学特集はいかがだったでしょうか?日越大学がどんな大学なのかイメージは掴めましたか?
私は日越大学が日本とベトナムの懸け橋になることを確信しています。
この大規模国家プロジェクトはまだ始まったばかりです。皆さん自身で今後の日越大学を一緒に創っていきましょう!
日越大学は現在、日本からの留学生を絶賛募集中です。今、入学すれば「日本人学生第1号」です!2018年9月入学の募集が7月中旬までオープンしていますので、チャレンジしてみてはどうでしょうか?
英語の募集情報ページ:
日越大学の情報は以下のサイトから確認することが出来ます。
日越大学HP(ベトナム語、英語)
www.vju.ac.vn, www.vju.vnu.edu.vn
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