16歳で起業。「ビジョン×映像制作」の事業をシンガポールで展開するVSS創業者Jacquiが語る、会社のビジョンの重要性

シンガポールに拠点を置き、企業のビジョンを押し出す動画制作会社Vision Strategy Storytellingがある。その会社を経営するのは、高校卒業後の16歳で起業を果たし、27歳の若さでForbes 30 under 30に選出されたJacqui Hockingさんだ。エネルギーに満ち溢れる彼女を突き動かす原動力を伺った。

《Jacqui Hocking | プロフィール》

オーストラリア出身の連続起業家で、現在27歳。高校卒業後、16歳で映像制作会社Latenightfilmsを創業。その後シンガポールに拠点を移し仲間とともに持続可能性コンサル事業を展開するGone Adventurin’を創業。1年前にビジョンを発信する映像制作会社のVision Strategy Storytelling(VSS)を設立し、現在も創業者兼マネージングパートナーとして会社を経営する。

ビジョナリーな会社を映像を通して支援する

ーVSSには何をしている会社ですか?

Vision Strategy Storytelling の略で、強いビジョンを持つ会社に対して、映像を通して人々からより認知されるのを支援する会社です。Storytelling(物語を語ること。この記事では、その会社のビジョンを上手に伝達すること)はスタートアップや企業が成長するのに一番必要なものだと思っています。なぜなら、世界中に拠点がある有名な多国籍企業でもスタートアップでも突き詰めると、人によって運営されていて、人はビジョンによって突き動かされるからです。

世界には素晴らしいビジョンを掲げて素晴らしいソリューションやサービス、そして製品を会社が数多く存在しますが、彼らの一番の課題は「人により認知される」レベルに大きくなることです。素晴らしいビジョンを持ちながらも人々への認知度が上がらない、というような企業を映像を使って手助けしたかったので、2016年9月にこの会社を創業しました。

それから1年数ヶ月ですが、P&GやUnilieverなどのグローバル企業、さらには東南アジア版Uberを展開するGo Jeckなどのスタートアップ企業がクライアントとなっています。

また、多くのスタートアップが大学や仕事場の同期で立ち上げられるため経営陣の経歴や年齢が似たようなものになる一方、VSSの社員はとても多様性にあふれています

バックグラウンドでいえば、私はドキュメンタリー中心の映像製作で、共同創業者のYasmineは投資銀行の戦略担当ですし、そのほかにも多くの起業経験がある人や持続可能性の専門家などがいます。年齢でいっても最年少は22歳で最高齢はなんと72歳です。国籍もオーストラリア、エジプト、オランダ、インドネシアなどの様々な国の出身のスタッフがいます。

クライアントと行う徹底的なワークショップを通してビジョンを明確化

ー会社のビジョンを伝える映像を作っているんですね。他の制作会社とは何が違うのでしょうか

ビジョンにフォーカスしているという点で、よくあるマーケティング向けの動画制作会社とは一線を画しているのはもちろんですが、動画制作のプロセスも少し変わっています。

まず動画制作に向けて、クライアントと様々な角度から見た自社のビジョンについての集中ワークショップを行います。まず外に向けてどのように発信していくかはとりあえず置いておいて、そこの会社で働いている人および投資家がそのビジョンについてどのように思っているのか、ということを徹底的に話し合います。

そこで全員が統一したビジョンを共有できたら、次は社外について考えます。その会社のプロダクトやサービスを使っている人、およびその消費者コミュニティの中では会社のビジョンをどういうように捉えているのか、といったことについてです。

このようにワークショップにおいて、社内と社外を含めた様々な角度から見た全体的なビジョンをクライアントと確認します。これによって動画内で押し出すビジョンをより魅力的にすることができます

Facebookのタイムラインでは完璧なアングルで撮られた完璧な画質の動画がしばしば人気を集めますよね。しかし私たちは、動画の良さを定義するものはそれに使われた技術の高さや注ぎ込んだ費用の高さではなく、「人のストーリー」だと思っています。ですので普通の動画制作会社からみたら非効率的で無駄なことを惜しまずにやっているんです。

ー面白いですね!そういう方針だと、クライアントによってはプロジェクトを断るみたいなこともあるんですか?

はい、たまにありますよ。私たちのところに仕事の依頼がきたときは、何でもかんでも受けるのではなく、私たちのバリュー「3つのP」に照らして検討します。3つのPとは

  1. Profit(利益を得られる)
  2. Pleasure(楽しい)
  3. Proud(誇りを持てる)

です。3つとも当てはまるなら即承諾できますが、2つなら要検討、1つなら断ります。

特に2のPleasureは大事ですね。スタートアップという組織で働いていると99%の時間が辛いですから(笑)。辛い時でもそこに楽しさを見出せるようなプロジェクトである、というのが私たちが厳しい環境でも健康に戦っていけるカギだと思います。

昔から好きだった映像事業で16歳で起業。現在は3度目の会社経営に挑戦

ー昔から映像制作には興味があったのですか?

そうですね、小さい頃からなんらかの形で映像制作に携わってきていたと思います。4-5歳くらいの子供の頃から、兄と一緒に動画を撮影したり編集していたりしました。そのくらいの歳から、自分たちバージョンのスターウォーズなんかを作っていました。

上記の通り子供の頃から映像制作が好きだったので、大学では映像について専攻したかったのですが、家がそれほど裕福ではなくて、大学には進学できませんでした。高校を卒業後、すでに映像制作の技術については自信があったのですが、働きたい会社が特になかったので、兄と共に故郷のオーストラリアで映像制作の会社を立ち上げました

Latenitefilmsという会社で、今も続いています。ポートフォリオを見ていただいたらわかるのですが、この会社で制作するのは「社会に残すインパクト」というよりも単純に「アート」を追求する映像です。この会社を経営していて、次第に「社会に何かインパクトを残したい」という思いが強くなり、シンガポールに渡りGone Adventurin’という社会的企業(Social Enterprise)を設立しました。

当時から東南アジアが抱える様々な課題(環境汚染や経済格差)に興味があり「持続可能性」の面白さを感じていました。ですので持続可能性に関してのコンサルティング事業をしようと思いました。しかし一般的に論じられる持続可能性は、学問のように「科学的すぎて退屈」かマーケティングのように「本質的じゃなくて薄っぺらい」かのどちらか両極だと思っていて、私たちはその中庸をいこうと思いました。

つまり持続可能性という社会的な意義が大きいプロジェクトを考えつつ、実際に実行まで持っていくということです。プロジェクトを実現させるためには人を巻き込まないといけません。ですので私たちはストーリーテリングも含めた持続可能性コンサルティングをしました。

そこでStorytellingがいかにパワフルであるかを感じ、よりビジョンを伝えていくことにフォーカスした映像制作をしてみたいと思うようになり、VSSを創業しました。

ーすでに2社の創業を経験して、今のVSSは3社目ということなんですね。16歳の頃から会社経営をしてきて何か感じたことはありますか?

今は3社目のVSSを経営していますが、人との出会いの巡り合わせのすごさを感じています。

Gone Adventurin’にいた時、Gone Cyclinというプロジェクトに携わりました。どういうプロジェクトかというと、シンガポールの若い銀行員が東ティモールという小さな国で山を自転車で登るというバイクレースに参加するというチャリティイベントです。

そこで1人の女性と出会い、とても刺激を受けました。なぜなら彼女は今まで一度もバイクレースなるものに参加したことがないのに、いきなり山登りのバイクレースに挑戦したのですから。過酷な道のりにも決してあきらめず走り切った彼女の姿に感銘を受け、「いつか将来、一緒に働こう」と言ったんです。しかし彼女は「それはないよ。私は投資銀行で働いていて、あなたは映像制作をしているんだから。」と笑いました。なんとその彼女こそが、VSSの共同創業者Yasmineなんですよ。面白いですよね。

ビジネスをする上で計画を立てるのは当たり前ですが、何より「なぜそれをやるのか」というビジョンを明確にすることで、ゆくゆくはそのビジネスに最適な人が集まってくるんだということを実感しました。

連続起業家Jacquiが語る、自分が熱中するものの見つけ方

ー純粋に感じたんですが、そんなにパワフルで元気に活動しているん原動力って何ですか?

私も本当に辛い時なんかはたまに「なんでやってるんだろう」ってわからなくなりますよ。辛いことがあったり、財務的に厳しくなって諦めかけた時なんかは特に。バリのビーチで横になっている方が絶対に楽しそうなのに、なんでこれをやっているんだろう、みたいになります。

ただ、私がしている活動はもはや自分のためではなく、私たちの次の世代に対しての何か責任感のような感覚があるんです。私は先ほど述べたとおり、裕福な家庭で育ちませんでした。しかし、果敢に挑戦して一生懸命働いたからある程度フィルムメーカーや起業家として生きていけて、世界中を旅する機会も得ることができました。私の人生で経験したことや学んだことを、今度は私たちの周りに還元していきたいんです。それが「一緒に働くこと」によってであるか「社会的に大きなインパクトを与える企業を支援すること」によってであるかはわかりませんが。

とにかく次の世代の人たちがより良い生活ができるようにしたいという思いが原動力です。

ーJacquiさんのように熱心に取り組むことがない人も多いと思います。若い世代がJacquiさんのようにパワフルに活動できるようになるためのアドバイスを何かください。

今私みたいに熱心に何か取り組んでいる人とそうでない人の違いは、それを見つけられたかどうかの違いです。まだ何も見つけられていない人は、見つけられないからといって止まるのではなく、ひたすら動き続けてください

人は誰でも、何かしら必ず熱中できるものがあるはずです。それが音楽であるか、アートであるか、社会活動であるか、というのは人によりますので、とにかく片っ端からやってみることです。

さらに、ただやるのではなく、「全力で」やってください。それが何であろうとも。人がものに情熱を見出すのは、一生懸命やりながらそれを上達させていくプロセスの中ですからね。

せっかくですので私からアドバイスをさせていただくとすると、国連が発表しているSDGs(Sustainable Development Goals)の17分野から一つ選んで、それを達成するために2年間、周りを巻き込みながら全力で取り組んでみてください。絶対に何か面白いことが起きます。

頑張ってください。

編集後記

「なぜやっているのか」というのが明確なJacquiさんだからこそ、このような行動力とエネルギーを発揮できるんですね。話している時も、淡々とというよりはとても気持ちがこもった話し方をしていました。まだ27歳なのにこのような実績を残していて、今後どのようなことをされるのか、非常に興味深いです。私たちも、できることを全力でやっていきましょう!

ABOUTこの記事をかいた人

飯田 諒

筑波大学で休学2年目に突入 ベトナムをDJしながらバイクで2,500km縦断したり、バンコクで8ヶ月間インターンしたり 最近はスタートアップにどっぷりです。 英語が得意なので外国人インタビューなど積極的にしています! 英語翻訳の仕事もやっているので、何かあれば連絡ください。 ryoiida9507@gmail.com