2017.04.12

2017年3月29・30日に開催された、テック系スタートアップの祭典“Slush Tokyo 2017”(イベントレポート)。そこで出会ったスタートアップ界の豪傑5名へのインタビューを掲載するのが、本連載「アジアで活躍する欧米人の頭の中」です!

第1回は、Tech in Asia日本支社代表のデイビッド・コービン氏。月間1,000万超のPVを誇るアジア最大級のテック系メディアと、累計15,000人近い動員数のスタートアップイベントを運営する同氏が、次に注目するマーケットはどこなのでしょうか?アジアを俯瞰しているからこその洞察に注目。

《プロフィールデイビッド・コービン氏》

アメリカ・イェール大学卒業後、2009年に来日。横浜で日本語を習得した後、楽天にて買収後統合業務と渉外業務に従事する。2014年にTech in Asiaに参画し、現在は日本支社代表として、東京・シンガポール・バンガロール・ジャカルタのTech in Asiaカンファレンスの指揮をとる。家系ラーメンの大ファン。

 

日本のアジア進出は事業よりも投資

(“Connecting Asia’s startup ecosystem”をミッションに掲げるTech in Asia。日本版サイトはこちら

ー デイビッドさんは8年前に来日されていますが、その時と現在を比較すると、アジアマーケットにおける日本のプレゼンスはどの分野でどう変化していますか?

日本のアジアでのプレゼンスというと、事業よりも投資分野で上がっています。Tech in Asiaにあるアジアのスタートアップ企業約3万社のデータベースを分析すると、日本人の投資家数や投資金額は2014年から大幅に上がっていますね。一般的に日本人は、日本の強みを海外で生かすならフィンテックやコンテンツがよいと考えがちですが、今までの事例を見ると、どちらかというとeコマースで結果が出ています。たとえば、Yahoo! JAPANがインドネシアのVIP Plazaに投資したことを例に挙げることができます。

事業面では、日本から海外に進出する企業の中だと、WantedlyやSansan、そしてマレーシアの会社を買収したSepteni(セプテーニ)などが有力でしょうか。しかしいずれにしても、日系企業の海外マーケットの攻略の仕方はスタートアップの事業としてではなく、資金力のある企業がM&Aで進めていくのが一般化しています。

 

インドとインドネシアのスタートアップがアツい!

ー Tech in Asiaは、アジアの中でも中国・インド・インドネシアを多く取り上げていますが、日本以外のスタートアップ分野で注目している国やマーケットはどこですか?また、その理由は何でしょうか?

Tech in Asiaとしては当然、中国とインドがアツいです。最近2〜3年間では特にインドを取り上げる頻度が上がっています。もともと、Tech in Asiaは日本・中国・シンガポール・インドネシアの4ヶ国を中心に取り上げていたのですが、最近はインドのテクノロジーとマーケットの両面が注目されるようになりました。Tech in Asiaとしても、インドの現地記者を採用して、インドの記事比率を上げていますね。インドに関しては記事量が増えれば増えるほどPVも上がっているので、注目度が下がる気配はないです。

そして、東南アジアでは圧倒的にインドネシアです!インドネシアは政府が積極的にスタートアップを応援しており、「スタートアップ大国」といえます。首相がベンチャーイベントに参加することもあるので、国として新しい企業・ビジネスを盛り上げていこうという姿勢が伺えますね。Tech in Asiaもインドネシア出身のメンバーは多いですよ。

 

東南アジアのこれからのキーワードは、FinTech・AI・エグジット

(インタビュー中も和やかな雰囲気のデイビッド氏。丁寧な語り口が印象的だ。)

ー では、最近の東南アジアのスタートアップ界隈でホットなトピックは何でしょうか?

俯瞰してASEANマーケットについて考えてみると、2〜3年前はeコマースと言われ続けていましたが、現在一番盛り上がっているのはFinTechで、次はAIですね。今、企業が「新しいeコマースを立ち上げました!」といっても注目されません。しかし一方で、「人工知能のスタートアップを立ち上げました」という企業には、投資家たちが食いつきます(笑)。

FinTech以外のトピックだと、エグジット(注1)戦略ですね。東南アジアではこの3〜4年間、Seed Stage(注2)から順調に拡大しているベンチャーが多く、地域全体が「よし、東南アジアもいけるぞ!」と興奮状態にあります。しかし買収や上場がないと、なかなか投資家や創業者に価値が戻らないため、エグジット戦略が重要になっていますね。今の東南アジアのマーケットフェーズでは「100億円の価値がある企業の次のステップがどうなるのか?」ということも、重要なトピックの1つです。

(注1)エグジット:スタートアップ創業者やVCが投資資金を回収する方法。エグジットの例としては、バイアウトや株式公開(IPO)などがある。

(注2)Seed Stage:ベンチャー企業の成長ステージのうち、会社設立準備期や設立直後を指す区分。事業の種(Seed)となる技術やアイディアがあっても、組織化していないケースが多い。

 

環境に求めすぎず、自ら提案して解決するマインドセットを持って働く

ー では、最後の質問です。今回のSlush Tokyoはテック系スタートアップの祭典ということですが、日本人がスタートアップで活躍するために、語学力などのスキル以外で必要な働き方・マインドなどはありますか?

スタートアップでも大企業でも、重要なマインドは変わらないと思います。個人単位で大事なことは、自ら責任をとって企画して、実行しきることですね。企業として重視すべきは、スタートアップでも大企業でも新規事業立ち上げを立ち上げていくことです。チャレンジすると決断したら、常に自助努力を前提としてください。Wantedlyの仲さんがおっしゃっていたように、90%のスタートアップが3, 4年間で潰れちゃうというのはよく言われることです。しかし、それは日本に限ったことじゃなくて、アメリカもヨーロッパでも新規事業の継続が非常に難しいことは同様で、途中で諦めてしまう姿はよく見ますね。チャレンジングな若者には、悲観せずにやりきってほしいと思っています。

(デイビッド氏とWantedlyのCEO仲氏の、チームワークやアジア進出についてのfireside chat。David氏は終始聞き手に回りつつも、見る人の疑問を代弁したり話の要約をするなど、観客に対して親切な対応を見せる。)

あとがき

インタビュー後に「易しいことではありませんが、日本の企業が東南アジアに進出する成功事例をつくるために頑張っているんです!」と意気込むデイビッド氏。そんな同氏は、これからのベストプラクティスをつくるべく、日本のテック・スタートアップ系イベントに頻繁に顔を出し、講演やASEANの優良企業の紹介などを行ない続けている。

 

Tech in Asiaの関連サイトは以下

Tech in Asia Tokyo 2016(アジアのテックコミュニティー会議)

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