「選択肢の一つとして海外就職を」マレーシアで働く、雌 純徳氏インタビュー

 

マレーシアで働き始めて1年目の雌(めとり)氏。「国内のキャリア競争の激化を考えたら、海外就職にいきついた」という彼に海外就職までに至るまでのストーリーを取材した。

《プロフィール|雌 純徳氏》
大学を卒業後、4年間国内の機械系専門商社で営業職として勤務。後に海外就職を決意し、約100日間の就職活動を兼ねた東南アジアの旅に出る。そして現在、マレーシア•クアラルンプールにて日本企業のマレーシア進出支援、またマレーシアから旅行者を日本に送るという業務をメインに活躍中。

 

海外就職を選んだ理由とは?

 

ー近年、海外就職という言葉は以前よりよく聞くようになりました。とはいえ、海外就職を選ばれる方はまだまだ少数派。いったいどんな思いがあり海外就職を決意されたのですか?

元々日本で国内工場向けに生産材(産業用ロボット、機械部品等)の専門商社で4年程営業職として働いていました。しかし次第に日本経済国内の市場の縮小化、それに伴って会社内のキャリアの競争率の激化を感じるようになって、そこで少しずつ海外就職に関心を持つようになりました。

初めはネットで調べたり、海外就職のセミナーに参加したりして情報を集め始めました。東南アジアはこれから経済がまだまだ伸びていく環境にあり、語学の面でもまた現地の人とも互いに第二言語としての英語でのコミュニケーションなのでそこまでハードルは高くないと思いました。海外就職といっても海外に進出している日系企業で日系企業を相手にする企業もたくさんあります。そういう会社では結局日本と同じようにキャリア面での競争は激しいと思います。現地の市場をターゲットにする企業、あるいは現地企業への就職であれば人材としての希少性があるのではないかと思ったんです。

そんな条件で見れば、東南アジアにはまだまだ勝負できる土壌があると感じ、海外就職を決意しました。

 

それに加えて少し日本に嫌気がさしたというネガティブな感情も後押ししました。

日本の風潮で、一つの基準が決まったら皆がそこに合わせないとおかしいみたいなところがあるでしょ?例えば、男女平等を無理矢理掲げようとして女性管理職を無理に増やそうとしたり。個人、男女で違いがあるのは当たり前なのにその個人の個性をよく理解せず、腫れ物に触るように不自然に扱う風潮があると思うんです。結果、個々人の良いところを活かしきれてないと。

 

それだけでなくマレーシアに来て、日本って暗いなって感じます。3年前、震災があったときも皆が心配だ心配だっていって、でも実際にボランティア行ったり現地まで足を運んだ人なんて本当にごく一部。僕が現地に足を運んでボランティアに行っていたときも周りにお前すげえなって言われたけど、皆も心配だって言ってたじゃないか。心配って思うなら本当に自分の目で確かめて何かできることを探そうとする人がもっといても良いんじゃないか、と思いましたね。

そんな日本の風潮に嫌気がさしたのも後押しになって海外に出てみようと決意しました。

 

ーなるほどですね。では今回海外就職をされて就職活動という面ではどうでしたか?日本とは大きく違うことが予測されますが。

 就活で違いを感じたのは行程の速さですね。日本での就活は新卒の時にしか経験していないので何とも言えない部分もあるのですが、海外就活は面接回数も少なく、結果発表もとても速いです。

また面接で聞かれる内容も特に新興国の場合はどちらかというと仕事面よりも生活面でした。どのくらい長い間この地で暮らして行けるかというようなことや、面接のときに泊まっているホテルのクラスなんかも聞かれたりして、どれだけ環境に慣れて暮らして行ける能力があるかを見られていたように思います。

実際海外で働く上でサバイバル能力、環境適応能力は大切ですね。

 めとりさん3

ー就職活動の際にアジアのマレーシア以外のほかの国も見て周られたということですが、マレーシアは他のアジアに比べ、どのような国ですか?

マレーシアには本当に多種多様な人がいます。人種もマレー系、中華系、欧米系から本当に様々です。言語も様々な言語が飛び交っています。みんなばらばらだから誰がマレーシア人なのかもわからないし、マレーシア人自体も外国人がいて当たり前だと思っているので、外国人であるという疎外感を全く感じず本当に過ごしやすい環境です。

マレーシア人でなくてもマレーシアにいることをみんなに認めてもらっている、という風に感じます。違いがあって当たり前、お互いに受け入れましょうと。東南アジアの中でも特にマレーシアは英語が浸透しているのでコミュニケーションにすごく困ることもそこまでないですね。

生活環境で言えばクアラルンプールはかなり発展しています。まれにある水不足になることもありますが、インフラ面も発達していて、また治安も良いですね。

 

日本で働くこととの違いは、コミュニケーションですね。やはり一緒に働くメンバーが違うので日本式のコミュニケーションは通用しません。現地企業は、役職によって仕事がきっちり分けられているから担当の人と話せない限り商談が進まなかったり、相手先の担当者が変わると引き継ぎなどはされていないので全ていちからやり直しになるなんてこともあります。

現職はすべてが0からのスタートなので、販売先や相談先、あらゆる協力者・取引先企業を自身で探さないといけません。顧客毎に候補企業を探し、連絡して、面談等のセッティングを行います。候補企業を探すのにはネット検索やスーパーで類似品を探しそこから企業を探す、もしくは現地の方に紹介してもらっています。なかなか地道な作業です。企業が見つかっても、その企業の中のどの部署で誰が担当かをまず明確にする必要があり、適切な部署の適切な担当者に連絡をしないと返事をもらえません。前職での仕事はルート営業で顧客も仕入れ先もある程度固定されており、顧客からの依頼があれば誰(どのメーカー)に相談すれば良いかがある程度決まっていました。それに対し現職では単純なアポ取りでもこれだけの行程をこなさなくてはなりません。また勿論すべて英語になるのでその分全てがハードですね。しかし自分で開拓して行けるのは本当に楽しいです!

 

ー1つのアポイントメントを取ると言うだけでも、日本の企業であれば一見単純な工程のように感じられますが、マレーシアではかなりの根気強さが必要そうですね。その分、雌さんから仕事に対する充実感、達成感が感じられました。

では、今後の展望、今後のキャリアについてはどうお考えですか?

僕はとくに起業や独立の願望はないんですよ。こういう風に海外で働いてたりするとそういった人が多いと思われがちですが、僕はただ場所や会社に左右されずに生きて行ける人間になりたいと思います。

面白そうだと思ったらそこで仕事をしていけるような、どこでも生きていけるようなサバイバル能力をつけて。フットワーク軽く生きていたいです。

 

選択肢の一つとしての海外就職

ー最後の質問です。他の方にも海外就職をお勧めしますか?

正直誰にでも海外就職が向いているとは思いません。やはり、合う合わないはあります。でも、一度選択肢の一つとして検討してみるのは良いと思います。日本だけを見ているのでは本当もったいない!選択肢として海外就職を考えることで職務上の視野が広がります。

 海外就職と聞いて「面白そう!」と思ったらまず見てほしいですね。今の世の中、たくさんの情報があふれています。

僕も海外就職に関心を持ち始めてから、海外就職に関するセミナーに参加したり直接現地を回って話を聞いたり、海外の人材育成プログラムに参加したりしました。SNSを利用して海外で実際に働いている人に直接コンタクトをとることもできます。そういうものって能動的に調べるか受動的に待っているかで情報に大きな差が出てくるんです。

 

海外就職についてどんなものか知るチャンスは溢れています。ぜひ少しでも関心があれば積極的に情報を取りに行くことをお勧めします!




ABOUTこの記事をかいた人

中島由莉

上智大学理工学部情報理工学科4年。3年の冬にインドに行ったことをきっかけに海外に出ることを決意。4年次を休学して現在ベトナムホーチミンでインターン真っ最中。ベトナムを中心に東南アジアの面白さを発信していきたいです!