2016.04.29
新卒でベトナムに飛び込んだ矢野氏。海外で就職することのハードルは低いと語る同氏に、ダナンでの仕事や生活についての幅広い話を伺いました。国を問わず、海外のベンチャーで挑戦的な仕事をしたいという情熱を持つ同氏を突き動かす、その原動力は何なのでしょうか?
《プロフィール|矢野由里絵氏》
1992年生まれ、福岡県出身。国際基督教大学卒。大学時代は長期休みのたびに世界中を旅し、ルワンダでスポーツを用いたボランティアをおこなう。現在はベトナムのダナンでオフショア開発などの事業を手掛けるアジアンテックにて、開発プロジェクトのマネジメントと人事を担当している。
「その土地にいる人を幸せにできるようなことをしたい」
ー学生時代はどんなことに取り組まれていましたか?
学生時代の目標は特になく、「海外」を軸に活動していました。
海外で旅やボランティアをしていて、世界中にいろいろなネットワークができたので、価値観が広がったなと思います。
ボランティアを通して、私たちが途上国に住んでいる人々を貧しくて困っていると勝手に思っていたけど、実際はそんなに困っていない人もいるということを知りしました。ボランティアは自己満だと思っていた時期もありましたね。
海外で一番強く感じたことは、国は違うけどみんなちゃんと生きているってことです。
ーそんな中でどうして海外就職をしようと思ったのでしょうか?そのきっかけを教えてください。
親が英語の先生だったり、子どもの頃から海外旅行に行ったりなどしていて、「海外」というのが最初から身近でした。
学生時代もいつかは海外で働きたいと思っていたので、「海外就職をしよう!」と決断したというよりは、自然な流れで決まった感じですね。
ー何をしたいと思われて海外へ行ったのでしょうか?
その土地にいる人を幸せにできるようなことをしたいと思いました。具体的な業種とかジャンルとかはこだわってはいませんでした。
今はベトナムで仕事をしているけど、これからはいろいろな国で働きたいと思っています。一番はアフリカですね。それがソーシャルビジネスなのかボランティアなのかはまだ定まっていないです。
ー多くの国の中でなぜベトナムを選ばれたのですか。また現在の会社を選んだ理由も教えてください。
ただ海外に行きたいというだけでした。正直、場所はどこでも良かったんです。
就職活動をして、内定をいただいた会社があって、就職前のインターンもフルコミットで行っていたんですが、その会社がM&Aで買収されてしまったんです。好きだった社長も変わって、優秀な方たちも辞めていってしまいました。それに危機感を覚えて、4年の12月からもう一度就職活動をすることに決めたんです。
そこからWantedlyを毎日見まくってとりあえずエントリーしていました。そこでセカイラボ(アジアンテックの親会社)を見つけて。
セカイラボに応募した時に、新卒で海外に行くのか、東京本社に就職するのかという選択肢を面接時に頂いて、その時に「最初から海外行けるんだ!」と分かりました。それで、じゃあ行こうと。
ベトナムは私のルーツになる国
ーベトナムのイメージは当初、どのようなものでしたか?
フォーと社会主義のイメージですね。社会主義ってどういう感じなのかなって思っていたけど、来てみたら全然社会主義って感じはなかったです。
教育レベルが高い人も多く、話していて面白いですね。当初の想像とは全然違いました。ベトナムは身近な国になったと思うし、これからの私のルーツになる国だと思っています。
(トゥアンフォック橋から見るダナン)
ーベトナムに来る時、周りから反対はされませんでしたか?
反対されたし、周りには驚かれましたね。でも、休学した時にルワンダへ行っていた経験があったので、両親は諦めていました。反対されて心が揺らぐことはありませんでしたし、両親が許してくれるだろうとわかっていたので、押し切って行きました。
とは言っても説得のため、レポートとかも出しましたよ(笑)親に対して、そこはちゃんとしなくちゃと思ったので。
ー新卒海外を決断するまでに相談していた方はいますか?
友人には結構話していました、でもそれは相談というよりも話していく中で自分の考えをまとめていくみたいな感じでしたね。自分の中でベトナムへ行くというのは決まっていました。
ー海外で活躍されている日本人の方は多くいますが、ロールモデルやこういう人になりたいというのはありましたか?
全然ないです。私はフィーリングで物事を決めていくタイプなので、あまりロールモデルというのは意識していません。
でも、アジアンテック社長のホアンさんは好きですね。話していると、ついていきたいと思うんです。心を掴まれるような感じがあって。ベトナムだけでなく世界を見ているので、そういうところはすごく共感しています。社員はみんな、ホアンさんが大好きだと思いますよ。
ベトナムの文化から大切なことを学んだ
ー矢野さんの具体的な仕事内容を教えてください。
基本的な仕事は開発プロジェクトのマネジメントです。スケジュール通りに日本品質のものを納品するというウェブサービスやアプリ開発のマネジメントを行っていて、常に3つぐらいのプロジェクトを扱っています。
日本のお客様とお話をしてスケジュール調整をしたり、要件をどんどん詰めたりと、日本とベトナムの橋渡しをしています。その際には、人に元気を与えられるようにいつも笑顔で仕事することを気をつけています!
ーでは、生活面についてお聞きしたいです。ダナンでの休日の過ごし方や金銭面、食事はどうですか?
休日は会社の人とご飯に行ったり、誕生日パーティを開いたりですね。会社には日本人社員が10人以上いて、ベトナム人社員は約200人います。
あとは、月一で有給があるのでそれを溜めて旅行に使ったりしていますね。日本だと有給を取りにくい場合もありますが、ベトナムでは気を使わずに有給がとれますね。それも海外就職のメリットだと思います。
金銭面で困ることは一切ないですね。会社からの補助もありますし、食費が日本の約4分の1程度とすごく安いです。むしろ新卒で東京に一人暮らしするよりは貯金ができていると思います。
食事は…ベトナム料理は好きですが、飽きましたね(笑)こちらに日本のお菓子があれば最高です!
ーベトナムで働くのが日本で働くよりも良いと感じる点は他にもありますか?
たくさんありますね。ベトナム人は優しくて元気な若者が多く、精神面でも仕事面でもすごく助けられています。仕事をしていると毎日学園祭の準備をしているみたいで、それがプロジェクトの納期まで続くイメージです。
そういう感覚は日本で働いているとなかったかなと思います。ベトナムの方はこちらがしっかりマネジメントすれば、ちゃんとコミットしてやってくれます。
あと、日本だと毎日満員電車に乗って往復で2時間通勤するじゃないですか。でも私はダナンで自転車に乗り、片道15分ほどで会社に行けるのが楽でいいですね。
ーベトナムに来てよかったと思うこと、日本では経験できないと思うことはありますか?
ベトナム人が家族をすごく大事にするので、家族の大切さを再確認しましたね。これってすごく素敵な文化だと思います。私もいつかは地元の福岡に帰って家族との時間を大切にしたいです。そういう面では、ベトナムから学ぶことは多いですね。
このような文化があるので、マネジメントをする立場として残業はなるべくないようなスケジュールを立てています。余裕があるとかみんなで合意したスケジュールを立てるということを気にしていますね。
海外就職したいと思えば、だれでもできる
ー今後のキャリアはどうイメージしていますか?
私が海外に出た理由の一つとして、他の人がやっていないことをしたいというのがあります。しかし、周りの人たちのように一般企業へ行くというレールから逸れた今、自分が今後どうなっていくのかまだわからないというのが正直なところです。
今の仕事でもまだまだできていないことがたくさんあるので、それができるようになったときに何か見えてくるのかなと考えています。
ー他の人がしていないことをしたいとおっしゃっていましたが、どのような分野ですか?
まずは同じようにIT関係の企業へ行けたらと思います。専門性をもっと身につけたいですね。今やっている人をマネジメントする仕事は奥が深く、気持ちを扱うことにコミットする部分が面白いなと思います。
あとは、いつかJICAの青年海外協力隊としてアフリカでIT教育をしてみたいと思っています。
ーでは海外で働きたいけど迷っている人へ、メッセージをお願いします。
私には他の人と違うことがしたいという気持ちがあって、海外の道を選んだのですが、実際に選んでみてそのハードルってむちゃくちゃ低かったと思いました。こっちで生活することは日常になりますし、海外就職したいと思えばだれでもできると伝えたいです。海外で働くというのは楽しいので、お勧めしますよ。
ただ、周りの海外就職をした人を見て思うのは、やりたいことがはっきりしている人が多いことです。その国の社会に問題点を見出してそれを解決したいと思っている人は強いと思います。